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夜中に目が覚めて眠れない。それ「心腎不交」のサインかもしれない

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皆さん、こんにちは。悠々漢方です。

「ゆらぐ心とからだの漢方ケア」、2日目のテーマは「不眠」です。

昨日は、夜になると胸がドキドキして眠れない「不安」のお話をしましたが、今日は不眠そのものを深掘りしていきます。眠れない夜が続くとき、薬を使うべきか迷う方も多いのではないでしょうか。

中国・南京の研究グループが医学誌「Frontiers in Pharmacology」(2026年3月号)に発表した研究が、高齢者の不眠症治療における「薬の選び方」を改めて問い直しています。

高齢者の不眠症に長く使われてきた「非ベンゾジアゼピン系催眠薬(非BZRA)」──ゾルピデムなどのいわゆる「睡眠薬」──には、高齢者にとって深刻な安全上の懸念があることが改めて示されました。一方、新しいタイプの薬「二重オレキシン受容体拮抗薬(DORA)」が、より安全な選択肢として注目されています。ただし、その長期的な実臨床でのエビデンスはまだ積み上げ中です。

眠れない夜と、薬との付き合い方。今日は最新の医療情報と、東洋医学の視点を合わせてお届けします。

🌸 美咲
「悠々さん、最近ちゃんと眠れなくて。寝ようとすると目がぱっちり冴えてしまって、ようやく寝ても夜中に目が覚めるんです。市販の睡眠改善薬を試したんですが、なんか翌朝ぼーっとして……」

🍵 悠々
「それ、すごくよくある悩みですよ。市販の睡眠改善薬はジフェンヒドラミンという成分が多く、一時的に眠気を誘う作用がありますが、翌朝の頭のもやつきが残りやすいんです。眠れない原因にアプローチするのではなく、"眠気を出す"だけのものなので、根本的な解決には繋がりにくいんですよね」

🌸 美咲
「じゃあ病院でもらう睡眠薬ならいいんですか?」

🍵 悠々
「それも、選ぶ薬によって大きく変わります。特に年齢を重ねた方に向けては、最新の研究が薬の選び方を変えてきているんです。今日はその話から始めましょう」

「睡眠薬」の常識が、今まさに書き換えられている

従来、不眠症に広く使われてきたのが「非ベンゾジアゼピン系催眠薬(非BZRA)」と呼ばれる薬の仲間です。ゾルピデム(マイスリー)などが代表的で、日本でも広く処方されてきました。

しかし高齢者に対してこれらを使う場合、問題が起きやすいことが長年指摘されています。

  • 翌日への眠気の持ち越し(転倒・骨折リスクの上昇)

  • 認知機能への影響

  • 薬への依存と、やめたときのリバウンド不眠

今回の研究が注目するのは、これに代わる新しいタイプの薬「二重オレキシン受容体拮抗薬(DORA)」です。スボレキサント(ベルソムラ)やレンボレキサント(デエビゴ)がその代表例。

DORAの仕組みは従来薬と根本的に異なります。「眠気を強制的に引き起こす」のではなく、「脳の覚醒を促すオレキシンという物質の働きをブロックする」──つまり、自然な眠りへの移行をサポートするイメージです。

研究では、DORAは高齢者に対してより安全性が高い可能性が示されており、特に転倒リスクや認知機能への影響の少なさが注目されています。ただし、どちらの薬も専門医の判断のもとで使用するものであり、長期使用する場合は医師との相談が不可欠です。

また、世界的な指針でも、不眠症の第1選択治療は薬ではなく「認知行動療法(CBT-I)」──睡眠に関する考え方の癖を修正する心理療法──とされています。薬はあくまで補助的な手段です。

🌸 美咲
「なるほど……薬にも種類があるんですね。でも悠々さん、漢方では不眠ってどう捉えるんですか?」

🍵 悠々
「東洋医学では、不眠の原因を大きく2つのパターンに分けて考えます。

ひとつは『心火上炎(しんかじょうえん)』──心(しん)に熱がこもって、気持ちが高ぶりすぎている状態です。イライラしていたり、頭が冴えすぎて眠れない、考えごとが止まらない、という方はこのタイプが多い。

もうひとつは『心血不足(しんけつふそく)』──昨日もお話しした、心に届く血の栄養が足りていない状態です。眠りが浅い、夢ばかり見る、寝ても疲れが取れない、というのがこちらのパターン。

そして更年期世代の不眠に多いのが『心腎不交(しんじんふこう)』──心と腎の連携が乱れた状態です」

🌸 美咲
「心腎不交……? なんですか、それ?」

🍵 悠々
「少し深い話なんですが、東洋医学では心(上・熱・陽)と腎(下・水・陰)が互いにバランスを取り合って、体のホメオスタシスを保っていると考えます。腎が十分な陰(冷静さ・潤い)を持っていれば、心の熱を下から抑えてくれる。でも、加齢やホルモン変化によって腎陰が衰えると、心の火が上がりっぱなしになってしまう。これが『心腎不交』です。

ほてり、寝汗、夜中に目が覚めてからずっと眠れない、手足の裏が熱い──こんな症状と一緒に現れる不眠は、このパターンが多いんです。特に更年期前後の女性に非常に多く見られます」

