レポート:教育者のためのソース原理1day講座|『ソース原理[入門+探求ガイド]』著者ステファン・メルケルバッハ氏来日特別企画
本記事は、NPO法人場とつながりラボhome’s vi/ティール組織ラボが主催した『教育者のためのソース原理1day講座|『ソース原理[入門+探求ガイド]』著者ステファン・メルケルバッハ氏来日特別企画』についてレポートしたものです。

『ソース原理[入門+探求ガイド]』著者ステファン・メルケルバッハ氏来日特別企画
「ソース原理×教育」という切り口で、ティール組織ラボ / NPO法人場とつながりラボhome's viの丸毛幸太郎(まるっち)がソース(創造の源となる役割)となって立ち上がった今回の企画には、東京、埼玉、長野、京都、滋賀、大阪、愛知、三重、兵庫、岡山、広島、島根、鳥取など全国各地から教育関係者が集いました。

ステファンの著書『ソース原理[入門+探求ガイド]』も掲げている方も📕
オンラインの事前講座を経ての当日は、ステファン(Stefan Merckelbach)及びパートナーのクローディーヌ(Claudine Merckelbach)の通訳を、人や組織、社会のさまざまな変容(Transformation)の通訳に取り組まれる福島由美さんにサポートを頂きながら、皆さん一人ひとりが互いへの安心と信頼、尊敬を感じつつプログラムが進められていきました。

今回の1day講座で扱われたソース原理(Source Principle)とは、経営コンサルタント、コーチであるピーター・カーニック氏(Peter Koenig)によって提唱された、人の創造性の源泉、創造性の源泉に伴う権威と影響力、創造的なコラボレーションに関する洞察・知見の体系です。
『ソース原理(Source Principle)』は、お金に対する一人ひとりの価値観・投影(projection)ついて診断・介入できるシステムであるマネーワーク(moneywork)の発明を機に発見・体系化されました。
そして、ソース原理の開発者ピーターには、世界各地にソース原理、マネーワークを学び、独自に発展させているお弟子さんに当たる人々がいます。
その1人であるトム・ニクソン氏の著作『すべては一人から始まる(原題:Work with Source)』が2022年10月に出版されたことで、国内に初めてソース原理が体系的に紹介されました。

今回のゲストであるステファン・メルケルバッハ氏(Stefan Merckelbach)もまた、ピーターにソース原理を学んだ1人であり、昨年10月に氏の著書の邦訳書である『ソース原理[入門+探求ガイド]―「エネルギーの源流」から自然な協力関係をつむぎ出す』が英治出版より出版されました。

ステファンはピーターから学んだソース原理をそのままの形で紹介するだけにとどまりまらず、ソース原理という新しい体系を生み出したピーターに敬意を表しながら、そのエッセンスを大切にしつつさらに発展させています。
その中で独自に生み出されたモデルが、今回のワークショップで本格的に紹介されることとなった『ソースジャーニー(The Source Journey)』です。

