質問1590:ラリーを楽しめるくらい続けられるようになるために初心者が意識するといいことは?
初めまして。質問失礼致します。
現在私は高校2年、テニス部に所属しています。テニスは去年始めたばかりの初心者です。
唐突ですが、最近部活を楽しめていません。
その理由としては、とにかく私がテニスが下手であるということが挙げられます。
顧問の先生には、
「準備を早く」
「ボールをよく見て」
「左手出して」
「もっと前に押し出すイメージで」
「ステップ入れて」
「足をちゃんと動かして」
などと言われますが、一気に全てできるわけもないのは当然です。
ですから、まずは左手を出すことだけ意識しようと思って球出し練習をすると今度はボールに追いつかなくなって打てなくなり、顧問は
「準備早くしてもっと足動かして」
と言われどんどん意識を向けさせる方向を増やされてしまいます。
長々と話していますが、私がお聞きしたいのは、
ラリーを楽しめるくらい続けられるようになるために初心者が意識するといいこと、実行するべきこと、練習法(1人でできるものがあると嬉しいです)などありましたら教えていただきたいです。
ご回答よろしくお願いいたします。
▶できない自分がだめなの!?
まさにご指摘いただいているお悩みは、『テニス上達のヒント』に書かれている内容です。
ですから上手くいきません。
ではどうすれば上手くいくでしょうか?
それも『テニス上達のヒント』に記されています。
「一気に全てできるわけもないのは当然」とあなたは言い切りました。
「一気に全てできない自分はだめだ」という感じ方になる大人も、一方では多くいる中で。
▶顧問が悪いわけじゃない
顧問が悪いわけではありません。
スポーツ指導について専門的に習った経験もありませんから、顧問に全責任を負わせるのは酷です(いえ専門的に習った大人ほど、もっと押しつけがましい指導をするのでしょう)。
顧問も、あなたに上手くなってもらおうと、頑張っているのだと思います。
とはいえご自身は、運動能力が生涯で最も伸びるとされる「ゴールデンエイジ」を、過ぎたばかりのまだまだ伸び盛り。
楽しめない状況は、なおさら看過できません。
▶フォーム矯正はネバーエンディングストーリー
やれ「準備を早く」
やれ「ボールをよく見て」
やれ「左手出して」
やれ「もっと前に押し出すイメージで」
……エンドレスとなるので、以下略とさせていただきます(関連記事「テニスレッスンの『ネバーエンディングストーリー』」)。
冗談ではなくキリがないフォーム矯正を、70代や80代の年齢になってもいまだ続けている人は、全国各地にごまんといます。
▶誰も教えない高速ラリーができる秘訣
プレー中に全部を意識したら、仰せのとおりできないに決まっています。
まさか高速ラリーを繰り広げるプロは、これらをすべて意識しながらプレーしているのでしょうか?
まともに考えれば、答えは否。
プロだから、何も考えなくても高速ラリーができるのではありませんよ。
逆で何も考えないから、プロは高速ラリーができるのです。
プロでさえ、考えたらできません(関連記事「テイクいくつ?」)。
それを愛好家がやろうとしたら、なおさらできません!
▶スティーブ・ジョブズが残した2つのメッセージ
いただいたメールアドレスから拝察しますと、iPhoneをお使いでしょうか?
Apple創業者のスティーブ・ジョブズが2005年、スタンフォード大学卒業式で学生たちに語りかけた有名なメッセージがあります。
ひとつは「もし今日が人生最後の日だとしたら、今日やろうとしていることを私は本当にしたいだろうか?」
そしてもうひとつがラストメッセージ「バカであれ」でした。
▶ボールがよく見える!
