ホン・サンス『自然は君に何を語るのか』ある詩人の地獄の恋人実家挨拶イベント
2025年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。ホン・サンス長編33作目。2020年からカルロ・シャトリアンが始めた(ほぼ)毎年コンペに呼ぶ儀式は、取り合えずトリシア・タトルも引き継いだようだ。そして、今年はカンヌで新作の上映はなかったのだが、作品ではなく監督本人が審査員として登場するというコントみたいな出来事が起こっていたのも記憶に新しい。物語は若き詩人の主人公が、3年間交際している恋人を車で送っている際に、偶然か必然か彼女の実家前を通った場面から始まる。意外にも大きかったその家を見た詩人は実家に案内され、偶然玄関先に出ていた彼女の父親に挨拶することになり、なんだかんだ仕事に出ていた彼女の母親の帰りを待つことになり、裏山から見える日の入りが綺麗だから見ていくことになり、実は月も綺麗だからと言われ云々。弁護士の息子である主人公は経済的に親から独立しようとしているが、リッチな義実家の面々は事あるごとに弁護士の父親を引き合いに出し、詩人で食っていけるの?→まぁ困ったら実家に帰れるかとか、いつも高級な酒飲んでるでしょ(実家で)、みたいなダルい絡み方をしてくる。結婚式場に勤めて必要な分だけ稼ぎつつ基本は詩人でいたいとする主人公に対して、仕事しながら趣味で詩作をする恋人母の生活スタイルを引き合いに出し、稼ぎの少ない主人公が拘りを持って乗る中古車を揶揄して全員でイジっている。表面上は味方っぽいムーブをしている恋人父が裏では一番イジってたというのが判明するのも厳しい。恋人実家挨拶イベントの一番嫌なとこが全部乗せされてるのでは。まぁ35歳にもなってボンクラ感のある中途半端な自称詩人の主人公に大事な娘は任せられないか。困ったら弁護士の父親を頼りますと答えてもNGだと思うので、自称詩人の時点で詰んでます。

・作品データ
原題:그 자연이 네게 뭐라고 하니
上映時間:109分
監督:Hong Sang-soo
製作:2025年(韓国)
・評価:70点
・ベルリン映画祭2025 その他の作品
★コンペティション部門選出作品
1 . レオノール・セライユ『Ari』幼稚な男が自分と向き合うナイーブな映画
3 . ガブリエル・マスカロ『ブルー・トレイル』ブラジル、"未来はみんなのために…"
4 . ミシェル・フランコ『ドリームズ』アメリカとメキシコ、独占欲を巡る恋
6 . ヴィヴィアン・チュウ『ガールズ・オン・ワイヤー』中国、ワイヤーを使えば人間も空を飛べる
7 . レベッカ・レンキェヴィチ『Hot Milk』スペインのビーチで毒親と妖精に囲まれて
8 . ルシール・アザリロヴィック『The Ice Tower』少女が見た"雪の女王"と不在の母親
9 . メアリー・ブロンスタイン『If I Had Legs I'd Kick You』ワンオペ母の"アンカット・ダイヤモンド"
10 . ラドゥ・ジュデ『Kontinental '25』ルーマニア、口ばかりで行動に移せない人々の肖像
11 . Huo Meng『Living the Land』中国、麦畑を囲む春夏秋冬
12 . Iván Fund『The Message』アルゼンチン、動物と交信できる少女の無邪気なロードムービー
13 . Johanna Moder『Mother's Baby』オーストリア、この子は私の子…?
14 . エレーヌ・カテ&ブリュノ・フォルザニ『Reflection in a Dead Diamond』ユーロスパイ映画の4次元フラクタル
15 . Lionel Baier『The Safe House』五月革命の裏側で生きていた家族の思い出
16 . カトライナ・ゴルノスタイ『Timestamp』ウクライナ、戦時下の学校教育について
17 . ホン・サンス『自然は君に何を語るのか』ある詩人の地獄の恋人実家挨拶イベント
18 . Frédéric Hambalek『What Marielle Knows』ドイツ、両親の行動が覗ける力を手にした娘
19 . Ameer Fakher Eldin『Yunan』"あなたは忘れ去られるだろう、まるで存在などなかったかのように"
★パースペクティブス部門選出作品
2 . Ernesto Martínez Bucio『The Devil Smokes (And Saves the Burnt Matches in the Same Box)』メキシコ、子供だけの家に悪魔がやって来る
3 . Chu Chun-Teng『Eel』台湾、孤島に暮らす男と謎の女
4 . Bálint Dániel Sós『Growing Down』ハンガリー、あの娘を殺しちゃったかもしれない
6 . Urška Djukić『Little Trouble Girls』スロヴェニア、ある少女の性的発見/探索
10 . Tanushre Das&Saumyananda Sahi『Shadowbox』インド、PTSDの夫を支える家族たち
11 . ヴァランティーヌ・キャディック『That Summer in Paris』フランス、田舎から出てきただけなのに…
12 . Paula Tomás Marques『Two Times João Liberada』ジョアン・リベラーダとmale-gazedな世界
13 . Arnaud Dufeys&Charlotte Devillers『We Believe You』ベルギー、暴力夫に立ち向かう日
14 . Liryc Dela Cruz『Where the Night Stands Still』豪邸を相続した姉と再会した弟妹たち
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