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片想い乱れ撃ち|ショートショート #片想い文芸部

魔法を使ってあの子と両想いになれたらなあ
でもそんな淡い期待をしていても仕方がない
この世に魔法なんてもの、存在しないし




「何してるの?」
「うわっ!」


背後からいきなり声をかけられた俺は、びっくりしてその場で飛び跳ねた。

そしてゆっくり振り向くと、幼なじみの真帆の姿があった。


「いきなり話しかけてくるなよ」
「だって、陸が怪しいことしているから」


たしかに怪しいことをしていた。

大学のゼミで一緒の伊織ちゃんに惚れた俺は、どうにかタイミングを見計らってデートの誘いを取り付けようとしていたが、なかなかチャンスが巡ってこない。

だが、今日たまたま図書室へ来たときに伊織ちゃんが一人で読書しているのを見かけ、近くの書棚の隙間からジロジロと見ていたのだ。


「ああ、あの子に惚れているんだね。普通に声をかければいいじゃん」
「うるさいな~あっちへ行けよ」
「じゃあ、ワタシが陸の背中を教えて差し上げましょうか?」
「もしかして伊織ちゃんと顔見知りなの?」
「いや話したことないけど。きっかけなら作ってあげる。ちょっと伊織ちゃんの方に向いてくれる?」


俺は訝しがりながら伊織ちゃんがいる方へ向き直した直後、


「伊織ちゃんこっち向いて!」


グギッ


「ぎゃっ!!」


鈍い音と同時に悲鳴を上げた伊織が不自然な腰の動きで陸の方に振り向いた。


「あの子の胸に飛び込んでこ~い!」


そう真帆が言った瞬間、俺の身体が宙に浮かび、伊織目がけて飛んでいった。


「わわわわわ!!」


俺はあたふたしながら伊織に突進して、大きな音を立てて二人とも床に転がった。


「お静かに!」


この場所から離れているカウンターの女性が叫ぶ声が室内に響き渡った。





陸とは小学校からの幼なじみで、大学までずっと一緒だった。世間では腐れ縁って言うのかもしれないけど、縁でも何でもない。


陸には内緒にしているが、ワタシは「魔法」が使える。


母方の家系に魔女の血が流れており、幼い頃から母親からいろいろな魔法を教わっていた。

陸は、小学校の時に近所でも評判の大泣き虫だったので、ワタシが魔法で陸を陰ながら支えてきた。

進学についても、陸を支えたい一心で、全て同じ学校へ進学するように魔法をかけてきた。


ワタシは幼い頃から陸のことが大好きだった。


だが、そんな想いも知らずに、陸は好きな子ができたらその都度ワタシに相談してきた。

ワタシも無下にはできず、本心とは逆のことをずっとしてきた。



魔法で陸がワタシを惚れさせることはできる
でもそれは絶対にやってはいけないことなんだ

仮にワタシが魔法で惚れさせても、ワタシの心が空しくなるだけだって分かっているから


ワタシからは想いを打ち明けられない
だって陸との関係が壊れちゃうかもしれないから

でもいつの日か魔法なんて使わなくても陸を振り向かせてやるんだ




が、しかし…現実はこうだ



「伊織ちゃん、大丈夫?怪我していない?」
「ちょっと腰のあたりが痛くて…」
「この辺りが痛い?」


ワタシが起こしたハプニングのどさくさに紛れてちゃっかり伊織の身体を触り出すエロ男。


ワタシはいつまで我慢すればいいの?
陸の…バカ!


と呟いた瞬間、我を忘れて怒濤の連続魔法を繰り出した。



二人の頭から煙が立ったかと思ったら、急に燃えだしてあたふたしているところに、スマホから電流が流れて二人とも感電させ、さらに水の渦が発生して二人を洗濯機の洗濯物のようにグルグルとかき回されたあげく、床に割れ目が現れて二人を大量の水とともに奈落の底へ突き落とした。





ハアハアハア…

これまでの陸への想い、ありったけの魔法でぶつけてやった

今の連続魔法でMPをほぼ使い果たしてしまったようだ。今日は駅前でタピオカ買って飲みながら帰ろう



ワタシが好物のタピオカを思い浮かべていると、床の割れ目から二人が這い上がってきた。
全身泥だらけだ。


よく見ると、陸が伊織の腰に手を回しながら、何だかイヤらしい顔つきになっているではないか。



この…ドスケベ!!




心の中で叫ぶと、最後のMPを振り絞り、天上からパイナップルほどの大きさのタピオカを無数に降らせ、二人を再び床の割れ目へと突き落とした。




「お静かに!」


先ほどのカウンターの女性が再度叫ぶ声が聞こえたが、暇つぶしにスマホでもいじっているのだろう、こちらにはやってこなかった。



ワタシはその場から立ち去ろうと背を向けたが、最後に一度振り返って呟いた。




………バカ




(1,766文字)



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この記事は、ナルさん企画【片想い文芸部】参加記事です。
今回のお題は、【魔法】でした。


中学生の頃、魔法が使えたら良いなと思っていた時期でした。

ただ、心が屈折していたのか、密かに想いを寄せていた子を惚れさせる魔法以上に、その子に平気で太ももを擦るなどハラスメントばかりしていた男子に天罰を食らわす魔法が欲しかったです😠

まあ、それが当時の親友だったんですけど(苦笑)


ここまで読んでいただきありがとうございますした🍀



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