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油は「圧搾」の二文字で選ぶ──ラベルから読める油の話

はじめに

毎日の炒めもの、揚げもの、ドレッシングに使う油。

いちばん使う量が多い調味料のひとつなのに、選び方がいちばん分からないのが油じゃないでしょうか。

それもそのはず、油はこれまで書いてきた調味料の中で、ラベルから読み取れることがいちばん少ないんです。

醤油のように「名称の欄に製法を書く」というルールもありません。

でも、だからこそ「書いてある」ことに意味がある。

今日はその読み方と、油の造られ方の話をしていきますね。

これを読めば、油売り場でどこを見ればいいかが分かりますよ。

まず、油は「搾る」か「溶かし出す」かで分かれる


油を選ぶうえで、いちばん大きな分かれ道がここです。

原料から油を取り出す方法には、大きく2つあります。

▶︎圧搾法(あっさくほう)
原料に圧力をかけて、物理的に搾り出す方法。昔ながらの方法で、機械で押しつぶして搾ります。

▶︎抽出法(ちゅうしゅつほう)
「ヘキサン」という溶剤に原料を浸して、油分を溶かし出す方法。効率よく原料から油をほぼ全て取り出せます。

原料によって、どちらを使うかは変わります。

なたねやとうもろこしのように油分が多い原料は、まず圧搾で搾り、そのあと残った分をヘキサンで抽出することが多いです。

ちなみに、圧搾したあとに抽出した油は「二番搾り」と呼ばれることがあります。

一方、大豆や米ぬかのように油分が少ない原料は、圧搾せず、はじめから溶剤のヘキサンで抽出します。

ここまでの話を聞いて、「ヘキサンって大丈夫なの?」と気になった人もいると思います。

不安を煽る情報が多い分野なので、まずはヘキサンが国のルールでどう扱われているかを、正確にお伝えしておきますね。

ヘキサンは食品添加物として認められていて、精製の工程ですべて取り除かれることが前提になっています。

こういった「食品の完成前に除去されるもの」は「加工助剤(かこうじょざい)」と呼ばれ、食品表示のルールで、原材料名に書かなくていいことになっています。

東京都の食品表示の解説でも、加工助剤の代表例として「油脂製造時の抽出溶剤であるヘキサン」が挙げられているくらい、典型的な扱いです。

つまり、抽出法で造られた油でも、原材料名にヘキサンと書かれることはありません。

そして、抽出法が使われる理由もはっきりしています。

圧搾だけでは原料から取れる油の量が限られコストが上がるところを、抽出なら効率よく、たくさんの油が取ることができるので価格を抑えられる。

スーパーで大容量の油が手頃な価格で買えるのは、この方法があるからなんですね。

「圧搾」と書いていない油は、たいてい抽出

ここが今日いちばんお伝えしたいところ。

これまでの調味料と違って、油には「製法を必ず書く」というルールがありません。

醤油なら名称の欄に(本醸造)と書く義務がありました。


でも油は、圧搾で造ろうが抽出で造ろうが、そのことを書く義務がないんです。

じゃあ、どうやって見分けるのか。
答えは、ちょっと裏返しです。

書いてある中身ではなく、「書いてあるかどうか」自体を見ます。

圧搾法は手間もコストもかかるので、造り手にとっては伝えたい価値です。
だからパッケージに「圧搾」「圧搾一番搾り」「一番搾り」と、わざわざ書いてあることが多い。

逆に、何も書かれていない油は「抽出法」か、「圧搾と抽出を組み合わせ」の可能性が高い、ということになります。

でも「書いていない=悪い油」ではありません。書く義務がないので、書いていないだけ、という場合もあります。

ただ、買う側の手がかりとしては、この二文字があるかどうかがいちばん確実。

裏面ではなく、表のパッケージに書かれていることが多いので、そこを見ていきましょう。

精製の度合いで、油は変わる


搾った(または抽出した)ばかりの油は「原油(げんゆ)」と呼ばれ、色も香りも濃く、そのままでは使いにくい状態です。

そこから、いくつかの工程を経て、透明でクセのない油になっていきます。

▶︎脱ガム・脱酸
水を加えて、「ガム質」と呼ばれる粘りのある成分(リン脂質など)や、余分な脂肪酸を取り除きます。ガム質が残っていると、油が濁ったり、揚げものをしたときに泡立ちやすくなります。

