瑠璃紺に潜むルッキズム|ショートショート #片想い文芸部
深く吸い込まれるような透明感のある瑠璃紺の瞳。
小柄ながら清廉な雰囲気を漂わせるスタイル。
まさに存在が「ウルトラマリン」。
あのような子は二度と巡り合うことはないだろうし、巡り合いたくもない。
この話は俺が高校生の時のことだ。
入学式後の教室でのオリエンテーションの際に、クラスメイトの中でひと際輝く女子がいた。
俺の隣に座った「大河内美玲」と名乗るその絶世の美少女は、瞬く間に校内に知れ渡り、翌日から見物客で大賑わい。
「せんせ~い、トイレ」と言って授業を抜け出してお目当ての美玲を見に来る生徒まで現れ、常に竹刀を持っていて「鬼」と呼ばれている鬼山先生が廊下を見回りに来る事態にまで発展した。
「美玲騒動」が過熱感を帯びてくるにつれ、俺の心情にも変化があった。
これまでアイドルグループの推しの子を見ているように美玲を見ていた俺だったが、校内全体の美玲推しに揉まれ、いつの間にか俺も美玲のことがとてつもなく好きになっていた。
だが、相当な高嶺の花である。
神でなければ掴むことができないくらいの、高嶺の花。
何十人もの生徒どもが無謀にも美玲に告ったのだが、ことごと瞬殺され、ショックで立ち直れないほどの廃人になる生徒が続出し、中には登校拒否する生徒も現れた。
この状況を重く見た学校側は、緊急事態宣言と称して「同性異性問わず全ての告白行為禁止」という、アオハルが真っ盛りの高校生活ではあり得ないことを校長が宣言したことで、無謀を犯そうと考え出していた俺は告白する機会を失った。
そんな「美玲騒動」が落ち着きだした一学期の終業式のこと。
担任からの話が終わり、そのまま部活に行こうとしたその時、これまで話す機会がなかった美玲から初めて声をかけられた。
「遠藤くん、この後時間ある?」
「え、え、えっと」
急に声をかけられどぎまぎしている俺に、美玲は瑠璃紺の瞳でじっと見つめながら「どうしても話したいことがあって…」という甘い声をかけ、俺は頷くのが精いっぱいだった。
二人で人気のない体育館裏に来た時、俺は大いなる勘違いをしていた。
ーー体育館裏に呼ばれたということは…まさか、こ、告白!?
俺のルックスは至って普通。中学時代まではモテたことはない。
学業や部活はどうかというとこちらも特長がないし、みんなを引っ張っていくリーダーシップは皆無。有り体に言えばクラスにいてもいなくてもいい存在というところか。
そんな俺のことを、美玲が好いてくれるなんてどう考えてもあり得ないのだが、この体育館裏というシチュエーションだけで俺の頭は「告白」の二文字しか浮かんでこなかった。
「急にこんなところに呼び出してゴメンね。人目があると言えなくて」
「い、いや、俺の方はいいからさ。は、話って何?」
「遠藤くんに伝えたいことがあって」
「う、うん」
「それはね…」
そう言った瞬間の美玲の顔を見て、俺の第六感なのか何なのかが分からない何かが反応し、全身に電流が流れたように身体が震えた。
「遠藤くんの前にいる木村なんだけど、アイツの口元にへばりついている大きなニキビが気になって授業に集中できないんだよね。木村が遠藤くんに話しかけている時にどうしても視界に入るから正直見たくないの。だからもう振り向くなって木村に言ってくれる?」
思いがけない言葉を聞いた俺は、口をあんぐりと開けたまま石像のように固まった。
「ほっっっんとに外見醜い人間マジキモイっていうか。遠藤くんもそう思わない?それから牧田のことなんだけどね…」
夏休みが終わり、新学期初日の教室に入ると何やら周囲がざわついており、そこで美玲が転校したことを知った。
さらに美玲に関するこんな話も聞いた。
美玲の母親がSNS上で意図的に炎上させる超有名なコテコテの外見至上主義者で、その精神をもろに受け継いだ美玲も母親同様にSNS上にあり得ない主張を繰り返しては他のユーザーたちと何度もバトルしているそうだ。
投稿内容によっては、俺たちの高校の生徒のことを実名で名指しして外見判定していたというものもあり、事態を重く受け止めた校長たちが家庭訪問したところ、母親が、
「こんな醜悪な顔をした校長がいる学校に行かせた私が馬鹿だったわ。もう転校するからお引き取りください」
と一方的に罵声を浴びせて、夏休み中にどこか別の場所へ引っ越していったそうだ。
「遠藤っち、ちょっとこれ見てよ」
前に座っている木村からスマホの画面を見せられた時、シャツの中にキンキンの氷を大量に入れられたかのような冷たさを感じた。
それはSNS上での美玲のあるポストだった。
「醜悪な生徒ばかりで心底メンタルやられて転校するけど、遠藤くんだけは別。体育館裏で逢引したこと、一生忘れないよ」
「大河内さんと何かあった?」
木村が訝しげな表情で話しかけてきたが、俺は木村の言葉が耳に入っておらず、スマホに表示されている美玲であろうポストを凝視しながら時が止まったかように静止していた。

(2,000文字)
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この記事は、ナルさん企画【片想い文芸部】参加記事です。
今回のお題は、【「色にまつわる」片想い】でした。
この物語に登場する氏名は全てフィクションです(同姓の方がいらっしゃったら一部不快な思いをさせてしまい申し訳ございません)。
ルッキズムとは関係ないですが、高校の時に、同級生でサムネのような髪型の絶世の美少女がいて話題になった子がいました(自分は三年間一緒のクラスになれず🥲)。
友人がその子に接近しようとあれこれ話しかけていたのですが、ある日冴えない顔していたのでどうしたのかと聞いたところ、
「理想の男が「ドラゴンボールの孫悟空」って言われてあきらめた…」
と言いながら苦笑していました。
相当な天然少女らしくて、いつの間にか目立たないグループに埋もれてしまいました。
ちなみに自分は全く恋心を抱きませんでした。他に大好きな女子がいましたので🤭
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ここまで読んでいただきありがとうございました🍀
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