見出し画像

行き場を失ったウサギのイラストが、 人道支援の仕組みにつながった理由

先月に引き続き今月も、SUZURIの収益の一部を、人道支援団体へ寄付することができました。寄付先は、

・ユニセフ
・国境なき医師団
・セーブ・ザ・チルドレン

などです。

私は活動家ではありません。デモを主催するわけでもありませんし、運動団体に所属しているわけでもありません。どこにでもいるイラストレーターの一人です。

これまで募金や寄付をしたことがあるかと言えば、コンビニの募金箱にお釣りを入れたり、赤い羽根共同募金くらいしか記憶にありません。個人で1ヶ月ごとに万単位の寄付をするなど、以前の自分であれば考えられないことです。

変化のきっかけになったのは、一羽のウサギとタンポポのイラストでした。

各地のデモで掲げていただいているこのウサギのイラストですが、実はプラカード用に描き起こしたものではありません。このウサギは、もともと別の絵の女の子の足元に描いた添え物でした。

その女の子の絵自体、一度は企画ごと消えてしまい、行き場を失っていたイラストだったのです。それがまさか全国で戦争反対の声と共に掲げられ、人道支援団体への寄付につながることになるとは。まさに人間万事塞翁が馬…もとい、兎。

今回のウサギですが、私はイラストそのものが売れたわけではないと考えています。

イラストに「意味」を足したことで、意思表示のアイテムになり、連帯のサインになり、それが寄付を生む仕組みになったのです。

今回は、その舞台裏をお話ししようと思います。

NO WAR BUNNY

その前にまずは、SUZURIでTシャツやアクリルキーホルダー、缶バッジなどをご購入いただいた皆様、本当にありがとうございます。

正直、自分のキャラクターが売れるとは思っていなかった

身も蓋もない話をしますが、私は、私個人が描いたキャラクターそのものにそれほど強い商品価値があるとは思っていません。もちろんCMなどでキャラクターデザインの仕事もしているので、キャラデザやイラストには自信があります。しかし、ちいかわや、ポケモンのように、

「このキャラクターが好きだから買う」

という世界とは違うジャンルで仕事をするイラストレーターだと思っています。実際、今回ご購入いただいたものを見てもそう感じます。ではなぜ売れたのか。

売れたのは「ただのウサギ」ではなく、それぞれ何かしらの意味を背負っているからです。

  • NO WAR! というメッセージを背負ったウサギ

  • ペンライトというデモを象徴するアイテムを持ったバニー

  • マヌケな権力者を象徴する裸の王様

アクリルキーホルダー各種

つまり、皆様にご購入いただいたのは、キャラクターだけではなく、その背景にある「メッセージや意義」なのだと思います。

元々は脇役、添え物だったキャラクターたち

実際、ウサギ単体の絵は以前から商品としてSUZURIに登録していました。しかし、全く売れていませんでした。数字が突然動き出したのは、

NO WAR!

というメッセージを入れてからです。以前の記事でも説明しましたが、3月以降、ウサギが戦争反対と平和のシンボルになるムーブメントが発生しました。

反戦をテーマにしたプラカードを作りたいと思っていましたが、モチーフは何が良いだろうと悩んでいたところに発生したムーブメントでした。ゼロから何か描きたいとも考えましたが、仕事も忙しく、何よりSNSは鮮度が命です。

そこで、立ち消えになった別の仕事の絵から、女の子の足元にいたウサギとタンポポのレイヤーを組み合わせ、NO WAR!というメッセージを添えました。これが、現在までに全国のコンビニで850枚以上出力されているプラカードです。

ちなみに、下のイラストが元々ウサギが棲んでいた絵です。この絵は、ある依頼を受けて描きましたが、企画そのものが立ち消えになったため、行き場を失っていました。その絵の女の子の足元に描いていたのが、今回のウサギです。

このウサギが、NO WAR!というメッセージを背負うことで、単なるイラストではなく、プラカードという意思表示をするアイテムに変身しました。

裸の王様や、ペンライトを持ったバニーも、以前描いたものからサンプリングしています。王様は昨年のnoteのサムネ用に描いた絵を、拡大して描き直し、メッセージを添えたもので、