今回、実施された『教育者のためのソース原理1day講座』を振り返ると、『人が生まれた後、子ども時代から大人へと、自らの人生のソース(創造の源)として生きていくための旅路』についての探求を全国から集った仲間と共に深めていった、とても濃密な時間だったように思います。
以下、1day講座の体験と学びについて、この企画の開催に至るまでの背景についても触れながら紹介しようと思います。
今回の1day講座の開催背景
『教育者のためのソース原理1day講座』での学びをより深く理解するには、国内で育まれ、広がってきたソース原理にまつわるムーブメントについて概観することが役立ちます。
以下、今回の企画のソース(創造の源となる役割)であるまるっち(丸毛幸太郎)の開催についての想いも含めて、見ていければと思います。
場とつながりラボhome's viとは?
特定非営利活動法人場とつながりラボhome's viは『未来のあたりまえを今ここに』をパーパスとして掲げ、社会の一人ひとりが幸せになれる組織づくり・仕組みづくり・コミュニティづくりに挑戦する、場づくりの専門集団です。
2008年に設立されたhome's viはこれまで、国内外のさまざまなファシリテーション技法やコミュニケーション技法の調査研究と2014年以降の継続的な連続講座シリーズの実施、そして、これらの手法を用いたまちづくり活動、大学での講義、企業研修、組織変革といった活動に取り組んできました。
home's viの代表理事を務める嘉村賢州さんは、集団から大規模組織に至るまで、まちづくりや教育などの非営利分野から営利組織における組織開発やイノベーション支援に至るまで、規模の大小や分野を問わず、年に100回以上のワークショップを実施するファシリテーターとしての活動を積み重ねてきた、国内のファシリテーション実践の先駆者でもあります。
しかし、ある時から賢州さんは「折角いい対話が生まれても次に繋がらない」「働いている人の本当に多様な個性を生かせていない」と、感じるようになり以下のような、問いに突き当たったと言います。
(これは)ヒエラルキーという組織構造が阻んでいるのではないか?
人類は組織の作り方を間違えたんじゃないか?
このような中で賢州さんが出会ったコンセプトが「組織の問い直し」であり、フレデリック・ラルー氏の著した『Reinventing Organizations(組織の再発明)』でした。
2018年に邦訳出版された『ティール組織』(英治出版)は10万部を超えるベストセラーとなり、日本の人事部「HRアワード2018」では経営者賞を受賞、2019年にはフレデリック・ラルー氏の来日イベントも開催されました。

賢州さんは2018年に邦訳出版された『ティール組織』(英治出版)の解説者としての活動に加え、『次世代組織』の調査・研究を本格化させ、2020年頃からはティール組織に関する講座の実施や、国内外の情報を集めるポータルサイトのオープン・情報発信を行う有志の研究団体『ティール組織ラボ』としての活動をスタートさせました。
今回の講座で扱われたソース原理(Source Principle)は、上記のような新しい働き方・組織づくりに関する国内外の潮流の中で注目され始めたテーマであり、『ティール組織』著者フレデリック・ラルー氏もまた、「もし私が事前にソース原理を知っていたら、必ず『ティール組織』で紹介していた」と語っています。
加えて、上記のティール組織ラボが実施していた半年間のプログラムをきっかけに今回の1day講座のソースであるまるっち(丸毛幸太郎)は『ティール組織』、『ソース原理』の本格的な探求を開始し、2023年4月にhome's viに合流することとなります。
ソース原理の探求とステファンとの出会い
賢州さんは山田裕嗣さん、青野英明さんと共に『すべては1人から始まる―ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』の翻訳・監修に携わることとなり、home's viは2022年8月に京都で開催されたトム・ニクソン氏の招聘イベントを主催しました。
その後、『すべては1人から始まる』は日本の人事部「HRアワード2023」書籍部門にて入賞を果たすなど、ソース原理はビジネスの世界でも注目を集めることとなりました。
2023年7月に賢州さんは青野英明さん、RELATIONS株式会社の皆さん、吉原史郎さん・宮慶優子さんらと共にスイスを訪れ、そこで初めて賢州さんとステファンは対面。
その後も青野英明さんが中心となって、2023年年末から2024年年明けにかけてステファンとパートナーであるクローディーヌ(Claudine Merckelbach)の来日が実現しました。
さらに、2024年10月にはステファンとクローディーヌの再来日が実現。
RELATIONS株式会社による東京、大阪、博多でのソース原理基礎講座の実施、青野英明さんが主導した2daysワークショップなど、10月19日の『ソース原理[入門+探求ガイド]―「エネルギーの源流」から自然な協力関係をつむぎ出す』(英治出版)出版に合わせるように多数の催しが実施されました。
この時、京都で実施された『「ソース原理」特別講座|ソースワーク習熟ワークショップ〜ビジョン実現のための8つのプロセスを学ぶ2日間』は一連のステファン関連企画群の1つです。

