【Ai x 入力設計 12】田中君、ラーメンが食べたいんだけど、AIに聞いてみたら、とんでもなかった。でも、人間ってすごいなと思った。そんな回です。

👥 登場人物紹介
🌱 田中君 (画面 左)
20代。
好奇心旺盛で、気になったことはすぐに試してみる行動派。
AIについては初心者だったが、
「とりあえずやってみよう」
という性格のおかげで、少しずつ活用の幅を広げていく。
本作の主人公。
☕ 林さん (画面 中央)
30代前半。
田中君の友人。
人の話をよく聞き、面倒見が良いタイプ。
相手の成長を素直に喜べる性格で、
田中君がAIに興味を持つきっかけを作った人物。
本作では読者に近い視点で疑問を投げかける役割も担う。
🏭 佐藤さん (画面 右)
40代前半。
仕事が非常にできるが、
それをひけらかすことはない。
人を見下したり否定したりせず、
相手の話をよく聞きながら、
気付きを与える形で導いてくれる。
AIを使いこなしているというより、
改善活動を長年続けた結果として、
AIを自然に活用している頼れる大先輩。
田中君シリ-ズの記事です。
AIにうまく頼むには、正しいプロンプトが必要だ。
そう言われると、少し難しく聞こえる。
でも本当は、もっと身近な話なのかもしれない。
たとえば、田中君が「がっつりした豚骨ラーメンが食べたい」とAIに聞いた時、AIはとんでもないラーメンを提案してきた。
けれど、その失敗のような出力を見て、田中君は気づいていく。
自分は本当にラーメンが食べたかったのか。
それとも、ラーメンを食べて満足したかったのか。
これは、そんな回です。
ChatGtpとのログです、Aiに読ませる前にダウンロードしてウイルスチェックしたあとに読ませてください、インターネット環境でどのような不具合が混入するかわかりませのでよろしくお願いいたします。
Hanamarukiよりだいたい雑につくってから、つめていきます、大元はこんな感じですね。
田中君は、その日の夜、妙にインスタントラーメンが食べたくなった。
ただ、あっさりした醤油ラーメンではない。
味噌でもない。
頭の中にあったのは、豚骨ラーメンだった。
けれど、少し前に動画で見た二郎系ラーメンほど、山盛りのもやしや分厚いチャーシューを食べたいわけでもない。
「豚骨で、そこそこガッツリ。でも二郎ほどじゃない。こういう時、何を食べればいいんだろう」
田中君は、ふと思いついてAIに聞いてみた。
「インスタントラーメンで、あっさりではなく豚骨系。二郎ほどではないけど、ガッツリ食べたいです。おすすめのアレンジを教えてください」
するとAIは、妙に張り切った答えを返してきた。
豚骨袋麺を濃いめに作り、
炒めた豚バラ、
もやし一袋、
にんにく、
卵黄、
刻みネギ、
黒胡椒を乗せる。
さらに、ラードを少し入れると満足感が出るという。
田中君は画面を見ながら、思わず笑った。
「いや、そこまでは言ってないんだけどな……」
けれど、冷蔵庫を見ると、豚バラももやしも卵もある。
少し迷ったあと、田中君は結局やってみることにした。
出来上がったラーメンは、確かにうまかった。
豚骨のスープに豚バラの脂が混ざり、もやしの量もあって、かなり満足感がある。
ただ、食べ終わる頃には、田中君は少し苦笑いしていた。
「これは……二郎ほどじゃないって言ったけど、だいぶそっち寄りだな」
そこで田中君は気づいた。
AIが勝手に暴走したように見えたけれど、原因は自分の入力にもあった。
「ガッツリ」という言葉だけでは、AIには量なのか、脂なのか、肉なのか、にんにくなのか、満腹感なのかがわからない。
AIは、その空白を自分なりに埋めただけだった。
田中君は、次にこう聞き直した。
「豚骨ラーメンで、満足感はほしいです。ただし、にんにくと脂は控えめ。肉は少量で、野菜を足して重すぎないアレンジにしてください」
