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5.日本人の歩みを辿って(太秦・広隆寺)

松尾大社から今度は徒歩で太秦まで歩き広隆寺を目指します。途中、桂川(葛野川)を沿って30分ぐらい歩いたでしょうか?

その先に秦氏の治水工事の痕跡、「二ノ井堰(にのいぜき)」は在りました。

嵐山地区に、渡月橋というとても有名な橋がありますが、そのすぐ上に「葛野大堰(かどのおおい)」という大きな堰があります。(こちらの方が有名な史跡ですね)そこから少し下流にあたる場所にこの「二ノ井堰」は在りました。

奈良を追いやれた秦氏が京都の地に来た時には、この川の氾濫が酷く、人の住めるような場所ではなかったというお話はよく聞きます。

治水工事に長けた秦氏はここに「堰(せき)」を築き、余剰の水は水田耕作のための水として生活地(嵐山、松尾、嵯峨野、太秦)に引き込み、この地を住める場所にしたというお話です。

太秦まで歩いてゆく途中には、いくつかの水路があり、桂川の水が、嵐山、太秦周辺に住む方の生活に根差していたことを感じます。

ここからは少し私の考察が入りますが、この「秦氏」と「治水工事」にまつわるお話・・・。実は、私の住む山梨県にも似たような事例があります。武田信玄が釜無川(富士川)の氾濫を鎮めるために行った治水工事「信玄堤」です。

武田信玄は優れた治水土木工事部隊を引き連れていたことで知られています。のちに水の都江戸の街を築くのに大きな役割を担っていたのも、武田氏が滅びた後家康によって引き入れられたこの部隊だったそうです。

信玄が21歳の時のお話・・・。信玄は甲斐国から実の父の信虎を追放します。その後まず始めに着手した仕事が現在の韮崎市にある武田八幡神社の修復再建だったと聞きます。現在も甲府盆地に点在する八幡神社。もしかしたら信玄が八幡神社(秦氏)との関係を重要視していたのかもしれません。
(八幡神社は、やはた→はた であり秦氏由来の神社でもあります。ちなみに武田八幡は「たけだはちまん」と読みます。)


話を旅の京都に戻します。二ノ井堰から嵯峨野、太秦地区の住宅地を縫うように歩き、広隆寺を目指します。それにしても、太秦の街はとても慎ましい。

庭の仕事をしている私ですので、どこに行ってもどうしても住宅の構造や庭を観てしまいますが、太秦はとても狭い場所に小さな住宅が密集しているのが特徴的です。

大きなお屋敷らしきものは、ほとんど見当たらないのです。

この慎ましさは永きに渡り天皇家を支え来た秦氏の特徴なのでしょうか。

広隆寺の「楼門」


松尾大社を出発して2時間ぐらい歩いたでしょうか?
昨日、再発した肉離れの痛みは、ロキソニンでなんとか騙せてます。

「今日は、歩くことができて本当にありがたい」

と思いながら歩き、何とか「太秦交差点」に辿り着きました。

交差点の目の前に広隆寺は在ります。

きっとこの広隆寺から太秦の生活文化が広がっていったのでしょう。まさに太秦のど真ん中に位置し、ここが文化発信源だったことが見て取れます。

さて、その広隆寺の楼門をくぐります。

この有名なお寺に関して私が説明するまでもありませんが、603年に秦河勝(はたのかわかつ)が、聖徳太子から賜った仏像を本尊として建立した京都最古の寺院だそうです。

日本の歴史教科書で拝見した記憶がある方も多いのではないでしょうか?あの「弥勒菩薩像」も安置されているお寺さんです。

広隆寺「講堂」


楼門から参道を北に向かって歩き講堂を右に見ながら、弥勒菩薩を目指して新霊宝殿に向かいます。新霊宝殿の手前で拝観料を払う小さな建物があり、その奥に大きな大きな新霊宝殿がありました。新霊宝殿の目の前にお庭があり、そこは綺麗に庭師の手が入っている様子です。

中に入るとたくさんの貴重な仏像が並んでいます。その全てが素晴らしい仏像ばかりです。この仏像群を拝観するだけでも本当に感動的な時間です。

そして、ひと際魅力的なのがあの弥勒菩薩です!

私はこの広隆寺に来れて本当に良かったと思いました。広隆寺の弥勒菩薩像は、全てを受け入れ、全てを許す表情をされていました。

これが聖徳太子の生き方、哲学、お考えを全て現わされてるような。そんな気さえもしてしまいます。

聖徳太子と秦河勝は、民の幸せを心から願い、
ここ京都に平安の都を創造したのではないかと感じます。

それが弥勒菩薩に現われているような・・・
そう思わずにはおれませんでした。

現代の日本人が、海外の方から評価していただけるのも、このような先人の祈りや願いがあって、今につながっているのかもしれません。

新霊宝殿は写真撮影が禁止でしたが、
あの弥勒菩薩の姿は、私の中にずっと居てくれることでしょう。

蚕の社編へ……


1.日本人の歩みを辿って(京都・序章)
2.日本人の歩みを辿って(比叡山編)
3.日本人の歩みを辿って(伏見稲荷大社編)
4.日本人の歩みを辿って(松尾大社編)
5.日本人の歩みを辿って(太秦・広隆寺編)
6.日本人の歩みを辿って(蚕ノ社編)

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