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後継者の経営は、「自分の経営」を引き受けるところから始まる―先代の正解ではなく、自分で決める感覚を取り戻せるか

「最近、少し楽になったんです。」

3年間伴走してきた後継者が、ある日そう言いました。

会社の状況が急激に良くなったわけではありません。
売上が倍になったわけでもありません。
借入がゼロになったわけでもありません。

それでも本人は以前より落ち着いていました。

なぜか。

自分で判断できるようになったからです。


事業承継後の後継者と話していると、ある共通点があります。

会社を継いだ瞬間から、
社長
になります。

しかし、
経営者にはすぐになれません。

肩書は社長です。
代表権もあります。
株も持っています。
最終決裁権もあります。

それでも本人の中では、
「本当にこの判断でいいのだろうか」
という感覚が消えません。


なぜなら、
比較対象が常に先代だからです。

先代は何十年も会社を経営してきた。
社員からも信頼されている。
取引先との関係も深い。
銀行との付き合いも長い。

当然ながら経験値は圧倒的です。

だから後継者は無意識のうちに考えます。


先代ならどうしただろうか。
先代なら失敗しなかったのではないか。
自分の判断は間違っているのではないか。


第3回では、
過去の成功体験が会社を止める
という話をしました。

実は後継者自身も同じです。

先代の成功体験が、
自分の判断を縛ることがあります。


一方で社員との関係も簡単ではありません。

第4回では、
当事者意識は構造から生まれる
という話をしました。

しかし承継直後の後継者は、

社員を信頼したい。
でも任せるのが怖い。
失敗したらどうしよう。

そう感じています。


結果として、

自分で抱える。
自分で考える。
自分で決める。
自分でフォローする。

という状態になります。

そして、
第5回でお話しした
経営者の孤独
が生まれます。


ある後継者もそうでした。

事業承継から数年。
会社には長い歴史があります。
社員もいます。
取引先との関係も続いています。

外から見れば安定している会社でした。

しかし最初に会った時、
本人はこう言いました。

「何から手を付ければいいのか分からないんです。
ただ、このままじゃダメなことは分かっている。」

数字はある。
会議もある。
責任者もいる。

それでも会社全体が見えていませんでした。

資金繰りへの不安。
会議で結論が出ない状況。
責任者へ任せきれない悩み。
先代との関係。

様々な課題が重なり、
まさに、

会社はあるのに経営が見えない状態

でした。

そこで行ったことは、
特別な経営戦略ではありません。

仕事の流れを整理する。
会議を変える。
数字を見える化する。
資金繰りを整理する。
責任範囲を明確にする。
判断基準をつくる。

一つずつ積み上げていきました。

すると変化が起きました。

責任者が考えるようになった。
会議で提案が出るようになった。
投資判断ができるようになった。
役割分担も整理された。

そして何より、

本人が迷い続けなくなったのです。

もちろん、
今でも悩みます。

経営に正解はありません。
新しい課題も次々と出てきます。

それでも以前と違うのは、

判断できる

ことです。

私はこれまで多くの後継者を見てきました。

その成長の瞬間は、

知識が増えた時ではありません。
売上が伸びた時でもありません。

自分で決めた判断を引き受けられるようになった時
です。


自分で決めた判断を引き受けられるようになった瞬間
です。


第7回では、
正解がないから決められない
という話をしました。

しかし実際には、
経営者に必要なのは正解ではありません。

自分なりの判断基準です。


売上なのか。
粗利なのか。
キャッシュなのか。
投資余力なのか。
社員の成長なのか。
会社の未来なのか。


その優先順位を決める。

そして、

自分で決める。
結果も引き受ける。

これが経営ではないでしょうか。


年間400件を超える経営相談に関わる中で感じることがあります。

後継者が苦しむ理由は、
能力不足ではないことが多い。

知識不足でもありません。

むしろ、

自分の経営を引き受けられていない状態

の方が深刻です。


先代の経営ではなく、
社員の期待でもなく、
銀行の都合でもなく、
コンサルタントの答えでもない。


自分はどんな会社にしたいのか。
何を守りたいのか。
何に投資したいのか。
どこまで挑戦するのか。


それを決めるのは、
経営者自身です。


事業承継とは、

会社を引き継ぐことではありません。
自分の経営を引き受けることです。


このマガジンでは、

会議
お金
組織
判断基準
孤独
投資
経営チーム

様々なテーマを書いてきました。

しかし本当にお伝えしたかったことは一つです。


経営者は、一人で抱え込まなくていい。

ただし、

最後の判断は自分でできる状態になる必要がある。


もし今、

何を優先すればいいか分からない。
誰にも本音を話せない。
この判断でいいのか迷っている。

そんな状況であれば、

必要なのは答えではないかもしれません。

まずは、

自分で判断できる状態をつくること

なのかもしれません。


はじめての方へ

私は主に、

事業承継後の後継者、
第二創業フェーズの経営者、
新規事業責任者の伴走支援を行っています。

経営の正解を提示するのではなく、

頭の中を整理し、
判断基準を明確にし、

経営チームが機能する状態をつくることを重視しています。

経営者は最後に決める立場です。

だからこそ、

一人で抱え込まなくて済む意思決定環境

が必要だと考えています。

もし今、

「自分の経営に切り替えたい」
「判断に自信を持ちたい」
「経営チームを機能させたい」

そんな状況であれば、お気軽にご相談ください。

※事例は一部加工しています。実在の企業・人物とは関係ありません。

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熊谷 篤
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士

承継・第二創業・新規事業の現場で、経営者が判断できる状態をつくる伴走支援を行っています。

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