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バトル漫画のエネルギーを社会に還元したらどうなるのか ~『ワールドトリガー』における「トリオン」について~

 『ドラゴンボール』の「気」、『HUNTER×HUNTER』の「念」、『NARUTO』のチャクラ、『呪術廻戦』の「呪力」など、多くのバトル漫画ではそれぞれのキャラクターの内部に秘めた力を何らかの呼称を与えて、その量の多寡が勝敗を左右する非常に重要な概念となっている。

 そしてバトル漫画における主人公をはじめとする主要キャラクターの秘めた能力はそれはそれは凄まじいもので、『ドラゴンボール』などは地球を丸ごと吹っ飛ばすことすら造作もないレベルにまで達している。

 ここで一つの疑問というか、一つの考えが頭をよぎる。この圧倒的な力で、たとえば発電してみたらどうなるのかと。発電に限らず、様々な形でこれらのエネルギーを社会に還元したらどれほどの貢献が果たせるのかと。

 実際、『呪術廻戦』ではその可能性に触れる瞬間はあった。「呪力」の軍事利用やエネルギーとの可能性に触れた上で、その大半が日本にしかないことの特異性などが語られたりはしたものの、それを実際に運用してみるまではほとんど描かれなかったのはちょっと残念だった。まああくまでもバトル漫画の主題はバトルなんだから無理してそれを描く必要もないと言えばないのだが。

 藤本タツキの『ファイアパンチ』だとかなり残酷な形でこのバトルエネルギー問題を扱ってたりするのだが、物語の主題とまではならなかった。まあ主人公の決して消えない炎とか発電に活用したら一体どうなるのかと考えだすと完全に物語がそっちに引っ張られるから抑制したんじゃないかとも思う。

 余談だが『ドラゴンボール』のポイポイカプセルってやっぱいまだにめちゃくちゃ魅力的なギミックで、ポイポイカプセルを駆使した序盤のノリでもっと続きを見たかったなーって気持ちが未だにある。まあそれだと早くに打ち切りになってしまったのかもしれないけれども。

 そろそろ本題に入ろう、自分がボンヤリと考えていたバトル漫画におけるエネルギー問題を真っ向から取り扱っている一つの作品が存在する。

 その作品の名前は『ワールドトリガー』。本作は、バトル漫画のエネルギーをそれ以外に活用、運用してみたらどうなるかについて非常に興味深い解答を提示している漫画である。

『ワールドトリガー』における「トリオン」の特異性

 『ワールドトリガー』において、気や念に相当するバトルに使用されるエネルギー「トリオン」は、人間であれば誰しもが秘めているもので、個々人によって容量に差があるという点においては他のバトル漫画とも共通している。だが、他の作品と大きく違うのは、修行や訓練による容量の拡大=成長があまり見込めない点、そして戦闘以外にも活用可能な幅が極めて大きいという点である。

『ワールドトリガー』1巻 No.146 より

 まあ「気」だって「チャクラ」だってその圧倒的なエネルギーで発電してしまえばいろんなことに応用は可能だ。だが、「トリオン」の場合はそれを物質化、固体化して建築物や乗り物にまで応用可能で、使い勝手の良い万能なエネルギーなのである。

 『ワールドトリガー』という作品がユニークなのはこの「トリオン」を駆使することによって、バトルエネルギーを「文明化」して社会インフラなどあらゆる局面で活用していることが描かれているからだ。

 そして「トリオン」が非常に便利で万能であるしなにより「武力」にも直結している以上、必然的に「トリオン」を巡る争いも展開される。トリオンは人間であれば誰しもが備えているものであると同時に、国家を維持し、発展させるための「戦略物資」そのものである。 豊かな文明を築けば築くほど、より多くのトリオンが必要となり、その需要を賄うために他国から『人間=資源』を拉致・徴用するという、極めてドライで残酷な国家間のパワーゲームが描かれているのだ。

『ワールドトリガー』2巻 No.116 より

 『ドラゴンボール』がとにかくその膨大なバトルエネルギーをほぼバトルにのみ投入した、バトル漫画における「バトルエネルギー1.0」時代の象徴だとすれば、『ジョジョの奇妙な冒険』におけるスタンド能力や『HUNTER×HUNTER』の念能力というアイディアによってバトル能力が多機能化、多様化し、ジョジョの4部に登場し、スピンオフ作品では主人公を務め、実写映画化すらされた漫画家、岸部露伴や料理人のトニオ・トラサルディのような形でエネルギーをバトル以外にも応用し始めたのが「バトルエネルギー2.0」時代である。そしてさらにそのバトルエネルギーによって社会のインフラや文明自体を構築する様を描いた『ワールドトリガー』は「バトルエネルギー3.0」時代を切り開いた作品であると私は考えている

 ではそうやってバトルエネルギーをいろんな分野で活用し、それをどうするのかと言えば、それは組織であり社会を構築するわけである。そう「バトルエネルギー3.0」時代のマンガである『ワールドトリガー』の主題は組織にある。バトルエネルギーを文明化して築いた組織で『ワールドトリガー』は何を描こうとしているのかについては今後まだまだ文章を書いていくのでお待ちください。


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