連載『それゆけ!重さん9』~仕事

仕事

重さんは倒れてから自分のお店に立てなくなった。

余命10年と宣告されたのもあり、
お店は奥さんが一人でもやれる
当時流行りの”喫茶&スナック”の形態になった。

昼間は、ランチもある喫茶店で
午後休んで、夜はお酒も飲めるスナックになる。

女性一人ならよくある形態だった。

何かがあまり好きじゃなかったのだろう。
重さんは、そのお店には顔を出さず、
手当たり次第に仕事を変えた。

ラブホテルの従業員、パチンコ屋さん・・・
犬の散歩も続けていたし、

ただただ、生きた。

それでも大黒柱を失った家庭。
子供たちも働いた。

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小学四年で、父親が倒れた私の元彼は
中学生から新聞配達をし始めた。

特に思想があるわけでもないが、
(ないからこそ)
中学生でも働くことができた
”〇旗”だった。

働いたお金は自分のお小遣いにはならない。
すべて家の生活費になる。

中学生の年齢で、もう奉公人として
働いていた重さんにとって、
中学生で働くことは普通の事だった。

”子供時代は子供らしくいないとかわいそうだ”
という声もあるかもしれない。

ただ、私は元彼を見ていてよく思った。

子供の頃から働いてきた彼にとって、
生きるために働くことは当たり前のことで、
苦ではなかった。

「中学生から働かされた!」
と言ってもおかしくないのに。

もしかしたら、これは、
幸福のひとつの形かもしれないと、
私は思う。

例えば、幼い頃から
当たり前に台所に立っていれば
料理は、特別なことではなく「日常」になる。

それと同じように、
子供の頃から働くことは、
彼にとって、呼吸するのと同じくらい自然な
生活の一部になっていた。

そこに疑問は存在しない。

重さんが教えた幸福の道が
そこにはあるように、私には見えた。

                  10に続く

第一話 出逢い
第二話 生まれ
第三話 自由
第四話 野球
第五話 病気
第六話 犬 
第七話 動物と重さん
第八話 容姿

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#エンタメ原作部門




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