⚪️掌編小説|蜜柑堂書店 第十一話
第十話からの続き
あれは確か歓迎会の後だったから、もう一月以上前のことだ。ぼくも蜜柑堂書店のLINEグループに入れてもらった。
メンバーは、蜜柑さんと、ルナちゃん、ヒーラギさん、引きこもりのケンジさん、そしてぼく。
***
最初は身体ごと地面から浮きそうなぐらい高揚したのだけれど、なんとなく、どうなのだろう。
期待外れとは言うまい。
けど、蜜柑さんと繋がったからといって急にメッセージのやり取りが始まるわけでもないし、それにユーザー名が「蜜柑堂書店 店主」だからこれはきっと仕事用アカウントなのだろう。
***
以来誰も何も発信しないのでこのグループは意味があるのだろうか、などと思いはしたものの、じゃあぼくが何かを、とはならないのもまた悩ましい。
ところが、今月に入ってから突然ヒーラギさんが謎のつぶやきを始めた。
六月一日
斜めに進んで下さいぃ
六月二日
強いです!強すぎます!
六月三日
考えさせてください、おほほほ
六月四日
しばらくぶりのエッチですから
六月五日
傷を舐め合うのでふ
***
誰もリアクションしないのも怖い。
***
六月六日
なーんちゃって、ですって?
六月七日
つねったりひっぱったりするのもありですよ
六月八日
のんびり生きましょう? のーんびり
六月九日
にゃおーん、ゴロゴロ
六月十日
おほほほ、おーほほほほ
六月十一日
いーじゃないですか、いーじゃないですか
そしてそれは、始まったときと同じぐらい唐突に終わった。
***
蜜柑さんに、ヒーラギさんのあれ、何なのですかと訊ねてみた。知らないのはぼくだけで実はみんな知ってるのかもしれない。知っててスルーしているのかもしれない。
「さあ、何かしらね?」
蜜柑さんも知らなかった。
***
数日後、LINEグループにルナちゃんからメッセージが入った。
「曲にしてみたよ」
六月の寝言♡
【Aメロ】
斜めに進んで下さいぃ
強いです!
強すぎます!
考えさせてください、おほほほ
しばらくぶりのエッチですから
傷を舐め合うのでふ
なーんちゃって、ですって?
つねったりひっぱったりするのもありですよ
のんびり生きましょう?
のーんびり
【Bメロ】
にゃおーん、ゴロゴロ
肩の力をぬいて
おほほほ、おーほほほほ
ほら、笑ってみて
【サビ】
いーじゃないですか、いーじゃないですか
それでいいじゃないですか
いーじゃないですか、いーじゃないですか
ゆっくりでいいじゃないですか
【Aメロ】
まっすぐじゃなくていい
少しずれて、ちょうどいい
指先でそっと確かめて
またひとつ、やわらぐ
だめならだめでいいし
よければそれで、もっといい
おほほほ、ってほどけてく
その顔がもう答えです
【Bメロ】
にゃおーん、ゴロゴロ
気まぐれでもいいのよ
おほほほ、おーほほほほ
今日はそれでいきましょう
【サビ】
いーじゃないですか、いーじゃないですか
それでいいじゃないですか
いーじゃないですか、いーじゃないですか
ゆっくりでいいじゃないですか
【Cメロ】
少しだけ、間をあけて
息を合わせて
つねったりひっぱったり
それも愛嬌でしょう?
【ラスサビ】
いーじゃないですか、いーじゃないですか
それでいいじゃないですか
いーじゃないですか、いーじゃないですか
ゆっくりでいいじゃないですか
***
ルナ、ちゃん?
(第十二話に続く)
*見出し画像は@羽さんの作品です。
*関連エピソード:第五話、第七話
