パクチー氷は、飲むほど濃くなる
8月9日はパクチーの日。パ・ク・チーの語呂合わせだそうです。
好きな人はとことん好きで、苦手な人はひと口で無理。ここまできれいに割れる野菜も珍しいなと思いながら、今年は氷にしてみました。
結果から言うと、後半がすごいことになりました。




仕込みは前の日の夜でした。
製氷皿を出してきて、パクチーの葉を一枚ずつ、水に沈めていきます。浮くんです、これが。指で押さえてもふわっと戻ってくるので、結局一枚ずつ角に引っかけるようにして固定しました。八個埋めるのに、思っていたより時間がかかりました。
翌日、冷凍庫を開けて取り出してみたら、四角い中に緑がぴたっと閉じ込められていて、標本みたいでした。この時点でだいぶ満足していました。作る前より、作ったあとの見た目のほうが良かった。
テーブルには、おひたしと天ぷらとスープ。パクチー尽くしです。香りが立つように、と気を利かせてもらったので、部屋がもうすでに東南アジアでした。
そこにグラスを出して、氷を三つ落として、焼酎とソーダを注ぐ。ぱちぱちと泡が立って、緑が揺れる。絵面としては満点です。
一杯目は、うすい。
氷なので当然です。まだ何も溶けていないんだから、味がするほうがおかしい。わかっていて飲んだのに、口に入れた瞬間はちょっとがっかりしました。人間、期待は勝手にふくらむものです。
二杯目のあたりで、ようやく香りが顔を出しました。氷の角が丸くなって、葉のふちがほどけはじめたころです。ここでやっと、パクチーを飲んでいる感じになる。
三杯目。
溶けきった葉がグラスの底で広がって、ひと口飲んだら鼻の奥にまっすぐ抜けてきました。濃い。あきらかに一杯目より濃い。飲み進めるほど強くなるお酒というのは、そうそう経験がありません。
だいたいのお酒は、後半になるほど氷が溶けて薄くなって、なんとなく終わっていきます。最後の一口はほとんど水です。それが当たり前だと思っていたのに、これは逆に走っていく。同じグラスの中で、時間が味方じゃなくて敵になっている。
薄まっていくものだと思って口をつけたのに、逆方向に向かう。
予想が外れるのは、たいてい楽しい。
ただ、三杯目を飲みきったあたりで、部屋がまた東南アジアに戻っていました。
パクチーが苦手な方は、絶対に真似しないでください。
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