すると、今度の答えはかなり現実的になった。
田中君は思った。
「AIの答えがズレた時って、AIだけが悪いんじゃないんだな。自分の言葉の曖昧さが、そのまま出てくるんだ」
田中君は、AIが提案してきたラーメンの内容を見て、少し固まっていた。
豚骨袋麺。
豚バラ。
もやし一袋。
にんにく。
卵黄。
ラード。
黒胡椒。
「いや、これは……もう普通のインスタントラーメンじゃないだろ」
少し迷った田中君は、林さんにLINEを送った。
「林さん、僕、がっつり系のラーメンが食べたいんですけど、AIに相談したら、とんでもないものが出てきました。どうしたらいいんでしょう」
しばらくして、林さんから返事が来た。
「そんなにがっつりしたものが食べたいなら、とことんがっつりにしてみたらいいんじゃないの?」
田中君は、その短い返信を見て、思わず笑った。
「なるほど。そう来るか」
普通なら、ここでAIの提案を少し軽くするところだった。
脂を減らす。
にんにくを減らす。
肉を少なくする。
そうやって、自分の想像していた範囲に戻す。
けれど、林さんの一言で、田中君の中に別の興味が湧いてきた。
「がっつりを、さらにがっつりにしたら、どこまで行くんだろう」
田中君は、もう一度AIに入力した。
「さっきの豚骨インスタントラーメンを、さらにがっつりにしてください。ただし、二郎系の見た目に寄せるのではなく、豚骨ラーメンとしての満足感を最大化してください」
AIは、また張り切った。
今度は、豚バラだけでなく、焼き目をつけた厚切りベーコン。
もやしに加えて、炒めたキャベツ。
にんにくはすりおろしとチップの二段構え。
卵黄ではなく、半熟卵。
仕上げにすりごま、紅しょうが、黒マー油風のごま油。
田中君は画面を見ながら、声に出した。
「おいおい、どこへ向かってるんだよ」
でも、少し面白かった。
AIは、自分の言葉にかなり素直だった。
「がっつり」と言えば、AIは満腹感を増やす。
「さらにがっつり」と言えば、肉も油も香りも足してくる。
「豚骨らしさを残して」と言えば、紅しょうがやごま、黒マー油の方向へ寄せてくる。
田中君は、そこで気づいた。
AIが暴走しているように見えて、実は自分の言葉に反応しているだけなのかもしれない。
問題は、AIが勝手に変なことをしていることではない。
自分が「がっつり」という言葉で、何を増やしたいのか決めていなかったことだった。
量なのか。
脂なのか。
肉なのか。
にんにくなのか。
スープの濃さなのか。
食べ終わった後の満足感なのか。
そこを決めないままAIに投げると、AIは全部を足してくる。
田中君は、もう一度LINEを開いた。
「林さん、AIって、こっちが雑に言うと、本当に全部盛りにしてくるんですね」
すぐに林さんから返事が来た。
「そりゃそうだよ。君が“がっつり”の中身を決めてないからだよ」
田中君は、スマホを見ながら、妙に納得してしまった。
AIの出力は、ただの答えではない。
自分の入力がどれだけ曖昧だったかを見せてくる鏡なのだ。
田中君は、AIの提案を見ながら少し考え込んだ。
最初は、AIがただ大げさなものを出してきたのだと思っていた。
がっつりと言ったから、肉を増やす。
もやしを増やす。
にんにくを増やす。
脂を足す。
たしかに、それは世間一般で言う「がっつり」だった。
けれど、田中君が本当に食べたかったものは、少し違っていた。
二郎系ほどの山盛りではない。
でも、あっさりしたラーメンでは物足りない。
食べたいのは豚骨。
しかも、ただ量が多いだけではなく、豚骨らしい満足感がほしい。
田中君は、そこでふと気づいた。
「僕の言ってる“がっつり”って、一般的ながっつりとは少し違うのかもしれない」
AIは、最初に世間一般の「がっつり」を出してきた。
