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理由のない不安とドキドキ、それ「気と血」の枯渇サインかも

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皆さん、こんにちは。悠々漢方です。

今週から「ゆらぐ心とからだの漢方ケア」というテーマで、月曜から金曜まで毎日お届けしていきます。加齢やストレス、季節の変わり目に体が出す様々なサインを、最新の医療情報と東洋医学の視点から一緒に読み解いていく週間です。ぜひ、5日間お付き合いください。

さて、一週間の始まりのテーマは「不安」です。

理由がよくわからないのに、なんとなく気持ちがざわざわする。ネガティブな考えがぐるぐると頭を回り続ける。夜になると胸がドキドキして、うまく眠れない──。

こうした症状は、精神科・心療内科の領域では「不安症(不安障害)」として診断・治療の対象になります。全般不安症、パニック症、限局性恐怖症など様々なタイプがあり、疲れやすさ・睡眠障害・息切れ・めまい・発汗・震えといった身体症状を伴うことも多いのが特徴です。

でも実は、こうした「こころのゆらぎ」は、特別な病気でなくても、日々の疲れやホルモンバランスの変化、加齢のプロセスの中で、誰にでも起こりえます。今日は、その「心のゆらぎ」に漢方はどう向き合うのか、加味帰脾湯(かみきひとう)というお薬を例に、一緒に考えていきましょう。

🌸 美咲
「悠々さん、最近なんか……理由もないのに不安で。夜、急にドキドキしてきたり、嫌なことばかり考えちゃったりするんです。仕事も別に追い詰められてるわけじゃないし、なんなんだろうって」

🍵 悠々
「美咲さん、それ、ちゃんと教えてくれてありがとうございます。実はそういう感覚、すごく多くの方が経験しているんですよ。"気のせい"でも"根性が足りない"わけでもなくて、体の中でちゃんとした変化が起きているサインなんです」

🌸 美咲
「体の変化……? こころの問題じゃないんですか?」

🍵 悠々
「東洋医学では、こころとからだは切り離せないものとして捉えています。不安感やドキドキ、眠れない夜──これらはすべて、体の内側の"流れの乱れ"から来ていると考えるんです。そして、その流れを整えることで、心が落ち着いてくる。今日はその話をしていきますね」

不安という症状を、西洋医学と東洋医学で読み解く

西洋医学では、不安症の治療に抗うつ薬(SSRI)や抗不安薬、睡眠薬などの薬物療法と、カウンセリングなどの精神療法が用いられます。患者さんごとに症状が大きく異なるため、個別化した対応が求められるのが現状です。

薬が効く方もいれば、副作用が気になって続けにくい方もいます。「薬に頼りたくないけれど、どうすればいいか分からない」という声も多く聞かれます。

そうした中で、近年注目されているのが漢方薬によるアプローチです。特に加味帰脾湯は、動物実験において、不安状態を評価する標準的な手法(高架式十字迷路試験)で抗不安作用が確認されています。さらに、強いストレスをかけたラットで「オキシトシン」──愛情ホルモンとも呼ばれる、安心感をもたらす物質──の分泌を増やすことも報告されています。

「漢方はなんとなく効く」ではなく、研究によってその作用が少しずつ解明されてきている。それを知るだけで、少し心強くなりませんか?

🌸 美咲
「オキシトシン……赤ちゃんを抱いた時に出るやつですよね? それを漢方が増やせるんですか?」

🍵 悠々
「面白いでしょう? それくらい、漢方薬は神経や内分泌の働きにも影響を与えているんです。東洋医学の言葉で説明しますね。

東洋医学では、感情や精神状態は『気(き)』と『血(けつ)』という2つの要素が深く関わっています。気は体全体のエネルギーの流れ、血は栄養を全身に届ける潤いのこと。これがきちんと流れて、十分に満たされているとき、人は心も体も安定しているんです。

でも──過労や心配ごと、睡眠不足、食事の乱れ──こういうことが続くと、気と血の両方が少しずつ消耗してしまう」

🌸 美咲
「消耗……。じゃあ、私も気と血が減ってる感じですか?」

🍵 悠々
「そのサインが『疲れているのに眠れない』『食欲がない』『気持ちが落ち着かない』なんですよ。特に、几帳面で頑張り屋さん、思い悩みやすい方は、知らないうちに気と血を使いすぎている場合が多いんです。美咲さん、思い当たることはありますか?」

🌸 美咲
「……めちゃくちゃあります。あと、最近ごはんも美味しく感じなくて」

🍵 悠々
「それも大事なサインです。胃腸は気と血を作る"工場"。工場が疲れると、作れるものが減って、心(しん)に届く栄養も足りなくなる。東洋医学では、こころの安定を担っているのは『心(しん)』という臓器で、心が血の栄養を失うと、不安・動悸・不眠が現れると考えます」