「バカであれ」
一見するだけだと、根性論、精神論、投げやり論の逆張りに思えるかもしれないけれど、科学的に読み解けば運動生理学です。
「バカであれ」すなわち「考えるな」
考えなければ、思考に意識を奪われませんから、ボールがよく見えます。
えっ? どういうことでしょうか。
▶ボールが見えていない
考える(意識する)と、たとえばこのメール回答を読んでいる最中、周りで空調などの「音」が鳴っていたかもしれないけれど、よく聞こえていなかったに違いありません(聴覚)。
それと同様のメカニズムで、打ち方やフォームについて意識していると、視覚が閉ざされるのです。
ボールがよく見えないというのに、あんな高速ラリーをできるはずがありません。
逆に言えばボールが見えると、ラリーは簡単になります。
なぜならテニスというのは、ゴルフのように狭いクラブフェイスで小さなカップを狙うのでもなければ、野球のように細いバットで遠くへ飛ばすのでもなく、大きな網の目のついたラケットで、目の前の手近な広い相手コートへ、ただ打ち返せばいいだけの競技だからです。
大会に出るなら、覚えておいてください。
勝つためのセオリーはかくも単純。
テニスは1球でもいいから、相手より多く返せば試合に勝つスポーツです。
▶「目隠しテニス」はもう卒業
確かに視界には、ボールは入っています。
だけどスピード感や距離感が感じられる見方には、なっていないのです。
「ラリーを楽しむために意識すること」のご質問にお答えするならば、「意識しないことを意識する」という禅問答になる(関連記事「テニス絶好調の理由は『禅問答』 」)。
それではよく分からないから、「一人でできる練習法」としては、「ボールの回転を見る」です。
空調の「音」を、耳に入れるだけでなく、その高低、大小、清濁に至るまで、よく聴いてご覧なさい。
すると、ご自身の集中力が高ければ高いほど、このメール回答に意識を向けにくくなるはずです。
それと同じようにボールの回転を見ていると、打ち方やフォームなどの雑念について意識されなくなります。
仮にボールを見ながらでも、打ち方やフォームを意識することができると言い張る人がいたならば、それはその人の集中力が“低い”からです。
▶体が勝手に反応してくれる
差し当たって「ボレーボレー」でお試しいただければ、すぐさま、体が勝手に反応してくれる感覚を確かめられると思います(ストロークの場合は「現実に対するイメージのズレ」があると、どんなにボールに集中しても “焼け石に水”ですから、今はまだおすすめしません(関連記事「ズレたイメージの前では、人は無力」)。
順序が大事です(関連記事「どんなに強く打っても、コートに収まる不思議」)。
ストロークの、特にフォアハンドは、ワンバウンドさせた余裕のあるボールを利き腕側で打てるテニスの基礎と思われがちですが、キャリアを重ねるうちに、最も難しいショットになりやすいのです。
打ち方やフォームなどは、どうなっても構いません。
前を向こうが横を向こうと、ラケットヘッドが落ちてもいいし、左手なんかどうなっているのか分からないのが正解です。
ボールの回転が見えている状態をずっとキープしながら、プレーしてください。
要言すれば、“それだけ”です。
だけどそれができない人が、多いのです。
なぜ?
やれ「準備を早く」
やれ「ボールをよく見て」
やれ「左手出して」
やれ「もっと前に押し出すイメージで」などと、意識するからですよ(いやはや)。
▶世の中は愉快な“から騒ぎ”
今回の回答は以上となります。
本メールに『テニス上達のヒント』をお付けします。
若干高校2年生、常識を疑うには、勇気が要ったと思います。
ほかの人がみんな、違う意見を言う中で。
テニスに限らず世の中は、そんな勘違いの“から騒ぎ”ばかりしています。
こちらの話も「立ち読み」部分ににお見通しいただくだけでも、参考にしていただけると思います。
せっかく持って生まれたご自身に備わる優れた運動神経に、どうぞ見放されてしまいませんように。
▶楽しむために始めた
部活、楽しめていないんですね……。
夢と希望を胸に始めたテニスだったと思います。
あなたとほぼ同じ世代の娘がいる私なりに敢えて申せば、“悔しみの念”に堪えません。
テニスは本当は、もっと楽しいスポーツですよ。
そのことだけは、どうか忘れないでいただければと思います(^-^;
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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テニスゼロ代表
吉田無型(よしだ・むけい)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero