塩こそ、イメージじゃなく「表示」で選びたい──自然派のための塩の話
はじめに
無添加や自然な暮らしを大事にしていると、毎日いちばん使う調味料である「塩」は、やっぱりこだわりたくなりますよね。
私もそうです。ただ、塩について調べていくうちに、ひとつ気づいたことがあります。
それは、塩の世界は「イメージの言葉」があふれていて、本質が見えにくくなっているということ。
だからこそ今日は、雰囲気に流されずに、自分が心から納得できる塩を選ぶための視点をお伝えします。
「自然塩」「天然塩」という表示は使えない
意外と知られていないのですが、塩のパッケージには「自然塩」「天然塩」という言葉は使えません。
2010年に完全施行された「食用塩公正競争規約」という業界ルールで、「自然塩」「天然塩」「ミネラル豊富」といった表示は禁止されました。
これらの言葉には明確な定義がなく、イメージだけが独り歩きして、消費者の誤解や苦情が相次いだからです。
つまり、「自然」という言葉に頼らなくても選べる目を持つことが、私たち消費者に求められているということ。
パッケージの雰囲気ではなく、裏側の表示と製法を見る。
これができるようになると、塩選びは一気に面白くなります。
ここからは、私が塩を選ぶときに見ている5つのポイントを紹介します。
① 原材料表示がシンプルであること
まず裏返して、原材料名を見ます。
「海水」だけ。理想はこれです。
一方、市販のサラサラした塩には、固まりを防ぐための固結防止剤(炭酸マグネシウムなど)が加えられているものがあります。
使いやすさのための工夫ではあるのですが、私は「口に入れるものは、できるだけ手が加わっていないものを」という考え方なので、原材料が海水だけのものを選んでいます。
余計なものが入っていないかどうかは、イメージではなく原材料名の欄が全部教えてくれます。
② 製法を見る──ここに作り手の思想が出る
塩のパッケージには「工程」という欄があり、その塩がどう作られたかが書かれています。
ここが読めるようになると、塩選びのレベルが一段上がります。
▶︎天日:塩田などで、太陽と風の力だけで海水を濃縮・結晶させる製法。時間と手間がかかるぶん、生産量は少なく貴重です。
▶︎平釜:開放された釜でじっくり煮詰める伝統的な製法。結晶がふんわりと大きく育ちます。
▶︎イオン膜:海水から効率的に塩化ナトリウムを取り出す工業的な製法。大量生産に向いています。
「天日」「平釜」と書かれた塩は、昔ながらの手間のかかる作り方をしている証拠。
どんな言葉で飾られているかではなく、どう作られたかを見る。
これがいちばん誠実な選び方だと思っています。
③ にがりを含む塩は、味に奥行きがある
海水からじっくり作られた塩には、にがり成分(マグネシウムやカリウムなど)がほどよく残っています。
このにがり分が多い塩は、しょっぱいだけじゃない。甘味、ほのかな苦味、うま味が重なった、複雑でやわらかい味がします。
おにぎり、ゆで卵、焼き魚、天ぷらの付け塩──塩そのものを味わう食べ方をすると、違いがはっきり分かります。
ぜひ一度、いつもの塩と食べ比べてみてください。「塩ってこんなに味が違うんだ」と驚くはずです。
④ 「食塩相当量」は製法の答え合わせ
もうひとつ、裏面で見ておくと面白いのが、栄養成分表示の「食塩相当量」です。
この数字は、じつはナトリウムの量から計算された値です。
塩の中身は、大きく分けて塩化ナトリウムと、それ以外のミネラル(マグネシウム、カリウム、カルシウムなど)でできています。
だから100gあたりの食塩相当量が高いほど塩化ナトリウムの純度が高く、低いほどナトリウム以外のミネラル分が多い、という関係になります。
たとえば工業的に精製された塩は、食塩相当量が100g中99gあたりまで高くなります。
ほぼ純粋な塩化ナトリウムということです。
一方、海水からじっくり作られ、にがり成分が残った塩は、その数字が少し低く出ます。
前のポイントで書いた「味の奥行き」の正体が、この数字にうっすら表れているわけです。
そして、ここが今日いちばんお伝えしたいところです。
食塩相当量は、原材料や製法の表示だけでは分からないことを教えてくれます。
というのも、原材料が海水100%で、工程が天日と書かれていても、濃縮や結晶化のさせ方によっては、にがり成分が分離して、ミネラルの少ない(=食塩相当量の高い)塩になることがあるからです。
「海水だけ」「天日」という表示は、あくまで作り方を示すもの。
実際にどんな成分に仕上がったかという結果は、食塩相当量という数字のほうに表れます。
だから、原材料が海水だけか、工程が天日・平釜か、そして食塩相当量はどうか。
この3つをセットで見ることをおすすめします。
表示の言葉で作り方を確かめ、数字で答え合わせをする。
この2段構えにすると、イメージと中身のズレも見抜けるようになります。
