面影|ショートショート #片想い文芸部
あざとい娘がいつもの口調で話しかけてきた。
「ねえ、お父さ〜ん、今度の日曜日にお城連れてって〜そこで〜御城印買ってほしいの。お、ね、が、い!」
この娘はいつからこうなった?
娘は現在小学一年生だが、いつの間にか大人顔負けの「あざとさ」を身につけていた。
登園していた保育園では、男の子だけでなく70歳過ぎのお爺ちゃん園長にまであざといことをしていると、担任の保育士から何度か呼び出されたことがあった。
俺に対しても口調があざとい。
いや、お前さんの父さんだよ?
父さんにあざとさを見せつけて何になる?
小学校入学後も心配していたのだが、予想を裏切らず、担任の男の先生との初めての個人面談のとき、
「あのー、ジュンコさんは普段からあんな感じなのでしょうか」
「どのような様子でしょうか」
それに対して沈黙の時間が続く。
まさか・・・
とても長く感じた沈黙の後、先生が申し訳ない顔で、
「実は純子さんから手紙をもらいまして、そこには「めちゃくちゃこのみです」とか「こんどてをつないでもいいですか」とか「わたしがおおきくなったらけっこんしたいランキングいちばんです」とか、書いてありまして、その」
「ああ、いいんですいいんです、誰にでもやることなので気にしないでください!」
じんわりと嫌な汗が額に浮かんだ。
先生が言うには、クラスメートの男子たちにすり寄っては、
「ねえ~今日~二人きりでジャングルジムやらない?」
「もうタクミくんたら~プンプン!」
「目を合うことが多いよね~何だかジュンコ照れちゃうな~」
いやもう聞きたくない!
純子。
「純粋な子に育ってほしい」
そう願いを込めて、わざわざ今どきではない古風な名前を付けたはずだったが、これはどうなのだろうか。
本当に純粋な気持ちで接しているならいいのだが、どう考えても「あざとい」という言葉が思い浮かぶ。
一学期が終わって夏休みに入ったある日の日曜日に、娘から「相談事がある」と言われ、気分転換になると思い、近所にあるコマダ珈琲で話すことになった。
どっぷりアイスオーレとキッズオレンジジュースを注文後、来店まで沈黙していた娘が開口一番にまくし立てるような口調で話し始めた。
「聞いて!クラスにいるあのブ◯な女、ホントに許せないんだよ!なんかクラスで一番イケメンのソウタにあざといことばかりしやがって、ブ◯のくせに近寄るなっつーの!あと、先生の気を引こうとして授業中にわざと消しゴム落としたり、問題が解けないふりして先生と密着しやがってマジムカつく!さらに腹が立つのはワタシの方が圧倒的に可愛いのに、アイツばかりモテやがるの!こっちはソウタが本命で気を引こうとして頑張っていたのに、あのブ◯に持っていかれそう!あんなヤツさっさとじ(以下、自粛)!ねえ、ちょっとオヤジ!ワタシの話聞いてる?」
ものすごく剣幕で汚い言葉を発し続ける娘の前で、妙に冷静になっている俺。
ああ、一年前に離婚した元妻にそっくりだな、将来旦那になる男は大変だな〜ご愁傷さま
そこにやってきた女性店員が、お盆を持つ手を震わせながら、
「ご、ご注文の飲み物をお持ちしました」
と声をかけてきたのだが、
「おせーんだよ!この、あ(以下、自粛)」
そうそう、性格の落差が激しくてかなり手を焼いたな〜。でも可愛かったし、いい女だったけどな〜
逃げるように去っていった店員には悪いと思いつつ、妻との思い出のアイスオーレをズズズと飲み始めた。
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この記事は、ナルさん企画【片想い文芸部】参加記事です。
今回のお題は、【あざとい】でした。
今回、ナルさんの企画に初参加しました✨️
登場人物の娘のモデルは我が家の次女です。
あ、こんな極端な性格ではないですが(笑)
親の自分に対してたまにあざとい言葉を発するのですが、ベビーフェイスなので顔と言葉のギャップでいつも笑いそうになります😂
しかし、いつからそんな技を覚えたのか謎です💦
ここまで読んでいただきありがとうございました🍀