でも、田中君の言葉の中には、ちゃんと別の条件も入っていた。
「二郎ほどではない」
「豚骨がいい」
「あっさりではない」
この条件をきちんと見れば、答えは山盛りの方向だけにはならない。
田中君は、もう一度AIに聞き直した。
「僕が言う“がっつり”は、量を増やすことではありません。二郎系のような山盛りではなく、豚骨ラーメンとしての濃さ、コク、満足感がほしいです。インスタントラーメンで作れる範囲で、豚骨らしいがっつり感を出すアレンジを考えてください」
今度のAIの答えは、少し変わった。
肉を大量に増やすのではなく、少量の豚バラを焼いて香りを出す。
にんにくを入れすぎるのではなく、少量の焦がしにんにく風にする。
脂を足しすぎるのではなく、すりごまと少しのごま油で厚みを出す。
山盛りのもやしではなく、きくらげやネギ、紅しょうがで豚骨らしさを足す。
田中君は、画面を見て思った。
「そうそう。こっちだ」
AIが変わったのではない。
自分の“がっつり”の意味を、AIに渡せる形に変えたのだ。
田中君は、スマホの画面を見ながら、少し黙り込んだ。
AIが出してきた「がっつりラーメン」は、たしかにすごかった。
肉も多い。
にんにくも強い。
脂もある。
もやしも山盛り。
見た瞬間は、少し笑ってしまうほど迫力があった。
けれど、田中君はふと思った。
「がっつりって、何なんだろう」
食べきれないくらいの、とんでもないボリューム。
途中で苦しくなって、最後は意地で食べるようなラーメン。
食べ終わったあとに、「もう当分いいや」と思うラーメン。
それも、たしかにがっつりだった。
でも、自分が本当に食べたいのは、それなのだろうか。
田中君は、もう一つの「がっつり」を考えた。
食べ終わったあとに、満足感がある。
でも、重すぎない。
豚骨のコクがしっかり残っている。
また次も食べたいと思える。
次に食べるなら、もう少しだけ濃くしてみたい、もう少しだけ具を足してみたい、そう思えるラーメン。
「こっちかもしれない」
田中君は、ようやく気づいた。
自分が欲しかったのは、食べきれないほどの量ではなかった。
食べ終わったあとに後悔するような一杯でもなかった。
自分が欲しかったのは、満足できて、なおかつ次も食べたくなるラーメンだった。
つまり、自分にとっての「がっつり」は、ボリュームではなく、満足感の濃さだった。
田中君は、AIへの入力を直した。
「がっつりラーメンを作りたいです。ただし、食べきれないほどの量や、食後に後悔するような重さではありません。豚骨らしいコクがあり、満足感があり、食べ終わったあとにまた食べたいと思えるラーメンにしたいです。インスタントラーメンで作れる範囲で、具材と味の調整を提案してください」
今度のAIの答えは、かなり違っていた。
肉を山盛りにするのではなく、少量の豚バラを香ばしく焼く。
脂を増やしすぎるのではなく、すりごまと少しのごま油で厚みを出す。
にんにくは強くしすぎず、焦がしにんにく風に少しだけ使う。
野菜は山盛りではなく、もやしとネギを少し足して食感を作る。
最後に紅しょうがを添えて、豚骨らしさと後味の軽さを残す。
田中君は、画面を見ながら小さくうなずいた。
「そうそう。これなら食べたい」
AIが賢くなったわけではない。
田中君が、自分の「がっつり」の意味を少しだけ正確にしたのだ。
AIの答えがズレていたのは、AIだけの問題ではなかった。
自分の中で、言葉の意味がまだ決まっていなかった。
だからAIは、世間一般の「がっつり」を出してきた。
けれど、自分にとっての「がっつり」を言葉にした瞬間、AIの答えは変わった。
田中君は思った。
「入力って、AIに命令することじゃないんだ。自分が本当に欲しいものを、自分で見つける作業なんだ」
田中君は、考えたラーメンの内容を佐藤さんに話してみた。
