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ヴァレンティンヌ・カディック 『THAT SUMMER IN PARIS』フランス、田舎から出てきただけなのに…

2025年ベルリン映画祭パースペクティブス部門選出作品。短編『夏休み』がMyFFF2024で上映済み、主演は本作品と同じブランディーヌ・マデクが演じている。プロデューサーに河瀨直美や深田晃司の作品で有名な澤田正道が参加している。物語は2024年8月、ノルマンディからオリンピック期間中のパリに降り立ったブランディーヌには三つの目的があった。一つ目はオリンピックの水泳競技を観戦しに行くこと、二つ目は長らく会えていなかった異母姉ジュリーと再会すること、三つ目はかつての恋人カロリーヌに会うことである。しかし、大荷物を持ったままでは会場に入れず、滞在中に年齢制限を超えたことでユースホステルから追い出され、スケジュールが狂ってしまう。予定を前倒してジュリーに会いに行くと、仕事で忙しく終始不機嫌なジュリーとオリンピック抗議活動で忙しい元夫ポールのせいで彼らの娘(ブランディーヌからすると姪)アルマの世話を頼まれ、身を置く空間はあっても居場所はないという状態へジョブチェンジする云々。序盤はオリンピックを見に来たのに入れない不条理コメディみたいな導入だったが、次第に"オリンピックに積極的に参加する人"、"消極的にオリンピックを楽しむ人"、"オリンピックに反対し抗議する人"の視点が盛り込まれていき、短い開催期間の空気感を多角的に捉えるような作品になっていったのは興味深い。オリンピックにカリカリする都会人のコミュニティの中では、割と呑気にオリンピックをエンジョイするつもりで来たブランディーヌに居場所などなく不利なのだが、それでも三つの視点が共存するのは、掴みどころのない雰囲気のブランディーヌが、ベリル・ガスタルデッロ選手の生き様に感銘を受け、自分の人生の指針を再設定しようとしているからに他ならない(だからこそ、主人公の視点は揺らがない)。ただ、オリンピックに向けられた三つの視点をパーソナルな問題に書き換える構造が上手いと言っていいのかは抵抗がある。特にポールはオリンピックを理由にホームレスが排除されたことに抗議しており、この視点をパーソナルな問題に対する"社会的規範への抑圧"として置かれるものに置換して良いのかは疑問が残る。構成が上手いから余計に怖いわ。それにしても仏語圏の人の作るオリンピック映画ビターすぎる映画が多いな。こりゃカンヌじゃ上映できないわ(適当)。

・作品データ

原題:Le rendez-vous de l’été
上映時間:75分
監督:Valentine Cadic
製作:2025年(フランス)

・評価:70点

・ベルリン映画祭2025 その他の作品

★コンペティション部門選出作品
1 . レオノール・セライユ『Ari』幼稚な男が自分と向き合うナイーブな映画
3 . ガブリエル・マスカロ『The Blue Trail』ブラジル、"未来はみんなのために…"
4 . ミシェル・フランコ『Dreams』アメリカとメキシコ、独占欲を巡る恋
6 . ヴィヴィアン・チュウ『Girls on Wire』中国、ワイヤーを使えば人間も空を飛べる
7 . レベッカ・レンキェヴィチ『Hot Milk』スペインのビーチで毒親と妖精に囲まれて
8 . ルシール・アザリロヴィック『The Ice Tower』少女が見た"雪の女王"と不在の母親
9 . メアリー・ブロンスタイン『If I Had Legs I'd Kick You』ワンオペ母の"アンカット・ダイヤモンド"
10 . ラドゥ・ジュデ『Kontinental '25』ルーマニア、口ばかりで行動に移せない人々の肖像
11 . Huo Meng『Living the Land』中国、麦畑を囲む春夏秋冬
12 . Iván Fund『The Message』アルゼンチン、動物と交信できる少女の無邪気なロードムービー
13 . Johanna Moder『Mother's Baby』オーストリア、この子は私の子…?
14 . エレーヌ・カテ&ブリュノ・フォルザニ『Reflection in a Dead Diamond』ユーロスパイ映画の4次元フラクタル
16 . カトライナ・ゴルノスタイ『Timestamp』ウクライナ、戦時下の学校教育について
17 . Lionel Baier『The Safe House』五月革命の裏側で生きていた家族の思い出
18 . Frédéric Hambalek『What Marielle Knows』ドイツ、両親の行動が覗ける力を手にした娘
19 . Ameer Fakher Eldin『Yunan』"あなたは忘れ去られるだろう、まるで存在などなかったかのように"

★パースペクティブス部門選出作品
2 . Ernesto Martínez Bucio『The Devil Smokes (And Saves the Burnt Matches in the Same Box)』メキシコ、子供だけの家に悪魔がやって来る
6 . Urška Djukić『Little Trouble Girls』スロヴェニア、ある少女の性的発見/探索
10 . Tanushre Das&Saumyananda Sahi『Shadowbox』インド、PTSDの夫を支える家族たち
11 . ヴァランティーヌ・キャディック『That Summer in Paris』フランス、田舎から出てきただけなのに…
13 . Arnaud Dufeys&Charlotte Devillers『We Believe You』ベルギー、暴力夫に立ち向かう日
14 . Liryc Dela Cruz『Where the Night Stands Still』豪邸を相続した姉と再会した弟妹たち

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