心(しん)を養う「加味帰脾湯」とはどんな処方か

加味帰脾湯は、江戸時代から日本でも使われ続けてきた、心を養う代表的な漢方処方です。その構成生薬を見ると、様々な役割を持つ生薬が絶妙に組み合わさっています。

心を静め、眠りを深めるのが「安神(あんしん)作用」の生薬群──酸棗仁(さんそうにん)、竜眼肉(りゅうがんにく)、遠志(おんじ)。これらは神経を落ち着かせ、気持ちをほぐす働きを持ちます。

エネルギーを補い胃腸を元気にするのが「補気(ほき)作用」の生薬群──人参黄耆(おうぎ)、白朮茯苓(ぶくりょう)、甘草大棗生姜。疲れで落ちた気を補い、気と血の"工場"である胃腸を立て直します。

血を補うのが当帰(とうき)で、気の滞りを解くのが木香(もっこう)──この「理気(りき)作用」が、心のつまった感じやイライラをほぐします。さらに、柴胡(さいこ)と山梔子(さんしし)が、精神的な興奮や熱こもりを静める「疏肝(そかん)作用」を担っています。

まるでオーケストラのように、様々な生薬が連携して「心を整える」という一つの目標に向かっているんです。

🌸 美咲
「なんか……私のために作られた薬みたいな気がしてきた(笑)。どんな人に向いているんですか?」

🍵 悠々
加味帰脾湯が特に向いているのはこんな方です。

・全身に倦怠感があり、食欲も落ちているのに、精神的な不安や不眠がある
・精神的なストレスや悩み事で、体力・気力が低下してしまった
・几帳面で心配性、人のことを気にしすぎてしまう
・夜になると胸がドキドキして眠れない

一言で言えば、"気を使いすぎて消耗した、真面目で繊細な方"のための漢方ですね」

🌸 美咲
「それ……まんま私かも(笑)。でも、自分で勝手に飲んでも大丈夫なんですか?」

🍵 悠々
「市販でも購入できますが、漢方薬は証(その人の体質や状態)に合わせてこそ効果を発揮します。特に持病がある方や他のお薬を飲んでいる方は、かかりつけ医か漢方専門の薬剤師さんに相談してから使うのが安心です。偽アルドステロン症などの副作用の可能性もゼロではないので、自己判断よりも専門家の目を通してもらうことをおすすめします」

「心のゆらぎ」と上手に付き合う、3つの養生

薬に頼る前にできる、毎日の小さな養生も大切です。

① 夜の「巡らせる時間」を作る

不安が強い方は、考えごとがぐるぐると止まらなくなりがちです。東洋医学では、「気の滞り」が不安を悪化させると考えます。夜寝る前に、10分でいいので呼吸に意識を向けるだけの時間を作ってみてください。鼻からゆっくり吸って、口からゆっくり吐く──それだけで、気の流れが少しほぐれていきます。

② 「補気・補血」の食材を意識する

気と血を補う食材を日常に取り入れることも、養生の基本です。

  • なつめ、竜眼肉(龍眼)、黒砂糖──心を養い、血を補います

  • 茯苓(ぶくりょう)入りのお菓子やお茶、百合根──神経を落ち着かせます

  • レバー、黒豆、ほうれん草、クコの実──血を補い、心を支えます

特に夜は、温かい白湯や甘みのある飲み物が、脾(胃腸)を優しく温めて気と血を作る手助けをしてくれます。

③ 「頑張りすぎ」に気づくことを養生にする

加味帰脾湯が必要になるほど気と血を消耗してしまう根本の原因は、多くの場合「頑張りすぎ」です。不安を感じたとき、それを「弱さ」ではなく「体からのSOSサイン」として受け取ってみてください。「今日は少し休もう」と決断できること自体が、漢方的な意味での養生なのです。

🌸 美咲
「なんか……不安を感じた時に、そこから逃げるんじゃなくて、体のサインとして受け取ればいいんですね。それって、すごく気持ちが楽になる考え方だな」

🍵 悠々
「そうなんです。東洋医学は、症状を"悪者"にしないんですよ。不安もドキドキも、体が一生懸命『ちょっと休んで、補充して』って教えてくれているメッセージ。加味帰脾湯の"帰脾"という名前も、脾(胃腸)に帰る──体の中心に戻るという意味を持っています。

今週は"ゆらぐ心とからだ"をテーマに、毎日少しずつ深掘りしていきましょう。明日は『眠れない夜と薬の選び方』──高齢者の不眠症治療に関する最新研究と漢方の視点をお届けします。ぜひ、また明日も来てくださいね」

🌸 美咲
「わあ、続きが楽しみです! 今夜は呼吸法、やってみます!」

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