ビジョン実現のための8つのプロセスを学ぶ2日間』
この時のことを、まるっちは以下のように振り返っています。
2024年10月のステファン・メルケルバッハ氏との講座は、私にとって大きな転換点であり、ソース原理を日本に広める、という覚悟を持つ上での最後のひと押しとなりました。
そして2024年10月から半年と少し、2025年7月にステファンとクローディーヌの来日が決定し、今回の企画の開催へとつながりました。
ステファン・メルケルバッハ氏(Stefan Merckelbach)
『A little red book about source(邦題:ソース原理[入門+探求ガイド])』の著者であるステファン・メルケルバッハ氏は、スイスに拠点を置くオーディナータ社(Ordinata)を2001年に起業したソース原理(Source Principle)の実践者です。

オランダに生まれ、スイスのフリブールで育ったステファンはフリブール大学、ジュネーブ大学で哲学を研究しており、このことは現在の彼の肩書きである「哲学する経営者(philosopher-manager)」にも通じています。
現在、ステファンはコーチング、コンサルティングを行うオーディナータ社(Ordinata)において、ソシオクラシー(Sociocracy)をルーツに持つ組織運営体系『参加型ダイナミックス(participatory dynamics)』の提供を企業やチームに行うとともに、トム・ニクソン氏の立ち上げた情報ポータルサイトworkwithsource.comにも名前を連ねています。
また、ステファンは上記の活動に並行して2000年に小学校の設立に携わり、2021年まで小学校設立・運営プロジェクトのソースおよび小学校の校長として活動していた、教育者としての顔も持っています。
ステファンがソース原理、そしてピーター・カーニック氏に初めて出会ったのは、2013年のことでした。
"The Source Person" training dayと題されたその日のトレーニングでの出会いをきっかけに、自社の提供する企業を対象としたトレーニングやプログラムにおいてソースの概念は欠かせないものになったと、ステファンは書籍の中で述べています。
Curious about the title of "The Source Person" training day, on 25 September 2013 I innocently turned up, completely clueless as to just how much this experience would transform my professional life and my organization. Although only three participants were registered, Peter John Koenig, the moderator, surprised us by deciding to hold the day-long workshop anyway. A stroke of luck for us, as we got his full attention—just as he had ours. (…). Based on what I discovered that day I signed up for a longer program, a master class he organized the next year to transmit his findings. Since then the notion of source has become integral to the support and training we provide at Ordinata, a company I started in 2001.
また、ソース原理の発見・体系化によって新たな「言語」を生み出したピーターへの敬意を示しつつ、ステファン自身もソース原理の発展に努め、英雄の旅(The Hero's Journey)をモチーフに『ソースジャーニー(The Source Journey)』というモデルを開発するに至りました。
『ソースジャーニー(The Source Journey)』についての詳細は以下のレポートもご覧ください。
ソース原理におけるソース(Source)とは?
トム・ニクソン『Work with Source(邦題:すべては1人から始まる)』を参照すると、ソース(Source)とは、あるアイデアを実現するために、最初の個人がリスクを取り、最初の無防備な一歩を踏み出したときに自然に生まれる役割を意味しています。
また、本書中の用語解説では、『脆弱なリスクを取って、ビジョンの実現に向けて自らを投資することで、率先して行動する個人のこと』と説明されています。
The role emerges naturally when the first individual takes the first vulnerable step to invest herself in the realisation of an idea.
An individual who takes the initiative by taking a vulnerable risk to invest herself in the realisation of a vision.
ステファン・メルケルバッハ氏の書籍『A little red book about source(邦題:ソース原理[入門+探求ガイド])』においては、この役割を担うことになった人について、特に「ソース・パーソン(source person)」と呼んでおり、『あるアイデアに基づいてイニシアチブを取る人』のことを指します。
A source is a person who has taken an initiative and through that has become the source of something: we can call this a "source person".
A source person takes an initiative based on an idea.
加えて、イニシアチブ(を取ること)にはリスクを取ること、未知の世界に飛び込むという側面があると紹介しています。
We may now add the dimension of risk-taking, which inevitably accompanies the initiative—itself more or less a dive into the unknown.