「豚骨で、あっさりじゃなくて、でも二郎ほどじゃなくて。食べきれない量じゃなくて、満足できて、また次も食べたいと思えるようなラーメンにしたいんです」
佐藤さんは、少し笑った。
「なるほどね。田中君、自分の“がっつり”が少し見えてきたんだね」
その時、台所の方から佐藤さんの奥さんが顔を出した。
「ちょっと聞こえたけど、面白いこと考えてるね」
佐藤さんの奥さんは、料理がとても上手だった。
ただ手際がいいだけではない。
味の濃さ、食べる順番、後味、食べた人の顔まで、全部を見ているような人だった。
田中君は、少し照れながらスマホを見せた。
「AIにも聞いて、自分でも考えてみたんですけど、こういうラーメンってどうでしょうか」
奥さんは画面を見て、少しだけ考えるふりをした。
「うん。ちょっと待っててね」
それだけ言うと、台所に戻っていった。
しばらくすると、フライパンから野菜を炒める音が聞こえてきた。
じゅっと油が鳴り、キャベツともやしに火が入る。
そこに豚肉の香ばしい匂いが混ざった。
田中君は、思わず台所の方を見た。
「これ、ラーメンですよね?」
佐藤さんは楽しそうに笑った。
「たぶんね。でも、君が考えていたものとは少し違うかもしれない」
しばらくして、奥さんが一杯のラーメンを運んできた。
見た目は、山盛りの二郎系ではなかった。
けれど、決して軽くもない。
豚骨スープの上に、香ばしく炒めた野菜と豚肉が乗っている。
キャベツ、もやし、にんじん、少しのきくらげ。
スープには野菜の甘みと豚肉の脂が溶けていて、見た目以上に厚みがある。
仕上げに少しだけ黒胡椒とごま。
紅しょうがが添えられて、重さを逃がす出口も作られていた。
田中君は、ひと口食べて黙った。
「……うまい」
それは、AIが最初に出してきた全部盛りのラーメンとは違っていた。
肉を増やしすぎていない。
脂も強すぎない。
にんにくで押し切ってもいない。
けれど、物足りなさはなかった。
野菜炒めの香ばしさがあり、豚骨のコクがあり、最後まで飽きない。
がっつりしているのに、食べ終わったあとに苦しくならない。
むしろ、もう一度食べたいと思える味だった。
田中君は、丼を見ながら言った。
「これ、僕が言いたかった“がっつり”に近いです」
奥さんは、少し笑った。
「たぶん、田中君が欲しかったのは、量じゃなくて満足感だったんだと思うよ」
田中君は、はっとした。
AIは、田中君の言葉を材料にして答えを作った。
田中君は、その答えを見ながら、自分の欲しいものを少しずつ言葉にした。
でも、佐藤さんの奥さんは、その言葉の奥にあるものを見ていた。
「食べきれないほど多いラーメン」ではなく、
「食べ終わったあとに満足して、また食べたいと思えるラーメン」。
それを、野菜炒め風の長崎ちゃんぽんに近い形で、こってりした豚骨ラーメンとして作ってくれたのだ。
田中君は思った。
AIは、言葉にしたものを形にしてくれる。
でも、人間は、言葉になっていないものまで見てくれることがある。
だからこそ、AIに任せる前に、自分が何を求めているのかを見つける必要がある。
そして、見つけたものを誰かに見てもらうことで、さらに良い形になることもある。
佐藤さんは、田中君の顔を見て言った。
「ね。AIだけじゃなくて、人に見てもらうのも大事だろう?」
田中君は、素直にうなずいた。
「はい。AIの答えを見て、自分の考えを直して、人に見てもらって、また形が変わるんですね」
奥さんは、笑いながら言った。
「料理も仕事も、だいたいそうよ。材料を足せば美味しくなるわけじゃないの。どこを足して、どこを引くかを見るのが大事なの」
田中君は、もう一度スープを飲んだ。
濃い。
でも、重すぎない。
がっつりしている。
でも、また食べたい。
その一杯は、田中君にとって、AI入力の意味を教えてくれるラーメンになった。
