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社長の孤独は、なぜ生まれるのか―誰にも本音を話せなくなる瞬間

「正直、どうしたらいいか分からないんです。」

後継者との面談で、ふと出てきた言葉でした。

会社は赤字ではありません。
社員もいます。
取引先との関係も続いています。
大きな問題が起きているわけでもありません。

それでも本人は苦しそうでした。

なぜなら、

誰にも本音を話せなくなっていた

からです。


事業承継後の後継者や第二創業の経営者と話していると、ある共通点があります。

社員には言えない。
家族にも言えない。
銀行にも言えない。

だから、一人で抱える。

という状態です。


社員に話せば不安を与えるかもしれない。
幹部に話せば弱く見られるかもしれない。
家族に話しても経営の話は伝わりにくい。
銀行には強い姿を見せたい。
取引先にも不安は見せられない。

すると、経営者は少しずつ本音を隠すようになります。


もちろん相談相手がまったくいないわけではありません。

税理士はいます。
社労士もいます。
銀行担当者もいます。
取引先の社長もいます。

しかし、

「この判断で本当にいいのか」
「失敗したらどうしよう」
「自分が社長として向いているのだろうか」

という本音までは話せないことが少なくありません。


ある後継者もそうでした。

承継して数年。

会社は続いていました。

売上もあります。
社員も頑張っています。

しかし本人は言いました。

「何を優先したらいいか分からないんです。」

投資したい案件がある。
人も採りたい。
新しい取り組みもしたい。

しかし資金には限りがある。

失敗した経験もある。
借入返済もある。
社員の生活も背負っている。

だから決められない。


第2回では、

判断基準がない会議は決まらない

という話をしました。

実は経営者の孤独も似ています。

答えがない状態で、

最後の責任だけが自分に集まる

からです。


経営は選択の連続です。

やるか。
やらないか。

投資するか。
見送るか。

採用するか。
待つか。

どちらにもリスクがあります。

しかも結果は後にならないと分かりません。

だから苦しいのです。


ここで誤解してほしくないことがあります。

孤独だから弱いわけではありません。
むしろ真面目な経営者ほど孤独になります。

責任感がある。
社員を守りたい。
会社を良くしたい。
失敗したくない。

そう考えるほど、一人で抱え込みやすくなります。


しかし皮肉なことに、

一人で抱え込むほど判断の質は下がる

ことがあります。

なぜなら人は、自分の頭の中だけで考え続けると視野が狭くなるからです。

見えているつもりでも、
同じ論点を何度も回っていることがあります。

本当の課題ではなく、
目の前の不安に引っ張られていることもあります。


その後継者とも、最初にやったことはアドバイスではありませんでした。

答えを出したわけでもありません。

まず、

頭の中にある論点を全部出してもらいました。

何が不安なのか。
何を迷っているのか。
何を優先したいのか。
何を恐れているのか。

一つずつ整理していきました。


すると途中で本人が言いました。

「自分は投資が怖いんじゃなくて、失敗した時に社員へ説明できないことが怖かったんですね。」

私はその言葉がとても印象に残っています。

問題は投資案件ではありませんでした。

本人も気づいていなかった不安だったのです。


経営者が必要としているのは、

答えを持っている人

とは限りません。

むしろ、

自分の考えを整理できる相手

であることの方が多いのです。


年間400件を超える経営相談に関わる中で感じることがあります。

経営者の問題は、
知識不足ではないことが多い。

むしろ、

頭の中が整理できていない状態
の方が深刻です。


社員には言えない。
家族にも言えない。
銀行にも言えない。

だから孤独になる。

しかし孤独の正体は、

一人で経営していることではありません。
一人で考え続けていること

です。


もし今、

「誰にも本音を話せない」
「相談相手はいるのに、相談できない」
「何を優先すべきか分からない」

そう感じているなら、

必要なのは答えではないかもしれません。

まずは、

頭の中を整理できる環境

なのかもしれません。


次回は、

「売上は伸びたのに、お金が残らない」
―利益ではなくキャッシュで考える経営

についてお話しします。


はじめての方へ

私は主に、事業承継後の後継者、第二創業フェーズの経営者、新規事業責任者の伴走支援を行っています。

経営の正解を提示するのではなく、頭の中を整理し、判断基準を明確にし、経営チームが機能する状態をつくることを重視しています。

誰にも相談できない。
本音を話せない。
何を優先すればいいか分からない。

そんな時ほど必要なのは、気合いや精神論ではなく、思考の整理です。

もし今、

「頭の中が整理できない」
「一人で抱え込んでいる」
「自分の判断軸を持ちたい」

そんな状況であれば、お気軽にご相談ください。

※事例は一部加工しています。実在の企業・人物とは関係ありません。

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熊谷 篤
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士

承継・第二創業・新規事業の現場で、経営者が判断できる状態をつくる伴走支援を行っています。

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