Tom Nixon『Work with Source』
そして、朝食を作ることや休日の予定を立てること、恋人に結婚を申し込むことから大きなビジョンを抱いて起業することに至るまで、人生のさまざまな場面で人はソースになり得ます。
振り返ってみれば、私たちはこれまでの人生で既に、何らかの活動のソースになったことがあるとがわかるでしょう。
This applies not only to the major initiatives that are our life’s work. Every day we start or join initiatives to meet our needs, big and small.[…]Whether it’s making a sandwich or transitioning to a zero-carbon economy, we start or join initiatives to realise ideas.
We take initiatives all the time: deciding on a particular course of study, going after a certain job, starting up a business, planning a special dinner. I can initiate a friendship or partnership, change my housing situation, make holiday plans, decide to have a child. Or I might step forward to join a project sourced by someone else.
教育者のためのソース原理1day講座
開催の想いとガイダンス
ここからは、1day講座当日の内容についてまとめていければと思います。
そもそもなぜ、今回の企画が立ち上がったのか?なぜ、まるっち(丸毛幸太郎)がソースとなって今回の企画を立ち上げたのか?については、以下の記事にて詳しく紹介されています。
上記の記事でも語られた開催の想いをシェアしつつ、まるっちは本企画についての概要についてガイドしていきます。
まるっちからは、今回の講座が全4日間(昨年10月に日本で開催された際は2日間に凝縮)で行われる『ソースジャーニー(The Source Journey)』のプログラムの一部を扱うこと、そのため、専用のハンドブックから抜粋したレジュメを今回は使用すること、また、教育という切り口からソース原理について探求を進めるという『未だ文章化・書籍化されていない未知のテーマについて探求すること』についてのガイダンスが行われました。

1日の意図(Intension)を設定する
1day講座の初めに、参加者全員が参加する形で行ったのは1日の意図(Intension)を設定することでした。
やり方としてはシンプルで、この1日で意識したい意図、この日をこんな1日にしたいという意図を3つの動詞で書き、それを読み上げる形で簡単にシェアしようというものです。
ステファンはこの意図についてホワイトボードに描き示しながら、その本意について紹介してくれました。

