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勘違いな瞳|ショートショート #片想い文芸部

海風が全身を透き通るかのように優しく吹いている。


ワタシは海辺の近くにある駅のホームで、ベンチに座りながら目の前に広がるキラキラした海を眺めていた。

高校の最寄り駅は三つ先にあるのだが、ここから見える海が大好きで、毎朝早めに家を出て、この駅で途中下車していた。


しかし今はもう一つ理由がある。



それは二週間前のことだ。

いつも通り早めに電車に乗ったのだが、期末テスト勉強の疲れからか目眩をし始めて、この駅のホームに降りたと同時に意識を失った。


「⋯大丈夫ですか?僕の声、聞こえますか?」


耳元で優しい声が聞こえる
ああ、ココロがとても癒される


ふと自分の状況に気づいた時には、毎朝座っているベンチで横たわっていた。


「よかった〜気づいて」


同じ高校生くらいの男子がワタシの顔を覗き込み、安堵の表情を浮かべた。


「あの、その⋯」


急に恥ずかしさが込み上げてきて言葉にならない。
あたふたするワタシをよそに、その男子は、


「駅員さん呼ばなくて大丈夫そうですね。ちょっと急いでいるので電車に乗りますね」


男子はちょうど停車した電車に飛び乗ると、ぼんやりしているワタシを見ながら優しく微笑んできた。

電車が発車してもワタシは佇んでいたのだが、電車が視界から消えた頃なり、ようやく我に返った。


しまった!ちゃんとお礼していない!


後悔の念に苛まれると同時に、ある感情に気づいた。


これって一目惚れ?


そう。あの男子と目が合った瞬間、相手の南国の海のように澄んだ瞳に、内に込み上げてきた何かを抑えたくて赤らめた顔を俯かせたのだが、この気持ちは間違いない。


あの人と知り合いになりたい!


次の日から、いつもよりさらに早く家を出て、いつもの海の見える駅のベンチで来る電車を待つ。

あの男子が乗っていたら一緒に乗り込もうという魂胆だが、いつもどの車両に乗っているか知らないし、第一、たまたまこの電車に乗っていたのかもしれない。制服に見覚えはなかった。


でも諦めたくない!
きっと海の神さまが願いを叶えてくれる!


電車が来る度に、ホーム側に立っている乗客の顔を食い入るように見るワタシ。

ホーム側にいるとは限らないし、座っているかもしれないし、いろいろ考えたら確率的にはかなり低いように感じるが、とにかくワタシは再会できると信じていた。


そんなことが一週間続いたある日を境に、妙なことが起き始めた。


「あの〜」


いつものようにベンチで想い人のことを考えながら停車する電車を眺めていたところ、一人の見知らぬ男子が声をかけてきた。


「毎朝ここにいますよね」
「ええ」
「その…ええと」


顔を赤らめながらモジモジし始める男子。


「毎朝、君と目が合っているうちに好きになりました!僕と付き合ってもらえませんか?」

「えっ?」


突然の告白に間抜けな顔をしたまま数秒経過後に返事。


「ゴメンナサイ!他に好きな人がいるんです!」



それからというもの、毎朝いろいろな人から突然告白されて、全て断るという奇妙なことが日課となってしまった。

何も男子だけではない。しまいには….。


「そこの嬢ちゃん」
「はい」
「毎朝オラとよく目が合うから、オラのこと惚れたんかなと思っとってな。オラも嬢ちゃんのこと好いてしまった」
「はい?」
「今はジジイになっちゃったけんど、若い頃は地元では誰もが知っているプレイボーイだったんじゃよ。もうキャーキャー言われて、ぴっちぴちのギャルたちが」


「か、勘違いさせてゴメンナサイ!」


停車していた電車に乗り込んだ瞬間にドアが閉まった。
外を見ると、先ほどのお爺ちゃんが悲しそうな顔をしながら電車を見送っていた。


このお爺ちゃんを含めて、今週だけで十人に告白された。

どうやら例の男子を探すあまり大勢の男性の顔をまじまじと見つめていたのが悪かったようだ。

ワタシからの熱い視線によって勘違いさせてきたらしい。


そんな自分の瞳が急に怖くなり、翌週からは電車へ目を向けることができなくなってしまった。



終業式の朝。

明日から夏休みに入るので、再会のチャンスがさらになくなってしまう。


はあ…


重いため息をつきながら、いつもの駅のベンチから海を眺めていた目の前に電車が停車し、降りてきた乗客の一人がワタシに向かってくるような気配を感じた。

ワタシは怖くてわざとスマホをいじり出したのだが、その足音がワタシの目の前で止まった。


「あの、もしかして」

「勘違いさせてしまってゴメンナサイ!!」


見向きもせず電車に向かって走り出したワタシに、


「あ、ちょっと待って!ベンチに座っていたからまた体調崩していたのかと思って」


!?


その声を聞いて立ち止まった。


あの時に感じた癒しの声
そんなに経っていないはずだけど何だか懐かしい声


ワタシは乗車せず声の主へゆっくりと向き直った。



いつもと変わらない海風。

でも二人にとってこの瞬間に吹いていた風は、新たな物語が始まる予感がするカラッとした爽やかなものだった。



(1,972文字)



■今回のショートショートは以下のマガジンに収めています😌

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この記事は、ナルさん企画【片想い文芸部】参加記事です。
今回のお題は、【海風】でした。

中学生の頃に一目惚れした女子がいて、しょっちゅう目が合うので両想いかと思いましたが、友人に話したら「それ、お前が何度も見ているからだろ」と夢のないことを言われ、「確かに!」と変に納得してしまい告白できませんでした💧

ダメ元で告白すれば良かったと、数年間後悔していました🥲

その反動からか、大学生の時には目が合う度に勘違いしまくって十人連続でフラレたのは、今では良い?思い出です🙄


そういえばこの話をどこかで書いた気がしますが忘れました(笑)


ここまで読んでいただきありがとうございました🍀


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