ふわっとするめまい、雨の日の頭痛。東洋医学が「水滞」と呼ぶ体の巡り不良と半夏白朮天麻湯の話

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皆さん、こんにちは。悠々漢方です。
「ゆらぐ心とからだの漢方ケア」、4日目のテーマは「めまいと頭痛」です。
月曜から「不安」「不眠」「夜間頻尿とこむら返り」とお届けしてきました。今日は、「ゆらぐからだ」の代表格とも言える、めまいと頭痛の話です。
「雨が降る前に決まって頭が痛くなる」「曇りの日はなんとなくふわふわする」──そんな経験をお持ちの方は、思いのほか多いのではないでしょうか。近年、こうした症状は「天気痛(てんきつう)」や「気象病(きしょうびょう)」という言葉とともに医学的な文脈でも注目を集めています。気圧の変化が内耳に影響し、自律神経を乱すことでめまいや頭痛が引き起こされるメカニズムが、少しずつ解明されてきました。

気象と体調の関係を専門的に研究する医師の間では、この「気象病」が特に30〜50代の女性に多く見られることが指摘されています。低気圧が接近するたびに仕事や家事を中断せざるを得ない、そんな「天気予報を見るのが怖い」という声も珍しくありません。
東洋医学では、この「天候で揺れる体」に、何千年も前から向き合ってきた歴史があります。そしてその答えは、「水」にありました。
🌸 美咲
「悠々さん、実は私、梅雨の時期になると決まってめまいがひどくなるんです。朝、起き上がると部屋がぐるぐる……というより、ふわふわと浮いてる感じ? あと頭も重くて。低気圧が来るとダメで、天気予報アプリが怖いくらいです」
🍵 悠々
「ああ、まさに「天気痛」ですね。その「ふわふわ感」、東洋医学では体に余分な水が溜まっているサインかもしれないんですよ」

🌸 美咲
「水が溜まってる? むくみとは違うんですか?」
🍵 悠々
「むくみは外から見えやすいですが、東洋医学が言う「水滞(すいたい)」は、体の内側の水の偏りや滞りのことで──頭の中にも関係してくるんです。今日はそこを一緒に読み解いていきましょう」

めまいには種類がある──西洋医学が見る「回転性」と「浮動性」の違い
めまいを訴えて医療機関を受診する方は非常に多く、その症状は大きく2つに分類されます。
一つは「回転性めまい(かいてんせいめまい)」。自分自身や周囲の景色がぐるぐると回って見えるタイプで、耳鳴りや難聴を伴うことが多く、急性期の末梢前庭性障害(内耳のトラブル)が主な原因とされます。良性発作性頭位変換性めまい(BPPV)やメニエール病などが代表例です。発症は急激で、激しい吐き気を伴うこともあります。

もう一つが「浮動性めまい(ふどうせいめまい)」。頭がふわふわと宙に浮くような感覚、あるいは足元がおぼつかない感じ。こちらは慢性化しやすく、貧血や血圧の異常、自律神経の乱れ、心循環器系の問題などが背景にあることがあります。また、天候変化や低気圧の影響を受けやすい「気象関連性めまい」もこちらに含まれることが多く、日常生活への支障が長期に及ぶ方が少なくありません。

美咲さんが訴えた「ふわふわ感」は、典型的な浮動性めまいの特徴です。
一点、大切な注意を。初めて強いめまいが起きた場合や、麻痺・言語障害・激しい頭痛を伴う場合は脳血管疾患の可能性もあります。「いつものめまい」と思い込まず、まずは医療機関を受診することが最優先です。
🌸 美咲
「私のはたぶん浮動性めまいですね。ぐるぐる回るというよりは、ふわっとする感じなので。それが「水が溜まっている」ことと関係しているんですか?」
🍵 悠々
「東洋医学では、体の中の「水(すい)」は常に巡り続けていなければなりません。それが滞ったり、偏った場所に集まったりすることを「水滞(すいたい)」と言います。
水滞が起きると、体にさまざまなサインが出てきます。めまい・耳鳴り・頭の重さ・頭痛、それからむくみや冷え、吐き気、車酔いのしやすさ──そして最も特徴的なのが、雨の日や低気圧が来るときに症状が悪化すること。天気によって体調が変わる方は、東洋医学的に「水滞体質」の可能性がとても高いんです」