私たち一人ひとりは、何らかの目的やゴールに向けて活動を起こします。
教育の観点で言えば、教える立場の人々は子どもたちに対して学習目標やゴールを設定しますが、それらはあくまで外側から与えられるものの場合も多いです。
子どもたちの内心には学習目標やゴール(Goal)に対する意図(Intension)が定まっていなかったり、そもそも注意(Attension)が別のことへ逸れていることもあります。
そこに教師としての意図(Intension)も入り込むと、そこに複雑な緊張感系(Tension)が発生することとなりますが、学校の教室内では日常的に起こっている風景でもあります。
そうした時、改めて子どもたちが内面の意図(Intension)にフォーカスし、それを明確化することは、自分自身とつながる体験、ひいては人生のソース(創造の源)として生きる助けにもなり得ます。
また、既存の教育制度、教育システムには、すべての学びや子どもたちが1人の人として生きていくことに奉仕できるはずのソース原理について、学べる場所やカリキュラムがありません。
そうした意味でも、教育に携わる皆さんがソース原理を知っていくことには大きな意味がある、とステファンは話していました。
このような観点も踏まえつつ、まずは大人である自分たちも実践してみようという促しから、意図(Intension)を設定とシェアが行われました。
守秘義務とディスクレッション
続いて行われたのは、安心して探求を進めていく場を設定するためのグランドルールの確認でした。
その中で「守秘義務」にも触れられたのですが、それに代わる表現として提案されたものがありました。それは昨年10月のワークショップの際には「ディスクレッション(discretion)」と呼ばれていたものです。
「ディスクレッション(discretion)」は、各自の節度と相互の信頼による自由裁量といったニュアンスで共有された、守秘義務に代わる参加者間の共有事項です。
これを伝えてくれたまるっち及びステファン曰く、この考え方はピーター・カーニック氏の発案によるもの、とのことです。
ピーターは、ソース原理やその基となったマネーワークでは参加者の深い内面を取り扱う「取り戻しワーク(Reclaming Work)」なども行う都合上、個人情報などへの配慮も必要になり、「守秘義務」についても意識せざるを得ないことは認識しています。
一方でピーターは、ソース原理はコピーライトがあるものではなく、プログラムや講座に参加された方々には、その知見をどんどん広めていってほしいとも願っています。
そう考えた場合、「守秘義務」という言葉は「〇〇してはいけない」という意味が強くなりすぎてしまうので、ピーターは、参加者一人ひとりの自由裁量や、思慮・節度を持って行動することを促すディスクレッション(discretion)を使うようになったとのことです。
参加者はこの考え方に基づいて行動することに対する反対意見を述べることができるラウンドも設けられ、その際に今回の学びの知見の取り扱いや安心して学ぶための環境整備についての認識共有も行っていきました。
また、このプロセスはトップダウンの形式や全員のYesをめざす全会一致・コンセンサスとも異なる、全員Noがない状態、同意(consent)に基づいた意思決定であるとの補足も伝えられました。
ソース原理という新たな言語
先述のディスクレッションに関連し、まるっち及びステファンは『ソース原理を学ぶことは、新たな言語を学ぶようなものだ』と説明してくれました。
人類はその誕生以来、ソース原理(Source Principle)という考え方や眼鏡を持っていなかった頃も、創造的に活動する時、あるいはコラボレーションする時には自然とそのような原理に基づいて活動してきました。
ピーターはそうした人類共通で普遍的に見られる現象、作用に関してソース原理という言語を開発し、名づけたことで、現在、私たちは人間関係や組織内で起こるさまざまな現象、作用に関して共通言語を持ちながら扱うことができるようになりました。
こうした背景もあり、個別の事例や個人の内面等のプライベートな領域は別として、ソース原理の叡智が広がっていくことを尊重するためにも、参加者一人ひとりの裁量や、思慮・節度を持った上で行動するあり方を尊重したいとのことでした。
ステファンのストーリーテリング
ここまでで既に教育×ソース原理的な観点でのお話もありつつ、いよいよステファンのストーリーに耳を傾ける時間となりました。
まず初めに、ステファンは自分よりもクローディーヌこそが教育の専門家であり、自身はあくまで自分なりに小学校を立ち上げるプロジェクトのソース(創造の源となる役割)を担い、そこの校長として活動してきたのだと前置きしながら、話が始まりました。

その小学校は4歳〜12歳の子どもたちが通うことのできる学校で、初めは5学年24人の生徒の学校としてスタートし、その後から3学年がプラスされ、最盛期には60人の生徒が通う学校となったとのことです。
2000年当時、ステファンとクローディーヌの長男が6歳の頃、子どもの教育についてどうにかしたいと考える保護者たちが集うプロジェクトがあり、その議論の中で「小学校を自分たちで作ってみてはどうか?」というアイデアが出てきたと言います。
アイデアは贈り物であり、アイデアを実現するために一歩踏み出した時、その人はイニシアチブのソースとなります。
ステファンは本業である自身の会社の立ち上げと運営をほぼ同時期に行う傍ら、リスクを取って一歩踏み出し、この小学校設立・運営プロジェクトのソースとして活動を始めました。
実際に学校を設立し、校長を務めていたステファンでしたが、2008年に燃え尽き状態に陥ってしまい、2009年に2人の後任者に任せる形で学校運営から離れることとなりました。それというのも、本業を抱えながら副業で、そして名誉職として学校の校長を担っており、そうした中でそれまで通りにはやっていけないという状況に陥ったとのことでした。

