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自己犠牲、や~めた

数年前の元旦、私はまた倒れた。

ひいた風邪がこじれて副鼻腔炎になり、副鼻腔炎が中耳炎になり、泣き叫びながら鼓膜切開手術を受けた。ついでに肺炎にもなった。ドミノ倒しみたいに。

もう無理してないはずなのに。

SNSやドラマでは、
「夕飯作るの面倒くさいよね〜」とか
「雨の日に買い物に行くのが面倒くさいな〜」
といった主婦の愚痴をよく見かけるが、当時の私は、その類の愚痴を吐いたことがなかった。

新婚当初は、夫が仕事でほぼ自分しかいない部屋でも、朝晩にクイックルワイパーを掛け、週に数回は床の雑巾がけをして、月に一度は窓と玄関を磨いた。ベランダの床の汚れが気になり、雑巾5枚くらいを使ってピカピカにしたこともある。
賃貸の家なのに。

夫は、掃除をしたかどうかなど全く気にしない人だ。ちゃんとやれ!と言われたこともない。
むしろ、「ゆっくりしてなよ〜」とか「あとでやればいいよ〜」とか、ほにゃほにゃと言ってくれる。

私がもともと掃除好きなのはある。
しかしそれ以上に、この家の家事の総責任者は私だ、という使命感が、これほどまでに私を突き動かしていた。

休み方がわからないのである。
どの部分の手を、どのくらい抜いたら良いのかが分からなかった。家事を面倒くさがっているゴロゴロ上手な主婦の人に、何をどうやってサボっているのか、どんなマインドでゴロゴロしているのか、具体的に教えてもらいたいくらいだった。

母親は、ずっと正社員、フルタイムで働いていた。洗濯や食器洗いは毎日していたが、家の棚にはよくわからない書類がいつも山積みになっていた。母が完璧主義で、私も同じようにしなければいけないと思っていた、なんてことも全くない。


しかし、そんながんばりは長くは続かなかった。フルタイムで働きながら家事を完璧にこなすのは、想像以上に大変なことだった。家事の手を抜けばいいのに、手の抜き方が分からず頑張り続け、倒れたことがある。結婚して夫と暮らし始めて、わりとすぐのことだ。

出産してからは、体が言うことをきかなくなった。終わりが見えない寝不足の中、以前のように完璧にはこなせない。それでも、母なのだからちゃんとしなきゃと、這うように家事も育児もやってきた。

でも年々、無理がきかなくなって、毎月風邪を引いて発熱するようになった。喘息にもなって、定期的に倒れるようになった。そして、あの元旦。

もう、まじめに頑張っちゃうの、やめたい……。
猫みたいに、ゆるく生きてみたい。

心底そう思った。


0か100か、みたいな考え方しかできない不器用な自分を、少しずつ諦めてきた。乾燥までできるドラム式洗濯機を買い、生協の宅配を頼み、ロボット掃除機まで買った。

裁縫も編み物もサプリもひとり旅も、全部わがままだと思っていたけど、お金かけてもいいよって、自分に許可を出せるようになった。

もう働きたくないって夫に言えるようにもなって、毎日カフェでひとり時間まで満喫していた。

ここまで来るのに、
けっこうな勇気が要った。

我慢してることなんて、
もう何もないと思っていた。

それなのに、倒れた。


🧺


なんで?
私、なにを我慢してるんだろう?

ぐるぐる考え、数日かかって、
ようやく出てきた。


私、眠るのを我慢してる。

昔から、刺激の多い日の夜は、寝つきが悪くなるタイプだ。刺激と言っても、保護者会、授業参観、公園でばったりママ友に会うとかその程度の刺激である。昼寝をして、なんとか補ってきた。

でも、動けるようになって、自由な時間が増えると、昼寝を取らない日が増えていた。

特にPMSの時期は不眠がひどくなり、朝方まで眠れない日も多々あるのに、それでも毎朝ちゃんと起きて、朝食を作って、夫と子どもを見送っていた。

だって。

働いてないんだから、
朝ごはんくらい作って当たり前でしょ? 
夫が仕事に行くのに、
私だけずっと寝てるなんて。


そんな声が、心の中にあった。


でも、本当は……

朝、起きるの、めっちゃつらい。


💤



もうひとつ、
長年見て見ぬふりをしていたことがある。

わが家は4人家族で、寝室にベッドは3つまでしか置けない。だから私と次女が同じ布団、というスタイルがずっと続いていた。

次女はもう7歳。布団は狭い。寝返りのたびに布団が外れて、そのたびに私がかけ直す。夜中に、何度も。

次女は少し汗をかくと、ズボンに入れたパジャマをめくり上げて寝ている。夜中の暗い部屋で、小さなおへそが呼吸に合わせてふくらんだりしぼんだりしている。見つけるたび、慌ててズボンの中にパジャマを押し込む。

おまけに、次女は大音量でいびきをかく。
反対隣りで眠る長女の寝言も、なかなかすごい。
「やめーてー!」と夢の中で次女によく泣かされている。

眠れない大きな原因は、これだった。


分かっていたけど、言えなかった。

だって、子どもと寝るのが嫌だなんて、
母親として、どうよ?


でも、子どもの風邪をほぼ100%もらい、喘息と不眠にまでなって、かかりつけ医から
「もうさぁ…、子どもと寝ない方がいいよ?」
と呆れるように言われて、やっと夫に相談できた。


そしたら夫、あっさり。

「おれの部屋、寝室にしていいよ?」

えー……
そんなに簡単だったのー……?



すぐさまベッドと布団を買った。
けっこう良いマットレスを買った。

前夜に朝食を準備しておけば、夫が温める。それだけのことなのに、なぜ何年も言えなかったんだろう。

手足を伸ばして眠れることが、嬉しかった。


毎朝ちゃんと起きて見送るの、や〜めた。


日中のイライラが、だいぶ減った。
早く起きられた朝は、ソーセージとスクランブルエッグを焼いて、フルーツを並べる。ベランダで育ててるハーブでお茶をいれたりして。
ちょっと豪華な朝ごはん。

起きられない朝はたいてい、
夫が玄関のカギを閉める音で目が覚める。

キッチンに残る食器を、やさしい気持ちで洗える。夫と子どもたちに、心から感謝できるのが気持ち良い。我慢していた頃は、こんな気持ち、なかったのに。


🍳


え? 私、こんなところも我慢してたの?

たぶん、これからも言うと思う。

当たり前の顔をして、日常に紛れ込んでる我慢を見つけては、そんなことも気合をいれないとできなかった自分に落ち込んで、でもやっぱりがんばれないんだよなぁと確認して、や〜めた、と言う。この作業を、私は案外たのしんでいる。


それにしても、眠るってすごい。

もう無理かもって思っていたことが、眠るだけで、まだいけるかも?に変わったりするんだから。



夜中に目が覚める。

となりに、かけ直す布団はない。
動いているおへそもない。

昼までだって寝ていいんだ、と思うと、
焦らずにまた眠れる。


最近じゃ、Threadsのプロフィールに、
昼寝プロですって書いている。

あの頃の私が見たら、ひっくり返ると思う。


こんな私が言うのもなんですが、

ちゃんと寝たほうが、いいですよ?


■不眠に良かったことまとめてます↓

■喘息が出なくなるまでにやったことをまとめてます↓



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