田中君は、ラーメンを食べ終えてもしばらく黙っていた。
濃い。
でも、重すぎない。
がっつりしている。
でも、また食べたい。
まさに、自分が言葉にできなかった「がっつり」だった。
「すごいですね……。僕、こういうのが食べたかったんだと思います」
田中君がそう言うと、佐藤さんは少し得意げに笑った。
「だろ? 私の奥さん、すごいだろう」
その言い方があまりにも自然だったので、田中君は思わず笑ってしまった。
奥さんは、少し呆れたように佐藤さんを見た。
「はいはい。また始まった」
けれど、その顔はまんざらでもなさそうだった。
佐藤さんは続けた。
「いや、本当にすごいんだよ。私だったら、田中君の話を聞いて、豚骨に肉を足して、にんにく入れて終わりだったと思う。でもこの人は、食べ終わった後の感じまで見てるんだよな」
奥さんは、箸を片づけながら笑った。
「あなたも、ずいぶん成長したよね」
「え、私!?」
「昔なら、絶対に“肉を増やせば満足するだろ”って言ってたもの」
佐藤さんは、少しだけ気まずそうに頭をかいた。
「まあ……それは否定できないな」
奥さんは、田中君の方を見て言った。
「でもね、旦那さんも今はちゃんと見るようになったのよ。何を足すかだけじゃなくて、何を足さないか。相手が本当に欲しがっているのは、量なのか、味なのか、安心感なのか。そこを考えるようになった」
佐藤さんは、照れくさそうに笑った。
「いや、それはあなたに鍛えられたんだよ」
「そうかもしれないね」
奥さんは、さらっとそう言って、また台所へ戻っていった。
田中君は、そのやり取りを見て、少し不思議な気持ちになった。
AIは、入力された言葉から答えを作る。
でも、人間は、相手の表情や迷い、言葉の選び方、過去の失敗まで含めて見ることがある。
佐藤さんの奥さんは、田中君の「がっつり」という言葉だけを見ていなかった。
その奥にある、「満足したいけれど、後悔はしたくない」という気持ちまで見ていた。
佐藤さんは、そんな奥さんのすごさを知っていた。
そして奥さんは、佐藤さんがそれを理解できるようになったことを、ちゃんと見ていた。
田中君は思った。
「AIに入力するって、料理に似てるんだな」
材料を全部入れればいいわけではない。
強い味を足せばいいわけでもない。
相手が本当に欲しいものを見て、必要なものを足し、余計なものを引く。
その加減を見つけることが、入力の精度を上げるということなのかもしれない。
佐藤さんは、田君の顔を見て言った。
「どうだ? AIだけじゃ、ここまでは出せなかっただろ」
田中君は、素直にうなずいた。
「はい。でも、AIの答えがあったから、自分が何を求めているのか考えられました」
佐藤さんは満足そうに笑った。
「それでいいんだよ。AIは答えを出すだけじゃない。自分の考えを見つけるきっかけにもなる」
台所から、奥さんの声が聞こえた。
「それと、食べすぎたら次は野菜多めね」
佐藤さんはすぐに返した。
「ほら、こういうところまで見てるんだよ。すごいだろ?」
田中君は、また笑ってしまった。
田中君は、ラーメンを食べ終えたあとも、しばらく丼を見つめていた。
濃い。
でも、重すぎない。
がっつりしている。
でも、また食べたい。
自分がAIにうまく伝えられなかったものが、目の前の一杯には入っていた。
「僕、最初はただ“がっつりした豚骨ラーメン”って言ってたんです」
田中君は、少し照れながら言った。
「でも、それだけだとAIは、肉とか脂とかにんにくとか、とにかく足す方向に行っちゃったんですよね」
佐藤さんはうなずいた。
「まあ、そうなるだろうな。“がっつり”だけだと、AIは世間一般のがっつりを持ってくるからね」
田中君は続けた。
「でも、僕が欲しかったのは、食べきれないほどの量じゃなかったんです。食べ終わったあとに、もう当分いいやってなるラーメンでもなかった。満足できて、でも次もまた食べたいと思えるラーメンだったんです」
