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求愛クエスト @幻のオンナ|ショートショート #片想い文芸部

「幻のオンナ」が出没するというキャンプ場。

オカルト好きな人々の間で話題に挙がったことで、我こそはとキャンプ場を訪れた全国の勇者たちだったが、遭遇した者は誰一人おらず、しまいにはガセネタ扱いされて「幻のオンナ伝説」は闇に葬られた。


この伝説が人々から忘れ去られたある日。


俺はオカルトが大好物の女友達・澪子を近くのカフェに誘い、「幻のオンナ伝説」の話をした。


「悠介、本気で行くの?しかも一人で?」
「今なら誰もいないだろうし、一人で行った方がエンカウント率上がりそうだからチャンスだよ!」
「そのオンナに命吸われないようにね」


普段は家で部屋のカーテンを全て閉め、ホラー映画をエンドレス観賞している、真っ青な顔に超ロングヘアの澪子の方が正直怖い。



それから一週間後、念入りにキャンプギアを点検し、愛車の荷台に乱暴に詰め込むと、勢いよくアクセルを踏み込んだ。


都心から車で約3時間ほどで到着したそのキャンプ場は、険しい山々の谷間にあり、いかにも出そうな雰囲気のキャンプ場だった。

俺はあえて人がいない平日の月曜日を狙って訪れたことで周りには誰もおらず、どうやらこのまま貸切状態のようだ。

俺は慣れた手つきでテントを張り、車の荷台から次々とキャンプギアを運び出してはテントの中に放り込み、火を焚いて周りの景色を眺めていた。


ーー早く「幻のオンナ」とやらに逢いたい


そんな期待を胸に秘め、米と水を詰め込んだメスティンに火をかけた。


早めに夕飯を済ませ、パチパチと音を立てる焚き火を見ながらうつらうつらと眠り、起きたときにはあっという間に辺りが深い闇に包まれた。


ーーおお、最高の雰囲気だ


モフモフモフモフ…


遠くで得体の知れない声が聞こえてきたが、俺は怖れるどころかこのシチュエーションを大いに楽しむ。

しかし、それから一向にお目当てのオンナが現れてくれず、俺はテントの中でゴロゴロしながらそのまま寝入ってしまった。



それからどれほど経っただろうか。


何かが近づいてくるような気配を感じ、ハッと目を覚ました俺は、すっくと起き上がった。

その気配はテントの前で止まったようだ。


ーーきっと例のオンナだ!くぅぅぅ心が躍る!


俺はオンナに飢えていた。
人間のオンナの形をしていたら幻でもロボットでも化けた狐でも何でもいい。


躊躇せずテントから躍り出て、ランタンを照らすと、目の前には真っ白な無地の洋服を着た、体型がスラッとして髪がボブヘアの女性が立っていた。




ーードンピシャタイプ!


小躍りをする俺を、じっと見つめる人間の形をした何か。


ーーどうするどうする、どうする悠介


今にもアドレナリンが身体中から放出しそうなほど興奮してきた俺は、脳内で国民的人気RPGの戦闘BGMを流しながらコマンド入力画面を思い浮かべた。


ーーこえかけ、にげる、じゅもん、こくる、こえかけ、にげる、じゅもん、こくる、こえかけ、にげる、じゅもん、こくる…


何度もコマンドを反芻し、十回目くらいに差しかかったときに決断した。


俺は声をかけた。


「あ、あの、か、彼氏いますか?」
「え、はい?」
「俺の声が聞こえるんですね!」
「いえ、聞こえません」
「いや、聞こえているでしょ!」


コントのような会話だが、なかなかいい雰囲気ではないか。
掴みはオッケー牧場。こいつは落とせる!


「君に出会って三秒で恋に落ちました。いわゆるフォーリンラブです!」
「あの、ワタシはご覧のとおり人間ではな…」
「こんな山奥でさぞ寂しかったでしょう。俺と付き合ってください!背後霊で構いません!ええ、背後霊で東京満喫しましょう!東京シティー背後霊ガールとして俺とフォーリンラブしましょ!ラブリーにお願いします!」


謎の呪文を唱えたような意味不明な言葉をオンナに投げ放った。

これまで彼女ができたことがなかった俺は、「恋愛レベル1」。
それでも持てる全ての力を出し切るしかない。


そして最後の願いを込めて、右手を差し出しながらお辞儀した。


「…」


謎の呪文で硬直したオンナをチャンスと見た俺は捨て身の技「抱きつき」を繰り出した。

もうこうなったら抱きついたもん勝ちだ!