ペンライトのバニーも、これまたnoteのサムネ用に描いたバニーに PEACEの文字を添えて、プラカードにしたものです。

このように、現在全国のデモで掲げていただいているプラカードは、元々は全て脇役や添え物だったキャラクターなのです。

販売しているのは「意思表示と連帯のアイテム」

実は何枚もプラカードを作っていますが、私自身は、仕事や育児、家族のことなど色々あってデモに参加できていません。

しかし、「何かしらの形で、戦争反対の意思表示を外の世界に発信し、連帯したい」と考えていました。そして、同じ思いを抱いている人間は私一人ではないはずだ、とも。

通勤通学中、ジムでのトレーニング中、ペットのお散歩中、さりげなく、しかし明確に戦争反対を発信したい人は少なくないはずです。

デモに行けないからといって、無関心なわけじゃない。日常生活の中で意思表示をすることだって、立派なコミットメント(参加)だと思うのです。

そんな方々に寄り添うアイテムが必要だと思い、シンプルさや、可愛さ、男性でも気恥ずかしくないようにと、試行錯誤し、アクリルキーホルダーや、Tシャツなど、様々な商品を登録しました。

脇役だったこのウサギが、意思表示のアイテムになり、会話のキッカケになり、共感のサインになるのではないかと考えたのです。

実際自分でも商品を購入しました。

トートバッグは予想以上に大きく「これを外に持ち出すのか?」と最初ちょっと尻込みしましたが、慣れました。そもそも見てもらわないことには意味がないのです。

読者の声から生まれるバリエーション

SUZURIはリクエストをすぐに商品として反映できるのが利点です。

ペンライトを持ったピンクのウサギは、私本人は正直あまり深く考えず手癖で描いたのですが「カワイイので、グッズ化してほしい」という予想外のリクエストをいただいき、アクキーやTシャツなどに登録したら、ウサギとタンポポに匹敵する人気キャラになりました。

ほかにも、「NO WARのTシャツが欲しいけど、NOがついてるとはいえWARが入ってるの少し嫌だな...I LOVE 平和とか平和主義とかないかな」というご意見をいただき、早速「MAKE PEACE」「LOVE and PEACE」 バージョンを作成しました。

https://suzuri.jp/ulaken_volvox/designs

また、「国家情報会議設置法案」など、NO WAR!のプラカードだけでは対応できない事態になってきたため、“WE WILL NOT BE SILENT (私たちは黙らない)” というプラカードを作ったところ、こちらも即日グッズ化のリクエストをいただき登録しました。

WE WILL NOT BE SILENT

逆に、このようなポストも見かけました。要約すると、アパレル業界は“NO WAR”のロゴが入った服とか雑貨を作ってほしいという意見です。確かに、こんな時代だからこそ、どうせ文字が入ったTシャツを着るなら、メッセージ性のあるTシャツを選びたいって人もいると思います。私自身がそうです。

大企業にはできない「隙間」を埋める

ユニクロさんは、「世界の平和を願ってアクションする」PEACE FOR ALL という素晴らしいチャリティTシャツプロジェクトを展開中ですが、NO WAR ほど直接的ではありません。「NO」という否定から入る直球のメッセージは、大企業には扱いづらいのかもしれません。

しかし、私のような個人の作家や、イラストレーターであれば、その隙間を埋めることができます。Tシャツ、アクキー、缶バッジで、NO WAR という意思表示をし、同じ思いを持つ人と連帯したいという方々の気持ちを繋げることが可能です。

この需要の隙間を埋めることによって、以下のような「お金の流れ」が生まれました。

絵(ウサギ)+メッセージ(NO WAR)+意義(発信・連帯)

販売(SUZURI)

収益(ウラケン)

寄付(人道支援団体)

ただフォルダにしまっておくだけでは、絶対に発生しなかった流れです。 ちなみに、皆様から預かった大切な収益は、このような支援に変わっています。

例えば、ユニセフに3万円寄付すると、コレラなどの下痢性疾患を治療する経口補水塩(ORS)約1,685袋、またはマラリアを媒介する蚊から子どもを守る殺虫処理済みの蚊帳(かや)約93張りに変わります。

