商品で訴求したいことをネイルにして指先ひとつで営業まわった話
名古屋に来て1年が経ったくらいの話。わたしの爪は弱く、ネイルが剥がれやすい中、
やっと見つけた瑞穂区のネイルサロン。
初めてのネイルは、「営業マンなのでとにかくシンプルに、でもちょっと可愛くしてほしいです…」なんてオーダーをした。
記念すべきこのサロンでの初ネイルはこちら。

このネイルで注意されるのことはなかった。
そもそもネイルがダメというルールはない。
なんというか、煌びやかな装飾は少し嫌厭されがちで、
職人気質の方が多く、男性が多い中、「オシャレ」は無駄、的な空気があった。
その空気を重んじて、女性社員たちもネイルを控えていたのだった。
ルールがないのになぜ空気を読む必要があるのか。
疑問を持ち始めたのは、仕事のことで怒られることがなくなり、
比較的に自分のやりたいことができ始めた7年目くらいのことだった。
どこかまで攻めたら怒られるのか、
逆に派手なネイルを自分に課して、
「(あいつのネイルは派手だけど)仕事できるしいいか」となれば、
女性の新しいネイル人権を確立できるのではないか。
わたしはこのアイデアに我ながら興奮した。
こうなれば、やってみよう!!!
服を脱いでも化粧をとっても最後で「自分」であり続ける「爪」に最高のテンションを授けよう!
このあたりならどうだ?ちょっと主張強めのラメが効いてていいじゃないか。
かずよさんは「会社大丈夫?」と言っていたが、
「やりながらギリギリライン見つけます」と夢を追いかける少年のような目で応えた。

翌日、出社。
………耐えた!!!何も言われない!!!
そんなに見てないぞ、人の爪!!!
女性の先輩が「きれいでいいね」とか、女性の後輩が「めっちゃかわいいです!」と言ってくれた。
少しばかり上司に判子をもらう時、爪に視線を感じたが、笑顔で返しておいた。
これは、いけるぞ。
ピンク・ベージュ系以外にも攻めてみたい…
夏だし、ブルー系がいいな。
わたしはティファニーブルーカラーが大好きで、
大理石調のネイルなんて可愛いだろうな。
…………あ、そういえば。
ネイルサロンで画像を見せて、そのデザインにしてもらうことを『持ち込みデザイン』という。普通は芸能人のスナップや可愛いネイルの画像を持ち込むものだが、私のそれを見たかずよさんは戸惑った。

「え、ユニットバスの写真…?」
弊社主力の戸建用ユニットバス「サザナ」
中でも壁柄出荷ランキング上位をキープしている「マテリアルアロマグリーン」、
爽やかなグリーンとブルーの淡いのようなカラーに大理石調のホワイト模様が浮き上がる。
これだ。
かずよさん「5本全部じゃなくて、いい感じにする感じで?」
わたし「おかませな感じでいい感じで」
出来上がったネイルがこちらだ。

可愛すぎやしないか?
いや、完全にわたしの想像を超えた。元ネタ風呂だぞ。
オフィスネイルのシンプルさを踏襲しつつも攻め色のブルー系!!!気に入りすぎた。
そして、副産物もあった。
現場での打ち合わせのとき、ユニットバスの壁柄もヒアリングするのだが、
カタログは分厚いし重い。しかも提案初期見積りだと「まかせる」と言われるけども、
任せられたらそのあとトラブルになることが多い。
そんなとき!!
爪を見てせ「これでいいですかね?マテリアルアロマグリーン」と言う。
お客さんは笑った。「どこまで営業マンなの?笑 いいよ、その色で」
わたしは確信した、これは、いろんな意味で使えるぞ。
ネイル文化への謎の我慢をぶち壊し、営業ツールへ昇格させる。
これこそが世が求める「女性キャリア」の姿!!!(多分違う)
メーカー営業マンのミッションは「価値伝達」である。
お客さんにとってよりよい商品を提案すべく、
講習会をしたり、アポを取って新商品の説明をしたりする。
もちろん新商品ばかりではなく、既存商品の再訴求も仕事のひとつだ。
一回言ったくらいで伝わるわけはないから。
当時弊社は、タンクレストイレの主力商品「ネオレスト」が発売30周年を迎え、
社内はネオレスト再訴求、そしてタイミングを合わせて発売した新ネオレストの訴求に盛り上がっていた。
わたしは、ちょっとシックなブラックネイルに興味を持っていた。
かずよさんにまたひとつ、持ち込んだものがある。

「なんかこう、名刺一回出せば、あ、ネオレスト30周年なんだな!」ってわかる感じで!
かずよさん「………頑張る」
仕上がったのはこちらだ。

まさかトイレを売りたいネイルだとは思わまい。
しかし、弊社では一代プロジェクトの今、
部長がこのネイルにとうとう気づいてしまった。
目線がロックオン。こうなると先手を取る。
「やっぱ、わたしもネオレストも30周年なんで。わたしが売らないと誰が売るだって思うんです」
部長「あ、うん…いい気合いだね」
わたし「見てください、この人差し指なんですけど、ネオレストの特徴であるエアインワンダーウェーブを表現しておりましてね」
エアインワンダーウェーブというのは、
洗浄水のスピードを周期的に変化させることで、一秒間に約100個の水玉を連射する洗浄方法。その水玉に空気を含ませることで水の一粒一粒を約30%拡大し、当たり心地のたっぷり感を向上させた、弊社独自機能である。
簡単にいうと、大きめの遅い玉を小さめの速い玉が追い抜く瞬間に空気を含んださらに大きな玉になる。この大きな玉がおしり付近で作られることにより、
少ないお水でしっかりと洗えるというわけだ。
イメージできるだろうか?
人差し指で一撃で訴求したのがこちらだ。


今にも誰かのお尻をきれいさの海に誘いたい…そんなトイレウーマンに適したネイル…
この爪をみた、昭和の頑固親父代表みたいな代理店の部長は、
「この子の本気を感じました、こんな営業は初めてだ、一緒にネオレストを売ろう!」と言った。
過去、こんな子はいなかったとずっとこの話されるのだが、
大丈夫、これからもこんな子はいないです。
さて、弊社商品には、パブリック商品というものがある。
ビルなどの公共施設向けの商品だ。
その中の「多目的トイレ」をパックにした、
「多機能トイレパック」というものがあるのだが、
まだまだ施工方法含めて認知が足らない。
そこで、多機能トイレパックの講習会をすることになった。

皆さんならどんなネイルにしますか?
とにかく集客をしてたくさんの人に認知しないといけない、
そして本気度を伝えないといけない。
ネイルにするとこうなります。

手すりというのは掴みやすくするために色をつけたほうがいいです。(いきなり)
ホワイト、ブルー、そしてリモコンのシルバーを爪先で表現。
コーポレートカラーのオリエンタルブルーに近い色味を探すのは至難の業でしたが、
かずよさんは配合により完全再現。
そして一言。「ネイル代、福利厚生でどうにかなるんじゃないですか?」
たしかに!!!
この時点で、わたしは新商品が出たり、
商品がデザイン賞を受賞したらネイルで表現し、
営業にまわっていた。
お客さんたちも、「そろそろ爪変わったんじゃない?今月は何売りたいの?」と電話してくるようになっていた。



弊社はトイレのイメージが強く、キッチンのシェアはまだまだ低い。
でもわたしはザ・クラッソという弊社のキッチンが大好きだ。
一人でも多くの方に知ってもらうため、ネイルに落とし込んだ。
「そこまでするなら見積もりあげるよ」
こうして、わたしは名古屋でキッチンを売りまくる営業マンになったわけだ。
ふと見渡せば、後輩女子たちの爪先が華やかになっており、
後輩男子たちが「なんか、みんな楽しそうで最近いいですね」と笑っていた。
マテリアルアロマグリーンから始まったネイル営業だが、
ネイル文化をどうしかしたいという目的を果たしつつも、
営業成績も上がることになった。
本気というものはきちんと伝わるもと確信した。
改めて、むちゃくちゃをずっと聞いてくれたかずよさんには心から感謝したいと思う。
わたしのネイルが終わるたびに「納品完了…」と大きく息を吐き、笑っていた。
これからも、価値伝達、続けていきたいと思う。

最後まで読んでいただき感謝です。
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仕事にこだわりすぎて指先までネイルにしてしまうわたしですが、
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