その言葉を聞いた佐藤さんの奥さんは、少しだけ笑った。
「うん。たぶん、そうだと思った」
佐藤さんは、その一言を聞いて頭を抱えた。
「参ったな……。私が今から説明しようと思ってたことを、もう見てたのか」
奥さんは、何でもないことのように言った。
「だって、田中君の話を聞いていたら、量を増やしたい人の言い方じゃなかったもの」
田中君は驚いた。
「え、そうなんですか?」
奥さんはうなずいた。
「本当に量を食べたい人は、“もっと肉を乗せたい”とか“山盛りにしたい”って言うの。でも田中君は、“二郎ほどじゃない”って言ってたでしょう。そこでもう、ただのボリュームではないんだなと思ったの」
佐藤さんは、まだ少し悔しそうに笑っていた。
「すごいだろ、私の奥さん」
奥さんは、軽く流した。
「はいはい。でも、あなたもずいぶん成長したよね。昔なら、ここで肉を足せばいいって言ってたもの」
「それは……まあ、否定できない」
佐藤さんは苦笑いした。
田中君は、そのやり取りを見ながら、ようやく腹に落ちた気がした。
AIに伝えるべきことは、単なる単語ではない。
「がっつり」と言うだけでは足りない。
自分が何を欲しいのか。
何は欲しくないのか。
どこまでは許せて、どこからは違うのか。
それを伝えないと、AIは世間一般の答えを出してくる。
AIの出力がズレる時、AIだけが間違っているとは限らない。
自分の中で、まだ言葉になっていないものがある。
その曖昧さが、出力にそのまま出てくる。
田中君は、佐藤さんに言った。
「入力設計って、こういうことなんですね」
佐藤さんは少し驚いた顔をしたあと、うれしそうに笑った。
「そう。まさにそれだよ」
田中君は続けた。
「AIに何かを頼む時って、正しい言葉を並べることだと思ってました。でも違うんですね。自分が本当に欲しいものを、ちゃんと見つけて、それを伝えることなんですね」
佐藤さんは、深くうなずいた。
「そうだね。AIの出力は、入力にかなり引っ張られる。だから入力が曖昧だと、出力も世間一般の平均に寄る。でも、伝えるべきことをしっかり伝えれば、出力は一気に変わる」
奥さんは、空になった丼を見ながら言った。
「料理も同じよ。材料を足す前に、何を食べたいのかを決めないとね」
佐藤さんは、また頭を抱えた。
「参ったな。本当に全部持っていくな」
田中君は笑った。
そして、はっきり理解した。
AIにうまく答えてもらうために必要なのは、難しい専門用語ではない。
自分の中にある曖昧な欲求を、相手に伝わる形にすること。
それができた時、AIの出力は変わる。
そして、それができない時、AIは自分の曖昧さをそのまま映してくる。
田中君にとって、その一杯のラーメンは、ただの夕食ではなかった。
AIの入力設計が、出力に直結する。
そのことを、頭ではなく舌と腹で理解した瞬間だった。
田中君は、しばらく考えてからぽつりと言った。
「僕、ラーメンが食べたかったんですかね。それとも、ラーメンを食べて満足したかったんですかね」
その言葉に、佐藤さんは少しだけ笑った。
「いいところに気づいたね」
林さんも、腕を組みながらうなずいた。
「若い時って、そこがごちゃごちゃになるんだよな」
田中君は、少し恥ずかしそうに頭をかいた。
「がっつりしたものが食べたい。お腹いっぱいになりたい。豚骨が食べたい。でも二郎ほどじゃない。食べたあとに幸せになりたい。そういうのを全部まとめて、AIに投げちゃったんですよね」
佐藤さんは言った。
「そう。だからAIは、全部を満たそうとしたんだよ」
肉を増やす。
脂を足す。
にんにくを入れる。
野菜を山盛りにする。
スープを濃くする。
満腹感を出す。
AIからすれば、田中君の言葉に反応しただけだった。