🌸 美咲
「え、全部当てはまる……! むくみも冷えも、車酔いもひどくて。梅雨と台風シーズンが毎年つらいです」
🍵 悠々
「そうでしょうね。水は本来、脾(ひ:消化器系)の力で全身に巡らせるものです。胃腸が弱く、冷え性の方は脾の力が低下しやすく、水が滞りやすい。だから今日ご紹介する漢方処方は、「水を巡らせながら胃腸も整える」という二刀流のアプローチをとっているんです」
半夏白朮天麻湯──「水の滞り」と「頭の不調」に向き合う漢方処方
東洋医学では、浮動性のめまいや頭痛の根本には「水滞と胃腸の弱り」があると考えます。昭和の名医・矢数道明もその臨床記録の中で、浮動性のめまいに対する処方の重要性を繰り返し強調しました。その処方が──半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)です。
この処方が適している方のプロフィールは以下の通りです。
比較的体力が低下している(がっちりした体格ではなく、どちらかと言えば虚弱な傾向)
胃腸が弱く、食欲が落ちやすい、あるいは消化不良が多い
下肢(足腰)が冷えやすい
めまいや頭痛が慢性化している、あるいは天候によって変動しやすい
構成生薬は多岐にわたりますが、大きく5つの役割チームに分けられます。
「水を巡らせるチーム」──沢瀉(たくしゃ)・白朮(びゃくじゅつ)・茯苓(ぶくりょう)が余分な水を流す役割を担います。
「めまいと頭痛を止めるチーム」──天麻(てんま)が風の邪気を鎮め、頭の揺れを静めます。「風に揺れる木を根元からしっかり支える」ような働きです。
「お腹を温めるチーム」──乾姜(かんきょう)・生姜(しょうきょう)が胃腸の冷えを追い払い、水の巡りを助けます。
「胃腸を元気にして気を作るチーム」──人参(にんじん)・陳皮(ちんぴ)・半夏(はんげ)・黄耆(おうぎ)・麦芽(ばくが)が脾の力を高め、水が再び滞らないよう土台を整えます。
「胃の熱を少し抑えるチーム」──黄柏(おうばく)が全体のバランスを取ります。
このように半夏白朮天麻湯は、単に「めまいを止める」のではなく、水の滞りの根っこにある胃腸の弱さから丁寧に整える処方です。効能効果の記載は「胃腸虚弱で下肢が冷え、めまい、頭痛があるもの」とされています。

🌸 美咲
「半夏白朮天麻湯……! 私みたいに「胃腸が弱くて冷え性でふわふわめまい」という人にぴったりそうですね」
🍵 悠々
「まさに。ただ、めまいに使う漢方はいくつかあるので、使い分けも少し知っておくといいですよ。
例えば、水滞の中でも比較的体力がある方──口が渇く、尿量が少ない、むくみが強いという場合には五苓散(ごれいさん)がよく使われます。一方で、半夏白朮天麻湯は体力が低下していて胃腸が弱い方向きです。
また、回転性の強いめまい(ぐるぐる感が強く、吐き気も激しい)には、まず苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)を検討することもあります。自分の体質と証(しょう)に合った処方を選ぶために、可能であれば漢方の専門家や薬剤師への相談をおすすめします。
副作用としては、まれに発疹やじん麻疹が起きることがあります。服用を始めてから気になる変化があればすぐに中止して、医療機関または薬剤師に相談してください」
🌸 美咲
「五苓散と半夏白朮天麻湯と苓桂朮甘湯……使い分けがあるんですね。体質によって全然違うんだ」
🍵 悠々
「そうなんです。「同じめまい」でも体質が違えば処方も違う──これが漢方の面白いところでもあります。市販でも購入できますが、自分の体質をまず確認してからの方が、より効果を感じやすいですよ」
「水」を巡らせる、3つの日常養生
水滞を整えるには、漢方処方だけでなく毎日の習慣が大切です。今日からできる3つの養生をご紹介します。
① 水は「量より温度と質」で取る
水滞の方は、冷たい飲み物を大量に摂取することで、かえって水の巡りが悪くなることがあります。常温または温かい飲み物を少量ずつ、こまめに補給する習慣が基本です。梅雨や台風シーズンには、生姜やシナモンをティーに加えて内側から温める工夫を。「水を飲むこと自体」は大切ですが、温度と質、そして水の「出口」を整えることがセットです。

② 胃腸を「冷やさない・疲れさせない」食事を
脾(消化器系)が弱ると水の巡りが滞ります。脾に負担をかけやすいものは、生もの・冷たいもの・脂っこいもの・甘いもの(砂糖)の過多です。反対に脾を助ける食材として、かぼちゃ・さつまいも・山芋・とうもろこし・はと麦(よくいにん)・陳皮(みかんの皮)などを意識的に取り入れてみてください。一度に食べすぎず、少量ずつ温かい状態でいただくことが胃腸への一番の優しさです。

③ 「水分の出口」を確保する軽い運動と入浴
水が溜まりやすい方は、汗をかく習慣が助けになります。ただし、激しい運動で体力を消耗すると胃腸がさらに弱くなることもあるので、ゆっくりとしたウォーキングや湯船でのリラックス入浴が安心です。低気圧が来る前日から半身浴を日課にするだけでも、水の偏りを少しずつ解消する助けになります。

🌸 美咲
「あたたかい飲み物を少しずつ、胃腸を冷やさない、ちゃんと汗をかく……! 今まで「水をたくさん飲めば健康」と思って、冷えた水をがぶ飲みしてたかも……」
🍵 悠々
「水は巡ってこそ意味がある──東洋医学の水の考え方は、ここに尽きます。飲む量だけでなく、温度と出口を整えることで、体の中の「水の流れ」が少しずつ変わってきますよ。

さて、いよいよ明日の金曜日で今週の「ゆらぐ心とからだの漢方ケア」シリーズが最終回を迎えます。テーマは「甲状腺機能低下症とPMS──血の巡りが乱れるとき」。ホルモンの波に揺れる体に、東洋医学はどんな視点で向き合うのか。「血(けつ)」をキーワードに、月曜から続いてきたシリーズの締めくくりをお届けします」
🌸 美咲
「甲状腺とPMS、ちょうど気になっていたテーマです! 今週ずっと読んできてよかった。明日も楽しみにしてます」





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