その後、2013年にピーター・カーニック氏、そしてソース原理に出会ったステファンでしたが、ピーターからの学びによって自身はまだ小学校のグローバルソースであることが明らかになりました。
学校運営に関しては後任者に一任し、業務に関する引き継ぎを行い、月に一回の定期的なミーティングも設けていたものの、ステファンから後任者へのソースの継承は行われてはいなかったのです。
組織やシステムの外にグローバルソースがいる場合、グローバルソースの意図を組織やシステムに伝える代理人が必要になり、自然とその役割を後任者の方が担っていたことも考えられます。
ステファンは、一度燃え尽きに陥った状態から自分がグローバルソースであること、グローバルソースとして学校運営というイニシアチブのレスポンシビリティ(responsibirity)があることを認めるには時間がかかり(「いやいや、今や私は何の役職もない、学校に通う子どもの保護者の1人だよ」)、2015年にようやく学校運営に戻る決心がついたと言います。
そして、2022年に後任者に無事に学校運営のソースを受け渡すことができ、それまではさまざまな苦しみもあったものの、無事に受け渡すことができて幸せだとステファンは語っていました。その学校はさまざまなことが起こりながらも、今なお続いていると言います。
教育現場で、子どもを1人のソースと捉えるとどうなるか?
ステファンは自身のストーリーテリングの後、ソース原理を教育現場に当てはめてみるとどういったことが見えてくるかについてお話しされました。
これは探求中の仮説であると前置きしつつ、人は誰しも生まれてきた時から自分の人生のソース(創造の源)であり、親や教師などの周囲の大人たちは子どもたちにとってサブソースだと考えることができると言います。
学校現場における教師は、何を子どもたちに教えるか?その教授法はどういった形が良いか?について検討し、実施するという点ではソース(創造の源)です。
一方で、子どもの人生というフィールドから眺めてみると、教師は子どもの人生を豊かにしてくれるサブソースと考えられます。
このような視点のスイッチを、ステファンはホワイトボードに描きつつ紹介してくれました。

そして、上記のような認識を踏まえてステファンが紹介してくれた仮説は、以下のようなものです。
「親や教師の役割とは、子どもたちが自身の人生のグローバルソースだと気づける、意識できるようにすることではないか?」
「自分が自身の人生のグローバルソースとして責任をとっていくこと、それを意識し始めることが、子どもから大人への一線ではないか?」
教師として望ましい意図や願いを持って子どもたちに接したとしても、それはすべての子どもたちにとって望ましい結果となるとは限りません。
また、学校の規則を破ることや悪戯などは学校の秩序を守るという教師の視点からは注意されるべきですが、子どもたちの視点から見ると「自らの意思によってやってみた、ソースとしてのチャレンジ」と捉えることもできます。
子どもたちの人生のサブソースであるという視点は、子どもたち一人ひとりの生き方・あり方への尊重と共に、教師には謙虚さをもたらしてくれるとステファンは付け加えていました。
加えて、子どもたちは肉体的にも精神的にも日々変化し、子どもたちのソースとしてのフィールドも日々変化していきます。
そうした中で、いかに大人は子どもに寄り添うか?が難しいポイントであるとも、ステファンは語っていました。

ソースという眼鏡を通して自身の人生を眺める
以上までが、1day講座の午前中のプログラムです。
午後以降は休憩やワークを挟みつつ、実際に『ソースジャーニー(The Source Journey)』の一部を探求する時間、また、質疑応答の時間が設けられました。

