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【元幹部自衛官の反省】 自衛官は、強い人ばかりではない | リーダーが見落としてはいけない「隊員の心の奥」

1. 元自衛官のnoteの記事を読むたびに、私は自分を振り返る


noteで文章を書くようになってから、私は、他の人の記事もよく読むようになりました。

なかでも、元自衛官が書いた記事を、つい開いてしまいます。

そして、気づいたことがあります。

元自衛官の記事で、圧倒的に多いのは、こういうものです。

  • 自衛隊の中で、つらい思いをした

  • 苦しい体験をした

  • そして、退職や転職に至った

そういう記事が、本当に多い。

一つひとつ読んでいくと、胸が痛くなります。

  • 理不尽な指導

  • 逃げ場のない人間関係

  • 誰にも相談できなかった、孤独な日々

もう限界だった」という、短い一文。

その向こうに、確かに一人の人間がいて、確かに苦しんでいた。

それが、伝わってくるのです。

そして、読みながら、私はいつも、同じところに引き戻されます。

私がリーダーだった頃、私は、誰かに同じ思いをさせていなかっただろうか。

自分の部下に。
自分が責任を持っていた、あの隊員たちに。

  • 私は本当に、彼らの心に寄り添えていたのか。

  • リーダーとして、隊員を支えられていたのか。

  • 成長を、後押しできていたのか。

  • それとも、知らないうちに、誰かを追い詰めていたのか。

正直、自信を持って「できていた」とは言えません。

だからこそ、この記事を書こうと思いました。

立派なリーダーだったから、語るのではありません。

むしろ逆です。

見落としていたかもしれない自分への、反省として書いています。

そして、これだけは伝えておきたいのです。

私は今から、偉そうに「こうしろ」と命じるつもりはありません。

ただ、自衛隊のリーダーに、案外欠けているのではないか

そう私が感じている、ひとつのことについて、書かせてください。

特に、CGS受験生。

なかでも、2次試験で職務分析に向き合う人。

これから、部隊を率いる立場に進んでいく人。

そして、CGSに限らず、これからリーダーになるすべての人。

その人たちに、いちばん読んでほしいと思っています。

もし、ひとつでも、心に残ることがあれば。

それだけで、この記事を書いた意味があります。

2. 私は、あの隊員の何を見ていたのだろう


そう思うと、決まって、ある隊員の顔が浮かびます。

名前も、声も、まだ覚えている。

あの頃、私はリーダーでした。

号令をかけ、部隊を動かし、人前に立っていました。

うまくいったことも、あります。

部下が伸びてくれた時のことは、今でも嬉しく思い出します。

でも、夜中にふと思い出すのは、そういう場面ではありません。

うまくできなかったことのほうです。

その隊員は、真面目で、返事のいい男でした。

何を頼んでも、「はい」と即答する。

だから私は、安心して仕事を任せていました。

ある時期から、彼のミスが少し増えました。

朝の表情も、どこか硬い。

「最近どうだ」と聞いたら、「大丈夫です」と笑った。

私は、それを信じました。

いや、正確に言えば、信じたかったのだと思います。

そのほうが、楽だったから。

私は、自分の仕事で手一杯でした。

そこで深く立ち止まる余裕が、なかったのです。

彼は、その後、しばらくして部隊を離れました。

私は、最後まで、彼の本当のところを知りませんでした。

今でも思います。

私は、あの隊員の表面しか、見ていなかったのではないか。

返事の声。
勤務態度。
成果。

私が見ていたのは、それだけでした。

彼が毎朝、何を抱えて出勤してきていたのか

そこまでは、見ようとしていなかった。

リーダーは、部下の勤務態度だけを見ていると、いちばん大事なものを取りこぼします

それを、私はずいぶん経ってから、知りました。

3. 自衛官は、強い人ばかりではない


自衛官、と聞いて、思い浮かぶ姿があると思います。

  • 強い人

  • 我慢できる人

  • 厳しさに、動じない人

自衛隊だから厳しい環境は当たり前でしょ?

