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【饂飩美味紀行】#53 大力うどん(福岡県みやま市)【名店】



" 「旨 し 早 し 安 し」 の 三 拍 子、筑 後 饂 飩 の 誉 れ "




❖ 福岡県みやま市の位置


筑後の南方、肥後との境にほど近き地――そこに静かなる風情をたたえる国あり。名を「みやま」と申す。往来の要衝なる瀬高駅を拠点とし、東に山を、西に川をいただく、まこと旅心誘う地にて候。

この瀬高の宿場を起点に、馬を東へと進めば、ほどなくして清水山の麓に至る。そこに鎮まりしは、清水寺。古き世より人々の信仰を集め、庭園は雪舟法師の手によると伝えられる名勝にて候。池のかたちは心の字を模し、鶴亀の島を浮かべ、石は語り、樹々は物語る。四季の移ろいと共に、風景は幽玄の趣を帯び、秋の紅葉など、あたかも屏風絵の如く。

また同じく境内には、天保の頃に建てられし三重塔あり。朱塗りの塔は、山の緑に映え、静かに空を指す。その佇まい、まさしく仏道の深さを物語るものにて候。

駅を西へと進めば、田畑の彼方に上楠田天満宮の社が見え申す。此処に根差すは、樹齢三百年にも及ぶ大藤の木。春の折には藤房が棚より垂れ下がり、香りと共に紫の霞が地を包み込む様は、まこと夢幻の如し。

かような地にて、清水寺の古き言い伝えをもとに生まれし木細工あり。名をきじ車と申す。釘ひとつ使わず、木を削りて仕上げられたこの郷土玩具は、引けば「キュッキュッ」と音を立て、走る様はまこと愛らしい。子の健やかなる成長を願い、家の繁栄を祈る縁起物として、いにしえより親しまれておる。此のたびは、国の無形民俗文化財としてその名を刻まれ申した。

さらに、このみやまの名を遠き都まで広める者あり。それが、三山ひろし殿。平成の世に歌の道に生き、令和元年よりふるさと観光大使として、その美声と人柄をもって、郷の誇りを伝え続けておらるる。

川と山、寺と花、そして人の想いが交わる地、みやま。喧騒を離れ、旅装を解き、心を澄ませば、この地の時の流れは、まるで江戸の昔に戻ったかのように、ゆるりと胸に染み入ってくるでござろう。



❖ 店舗外観



❖ 饂飩絵図



❖ 饂飩膳の記録


春雨、腹を鳴らす

彼岸の折、空よりは細雨しとしとと落ち、街道を潤し候。
老母を駕籠に乗せ、先祖の墓所へ参らんとする途中、
「せっかくだし、大力うどんへ寄ろうかの」と話まとまり、道を逸れ候。



到着すれば、見事に広き馬留場(駐車場)には、すでに多くの駕籠が並び、
人の波は店先に列をなし申した。
されど、大力の良さは回転の妙にて、十と少々の刻を待つのみで、座敷へと案内され申した。

「やはり、この店は格別じゃ」と、母君の面持ち柔らかく、
拙者もまた深く頷き申し候。


品書きに、時代の波を知る

畳の間にて膝を折り、まずは拝見つかまつるは、品書帳。
いずれの品も、かつては一文二文ほどで頂けしほどの手頃さ。
近年は、多少値も上がり申したが、それも世の移ろい、咎める者はなし。



「肉うどん、海老天、加哩(カレー)うどん、どれも良きと聞くが……」
と母と相相談し、拙者が選びしは、筑前伝来の定番「肉ごぼう天うどん」。
さらに「いなり」も一皿添えることと相成り候。

給仕台にて冷水を汲み、窓を望めば、春霞の木々が幽かに姿を覗かせており申した。



一椀に宿る、五十年の矜持

料理は待たずして届き申した。まこと手際の良さ、昔ながらの店ならでは。
まずは汁(つゆ)を啜れば、柔らかにして深き旨味が舌にしみわたり申す。



「羅臼昆布、潤目鰯、鯵子(あじご)を六刻煮出し、出汁をとる」
とは、かつて常連客より聞きし話。まことに味の底力、ここにありやと膝を打つ。

麺は太く、ふくふくと膨らみ、餅の如く柔らかき食感。
しかも、しなやかにして腰もあり、実に拙者の好みにぴたりと合い申した。

牛蒡の天ぷらは香ばしく、牛肉の甘辛煮とともに、
出汁と交じり、三味和合の妙味を奏で申す。
そして稲荷。酢飯を包むは甘き揚げ、ふっくらと炊かれ、
これまた出汁と絶妙に寄り添い、舌鼓を打たせ申した。



晴れ間に祈りを託して

器の底が見えし頃、母君と顔を見合わせ、笑みがこぼれ申した。
「昔から、この店だけは変わらんねえ」とは母の談。
まさに民の糧を支える老舗にござる。



創業五十年を超え、「廉価(やすく)、早く、美味(うま)しき」三拍子は今もなお健在なり。
物価の高騰、世の移ろいは避けがたくとも、この味が守られることを願わずにはおらぬ。



外へ出れば、春雨も止み、天照の光がそっと地を照らし申した。
路は濡れつつも、きらきらと光を返し、
拙者、駕籠に戻り、母を伴い、祖霊の眠る墓所へと向かい申した。



❖ 店の評判帳


残念至極ながら、店の評判帳を見出すことが叶わず


❖ 詳細な絵図



❖ここにしか無き逸品、郷より届く品々(宣伝)



遠き筑後の國、みやまの里にて丹精込めて育まれし誉れ高き白米、「にこまる」と申す品種、これぞ世にも稀なる逸品にて候。その味わい、ふくよかにして艶やか、炊きあがりはまさに白銀の輝きを宿し、口に運べばほの温かく、頬に笑み咲くゆえ、「にこまる」の名を戴くに相応しき品にござる。
かの米、今や遠き異国の地においても名を馳せ、国際評定にて金の誉れを授かりし栄光を有す。まさしく天下の美味、これを知らずして米を語ることなかれ。
このたび、そなたの元へと、月々忘るることなく届けらるるよう、年に十二度、定めし刻に併せてお届け仕る計らいとなり申した。一度の便にて二袋、いずれも二貫目(2kg)入りにて、合計二十四貫に及ぶ大仕合わせ、四季折々の移ろいと共に味わうは、まさに風雅の極みに候。
福岡はみやまの地、その風土と人の心が育てし此の米、日々の膳に、また贈り物としてもこれ以上なき品にて候。もしやお心動かされしならば、今すぐにでもお声をお掛けくださりませ。


❖ 過去の饂飩絵巻


美味を求む饂飩侍、風の如く歩みし味巡礼の記録なり


❖ 諏訪たけしの饂飩美味紀行全集




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