▶︎脱色
「活性白土(かっせいはくど)」という、色素を吸いつける性質を持たせた粘土を使って、原料由来の色を取り除き、淡い色にします。

▶︎脱臭
高い温度と、空気を抜いた状態(真空)にして、水蒸気を吹き込み、においの成分を飛ばします。

この工程を経ることで、色が薄く、においがなく、どんな料理にも使いやすい油になります。

いっぽうで、精製の方法にも幅があります。

たとえば、化学的な薬品を使わず、お湯で何度も洗って不純物を取り除く「湯洗い」という方法を採る造り手もあります。

こうした造り手は、搾るときも圧搾法を使っていることがほとんど。手間をかけて搾った油を、手間をかけて精製する、という一貫した考え方なんですね。

こうした油は、原料由来の色や香りが少し残ります。

ただし、色が濃い油が良くて、透明な油が悪い、という話ではありません。色や香りは、精製をどこまでしたかの結果であって、良し悪しの順位ではない。

クセのない油が向く料理もあれば、香りを活かしたい料理もあります。

トランス脂肪酸の話を、正確に


油の話をすると、必ず出てくるのがトランス脂肪酸です。

ここは不安を煽る情報が多い分野なので、事実と国のルールを、順番に並べますね。

まず、トランス脂肪酸とは何か。

脂肪酸(油をつくっている成分)の一種です。

同じ脂肪酸でも、分子のつながり方の形が少し違うものがあって、そのうちの一種をトランス脂肪酸と呼びます。

トランス脂肪酸ができる場面は、大きく2つあります。

ひとつは、液体の油に水素を加えて固める加工(部分水素添加)のとき。

マーガリンやショートニングで問題になったのは、主にこちらです。

もうひとつが、先ほどの精製工程のうちの「脱臭」。

高温で処理する過程で、微量に生じることが知られています。

つまり精製された植物油には、ごく微量のトランス脂肪酸が含まれる可能性があるということです。

次に、日本の制度。

日本では、トランス脂肪酸の含有量に対しての規制も、表示の義務もありません。

消費者庁が2011年に「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」を公表し、表示する場合のルールを定めていますが、あくまで事業者の自主的な開示という位置づけです。

そして、公的な評価。

食品安全委員会は2012年に、日本人のトランス脂肪酸の平均的な摂取量を、総エネルギー摂取量の約0.3%と推定しました。

そのうえで、「日本人の大多数がエネルギー比1%未満であり、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さい」と評価しています(エネルギー比1%未満は、WHOが示している目標です)。

ただし同じ評価の中で、脂質に偏った食事をしている人では1%を超えることがある、とも書かれています。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、トランス脂肪酸は健康影響が飽和脂肪酸に比べてかなり小さいと考えられることなどから、目標量は定められていません。

最後に、海外との違い。

欧米を中心に、部分水素添加された油脂の使用を禁止したり、入っているトランス脂肪酸量の表示を義務づけたりしている国は多くあります。

日本がそうしていないのは、上に書いたように「平均摂取量が目標を下回っている」という評価にもとづくものです。

どちらが正しいという話ではなく、食文化や摂取量の実態が違えば、制度の考え方も変わる、ということだと思います。

私がここでお伝えしたいのは、「危ないから避けましょう」でも「気にしなくていい」でもありません。

こういう仕組みで生じるものが、こういう制度のもとで扱われている。その事実を知ったうえで、自分で判断する材料にしてほしい、ということです。

原材料と産地の話

原材料名は、油でもやっぱり大事な手がかりです。

「食用なたね油」「食用こめ油」というふうに、原料が書かれているので、まず何から造られた油かを確認します。

ここで知っておきたいのが、なたねの事情。

日本で使われる「原料なたね」は、ほぼ99.9%が輸入です。だから「国産なたね油」は、かなり希少な存在になります。

しかも近年は北海道産なたねの不作が続いていて、国産の比率を下げざるを得なくなった商品もあります。

国産にこだわりたい気持ちは分かりますが、そもそも手に入りにくいのが現実、ということです。

もうひとつが、遺伝子組換えの話。

なたねは、遺伝子組換え表示の義務がある9つの農産物のひとつです。

ところが、なたね油には表示義務がありません。

醤油と同じ理由で、油に加工する過程で組み換えられたDNAやたんぱく質が分解され、検出できなくなるからです。

つまり、表示がないからといって、遺伝子組換えでない原料を使っているとは限らない。

気になっている人が選ぶ手がかりとしては、「遺伝子組換えでない」という任意表示があるか、原料の産地が明示されているかどうかです。

なお、国産のなたねであれば、国内で遺伝子組換えなたねの商業栽培は行われていないので、その心配はありません。

ただ、先に書いたとおり「国産なたね」はとても希少です。

現実的には、オーストラリア産など「遺伝子組換えでない」と明示された輸入原料の油を選ぶようになることが多いと思います。

開けたあとが本番──油は酸化する


ここからは表示ではなく使い方になりますが、油では、これがいちばん実用的な話かもしれません。

油は、空気・光・熱に触れると酸化していきます。酸化した油は風味が落ち、においも変わります。

だから、選び方と同じくらい、保存の仕方が大事なんです。できるだけ酸化させないためのポイントとして

✔︎直射日光の当たらない、涼しい場所に置く(コンロの近くは避ける)

