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91.ウイリアム征服王

画像は以下のサイトから転載。


ウイリアムの血統

エドワード懺悔王(一〇〇四年ごろ~)は、追放された甥エドワード・アシリング(一〇一六年~)が生きていると知り、一〇五六年にイングランドに呼び戻し、自身の後継者としました。

エドワード・アシリングを追放したのは、当時イングランドを征服したデンマーク王クヌートです。クヌートが死んだのでエドワードはエドワードを呼び戻そうとしたのです。

一〇五七年、ブルガリアのアガサは夫のエドワード・アシリングとともに子供たちを連れてイングランドを訪れましたが、到着直後に未亡人となってしまいました。

なのでエドワード懺悔王は、これまた甥のエドガー・アシリング(一〇五二年ごろ~)を後継者としました。

ですがエドガーは、まだ王となるタイミングではありませんでした。貴族たちの支持をしっかり得られていなかったのです。

後継者問題のごたごたは結果として、ノルマンディー公ウィリアム一世(一〇二八年ごろ~)の侵略を招くことになりました。今回の主人公、ウイリアム征服王です。

ヘイスティングスでの決戦の最中に兜を脱ぐウィリアム征服王の様子 (バイユーのタペストリーより)

ウイリアム征服王は、ノルマンディー公リシャール一世(九三三年~)の曾孫です。

リシャール一世の祖父はヴァイキングのロロ(八四六年ごろ~)で、ノルマンディー公国の創始者です。

ロロは以前お伝えしたとおり、ギヨーム・ド・ジェローヌ(七五五年ごろ~)の曾孫ポッパ・ド・バイユーと結婚しました。

つまりウイリアム征服王はダビデの血統です。またしてもダビデです。

クリュニーとの絡み

ブルターニュとノルマンディーの対立は十一世紀までつづきました。

https://www.travel-zentech.jp/world/map/france/Map-Region-Bretagne.htmより転載。上にあるのはもちろんイギリス。

一〇六四年から一〇六五年にかけての両国の戦争は、ウイリアム征服王がブルターニュ公コナン二世(一〇三三年ごろ~)に対する叛乱軍を支援した結果起こりました。

ウイリアム征服王はイングランド侵攻の際、娘のコンスタンスをブルターニュのアラン四世(一〇六〇年ごろ~)と結婚させました。ブルターニュとまで敵対してしまうと二正面戦争になってしまうからです。

一〇九〇年、コンスタンスは死んでしまいました。その後の一〇九三年、アラン四世はアングロ・ノルマンの影響力に対抗するため、隣国フランスのアンジュー伯フルク四世(一〇四三年ごろ~)の娘エルメンガルドと結婚し直しました。

アンジューのエルメンガルドは以前、アリエノール・ダキテーヌの祖父であるアキテーヌ公ギヨーム九世と結婚していました。

アリエノール・ダキテーヌは、はじめフランス国王ルイ七世の王妃になり、のちにイングランド国王ヘンリー二世の王妃になった人です。

そしてクリュニー修道院を創建したのは、アリエノール・ダキテーヌの祖先アキテーヌ公ギヨーム一世(八七五年~)です。

ウイリアム征服王は一〇六〇年までにノルマンディー地方を確保し、一〇六六年、イングランド征服を開始しました。

ヘイスティングスの戦いでイングランドを決定的に敗北させ、一〇六六年のクリスマスにイングランド王に即位しました。

このウイリアムは、ヘイスティングスの戦いの直後、クリュニー修道院に多額の贈り物をしました。理由はスペイン王のように修道院の会員になりたかったからです。

その後、クリュニーの修道院長ユーグに六人の修道士を派遣するよう要請し、一〇七八年にはクリュニー会の十人を自分の王国内の司教や修道院長に任命すると約束しました。

クリュニーとの絡みは、ウイリアム征服王が敬虔だったからではありません。

クリュニー修道院は、「テンプル騎士団の背後にある騎士団」だったと疑われているいわく付きの修道院です。

ダビデそしてクリュニー修道院、という流れは、このNoteではお約束になりつつあります。

これらは第一回十字軍前夜の話です。ウイリアムも死んでいなければ、ゴドフロワ・ド・ブイヨンらとともに十字軍に参加したのではないでしょうか。

ウイリアムの死後

ウイリアム征服王にはおもしろいエピソードがあります。

この人は非常に残酷な男で、在位中はとくに嫌われていました。そしてよく知られる不名誉な最期を遂げました。

ウイリアムは驚異的な巨体の持ち主でした。王様らしく最高級の食事をしっかりと採っていたからです。

一〇八七年、自分の息子との戦いの最中、死に至る重傷を負いました。乗っていた馬が突然暴れ、鞍頭が巨大な腹部に突き刺さり、腸を貫通しました。

結局これが原因で死んだのですが、だれからも愛されていなかったので、従者たちはウイリアムが死んだ直後に逃げ去り、死体を放置プレイしました。

ルーアンでしばらく放置されたあと、旅の騎士が遺体を防腐処理しました。ですが長時間放置されていたので、組織はすでに腐敗しはじめていました。

その後、騎士と死体(ウイリアム)は旅に出ました。ウイリアムの遺体が埋葬される予定だった教会は、ルーアンから七〇マイル離れたカーンにあり、セーヌ川を下る船でしか移動できませんでした。

