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なぜ恐竜には「二足歩行」と「四足歩行」両方のタイプがいたのか?│四足歩行へを「再獲得」した恐竜たちの知られざる苦労

はじめに:二足歩行と四足歩行

突然ですが好きな恐竜は何ですか?

”ティラノサウルス、ヴェロキラプトル、ステゴサウルス、パラサウロロフス、トリケラトプス、ブラキオサウルス、パキケファロサウルス⋯⋯”

いろいろ思い浮かぶと思いますが、これらをあらためて見ると、二足歩行のものと四足歩行のものが混在してることに気づきます。(四足のものはほぼ植物食)
哺乳類は人間を除くほぼ全てが四足で統一されているのに、ちょっと不思議ではないでしょうか?

なぜ恐竜は二足のものと四足のものが併存したのでしょうか?
恐竜の四足歩行化にあたっての試行錯誤の進化について見ていきましょう。



第1章:前足の抱える課題

意外かもしれませんが、恐竜という一大グループは二足歩行から始まりました。
原始的な四足歩行の爬虫類から、直立二足歩行ができるようになったのが恐竜の出発点です。
(以下過去記事参照)

その後、恐竜の系統の中から、体の大型化や防御、採食などの事情から四足へ「戻る」道を選ぶものが度々現れたのです。
そもそも四足歩行を前提に進化してきた哺乳類とは異なるルートだった、ということが分かると思います。

しかし、二足歩行で完成していた恐竜にとって、四足歩行に戻ることは簡単なではありませんでした。
最大の壁はどうやって前足を地面に置くかでした。


私たち人間は四つん這いになるとき、自然に手の平全体をビタッと床に置くことができますよね。それこそ赤ん坊でも手のひらを地面についてハイハイができます。
これを可能にしているのは、前腕の橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)がクロスして、手の平を下向きに回転させる「回内(かいない)」という仕組みです。

人間に限らず、ネコやイヌなど、指の腹で接地するタイプ(趾行性)の哺乳類なども同じ仕組みで、手の平の面を地面に向け、前足を真っ直ぐ降ろしてスマートに接地して歩行するができます。

ヒョウ(ネコ科)の歩行の様子
前足の手の平は回内により地面を向き、指の腹で接地

回内は哺乳類だけが持つ能力であり、恐竜も例に漏れず回内ができない手の構造でした。
手の平は常に内向き(お互いの手の平が向かい合う方向)に固定され、手の平を返すような動作は不可能でした。
(以下過去記事参照)

つまり、「手の平を地面にクルッと向けて接地する」という、人間の感覚からすると簡単そうなことが恐竜にはできなかったのです。
このため、二足の恐竜が四足へと戻るには「回内なしで接地する」という工夫が必要とされました。


第2章:三者三様の解決法

四足化した恐竜たちはこの課題に対し、それぞれ異なるアプローチで解決策を見つけています。
代表例として、装盾類(そうじゅんるい)、角竜類(つのりゅうるい)、竜脚類(りゅうきゃくるい)について見てみましょう。


①装盾類:やっつけ感のある工夫

ステゴサウルスアンキロサウルスなどに代表的される装盾類は、装甲化による重量増への対応や、安定を保つために四足歩行へ移行する必要があったと考えられます。
ところが、回内が出来ない手(手の平が内向きに固定された状態)で、腕を真っ直ぐに地面に下ろすと、指の先端でしか接地できないという問題が起こります。(手首を曲げても手が体の外側に向く不自然な姿勢に。)

それに対して装盾類は、肘を少し張り、腕を前へ突き出すことで、指の腹を押し付けるように接地するという、大きな構造の変化を伴わない若干やっつけ感のある方法に辿り着きました。
例えるなら胸より前方に手を置き、腕で突っ張って支える腕立てのイメージです。伝統的な作法の「三つ指をついたお辞儀」にも似ているかもしれません。

ステゴサウルスの骨格標本
腕を前方に突き出した感のある姿勢。

装盾類にとって、転んだり、捕食者にひっくり返されることは最も無防備な状態となり命取りです。なので一見やっつけ感のある踏ん張り形の姿勢も、安定性を重視する装盾類にとっては総合的にベストな選択だったのかもしれません。
実際に白亜紀末の装盾類(アンキロサウルス類など)までこの基本方針は受け継がれています。

②角竜類:よりスマートな直立姿勢

トリケラトプスなどの角竜類では、前足は直立姿勢に近づき、構造としての完成度が増している感があります。これは、巨大な頭部を支えるためや、自慢の角を活かすための機動性を確保するためなどと考えられています。
肩の関節可動域や骨の形状の改造の結果、肘を胴体側に引きつけることが可能になり、体のより真下寄りの位置で指の腹で接地できるようになりました。
脇を締めたコンパクトな腕立ての姿勢のイメージです。

