#422[雑記]透明だった僕と、愛の色
まだ知らない愛の色に、僕は少しずつ近づいている。
透明だった僕が、少しずつ輪郭を持ち始めた夜の話。
夜が深まると、心の奥がざわつく。誰にも見られない時間に、僕は少しだけ透明になる。静かな部屋にいると、自分の声がよく聞こえる。
──人を愛するって、どういうことだろう。
僕は、ずっとその答えを探してきた。
誰かを大切にしたいと思ってきた。
でも、うまく伝わらなかったことがある。
尽くしても、報われなかったこともある。
僕の作文を破り捨てたお母さん、とかね。
その夜、僕は机の下に隠れて泣いた。
破られた作文の紙は、密かに袖机にしまったっけ。
あれから、少しだけ気づいたことがある。
愛する力は、誰にでもあるわけじゃない。
育てられた環境や、心の余裕、自分自身を、自分がどう見ているかにも関係するんだ。
愛する力がある人は、相手の存在を認められる。
──「いてくれて嬉しい」と態度で示す。
見捨てずに、失敗しても、傷ついても、そばにいる。
それが、愛の根っこだと思う。
愛する力が育っていない人は、
相手の努力を当然と受け止める。
感謝をしない。 認めることをしない。
──まるで、僕のことを透明人間のように扱うんだ。
声をかけても、目が合わない。
触れても、空気のようにすり抜ける。
触れた手が、冷たい空気に溶けていくような……。
もっと頑張れば認めてもらえるかもしれない。
もっと尽くせば愛されるかもしれない。
僕が話しかけても、スマホを見たままで。
僕の誕生日も、忘れていた。
それでも僕は、あの子の好きな紅茶を買って帰った。
僕は、そういう関係の中で自分を見失いそうになった。
──無理をした。 でも、相手の心は動かなかった。
それは、君のせいではなかった。
僕がまだ、人を愛する力を持っていなかっただけだったんだ。
──愛する力がない人は、相手を道具のように扱う。
自分の都合のいいように動かしたいと思う。
支配したい、人よりも優位に立ちたいと考える。
──それは、愛ではなく力の関係だ。
僕のことを、所有物のように見る人もいた。
自分のものだから思い通りになるべきだと思って、
僕の自由を奪う。僕の選択を否定する。
──それは、尊重ではなく囲い込みだ。
自分の人生なのに、どうしてこんなに自由がないのだろう。
なぜ、こんなに責められるんだろう。
──いちばん近くにいる人を盾にする。
責任を取らない人もいる。
自分の失敗を、大切な人のせいにする。
愛する人を犠牲にして、自分を守るために。
僕は実際、そういう場面を何度も見てきて、思った。
この人は、自分よりも大切な人を守ることができないのだ、と。
僕は、叫びたかった……!
誰か、僕を見てって……!
でも、声は出なかった。出せなかった……。
見捨てないって、そばにいることじゃなく、
自由を許すことかもしれない。
愛する力がない人は、心に余裕がないから、自分のことで精一杯になる。僕の苦しみには寄り添えない。
愛って、誰かの呼吸を邪魔しないことかもしれない。
僕は、息苦しくて、心が擦り切れていった。
──私を見て、私をわかって、と言い続けた人。
それは、承認欲求だ。
僕は、そういう言葉に傷ついてきた。
僕だって苦しいのに。
僕だって頑張っているのに。
そう思っても、相手には届かなかった。
──与えることをしない人もいる。
感謝も、労いもない、決して認めない。
それは、ずるい関係、搾取の関係だ。
僕は、そういう関係の中で自分をすり減らした。
いつか報われるかもしれないと思って、尽くした。
でも、報われることはなかった。
相手の背景や、気持ちを見ない人もいる。
自分のことばかりを見る、その人は、
差し出された優しさには気がつかない。
──静かな努力にも気づかない。それは、深いすれ違いを生む。
僕は、そういうすれ違いの中で孤独を感じた。
こんなに思っているのに、なぜ伝わらないんだろう。
伝わらないことが、こんなにも痛いだなんて……。
それでも、僕は言葉を差し出し続けた。
こんなに差し出しているのに、
なぜ受け取ってもらえないんだろう。
そう思って、心が張り裂けそうだった。
なんで、なんで僕ばっかり。
なんで僕の気持ちは、いつも置いてけぼりなんだ。
心が壊れそうだった。
泣いた。自分でも気づかないくらい、静かに。
今なら、苦笑いくらいはできるけどね。
そう、今だからこそ、少しだけわかる気がするよ。
──愛する力は、最初からあるものではないことを。
それは、育てていくものなんだ。
自分を認めることから始まる。
「私は、ここにいていい」そう思える場所を、
自分の中に育ててほしい。
それが、誰かを愛する力の土台になるから。
それは、自分の小さな声に耳を傾けること。
頑張った自分に、そっと「ありがとう」を伝えること。
そうやって、自分の心に自由でいるための土台を、築き始めたんだ。
その人がその力を持っていないなら、責めない。
この人は、まだ学んでいる途中なのかもしれない、と思う。
静かに距離を取ることも、愛のかたちかもしれない……。
でも僕は、ただ楽に息ができるように。
そんな愛のかたちを、僕の中に育てたい。
僕は、今日も僕の心に自由でいたい。
誰かの気分ではなく、自分の意思で進みたい。
誰かを愛するのなら、
その人の存在をまるごと認めたい。
そんな力を、静かに育てていきたいと思っている。
──人を愛するって、どういうことだろう。
今なら、少しだけ答えに近づけた気がする。
愛する力とは、誰かが楽に息ができるように、
そっと寄り添うことかもしれない。
──僕は、僕を見捨てない。
僕が、僕自身に認められたいって、
そういうことなんだ。
そのとき、僕の心に、僕自身に向けた、
初めての温かい光が灯るのを感じた。
僕の心に灯った光は、誰かの言葉じゃなく、僕自身の “いていい”だったと、ようやく気がついたよ。
透明だった僕の輪郭が、少しずつ色を持ち始めた。
でも、その色が何色なのかは、まだ僕にもわからない。
この力が育ったとき、
僕はどんなふうに誰かと向き合えるのかな。
それは、また別の夜に話そうと思う。
明日は、いっそ誰かに明るく「おはよう」と
言ってみようか。
あの子の好きだった紅茶の香りが、
今も僕の部屋に残っている。
その香りに包まれて、
少しだけ、息がしやすくなるような気がした──。
<了, 約 2,400 字>
◼️関連作品
◼️11/1に書いた記事が気に入って、続きを書きたくなりました。
この欄の記事が増えてきました。
さあ、どうしようかな(笑)
せっかくなので『環(わ」』として、
作品集にまとめようかとも考えています。

それではまた、次の記事でお会いしましょう🌟
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