私も現役の頃、どこかでそう信じていました。

迷彩服を着て、号令に従い、訓練に耐えている。

その姿を見れば、みんな同じように、強く見えます。

でも、半分しか合っていません。

自衛官にも、それぞれの家庭があります。

それぞれの過去があります。

性格があり、特性があり、抱えている病気を、人知れず治療している人もいます。

口に出せない不安があります。

職場で、家で、感じている孤独があります。

誰にも言えない悩みを、迷彩服の下に隠している人がいます。

きびきび動く人ほど、強いと思われます。

弱音を吐かない人ほど、頼れると思われます。

でも、本当にそうでしょうか。

弱音を吐かないのは、強いからではなく、吐けないからかもしれない。

平気そうなのは、平気だからではなく、平気を演じているからかもしれない。

自衛官は、強い人ばかりではありません。
強く見えているだけの人もいます。

そして厄介なことに、強く見える人ほど、心配されません。

いちばん見守られるべき人が、いちばん見過ごされる

そういうことが、起きるのです。

4. 厳しさと、追い詰めることは違う


誤解されたくないので、先に言っておきます。

私は、自衛隊から厳しさをなくせ、と言っているのではありません。

自衛隊には、厳しさは必要です。

命を扱う組織です。

判断のひとつが、人の生死を分けることがある。

だから、基準を下げるわけにはいきません。

安全のための指摘は、容赦なくやらなければならない。

任務のための訓練は、きつくて当然です。

それは、正しい。

でも、それと理不尽は、まるで別のものです。

  • 人格を、否定する。

  • 延々と、怒鳴り続ける。

  • 逃げ場を、ふさぐ。

  • 人前で、必要以上に辱める。

  • 相手の限界を、なかったことにする。

  • 相談すらできない空気を作る。

これは、指導ではありません。

人を追い詰める行為です。

恐ろしいのは、やっている本人に、その自覚がないことです。

「熱心に指導している」

そのつもりで、相手を削っている。

善意のつもりで、線を越えている。

だから、自分は大丈夫だ、と思っている人ほど、危ない。

鍛えることと、壊すことは違います。

  • 鍛えれば、相手は強くなる。

  • 壊せば、相手は立てなくなる

同じように汗をかかせていても、行き着く先は、正反対なのです。

5. 本当に危ない人ほど、助けてと言えない


ここに、リーダーが必ずつまずく落とし穴があります。

心が限界に近い隊員ほど、「大丈夫です」と言うのです。

迷惑を、かけたくない。
弱いと、思われたくない。
評価に、響くのが怖い。
この中で、孤立したくない。

だから、ギリギリでも、平気な顔をします

笑ってさえみせます。

あの時の、彼のように。

そして、リーダーが、その表面だけで判断する。

「大丈夫そうだな」
「まだやれるな」
「気合いの問題だな」

私が、そうでした。

返事がしっかりしていたから、大丈夫だと思った。

笑っていたから、平気だと思った。

でも、笑顔は、いちばんあてにならない

覚えておいてください。

本当に危ない状態の人ほど、分かりやすく助けを求められません。

「助けてください」と言える人は、まだ余力が残っています。

本当に追い込まれた人は、その一言すら、喉の奥でつかえて出てこない。

「大丈夫です」は、ときに、いちばん苦しい人の言葉なのです。

6. 私は、助けられなかったのかもしれない


私は、怒鳴り散らすタイプではありませんでした。

激しい指導をしたことも、誰かを意図して追い詰めたこともありません。

だから長いあいだ、自分は問題のない幹部だったと思っていました。

でも、それは、加害をしていないというだけのことだったのかもしれないと考えることもあります。

助けられたかどうかは、また別の話なのだと、今は思います。

  • もっと、声をかけられたはずです。

  • もっと、表情の変化に気づけたはずです。

  • もっと、深く話を聞けたはずです。

  • もっと、あの「大丈夫です」を、疑えたはずです。

でも、私は十分できなかった。

できなかった、と言い訳したいけれど、本当は、しなかった。

自分の仕事で、手一杯だったから。
立ち止まるのが、面倒だったから。
「大丈夫です」を信じておけば、自分がだったから。