参加者の皆さんは『ソースジャーニー(The Source Journey)』の中の「The Call(アイデア・直感・ひらめきを受け取る)」、「Responding to the Call(リスクを取って一歩踏み出す)」のほか、「ソースの3つの役割」「ソースの病理」について、いくつかの問いについて自身の内面を探求しつつ、複数回にわたってグループで対話していくこととなりました。
1day講座で印象的だった気づき・学び
ここからは、1日を通して印象的だった気づき・学びについて『耳を澄ませることの大切さ』『人間関係におけるソース』『無意識の暴君・怠け者の状態から、意識化へ』という3点を取り上げていければと思います。
耳を澄ませることの大切さ
あるイニシアチブ(活動、プロジェクト)のソースが、この先どこに進むべきか迷った時。
そうした時には、ソースが自分の考えを整理するため・自分のプロジェクトを発展させるために次に取るべきステップについて理解を深めるために、1人の時間である『ソースタイム(Source Time)』を取って内省すること、自身の内面に耳を澄ませるとがおすすめだと、ステファンは語ります。
この点について、今回の企画のソースであるまるっちもユニークなエピソードを紹介してくれました。
自身が当初、ステファン来日企画を実施しようとなった時、200〜300人ほどの人数を集めたホールでイベントを開催しようと考えていたと言います。
しかし、そうした構想をいざ進めようとしてもまったくアイデアが降りてこず、「ソースは迷い(doubt)の中にいることが常である」という実践者たちの言葉もありつつも、そのまま1ヶ月が経過してしまいました。
そこで自身の直感に耳を澄ませ、また、仲間たちに相談しながら次のステップを明確にしようとした時、「20〜30人ほどの規模で、濃厚にソース原理に関するエッセンスを伝えたい」という、今回の企画につながる方向へ進路変更が起こったとのことです。
まるっち曰く「200〜300人規模のイベント構想は自分のエゴがより色濃く出てしまっていたため、うまく進まなかったように思う」と話していたのが印象的でした。
なお、ソースが自身の内面に耳を澄ませること、あるいは次の一歩を明確にするために仲間との対話をおこなっていくことは、『すべては1人から始まる(原題:Work with Source)』著者のトム・ニクソン氏も『ソースコンパス(The Source Compass)』というモデルにまとめて紹介しています。

Tom Nixon「Work with Source」
人間関係におけるソース
なんらかの活動のソースになるということは、必ずしも大きなビジョンを持って起業することに限りません。
むしろ、朝食を作ることや休日の予定を立てること、講座の途中で1人トイレに向かうことまで、大小さまざまなソースとしての活動を私たちは日々、無意識に(時に意識的に)行っています。
This applies not only to the major initiatives that are our life’s work. Every day we start or join initiatives to meet our needs, big and small.[…]Whether it’s making a sandwich or transitioning to a zero-carbon economy, we start or join initiatives to realise ideas.
We take initiatives all the time: deciding on a particular course of study, going after a certain job, starting up a business, planning a special dinner. I can initiate a friendship or partnership, change my housing situation, make holiday plans, decide to have a child. Or I might step forward to join a project sourced by someone else.
そうした中で、質疑応答で扱われたテーマの1つが人間関係におけるソースでした。
恋人同士や結婚して夫婦になるというイニシアチブ、あるいは子育てを行うなど、パートナーシップにおいてもソースは存在すると言います。
ステファン自身はクローディーヌとはこれまで38年にわたって愛あるパートナーシップを築いてきており、結婚はステファンから申し込み(リスクを取って一歩踏み出し)、子どもたちの教育についてはクローディーヌがソースとして取り組んでいるといったお話を伺うことができました。
また、パートナーシップの場合、病気や転職、転居などさまざまな理由がきっかけでソースが交代する場合もあるとのことでした。
ある友人との関係性においても、「いつも自分の方から誘ってばかり。たまには相手からも誘ってほしいな」と考えた場合も、その関係性のソースは自分の可能性があります。
そうした視点を持つことは、仕事や組織に限らず日々のさまざまな活動や関係性においてソース原理が役立ちうる、ということを考えるきっかけとなります。
本記事をご覧いただいている皆さんの場合、あるパートナーシップや友人関係に照らしてみると、どのようなことが考えられるでしょうか?
無意識の暴君・怠け者の状態から、意識化へ
今回の1day講座のQ&Aでは、実際に現場で起こっていることをソース原理で捉えたらどうなるか?といった問いが、いくつか会場から投げかけられました。
そうした中で興味深かったのが、自身が所属する組織の中で運営している事業を新たに別法人化するというイニシアチブでした。
その方(Aさん)は別法人化イニシアチブにおけるソースとして、既に手続きや継続的なミーティングの呼びかけなども行うグローバルソースの自覚がある一方、所属する組織の代表(Bさん)が「新たに立ち上がろうとしている別法人も興味があるし、自分が担いたい」と話している、という事例でした。
ステファンからは、「Aさんは無意識にソースとして怠け者、Bさんは無意識にソースとして暴君になっている」と、ソースが陥りがちな病理の観点からコメントが寄せられました。