けれど、田中君の中では、まだ整理されていなかった。
本当に欲しかったのは量なのか。
濃い味なのか。
豚骨らしいコクなのか。
食後の満腹感なのか。
それとも、「ああ、うまかった」と思える満足感なのか。
田中君は、丼を見ながら言った。
「僕、自分でも何が欲しいのかわかってなかったんですね」
林さんは、少し笑った。
「そんなの、みんな通ってきたよ」
「林さんもですか?」
「あるよ。腹が減ってる時に、焼肉も食べたい、ラーメンも食べたい、カレーも食べたい、唐揚げも食べたいってなるだろ。でも実際に全部食べたら、幸せどころか苦しくなるだけだ」
佐藤さんも苦笑いした。
「私たちも若い頃はそうだったね。足せば満足すると思ってた。量を増やせばいい。味を濃くすればいい。肉を増やせばいい。仕事でも同じで、情報を足せばいい、機能を足せばいい、人を増やせばいいって思ってた」
田中君は顔を上げた。
「仕事でも、ですか?」
佐藤さんはうなずいた。
「そう。欲しい結果が決まってないまま、材料だけ足していくと、だいたい重くなる。料理も、仕事も、AIへの入力も同じだよ」
林さんが続けた。
「AIに言葉をぶつけるのは悪くない。むしろ最初はそれでいい。でも、出てきた答えを見て、自分が本当に欲しかったものは何かを考えないといけない」
田中君は、ゆっくりとうなずいた。
最初、ラーメンを探していた。
けれど、本当に探していたのは、ラーメンそのものではなかった。
お腹が満たされること。
味に満足すること。
食べ終わったあとに後悔しないこと。
そして、また食べたいと思えること。
それらを全部まとめて、田中君は「がっつり」と呼んでいた。
だからAIは迷った。
いや、迷ったように見えた。
実際には、田中君の中の整理されていない欲望が、そのままAIの出力に映っただけだった。
佐藤さんは言った。
「AIは、君の欲望を整理してから答えるわけじゃない。君が渡した言葉をもとに答える。だから、こっちの中がごちゃごちゃしていると、出力もごちゃごちゃしやすい」
田中君は、小さく笑った。
「じゃあ、AIがカオスになったんじゃなくて、僕の入力がカオスだったんですね」
林さんは笑った。
「まあ、そういうことだな」
佐藤さんの奥さんが、台所から顔を出して言った。
「でも、それに気づけたなら十分よ。最初からきれいに言える人なんて、あまりいないから」
佐藤さんは奥さんの方を見て、また頭を抱えた。
「参ったな。いいところを全部持っていくな」
奥さんは、楽しそうに笑った。
「だって、田中君はラーメンの話をしているようで、自分が何を求めているのかを考えていたんでしょう?」
田中君は、はっとした。
そうだった。
AIにラーメンを聞いたつもりだった。
でも本当は、自分が何を食べたいのか、自分が何で満足するのかを探していた。
佐藤さんは、田中君を見て言った。
「それが入力設計だよ。AIにうまく頼むっていうのは、きれいな命令文を書くことじゃない。自分が本当に欲しい結果を、相手に伝わる形にすることなんだ」
田中君は、深くうなずいた。
「ラーメンが食べたいのか、ラーメンで満足したいのか。そこを決めないと、AIも迷うんですね」
林さんは、少し笑って言った。
「人間相手でも同じだけどな」
田中君は、その言葉に妙に納得した。
AIへの入力は、ただの質問ではない。
自分の中にある欲望や目的を整理する作業でもある。
そのことを、田中君はラーメン一杯でようやく理解した。
その夜、田中君が佐藤さんの家に着くと、なぜか林さんもいた。
田中君は、玄関先で少し固まった。
「あれ、林さんも来てたんですか?」
林さんは、いつもの調子で片手を上げた。
「おう。俺も呼ばれた」
田中君は佐藤さんの方を見た。
「どういうことですか?」
佐藤さんは、少し楽しそうに笑った。
