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出雲・岡山一人旅|居酒屋のカウンターで引いた「境界線」と贈り物への「ありがとう」

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温泉で温まった私は、ノーメイクで居酒屋へと向かった。帰ってすぐ寝られることが最優先だった。

予約なしだったが、幸いカウンターの角席に通してもらえた。

本当は、居酒屋のカウンターに一人なんて慣れてないので、緊張する。
以前、家の近所で一度挑戦したことあるが、リラックスする余裕はなく、「未知のことに挑戦したい」という意気込みの方が大きかった。

翌朝、6時半の特急に乗って、慣れない山道を4時間運転することを考えると、本当はお酒を飲んでいる場合ではない。
しかし、ここは日本酒発祥の地。飲まずに帰るわけにはいかないのだ。

翌日に響かないようにしたくて、おちょこでの3種飲み比べをあきらめ、「やまたのおろち」というお酒を1合注文した。徳利なら飲み切れなくても誰かに託して帰ることはできると思ったのだ。おつまみは、お通しで十分と思い、いきなり海鮮丼をお願いすると、ちょっと大将に驚かれている気配だった。「いきなりご飯?」と言われている気がした。ですよね。でも、翌日に響いたら絶対にだめなので。私は心の中で言い訳した。


海鮮丼を食べ終える頃、角にいた私の左向いに、年上の男性二人が時間差でいらっしゃった。

しばらくして、一番奥の男性が、「このお酒あんまり口に合わなかったな。やっぱり奥出雲が間違いないよ」と大将とお話されていた。

「やまたのおろちも、なかなかいいですよ」と大将。
すかさず手前の男性が、「これ、やまたのおろちですよ」とお話されたので、自然と会話に入れた。「私もです!」と。

一番奥の男性が「口に合わないって言っちゃったお酒で悪いけど、ちょっと飲んでみますか?」と徳利を回してくださり、私も「よかったら飲みきれないのでやまたのおろちどうぞ」と徳利を回した。

やり取りする中で、一番奥の男性が「せっかくだから3人で飲みましょうよ」とおすすめの「奥出雲」を頼んでくださった。

飲み切れるか分からない、と3種飲み比べをあきらめた私は、結局5~6種飲み比べをさせてもらえた。めちゃくちゃ楽しくてうれしい夜になった。

この日楽しすぎて、ホテルに帰ってすぐ記事を書いた。

この時、書ききれなかったことがいくつかある。

この時実は、右隣りにも同年代か、少し年上の男性が座っていた。
右隣さんからは、ものすごく話しかけて欲しそうな雰囲気を感じていた。
おしぼりでペンギンを作る人を久しぶりに見た。「かわいいですね」もしくは「懐かしいですね」待ちをされているような気がした。

私は、話しかけないでおこう、と思った。
右隣さんも、私が頼んだあとすぐ日本酒を頼んでいた。
私が大将に、飲み比べはトータルで何合になるのか、1.8合は飲めるか分からないから1合にしますなどと話してたのを聞いて、彼は日本酒で話のきっかけづくりをしようとしているのかもしれないなどと勘繰った。自意識過剰かもしれないけれど。

左のお二人と「3人で飲みましょう」という雰囲気になった段階で、右隣さんは席を立った。

右隣さんとの前世を想像してみる。
たぶん、彼は、私がヨーロッパで女城主をしていた頃の敵軍の大将。彼は私を殺したために、今生で再び出会い、ちょっと残念な思いをすることでカルマを解消したのだ……。

私がヨーロッパで女城主をしていたというのを視える人に聞いたことがあるので、彼は敵軍の大将だと勝手に妄想を膨らませてみた。仲間外れにしたみたいで少し気掛かりだったもので、話しかけなかったことをそうやって自分の中で正当化した。

本当は、隣になったには深い訳があり、交流することで解消される何かがあったのかもしれない。けれども境界線を引いて自分を守ることが、その時の自分にできたベストだった。

