Urška Djukić『Little Trouble Girls』スロヴェニア、ある少女の性的発見/探索
傑作。ベルリン映画祭パースペクティブス部門選出作品。2026年アカデミー国際長編映画賞スロヴェニア代表。ウルシュカ・ジュキッチ(Urška Djukić)長編一作目。Émilie Pigeardと共に撮った短編『Granny's Sexual Life』がアヌシー映画祭やセザール賞などの短編アニメ賞を総なめしており、非常に期待される監督の初長編だったようだ。本作品の主人公は内気な女子高生ルチア。映画は彼女がカトリック系の女子校で合唱団に入団する場面から始まる。上目遣いでオドオドしながら、それでも興味津々に世界を観察する彼女の目線を体感するように、映画はほとんどの場面でクローズアップを使用している。合唱団で、彼女は人気者の先輩アンナマリアとその友人たちと親しくなる。彼女たちは早熟でセックスの歓びを語り、未だに初潮すら迎えていないルチアはその言葉の意味を捉えかねているが、その言葉に導かれるように性的発見/探求を開始する。生徒たちは隣国イタリアの修道院へ合宿に行くことになり、そこは改修工事のためのイタリア人労働者が中庭で筋肉に汗を垂らして働いているという刺激強めな環境で、ルチアの探求は加速していく云々。全編通して軽めなタッチで進んでいくのは、最終的なゴールの"流動性"を担保するためだろう。この手の作品は選んだ場所に固執しがちなイメージもあるが、本作品にはそういった不健康さは一切ない。その一例として、母親との関係性の描き方の上手さがある。叔母にもらったという口紅を"まだ早い"という理由で取り上げられた次のシーンで、ソファで寝る父親の鼾で夜中に起きた二人が流れっぱなしのTVの前で映画を見てアイスを食べる様が描かれる。この"理解はしてるけど納得はしてない"くらいの距離感を保てるルチアだからこそ、その後の探求に風通しの良さというか健康的な印象すら感じさせるのだろう。映画で描かれるのは短い時間における意識の小さな変化だが、時間が経つほどに大きな変化になっていくだろうことが分かるラストも健康的で良い。
・作品データ
原題:Kaj ti je deklica
上映時間:89分
監督:Urška Djukić
製作:2025年(スロヴェニア, イタリア等)
・評価:80点
・ベルリン映画祭2025 その他の作品
★コンペティション部門選出作品
1 . レオノール・セライユ『Ari』幼稚な男が自分と向き合うナイーブな映画
3 . ガブリエル・マスカロ『The Blue Trail』ブラジル、"未来はみんなのために…"
4 . ミシェル・フランコ『Dreams』アメリカとメキシコ、独占欲を巡る恋
6 . ヴィヴィアン・チュウ『Girls on Wire』中国、ワイヤーを使えば人間も空を飛べる
7 . レベッカ・レンキェヴィチ『Hot Milk』スペインのビーチで毒親と妖精に囲まれて
8 . ルシール・アザリロヴィック『The Ice Tower』少女が見た"雪の女王"と不在の母親
9 . メアリー・ブロンスタイン『If I Had Legs I'd Kick You』ワンオペ母の"アンカット・ダイヤモンド"
10 . ラドゥ・ジュデ『Kontinental '25』ルーマニア、口ばかりで行動に移せない人々の肖像
11 . Huo Meng『Living the Land』中国、麦畑を囲む春夏秋冬
12 . Iván Fund『The Message』アルゼンチン、動物と交信できる少女の無邪気なロードムービー
13 . Johanna Moder『Mother's Baby』オーストリア、この子は私の子…?
14 . エレーヌ・カテ&ブリュノ・フォルザニ『Reflection in a Dead Diamond』ユーロスパイ映画の4次元フラクタル
16 . カトライナ・ゴルノスタイ『Timestamp』ウクライナ、戦時下の学校教育について
17 . Lionel Baier『The Safe House』五月革命の裏側で生きていた家族の思い出
18 . Frédéric Hambalek『What Marielle Knows』ドイツ、両親の行動が覗ける力を手にした娘
19 . Ameer Fakher Eldin『Yunan』"あなたは忘れ去られるだろう、まるで存在などなかったかのように"
★パースペクティブス部門選出作品
2 . Ernesto Martínez Bucio『The Devil Smokes (And Saves the Burnt Matches in the Same Box)』メキシコ、子供だけの家に悪魔がやって来る
6 . Urška Djukić『Little Trouble Girls』スロヴェニア、ある少女の性的発見/探索
10 . Tanushre Das&Saumyananda Sahi『Shadowbox』インド、PTSDの夫を支える家族たち
11 . ヴァランティーヌ・キャディック『That Summer in Paris』フランス、田舎から出てきただけなのに…
13 . Arnaud Dufeys&Charlotte Devillers『We Believe You』ベルギー、暴力夫に立ち向かう日
14 . Liryc Dela Cruz『Where the Night Stands Still』豪邸を相続した姉と再会した弟妹たち
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければサポートお願いします!新しく海外版DVDを買う資金にさせていただきます!