「一緒に恋に落ちましょ!」


抱きついたと思いきや、スルリとオンナの身体をすり抜けて、地面に転がっていたスイカほどの岩におでこを強打し、そして視界が暗転した。




…ピーヒョロロー


鳶の鳴き声に目を覚ました俺は、起き上がり辺りを見渡すと、テントの中にいた。


ーーたしかオンナに抱きつこうとして顔面から岩にダイブして…


車のサイドミラーに近づき顔を確認すると、何一つ傷がなく痛みも無い。


ーー全て幻、だったのか?


と思うと同時に、あのオンナの顔を思い出し、ふとあることを試したくなった。



翌日、駅前で澪子と待ち合わせをした。
相変わらず薄汚れた服にボサボサ頭で顔が青白い。


「無事に生還したんだね」
「ちょっと俺に付き合ってくれないか?」
「お祓い?」


澪子の質問を無視して、彼女の手を引っ張ってそのまま俺の行きつけの美容室へ連れて行った。


「この子の髪をバッサリ切ってください」
「え、ちょっと待ってよ」
「いいからお願いします!」


俺の気迫に根負けしたのか、澪子は黙り込み、美容師の意のままに髪を切られていく。




「お客さま、こんな感じでよろしいでしょうか」
「大丈夫です」


カットが終わったところで、俺は澪子に問いただした。


「あのキャンプ場のオンナ、今のお前にソックリだったぞ」
「!?」
「あれ、「生き霊」ってやつだろ」
「…」
「俺に恨みでもあるのか?」


俺がキャンプ場で遭遇したオンナは、今、目の前の鏡に映っている澪子そのものだった。
最初に気づかなかったのは、普段の髪の長さや表情が全く別人のようだったからだ。


そして、澪子の顔には、いつもの青白さに赤みが差し始めていた。


「悠介のこと…ずっと好きだった」
「あへ?」
「全然振り向いてくれないからだんだん自信なくしちゃってオシャレとか興味がなくなって、しまいにはこのままでいいやって」
「…」
「それでも好きな気持ちが増すばかり。で、あのキャンプ場に出ると噂のオンナに逢いに行くとか言うから嫉妬心が爆発して…悠介が逢ったオンナはきっと、ワタシの生き霊よ」


涙ぐむ澪子。


ーーエンドレスホラー映画鑑賞は勘弁だが、カワイイならもう答えは決まりでよくね?


俺が澪子からの求愛を受け止めようと言葉を発しようとしたまさにその時、一人だけこの空気を読めない輩がいた。






「お客さま、シャンプーはいかがなさいますか?」



(2,607文字)



■今回のショートショートは以下のマガジンに収めています😌


■小説専門マガジンに参加中です✨️



この記事は、ナルさん企画【片想い文芸部】参加記事です。
今回のお題は、【幻】でした。


公募用作品執筆に専念したいのですが、合間にnote記事を読むのはダメだと今さら気づきました…一応、お休み宣言していましたのでこの作品は「幻」ということで🙄

今回は書いているうちに楽しくなってきてしまった作品なのですが、こういう作品って読者そっちのけなのでウケが悪いんですよね😂


また、久しぶりにサムネを自前で創作したのですが(いやだから公募作品に専念しろって🤣)、イマイチハマらなかったので挿絵で使用しました。

サムネは、困ったときのお助けカード「ひいろさん発動!


最近、このお助けカードを乱発し過ぎている感はありますが💦

ひいろさんには感謝してもしきれません。いつもありがとうございます🥲


いい加減気を引き締め直して、公募作品創作に向き合います💦

ここまで読んでいただきありがとうございました🍀


これまでひいろさんのイラストをお借りしたエッセイ・ショートショート(ちょっと前のもの)はコチラ▽





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