あの隊員が、その後どうしているのか、私は知りません。

元気でいてくれていたら、いい。

ただ、それを願うことしか、もうできません。

だから、はっきりさせておきます。

私は、できていた人間として、これを書いているのではありません。
見えていなかった人間として、書いています。

立派なリーダーだったから、語っているのではない。

未熟であったがために見落としてきた悔いがあるから、書いているのです。

同じものを、これからの人に、見落としてほしくないのです。

7. リーダーが見るべきは「できているか」だけではない


では、あの時、私は何を見るべきだったのか。

今なら、分かります。

仕事の出来・不出来は、結果です。

結果が出る、その手前に、必ずサインがあります。

  • 最近、表情が変わっていないか。

  • 急に、ミスが増えていないか。

  • 挨拶や返事の調子が、変わっていないか。

  • 一人でいる時間が、増えていないか。

  • 眠れていない顔を、していないか。

  • 前より、口数が減っていないか。

  • 必要以上に、自分を責めていないか。

  • その「大丈夫です」は、本当に大丈夫そうな顔か。

これらは、書類のどこにも書いていません。

毎年記入する心情調書にも、出てきません。

普段から、その人を見ている者にしか、気づけない

号令をかけることなら、誰にでもできます。

でも、部下のわずかな翳りに気づくことは、見ようとしている人にしかできません。

リーダーの仕事は、命令を出すことだけではありません。
変化に気づくことです。

あの時の私は、命令は出していました。

でも、変化には、気づけていなかった。

8. 「自分は耐えた」を、部下に背負わせてはいけない


ここで、ひとつ、自分への戒めも込めて書きます。

昔の自衛隊で、厳しい指導を受けてきた人は多い。

私も、その一人です。

  • 怒鳴られたこともある。

  • 殴られたこともある。

  • 理不尽に、耐えたこともある。

  • 「なぜ自分が」と、何度も思った。

それでも、歯を食いしばってきた。

小学校や中学校でも、体罰は当然の如く行われていた世代でしたし、軍隊なんだから、体罰は当然と思っていた。

だから、つい、こう思ってしまうのです。

「自分も耐えたんだ。こいつも、耐えられるはずだ」

でも、これは危ない

自分が耐えられたのは、たまたま、自分にその耐久力があったからかもしれない。

あるいは、支えてくれる誰かが、そばにいたからかもしれない。

それは、誰にでもあるものではありません。

人には、それぞれ違う背景がある

違う限界の場所がある。

外からは、絶対に見えない事情がある。

自分が乗り越えた経験は、自分だけのものです。

それを物差しにして、他人を測ってはいけない。

自分の耐久力を、部下の基準にしてはいけません。

「自分が耐えた」は、自分の中にしまっておく武勇伝です。

部下に背負わせた瞬間、それはもう、指導ではなくなります。

9. 優しさとは、何もしないことではない


こういう話をすると、必ず返ってくる声があります。

「それは甘やかしだ」
「気を遣いすぎたら、部隊が緩む」
「結局、優しくしろという話だろう」

違います。

必要な指導は、します。
基準は、下げません。
間違いは、はっきり指摘します。
責任も、きちんと求めます。

それを、やめろとは一言も言っていません。

ただ、相手を壊さない

厳しさを保ちながら、壊さない。

この両立こそが、リーダーの本当の力量なんだと思います

厳しくするか、優しくするか。

そんな二択の話ではありません。

相手をちゃんと見たうえで、必要なことを、届く形で伝える

それができる人を、人は信頼します。

優しさとは、何も言わないことではありません。
相手を見たうえで、必要なことを伝える力です。

何も言わずに見過ごすのは、優しさではありません。

それは、ただの放置です。

そして、放置こそが、あの時の私のやってしまったことでした。

10. これからリーダーになる人へ


この記事を、これから人を率いる人に、いちばん読んでほしいと思っています。

  • CGS合格者

  • CGS受験生

  • 班長、小隊長、中隊長、大隊長・・・

これから、誰かの上に立つ人たちです。

その人たちに、お願いがあります。