そして、双方が意識的になること、Aさんについては時に暴君的になってBさんにチャレンジすることや、Bさんもまた時に怠け者となって謙虚になることが必要になるかもしれない、と続けました。
「もし、AさんとBさん2人がソースとして意識的になれたら、その時はドリームチームになれますね!」
「Bさんにとっても、元の組織のサブソースであるAさんからチャレンジされたら『頼りになるな』と感じたり、BさんはAさんに対して一目置くようになるかもしれません」
共有いただいた上記の事例からその場全体の熱量も上がり、また、ソースとサブソースの感覚のリアルについて洞察が深まっている様子もひしひしと感じられました。
振り返りを終えて
以上、『教育者のためのソース原理1day講座』について、その開催背景から当日の内容に至るまでをまとめてきました。
1day講座当日の学びはまだまだ大小さまざまな気づきや学びがあったのですが、当日は日本全国各地から30名近くの教育関係者の皆さんが集ったため、皆さん一人ひとりの印象に残った学び・これから活かしていきたいこと等もどんどん伺っていきたいと感じています。
私自身のソース原理の探求は家業の事業承継を機に始まり、ステファンやトムをはじめ、これまでピーター・カーニック氏に学んだ海外の実践者の皆さんとも場をご一緒してきました。
そうした中で『人や組織のポテンシャルを発揮するための叡智を次世代に届けること』や『思いのある取り組み、プロジェクトが異動や世代交代を経てもそのエネルギーと共に発展していける仕組みづくり』を人生のソースとして取り組んでいくことが、明確になってきました。
今回の場で扱われたテーマには『人が生まれた後、子ども時代から大人へと、自らの人生のソース(創造の源)として生きていくための旅路』というものも含まれていましたが、こうしたテーマも自分の探求テーマの中心近くにあり、場に参加する中でじんわりと熱が高まっていくように感じていました。
今回のステファン、クローディーヌの来日をオーガナイズしてくださった青野英明さんをはじめ、今回の企画の実現に尽力いただいた皆さん、そして、当日の場をご一緒した皆さんに感謝申し上げます。
私自身のこの企画への関わり方は、1人の人間として真摯に学ぶことに加えて、当日の発見や感動、エネルギーをより多くの方に届けていくことです。カメラマンとして撮影していた今回のまとめの中の写真や、今回のレポート等からも、そういったものを少しでも感じていただければ幸いです。

ステファン、クローディーヌ、由美さんと主催チーム
近日開催予定の関連企画
7/23(水) ソース原理の著者と紐解く特別ワークショップ|RELATIONS株式会社
7/24(木) ソース原理から見る「事業承継」のリアル|VOOX/株式会社令三社
7/25(金) ステファンと学ぶ!ソース原理1day集中講座!|Smoooth株式会社
8/9(月)マネーワーク概論〜取り戻しワーク体験〜|ティール組織ラボ/RELATIONS株式会社
9/8 (月)ソース原理 概論編講座|ティール組織ラボ
さらなる探求のための参考リンク
場とつながりの大冒険〜ソース原理探求編①キング・オブ・スラッカー(怠け者)の気づき|ティール組織ラボ
なぜ、あなたの提案は通らないのか? 欧米で話題の「ソース原理」入門|Business Insider Japan
CU*money JAPANについての解説動画|青野英明
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