今思うと、私はカウンターの角席だったので、左の方たちとは顔が見えて話し易かったのだと思う。偶然だけど必然。


左隣のお二人は、お二人とも干支が私より一つ若く、ほぼ一回り年上の60代の方と、ほぼ二回り年上の70代の方だった。

一回りさんと二回りさんは、雰囲気とお顔が似ていて、会話が弾んでいた。前世兄弟かななどと想像した。

私はといえば、
「えっと、さっきのおいしいやつが、なんでしたっけ?」
「お口に合わなかったのが、なんでしたっけ?」
「で、今いただいてるのが?」

と何度も聞き、目の前にずらっと並ぶ酒瓶を見ながら必死で覚えようとした。



スマホのメモ機能を使うことを思いつかなかった辺り、初対面のおじさまたちと会話していること自体が楽しかったのかもしれない。

だんだんみんな酔いが回ってきて、このお酒がなんでしたっけ?って聞くと
「もう、わかんなくなりましたよね。とにかく日本酒ですよね」
っておっしゃってて面白かった。

「日本酒最高ですね」って日本酒最高を分かち合えたのも嬉しかった。

二回りさんは、大将にお酒に合うおすすめのおつまみを聞いて、多めに頼んで一回りさんと私にまで分けてくださった。「わぁ!いいんですか!うれしい」って喜んで素直に甘えた。




でも一回りさんは、「ごちそうになってばかりで悪い」とすぐに別のお料理やお酒を頼み返していて、私も勧められたら、ありがたくいただいていた。

私も何か頼んだほうがいいかな?と思いつつタイミングがつかめなかった。
お話は楽しいしお酒やおつまみを勧められたら是非いただきたいという気持ちと、早く帰らなければと焦る気持ちとがせめぎあい、自分から積極的に頼むという行動に踏み切れなかったように思う。

ようやく、私は「次の日が早いので」と一足早く席を立ち会計を済ませた。一回りさんから、「(二回りさんに)しっかりお礼を言ってくださいね」と強めに促された。勝手に別会計にしていることにも一言ありそうな雰囲気を感じた。

私は一回りさんと二回りさん、両方に本当にありがとうございましたとお礼を申し上げた。二回りさんは、「一人でさみしい夜が楽しくなりましたよ。こちらこそありがとうございました」とにこやかに言ってくださった。

それでも一回りさんの強めの言葉は私の中で、時間が経つほどに心に深く刺さる感覚があり、なかなか消えなかった。多分、一回りさんの中でも、「あの女性、全然支払わなかったな」もしくは「言い過ぎたな」と、なんらかのモヤモヤをしばらく抱えていたのかもしれない。人間関係において相手に何か消化できない思いを持っていると、その思いは見えなくても響き合うものじゃないかなと思っている。

私は、一週間経つ頃、マナカードの「アヴァ」を思い出していた。

古代ハワイの英知「マナカード」 アヴァ 
(著作権保護のルールのためsampleの文字を入れています)

「供物か生贄か」の意味を持つこのカードには、気前よくお酒を注ぐ人物と、注がれるのを見ている人物が描かれている。
相手が見返りを求めていると思えば返さなければいけないし、純粋な贈り物であれば、ありがとうで十分だ、というもの。

これは、見返りを求めるのが悪く、求めないのが良いという話ではなく、自分や相手がどういうつもりでいるかを意識していたほうがすれ違いがなくて悲しまないというもの。

二回りさんの笑顔は、純粋な見返りを求めない贈り物だった。そう確信できたとき、自分の「ありがとうございます」の態度に、ようやく納得できた。

一回りさんの誠実な距離感も、また勉強になった。一回りさんは受け取ったらちゃんとお返しすることを大切にしていたのだから、私も何かお返しすればよかったとも思えた。

見返りを期待されていると感じると、受け取ること自体が怖くなる。だからこそ、私は話しかけて欲しそうだった右隣さんには境界線を引いたのだった。

そして、二回りさんからは純粋な贈り物をいただいたと感じて、心が温かくなり、素直にありがとうございますと甘えられたのだと思う。

一回りさんの気持ちは二回りさんと同一視してしまっていたので、別れ際まで正直気付けていなかった。だから意外な反応にモヤモヤが残ったのだ。

一回りさんから「二回りさんへしっかりお礼を言うように」と求められたとき、一回りさんにもごちそうになっているからお礼を伝えたいと思った。

でも、「おじさまもありがとうございました」は失礼だよな、と口ごもった。なんて言ったらいいんだろうと迷って、「大変ごちそうになりました。ありがとうございました」とそれぞれに伝えたつもりだが、一回りさんへの感謝はちゃんと伝わっただろうか。

「お兄さんも、ありがとうございました」と言えばよかったことに後から気づいた。次からはそうする(笑)

ホテルに帰ってから自分がノーメイクだったことを思い出した。


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