不眠の漢方処方の代表「酸棗仁湯」のはたらき

不眠に対する漢方処方として最もよく知られているのが、「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」です。

主役の生薬「酸棗仁(さんそうにん)」は、サネブトナツメという植物の種を乾燥させたもの。鎮静・催眠作用を持ち、古くから「不眠の生薬」として使われてきました。現代の研究でも、酸棗仁の成分がGABA受容体(脳の「落ち着け」スイッチ)に働きかける可能性が確認されています。

酸棗仁湯は5つの生薬から構成されています。

  • 酸棗仁(さんそうにん)──神経を鎮め、眠りを深める

  • 川芎(せんきゅう)──血の流れをよくし、頭のぐるぐるを鎮める

  • 知母(ちも)──体の熱を冷ます

  • 茯苓(ぶくりょう)──神経を落ち着かせ、水の偏りを整える

  • 甘草(かんぞう)──全体を調和させる

特に「眠りが浅い」「夢が多い」「寝ても疲れが取れない」という心血不足タイプの不眠に向いています。昨日ご紹介した加味帰脾湯は「疲れて気力も落ちた不眠」、酸棗仁湯は「それほど虚弱ではないが、神経の高ぶりで眠れない不眠」──この違いも覚えておくと役立ちます。

🌸 美咲
「漢方と西洋薬って、一緒に使ってもいいんですか?」

🍵 悠々
「組み合わせによっては可能ですが、必ず医師か薬剤師に確認してから。自己判断で両方始めるのは避けてほしいんです。

でも、一つ知っておいてほしいことがあります。睡眠薬に頼ることに罪悪感を持つ必要はありません。眠れない夜が続くことの方が、体への負担はずっと大きいから。西洋薬の新しい選択肢(DORA)も、漢方のアプローチも、どちらも『眠れない苦しさから解放する』という同じゴールに向かっています。

大切なのは、あなたの不眠の原因が何なのかを把握すること。ストレスによる心の高ぶりなのか、体の疲弊による血の不足なのか、それとも更年期のホルモン変化に伴う腎陰の衰えなのか──原因が違えば、最適なアプローチも変わってくるんです」

🌸 美咲
「なるほど……不眠にも"タイプ"があるんですね。私は…… 昨日の"気と血の不足"タイプかな、やっぱり」

🍵 悠々
「美咲さんは夢が多いですか? 眠りが浅くて朝スッキリしない感じがありますか?」

🌸 美咲
「はい、両方あります」

🍵 悠々
「そうだとしたら、心血不足タイプの可能性が高いですね。まずは今日の養生からやってみましょう」

眠りの質を上げる、3つの漢方的養生

薬に頼る前に、毎日の積み重ねで眠りを整えていくことも大切です。

① 「陰の時間」を意識した就寝前ルーティン

東洋医学では、夜は「陰(静・冷・潤)」を養う時間です。スマートフォンやパソコンの強い光は「陽(動・熱)」を刺激し、眠りの準備を妨げます。就寝1時間前からはできるだけ画面を手放して、照明を落とし、静かに過ごしてみてください。「陰の空間」を意識的に作ることが、脳の切り替えスイッチになります。

② 「心の熱」を冷ます食材を夕食に

眠れない夜に、体が熱っぽい・ほてる感じがある方は「心の熱がこもっているサイン」かもしれません。夕食やおやつに、次のような食材を取り入れてみてください。

  • 百合根(ゆりね)──心を潤し、精神を安らかにします

  • 緑豆(りょくとう)──余分な熱を冷まします

  • ハス茶(蓮心茶)──心の興奮を静めます

  • 豆腐・はと麦──体を冷ます効果があります

逆に、夜の辛いもの・アルコール・チョコレートは「心の熱」を高めやすいので控えめに。

③ 「眠れなくても焦らない」という養生

不眠を悪化させる最大の原因の一つが「眠れないことへの不安」です。「今夜も眠れなかったら……」という焦りが心火を強め、さらに眠れなくなるという悪循環を生みます。

床に入って15〜20分眠れなければ、一度起き上がって別の部屋で静かに過ごし、眠気が来てからまた床に入る──これは認知行動療法(CBT-I)でも推奨される方法です。「眠れない」という状況に抵抗しすぎないことが、長い目で見ると回復への近道になります。

🌸 美咲
百合根! 茶碗蒸しとかに入ってるやつですよね。あれが不眠に効くなんて知らなかった。今夜やってみます」

🍵 悠々
「ぜひ。秋から冬のものですが、乾燥品なら年中手に入りますよ。

それと美咲さん、今日の話のまとめをすると──不眠には"原因のタイプ"があって、それによって最適なアプローチが変わること。睡眠薬も、選択肢によって高齢者への安全性が大きく異なること。そして東洋医学は、なぜ眠れないかの根っこを整えようとすること。

どれか一つが"正解"ではなくて、あなたの体に合ったものを選ぶことが大切です。明日は『夜間頻尿とこむら返り』──夜中に目が覚める、別の理由についてお話しします」

🌸 美咲
「夜間頻尿……! 私じゃないけど、お父さんがそれで悩んでた気がする。明日も楽しみにしてます!」


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