✔︎開封したら、なるべく早く使い切る

✔︎大容量よりも、使い切れるサイズを選ぶ

いい油を買っても、半年かけて少しずつ使っていたら、その良さは活きません。

原材料と製法で選ぶと、こんな油にたどり着く


ここからは、これまでの選び方(圧搾で搾られていて、原料と産地が分かるもの)に合う油を、具体的に商品名で挙げますが、おすすめやランキングではありません。

すべて溶剤を使わない圧搾法で搾られた油です。


✔︎国産なたね油(平田産業)

原材料:食用なたね油(国産なたね・遺伝子組換えでない)
製法:圧搾一番搾り/湯洗い精製

福岡で明治35年から菜種油一筋の製油所。

北海道で育てた国産品種「キザキノナタネ」を圧力だけで搾り、リン酸やヘキサンなどの化学物質を一切使わず、お酢とお湯で不純物を洗い流す独自の「湯洗い」で仕上げています。

搾り方と精製の両方に手間をかけた、この記事の話が全部つまったような一本です。


✔︎圧搾一番搾り 国産こめ油(築野食品)

原材料:食用こめ油(国産米ぬか)
製法:圧搾一番搾り

こめ油は原料の米ぬかに油分が20%ほどしかなく、そのうち溶剤を使わず圧力だけで搾れるのは、さらにその半分ほど。

そのため、市販のこめ油のほとんどは溶剤抽出で造られています。

そんななかで、国産の米ぬかを圧搾だけで搾った、かなり珍しいこめ油です。

クセがなく、揚げ物にも炒め物にも使いやすいタイプ。


✔︎国内産菜種油(創健社)

原材料:食用なたね油(菜種:北海道・青森県産、遺伝子組換えでない)
製法:圧搾製法一番しぼり

北海道・青森で育てた国産品種の菜種を、化学溶剤を使わず圧搾で搾った一番しぼり。

焙煎をしていないので、クセが少なくあっさりした風味です。

450gと使い切りやすいサイズで、酸化を気にする人にも向いています。


✔︎国産 黄金油(なたね油)(鹿北製油) 

原材料:なたね(国産・遺伝子組換えでない)
製法:圧搾法一番搾り

熊本の製油所で、創業以来「国産原料」にこだわってきた蔵。

圧搾法の一番搾りだけを使い、コクと旨みのある油に仕上げています。

天ぷらなどの揚げ物や、炒め物に向くタイプです。


✔︎純なたね油(坂本製油)

原材料:なたね(オーストラリア産・遺伝子組換えでない、九州産・無農薬)
製法:古式圧搾製法/湯洗い精製

昭和24年創業、熊本の製油所。

釜で40分ほど低温焙煎してから圧力をかけて搾り、70度のお湯だけで数回洗って不純物を除き、布と和紙でろ過して、一本ずつ手作業で瓶詰めしています。

原料は、オーストラリア・カンガルー島の遺伝子組換えでない菜種と、九州の無農薬栽培の菜種。

国産の菜種がほとんど手に入らないなかで、産地と栽培方法をはっきり示している一本です。


なお、原材料や規格はメーカーの都合で変わることがあります。購入するときは、必ず現物の表示を確認してください。

まとめ:油売り場で見るポイント

✔︎パッケージに「圧搾」「一番搾り」の文字があるか
油は製法を書く義務がないので、書いてあること自体が手がかりになります

✔︎原材料名で、何から造られた油かを確認
「食用なたね油」「食用こめ油」など。産地や「遺伝子組換えでない」の記載があるかも

✔︎使い切れるサイズを選ぶ
油は酸化します。大容量よりも、早く使い切れる量を

油は、これまで見てきた調味料の中で、いちばん表示から読み取れることが少ない調味料です。

だからこそ、書いてくれている情報が貴重になります。

今日、台所の油のパッケージを見てみてください。

「圧搾」の文字は、ありますか。

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※本記事は特定の商品の効能を保証するものではありません。製法や選び方に関する考え方は筆者個人の見解です。

※Amazonのアソシエイトとして、ハルは適格販売により収入を得ています。



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