隊員を、一括りにして見ないでください

「自衛官だから、強いはずだ」
「若いから、平気だ」
「幹部なんだから、弱音を吐くな」
「曹なんだから、それくらいやれ」

その決めつけが、一人の人間の本当の姿を、見えなくします

彼らは、自衛官である前に、一人の人間です。

それぞれに、背負ってきたものがあります。

口にできない不安があります。

もちろん、その全部を分かることなんて、できません。

人の心を、すべて見抜ける人など、どこにもいない。

私にも、できませんでした。

でも、見ようとすることは、できます

そして、部下は、そこをちゃんと見ています。

見抜いてもらえたかどうかではなく、見ようとしてくれたかどうか。

それが、伝わるのです。

リーダーに必要なのは、すべてを見抜く力ではありません。
見ようとする姿勢です。

11. 明日から、できる小さなこと


ここまで読んで、「では、どうすれば」と思った方へ。

大きなことは、要りません。

明日からできる、小さなことを書きます。

1). 「大丈夫か」で、終わらせない

「大丈夫か」と聞けば、ほとんどの隊員は「大丈夫です」と答えます。

あの時の彼も、そうでした。

だから、そこで、もう一歩だけ踏み込んでください。

最近、眠れているか。
何か、困っていることはないか。
仕事の量が、偏っていないか。
言いにくいことを、抱えていないか。

このたった一問が、誰かの逃げ場になることがあります。

「この人は、気にかけてくれている」

それが伝わるだけで、人はもう少し、踏ん張れるのです。

2). 人前で、追い詰めすぎない

人前での叱責は、必要以上に相手を追い込みます。

安全上どうしても必要な指摘と、見せしめは、まったく違う。

指導の目的を、思い出してください。

相手を、潰すためではないはずです。

相手を、よくするためのはずです。

それなら、伝える場所は、一対一でいい時があります。

3). 違和感を、放置しない

急なミス。遅刻。表情。口数の減り。孤立。

「あれ」と思ったら、その違和感を、流さないでください。

「気のせいだろう」で済ませた、あの一回。

私が、いちばん後悔しているのは、そこなのです。

4). 一人で、抱え込まない

最後は、リーダー自身への話です。

部下のすべてを、あなた一人で背負わなくていい。

必要な時は、上司に相談する。

専門部署や、相談窓口につなぐ。

それは、力不足ではありません。

部下を守るための、正しい判断です。

部下を守るために、リーダー自身も、一人で抱え込まないでください。

12. 最後に


リーダーは、人を育てる立場です。

人を、すり減らす立場ではありません。

厳しい任務に耐える部隊を、作らなければならない。

それは、その通りです。

でも、そのために、隊員の心まで壊していい理由には、なりません。

隊員は、駒ではありません

感情を持った、一人の人間です。

帰る家があり、守りたい人がいて、人に言えない悩みを抱えています。

演習場で、誰よりきびきび動いているあの一人にも、です。

強そうに見える部下の奥にも、見えない苦しさがあるかもしれない。

私は、それに気づけなかった側の人間です。

あの隊員の顔を、今も思い出します。

もう一度だけ、立ち止まって、深く聞いていれば。

そう思っても、時間は戻りません。

だから、せめて、これから人の上に立つあなたには、伝えておきたい。

私と同じ後悔を、しないでほしいのです。

どうか、強そうに見える部下の奥にある、見えない苦しさにも、目を向けてください。

あなたの、その一回の「もう一歩」が、誰かを救うかもしれないのです。

13. あなたへの質問


最後に、ひとつだけ。

あなたは今、部下の「大丈夫です」を、そのまま受け取っていませんか。

今思えば、もっと声をかければよかった。

そう思い出す顔が、あなたにもありませんか。

そして、あなたが考える「部下を壊さないリーダー」とは、どんなリーダーでしょうか。

もしよければ、コメントで聞かせてください。

あなたの言葉が、これからリーダーになる誰かの、支えになるかもしれません。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

Mr.K


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