のんびりとした船旅のあと、騎士はカーンに到着しました。そのころウイリアムの腸内は、増殖した細菌が体腔に浸み込み、腐敗ガスで満たされていました。

さらに悪いことに、騎士と死体が到着したあと、町で火災が発生しました。

もっと悪いことに、教会が自分の土地に違法に建てられたと主張する男が登場し、ウイリアムの埋葬に反対しました。

結局埋葬が行われたのは、ウイリアムの死後数週間後でした。そのころウイリアムの腸内では、火事の残熱とさらなる遅延のためにさらに膨張していました。

墓掘り人がウイリアムを穴に下ろそうとすると、穴のサイズが小さいことに気づきました。膨張した腹を考慮していなかったのです。

そして無理やり押し込もうとした瞬間、ウイリアムは破裂しました。群衆は元公爵の腐敗した内臓で覆われ、腐敗した肉の臭いに圧倒されました。

葬儀は急いで終わり、すぐに忘れ去られましたが、ほとんどの人は、この悲惨な葬儀と遺体のひどい扱いは結局のところ当然のものだったと考えました。

ウイリアム征服王の死に関する記述のうち、より有名なのは、オルデリック・ビターリス(一〇七五年~)が書いた『教会史』(Historia Ecclesiastica)です。

オルデリックはサン・エヴルール修道院出身のベネディクト派修道士で、一一三二年にクリュニーを訪れています。

記録によると、ウイリアム征服王は最終的に罪を告白していました。

わたしは王国の先住民を不当に厳しく扱い、貴族も平民も残酷に抑圧し、多くの人々を不当に財産を剥奪し、とくにヨークシャーでは飢餓と戦争によって何千人もの人々を死に至らしめた。……狂った怒りに駆られて、わたしは北のイングランド人たちに猛獣のように襲いかかり、かれらの家屋と作物、すべての道具と家具を即座に焼き払い、かれらの巨大な羊の群れと牛の群れを至るところで屠殺するよう命じた。こうしてわたしは、飢餓の鞭で数多くの男女を懲らしめ、ああ! この美しい民の若者から老人まで、数千人の残酷な殺害者となった。

https://www.mentalfloss.com/article/90921/british-king-whose-corpse-exploded-during-his-funeral

以前もお伝えしましたが、中世人(蛮人)は現代人よりはるかに感情的で、そのときどきの感情に基づいて行動します。

子女をレイプし、深く反省し、またレイプしたりします。ですがこの反省は、ウイリアムも同様に、心の底からの反省だったりします。

よくも悪くも人間的で、「感情と言語を持った動物」というと誤解を招きそうですが、矛盾した行動を取るのが本来の人間というものです。

現代社会では、「前はこういっていたよね?」などと矛盾を非難されます。よく考えれば矛盾は当たり前のことで、「一貫している」「ブレない」をありがたがるのはダーウィンの進化論に通じる人間礼賛の賜物です。

「ブレない」のは後天的に獲得したアビリティーです。わたしたち現代人は人工的な社会システムによって、生来的ではない人間性を求められています。

こうして突き詰めると、現代は古代や中世などより幸せ、現代人は昔の人より幸せ、とは言い切れなくなります。

なぜ非人間的なアビリティーが求められるかといえば、わたしたち庶民がエデンの果実、グノーシス(知恵)を得たからです。

といってもわたしたちのグノーシスは、「果汁一〇〇%!」のリンゴジュースです。

知恵のようなものを得た大衆は、知恵によってコントロールされなければなりません。なのでラジオやテレビ(Tell-A-Vision:幻覚を伝える)が発明され、ほぼ同時にプロパガンダが発明されました。

そして二十一世紀に突入し、コロナウイルスなるものが登場しました。当時のヒステリックな言動は、皮肉なことに本来の人間というものを自ら浮き彫りにすることになりました。

わたしたちは知恵など持っていないのです。でもサルよりは優れているよね、と考えるでしょうが、それこそが洗脳の深さを物語っています。

そしてこの「説得」に得心してしまうと、もう一つの罠、動物愛護が待ち構えています。おけらだってアメンボだって、のあれです。

次回はブルガリアのアガサの娘、聖マーガレット・オブ・スコットランドについてお伝えします。やはりクリュニー修道院が絡んできます。

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謎の賢人 この記事はリサーチにかなりの時間を費やしています。有料にはしたくないので無料で公開していますが、チップをいただけましたら精神的にも励みになります。