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⚪️掌編小説|蜜柑堂書店 第五話

第四話からの続き

 女子高生パンクロッカーとアラフォー(仮)のヒーラギさん、そしてぼくが残った。

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 今日はぼくの歓迎会だ。

***

 蜜柑さんはメッセージの通知音を確認したと思ったら「あら急用みたい。途中だけどごめーん。みんなで好きなだけ食べてってね」という言葉を残して去ってしまった。

 トラットリア『パミーナ』は書店からメトロ駅に向かって100mほど下ったところにある。

 そこに蜜柑さんが四人分の席を設けてくれた。そして、年に数回だけ出勤する引きこもりのケンジさんという人を除けば、この四人こそが蜜柑堂書店の全スタッフということになるらしい。

***

 蜜柑さんはぼくをふたりに紹介すると「改めて。蜜柑堂書店にようこそ」と言った。15分ほど前の出来事である。

 すると女子高生パンクロッカーが「シクヨロー」と言って、アラフォー(仮)のヒーラギさんが「おほほほ」と笑った。

 かねてより蜜柑さんの採用基準には不明瞭なところがあったけれど、これで益々分からなくなってしまった。ぼくは、申し訳ないけど凡人ですよ?

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「おじさん、それ食べないの?」

 片耳五個ピアスがそう訊いてきた。ぼくのまだ手を付けていないペパロニピザと自家製ソーセージのいずれかを狙っているのだ。この子はさっき蜜柑さんの皿からソーセージを頂戴していたからおそらくこれか──いやそういうことじゃなくて。

「おじさん呼びは酷いよ」
「え。歳上だし。社員さんでしょ?」
「そうだけど」
「おじさんじゃん」
「いやいや。じゃあこの人のことはなんて呼ぶの?」

 ぼくはアラフォー(仮)のヒーラギさんを指差した。

「……呼ばない」
「おほほほ」

 いや呼べよ。何だその雑な回避は。ヒーラギさんも何で笑ってんだよ。

「呼ばないのは無しだよ」
「じゃあ、おねえさん」
「おほほほ」
「じゃあ、ぼくは? おじさんじゃないでしょ?」
「え」
「ほら言ってごらん。おにい? ん?」
「おにい、さ、さ」
「ほらほら聞こえないよ?」
「おにいちゃん」

 何で真っ赤になってんだよ。こっちが照れるわ。

***

 よくよく聞いてみれば、女子高生パンクロッカーはルナちゃんと言って平日夕方のみのアルバイトだった。なので今後も基本的に会うことはないだろう。それは別に構わない。問題は今だ。

 彼女はとにかく腹が減るらしい。肉が大好きで、自家製ソーセージだけでは飽き足らず、ぼくのピザからペパロニだけを取り上げて、おまけにシェフを呼んで唐揚げは出来るか訊ねている。シェフは戸惑いつつもまあ蜜柑堂さんのあれだからどうとかこうとか言いながらメニューにない唐揚げを用意してくれた。

***

 アラフォー(仮)のヒーラギさんは土日だけのアルバイトだそうだ。なのでやはり彼女とも基本的に会うことはないはずだ。というか、この店にはバックアップがいないのか。

「あー気づいちゃいました?」

 ルナちゃんが複数の肉を頬張る。

「おほほほ」

 ヒーラギさんは赤ワインをしこたま飲んでいる。

「何だか眠くなってきちゃったわ。今夜は何処かにお泊まりしちゃおうかしら」
「あ、どうぞご自由に」
「おほほほ」

 蜜柑さん。いろいろ不安です!

第六話に続く)


*見出し画像は羽さんの作品です。


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