食塩相当量の数字はその塩がどう作られたかを読み解くための窓。
そう捉えると、裏面がもっと面白く読めると思います。
⑤産地と作り手の顔が見えること
小さな製塩所が、その土地の海水で、時間をかけて作っている塩。日本各地に、そういう塩がたくさんあります。
産地の海水を、その場所で、伝統的な製法で結晶させる。
こういう塩を選ぶことは、自分の食卓を豊かにするだけでなく、手仕事の製塩文化を残すことにもつながる。
自然派の暮らしって、こういう「選ぶことで応援する」感覚も含めてだと私は思っています。
原材料と製法で選ぶと、こんな塩にたどり着く
ここからは、これまでの選び方(原材料が海水だけで、工程が天日・平釜)に合う塩を、具体的に商品名で挙げますが、おすすめやランキングではありません。
ひとつ、先にお伝えしておきたいことがあります。
塩を探していると、「体にいい」「ミネラルが豊富」とうたう商品にたくさん出会います。でもこの記事の選び方では、その言葉は判断材料に入れていません。
見ているのは、原材料が海水だけか、工程が天日・平釜か。この2つだけです。
✔︎海の精 あらしお(海の精)
原材料:海水(伊豆大島産)
工程:天日・平釜伊豆大島の海水100%
食塩相当量:86.36g/100g中
ネット架流下式塩田で天日濃縮し、蒸気式平釜で結晶させています。
にがり成分をほどよく含むしっとりタイプで、おむすびや漬物、味噌づくりまで幅広く使えます。
✔︎粟国の塩 釜炊き(沖縄海塩研究所)
原材料:海水(沖縄県粟国島)
工程:天日・平釜
食塩相当量:73.4g/100g中
高さ10mのタワーに1万5千本の竹を吊るし、海水を循環させて天日濃縮。そのあと薪の平釜で30時間煮詰め、脱水・乾燥に2週間かけて仕上げます。
食塩相当量が73.4gと低く、にがり成分が多く残っていることが数字にはっきり表れている一本です。
✔︎ゲランドの塩(フランス・ブルターニュ)
原材料:海水(フランス・ゲランド)
工程:天日
食塩相当量:87.9g/100g中
濃縮も結晶も天日だけで行う、いわゆる完全天日塩。
1000年以上受け継がれた製法で、塩職人(パリュディエ)が手作業で収穫しています。EUの地理的表示保護(PGI)に認定されていて、産地と製法が制度で守られている塩でもあります。
✔︎カンホアの塩 石臼挽き(カンホアの塩)
原材料:海水(ベトナム・カンホア)
工程:天日
食塩相当量:85.82g/100g
ベトナム・カンホアの専用塩田で、海水から結晶まですべて天日で仕上げた塩。人工的な加熱をせず、2〜3ヶ月かけてゆっくり結晶させています。
この【石臼挽き】は大粒の結晶を石臼で挽いたもので、溶けやすく使いやすいタイプです。
なお、ここに挙げた食塩相当量は目安です。
自然の海水から作る塩は、季節や海水の状態、その日の天候によって仕上がりの成分が変わります。だから同じ商品でも、製造時期によって数値に幅が出るんです。均一でないこと自体が、自然のリズムで作られている証拠でもあります。
原材料や規格も変わることがあるので、購入するときは必ず現物の表示を確認してください。
まとめ|塩選びは「表示を読む練習」に最適
⚫︎ 「自然塩」「天然塩」という言葉は、実は表示に使えない。言葉のイメージに頼らない目を持とう
⚫︎見るべきは裏面:原材料名(海水だけか)と工程(天日・平釜か)
⚫︎にがりを含む塩は、味に奥行きがある。まずは食べくらべから
⚫︎食塩相当量は、製法表示の答え合わせになる数字。
海水100%・天日でも数値がぶれることがある。
⚫︎産地と作り手が見える塩を選ぶことは、製塩文化を残すことにもつながる
塩は、毎日使うのに一つひとつは安い。だからこそ、表示を読んで選ぶ練習台としてこれ以上ない食材です。
塩の裏面が読めるようになると、味噌も醤油も、他の調味料の表示も自然と読めるようになります。
まずは今日、台所の塩を裏返してみてください。
そこに書いてあることが、どんな広告よりも正直です。
※本記事は特定の塩の効能を保証するものではありません。味や製法に関する考え方は筆者個人の見解です。
※Amazonのアソシエイトとして、ハルは適格販売により収入を得ています。
【この記事を書いた人👇】

・無添加歴5年
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「全てを知った上で選べば、それはあなたにとってのベスト商品」を合言葉にして、世の中に出回りにくい食品の情報含めて発信中📣
スキやフォローなどでリアクションをいただけると、「もっと役立つ記事を書こう!」という励みになり、投稿もどんどん増えていきます。
その結果、あなたにとって役立つ情報も、これからもっと増えていきます。
ぜひ、スキやフォローなどで応援していただけるとうれしいです。
