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Bálint Dániel Sós『Growing Down』ハンガリー、あの娘を殺しちゃったかもしれない

2025年ベルリン映画祭パースペクティブス部門選出作品。ショーシュ・バーリント・ダーニエル(Sós Bálint Dániel)長編一作目。主演は現代ハンガリー映画史に欠かせない映画監督の一人ハイドゥ・サボルチ、俳優としての活動歴も長いことを今更知る。妻を亡くしたシャーンドルが二人の息子を育てながらシングルマザーのクラーラと付き合っている。シャーンドルの息子たち、高校生のジガと12歳のデーネシュはいつも喧嘩していて、クラーラの娘シャーリ(10歳くらい)もその悪ノリに参加している。シャーリとデーネシュの合同誕生会で、悪ノリが頂点に達したと見えたとき、シャーリが空のプールに落ちて重傷を負う。しかも、デーネシュが突き飛ばしたかのように見えるところにいたのだ。その瞬間を唯一目撃していたシャーンドルは、クラーラへの気持ちと、衝動的に突き飛ばしかねないデーネシュを守りたい気持ちで揺れ動く云々。撮影が非常に上手く、霧で視界不良になったようなモノクロ映像、世界が自分に敵対しているかのようなデーネシュの空想空間などを効果的に使用して、映画自体が信頼できない語り手のように物語を紡ぐことで、緊張感を持続させている。一応の主人公はシャーンドルで、普通に考えたらデーネシュがやったかもしれないと感じながら秘匿し、クラーラとこれまでの関係を維持するという不可能なことをやろうと四苦八苦する姿を描いているのだが、本当の主人公はデーネシュだろう。自分でも衝動的にやりかねないと思っていて、事件の記憶が曖昧で、強権的な父親への反発と亡くなった母親への恋慕も加わって、罪悪感と未来の不透明感に押しつぶされそうになっている。この二人の関係性は実に上手く描けてると思うのだが、常に長兄ジガの存在を忘れているのが不思議でならない。事件に至るまでの背景を導入するには効率的な人物だが、それ以降は全く必要ないといった具合に物語から締め出されている。そのへんをもうちょっと丁寧に描いてくれたら、もう少し好きになれたと思う。

・作品データ

原題:Minden rendben
上映時間:86分
監督:Sós Bálint Dániel
製作:2025年(ハンガリー)

・評価:70点

・ベルリン映画祭2025 その他の作品

★コンペティション部門選出作品
1 . レオノール・セライユ『Ari』幼稚な男が自分と向き合うナイーブな映画
3 . ガブリエル・マスカロ『The Blue Trail』ブラジル、"未来はみんなのために…"
4 . ミシェル・フランコ『Dreams』アメリカとメキシコ、独占欲を巡る恋
6 . ヴィヴィアン・チュウ『Girls on Wire』中国、ワイヤーを使えば人間も空を飛べる
7 . レベッカ・レンキェヴィチ『Hot Milk』スペインのビーチで毒親と妖精に囲まれて
8 . ルシール・アザリロヴィック『The Ice Tower』少女が見た"雪の女王"と不在の母親
9 . メアリー・ブロンスタイン『If I Had Legs I'd Kick You』ワンオペ母の"アンカット・ダイヤモンド"
10 . ラドゥ・ジュデ『Kontinental '25』ルーマニア、口ばかりで行動に移せない人々の肖像
11 . Huo Meng『Living the Land』中国、麦畑を囲む春夏秋冬
12 . Iván Fund『The Message』アルゼンチン、動物と交信できる少女の無邪気なロードムービー
13 . Johanna Moder『Mother's Baby』オーストリア、この子は私の子…?
14 . エレーヌ・カテ&ブリュノ・フォルザニ『Reflection in a Dead Diamond』ユーロスパイ映画の4次元フラクタル
16 . カトライナ・ゴルノスタイ『Timestamp』ウクライナ、戦時下の学校教育について
17 . Lionel Baier『The Safe House』五月革命の裏側で生きていた家族の思い出
18 . Frédéric Hambalek『What Marielle Knows』ドイツ、両親の行動が覗ける力を手にした娘
19 . Ameer Fakher Eldin『Yunan』"あなたは忘れ去られるだろう、まるで存在などなかったかのように"

★パースペクティブス部門選出作品
2 . Ernesto Martínez Bucio『The Devil Smokes (And Saves the Burnt Matches in the Same Box)』メキシコ、子供だけの家に悪魔がやって来る
3 . Chu Chun-Teng『Eel』台湾、孤島に暮らす男と謎の女
4 . Bálint Dániel Sós『Growing Down』ハンガリー、あの娘を殺しちゃったかもしれない
6 . Urška Djukić『Little Trouble Girls』スロヴェニア、ある少女の性的発見/探索
10 . Tanushre Das&Saumyananda Sahi『Shadowbox』インド、PTSDの夫を支える家族たち
11 . ヴァランティーヌ・キャディック『That Summer in Paris』フランス、田舎から出てきただけなのに…
12 . Paula Tomás Marques『Two Times João Liberada』ジョアン・リベラーダとmale-gazedな世界
13 . Arnaud Dufeys&Charlotte Devillers『We Believe You』ベルギー、暴力夫に立ち向かう日
14 . Liryc Dela Cruz『Where the Night Stands Still』豪邸を相続した姉と再会した弟妹たち

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