国境なき医師団(MSF)への10,000円の寄付は、重度栄養失調の子どもに約280〜300食分の栄養治療食を提供したり、約1,200人分の1週間分の安全な水を用意したりするために役立てることができます。

セーブ・ザ・チルドレンに5,000円寄付すると、3人の子どもたちに、安全な水を1ヶ月間学校で提供できます。

この仕組みは、反戦だけのものではない

「どうせ文字や絵が入った服を着るなら、意味があるものを着たい」という想いは、他の分野にも応用できるはずです。今後、この仕組みを導入したいと考えているのが、

・環境保護(里山保全、生物多様性、湿地の保全)
・資源維持
(持続可能な水産業、水系の環境回復)
・絶滅危惧種保護
・海洋プラスチック問題

などです。生活の根底をなす分野にもかかわらず、関心を持つ人はまだ限られています。私はこれまで、自然や生き物に関するテーマで本を書いたり、イラストを通じて発信してきました。しかし、本を読む人には限りがあります。一方で、Tシャツや雑貨は日常の中に入り込むことが可能です。

そこで、以下の3点のデザインを、

MORE GREEN
MORE  LIFE

というコピーを添えて、SUZURIに登録しました。

MORE GREEN MORE LIFE タヌキ
MORE GREEN MORE LIFE 里山
MORE GREEN MORE LIFE

Tシャツ、アクキー、トートバッグ、エコバッグなどを展開中です。リクエストをいただいたら他の商品も登録いたします。

これらの収益も、NO WAR アイテムと同じくらいまとまった金額になったら、日本自然保護協会、WWF ジャパンなどへ寄付する予定です。

誰かが身につける。

誰かが目にする。

誰かが興味を持つ。

そして支援につながる。

認知関心を広めつつ、環境保護団体や研究に気軽に寄付できる。行き場を失っていたイラストもメッセージと意義を加えることで、そんな素敵なサイクルを作れる可能性があります。

イラストは世界を変えない。でも…

イラスト1枚では戦争を止められません。
でも、寄付を生むことはできます。

プラカードにすることによって、
誰かが声を上げるきっかけにはなれます。
無関心ではない人同士を、ゆるやかにつなぐこともできます。

脇役だった一匹のウサギが、それを証明しています。イラストレーターにできることは、思っていたより少し多いのかもしれません。

それでは、読んでいただきありがとうございました。

もしこの記事が面白かったら、スキやシェアをしていただけると励みになります。なお、記事内で紹介したプラカードはネットプリントにも登録しています。デモやスタンディングなどでご活用ください。

追記

記事内で紹介したNO WARシリーズやMORE GREEN MORE LIFEシリーズはSUZURIで販売中です。


プラカードをネットプリントに登録しました。
デモやスタンディングにお使いください。
※著作権保持/改変転載商用不可

https://x.com/ulaken/status/2072875673757380682


🎨 イラスト制作のご依頼・ご相談を承っています

ウラケン・ボルボックスは、書籍・広告から大型壁画まで、コンセプトに合わせたビジュアル制作を行っているイラストレーターです。「複雑なテーマを、ひと目で伝わる物語に。」をモットーに、メディアの規模を問わず媒体や空間に合わせた最適なイラストをご提案します。

これまでの制作実績や、詳しいお仕事のご相談・ご依頼については、下記よりお気軽にお問い合わせください。

【関連オススメ記事】

書籍

電子書籍版が出ました

東京・上野で大行列ができた『大絶滅展』が名古屋で開催中です。世界初公開となるステラーダイカイギュウの全身化石が目玉なので、何故かステカイだけ超増ページ漫画で紹介してる『だいたいヒトがやらかしました 絶滅生物事典』での予習をオススメします。近隣にお住まいの方は、是非。

LINEスタンプ・顔文字


いいなと思ったら応援しよう!

ウラケン・ボルボックス 記事をご覧いただきありがとうございます!チップで応援していただくと、嬉しさのあまり、ウラケンがジャンピングジャックで跳ねます!どんどん痩せます!

この記事が参加している募集