「いや、田中君がなかなか面白いところで困っているみたいだったからね。林くんにも、何か心当たりがないか聞いてみたんだ」
林さんは、少し考えてから言った。
「ああ、そういえば、LINEでラーメンのこと聞いてきたな」
田中君は、少し恥ずかしそうにうつむいた。
「がっつりしたラーメンが食べたいけど、AIに聞いたらとんでもないものが出てきたっていう話です」
林さんは笑った。
「そうそう。なんか、彼らしくないような、らしいような相談だったな」
「らしいような、って何ですか」
「いや、田中君って、真面目に考えすぎるところがあるだろ。ラーメンくらい好きに食えばいいのに、AIに相談して、さらに悩んでるのが田中君らしい」
田中君は何も言い返せなかった。
林さんは続けた。
「で、俺は適当に答えたんだよ。そんなにがっつりしたいなら、とことんがっつりにしてみたらいいんじゃないのって」
佐藤さんは、そこでうなずいた。
「その返事が、田中君の考えを動かしたんだよ」
林さんは、少し驚いた顔をした。
「え、あれがですか?」
「そう。田中君はそこから、“がっつりとは何か”を考え始めた。量なのか、脂なのか、満腹感なのか。それとも、また食べたいと思える満足感なのか」
林さんは、少し照れくさそうに頭をかいた。
「俺、そこまで考えて返してないですよ」
佐藤さんは笑った。
「わかってる。でも、現場でもそういうことはあるだろう。何気ない一言で、誰かの考えが進むことがある」
林さんは、少しだけ黙った。
「まあ……ありますね」
佐藤さんは、台所の方をちらりと見た。
「それでね、林くん。結論を見てみたいと思わないかい?」
「結論?」
「田中君がAIに相談して、自分で考えて、君の一言で少し方向が変わった。その結果、どんなラーメンになるのか」
林さんは、少し笑った。
「それは、ちょっと気になりますね」
佐藤さんは、満足そうに言った。
「今夜は妻が料理を作ってくれる。よかったら一緒に食べていかないか」
林さんは、台所から漂ってくる香ばしい匂いに気づいて、少しだけ目を細めた。
「それ、断る理由ないですね」
田中君は、そこでようやく気づいた。
自分のラーメン相談は、ただの夕飯の話ではなくなっていた。
AIに投げた曖昧な欲望。
林さんの雑だけど妙に背中を押す一言。
佐藤さんの整理。
そして、佐藤さんの奥さんが作る実際の一杯。
それらがつながって、ひとつの答えになろうとしていた。
林さんは、田中君を見て言った。
「で、田中君。結局、どんなラーメンが食べたかったんだ?」
田中君は、少し考えてから答えた。
「ラーメンが食べたかったというより、ラーメンを食べて満足したかったんだと思います」
林さんは、少し驚いたように笑った。
「おお。ずいぶん深いラーメンになってるな」
佐藤さんは、うれしそうにうなずいた。
「そう。そこが今日の本題なんだよ」
その時、台所から佐藤さんの奥さんの声がした。
「本題はいいけど、冷める前に食べてね」
佐藤さんは慌てて立ち上がった。
「はいはい。今行きます」
林さんは小さく笑った。
「佐藤さん、家だと弱いんですね」
佐藤さんは、少し困ったように言った。
「違う。これは役割分担だ」
台所から、すぐに奥さんの声が返ってきた。
「そういうことにしておいてあげる」
田中君と林さんは、思わず笑ってしまった。
✨田中君シリ-ズです。ご興味がございましたらお楽しみください。
田中君シリーズを読んでいただき、ありがとうございます。
「続きも読みたい」「今回の記事が役に立った」と感じていただけましたら、スキ、コメント、チップで応援していただけるとうれしいです。
皆さまからの応援は、田中君のおやつ、林さんの胃薬、佐藤さんのコーヒーブレイクに使わせていただきます。
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