トリケラトプスの骨格標本
脇を締め、手の平は胸の真下に近づき体を支える感じに。

依然として手の平自体は「回内」ができませんが、そのツケを肘や肩の曲げで帳尻合わせすることで、直立姿勢に近い、より自然な四足歩行に近づけることに成功しました。

③竜脚類:パワープレイで柱脚化

ブラキオサウルスティタノサウルスなどの竜脚類の前足は、巨大な体を支えるために力学的に強い構造になる必要がありました。
先ほど装盾類のところで述べたように、回内できない手を真っ直ぐに下ろすと指の先端が接地してしまうはずですが、竜脚類は逆にそこを正面突破し、「手先を地面に突き立てて立つ」ような構造に進化しました。
進化の過程で指骨(指の骨)は退化し、主に荷重を支えていたのは中手骨(指骨に繋がる手の甲の骨)でした。上から見ると「∩」のようにアーチ状に並んで強固に結合し、さらにその下に丸いパッド状の組織を敷くことで体重を分散していました。
イメージとしては、指のある人間では再現不可能ですが、拳を握ったときの出っ張り部分(中手骨の骨頭)だけで腕立てしているようなものです。

ティタノサウルス類 アルゼンチノサウルスの復元骨格標本
前足で接地しているのは中手骨。(指骨ではない)
対照的に後ろ足には立派な爪が備わっている。

指骨や爪は時代が進むほど退化し、ジュラ紀のメジャーな竜脚類では、指骨は指の付け根付近を残しほぼ退化、爪も第1指(親指)の蹴爪のようなもの一本を残して退化していました。
白亜紀のティタノサウルス類に至っては、第一指の爪どころか指骨も全て消失し、ツルッとした完全な柱形状になっているのが一般的でした。

なお、竜脚類のイラストなどで前足にゾウやサイのような爪が描かれることがよくありますが、前述のようにごく初期の竜脚類を除き、前足にそのような爪は無かったので、そういった表現は不正確となります。
かく言う私のアイコン画像のブラキオサウルスの前足にも爪がしっかり描かれています。これは良くない例です。(戒め)


第3章:四足になっても基本は二足

二足歩行から始まった恐竜は、後ろ足主体の推進が基本で、四足化した者にもその基本思想は受け継がれていました。
ブラキオサウルスなどの一部の例を除けば、多くの場合後ろ足の方が発達し、重心も後方寄りでした
特に巨大な竜脚類ではその傾向が顕著で、前足は体重の支持やバランス取りの役割に徹しており、推進力は主に後ろ足が担っていました。
その証拠に、後ろ足にはスパイクのような爪があり続けたのに対し、前足の爪は時代とともに退化しています。
前足は自らは推進力を殆ど生まず、後ろ足からの力で玉突きのように押されて踏み出すような歩行をしていたと考えられています。


まとめ:制約から生まれる多様性

二足で始まり、四足へと戻る道を選んだ一部の恐竜たちにとって、「回内ができない」ことは大きなハードルでした。
それでも彼らはそれぞれユニークな答えを見つけ出し、竜脚類に至っては地球史上最大の陸上動物にまで進化を遂げました。
四足歩行の恐竜の進化は、恐竜という種族の持つ底力を改めて教えてくれる気がします。

この世に完璧な生物など存在せず、どこかに祖先から受け継いだ制約による不都合や、帳尻合わせがあるものです。それらを克服したりうまく回避しながら生命は懸命に命をつないでいます。
数千万年以上という遠い昔を生きた恐竜も例外ではなかったと思うと、より身近な存在として感じられるのではないでしょうか?


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他にも進化や恐竜について以下のような記事を書いています。是非ご覧ください。

■使用画像クレジット一覧

・記事見出し画像:
AIによる生成画像

・ヒョウの歩行の様子
Leopard (Panthera pardus) (51984659585).jpg, by Bernard DUPONT, Wikimedia Commons, CC BY- SA 2.5

・ステゴサウルスの骨格標本:
Journal.pone.0138352.g001A.jpg by Susannah Maidment et al. & Natural History Museum, London, Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0

・トリケラトプスの骨格標本:
LA-Triceratops mount-2.jpg by User:MathKnight, Wikimedia Commons, CC BY-SA 2.0, Source:File:LA-Triceratops mount-1.jpg (by Allie_Caulfield )

・アルゼンチノサウルスの骨格標本:
Argentinosaurus skeleton, PLoS ONE.png by William Irvin Sellers, Lee Margetts, Rodolfo Aníbal Coria, Phillip Lars Manning, Wikimedia Commons, CC BY-SA 2.5





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