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心の端っこまで満たすために。 #きめたぜソロしゃぶ葉


心の形はハートじゃなくていびつだから、端っこまで満たすのは難しい。


「ヒマー!留守ヒマで麻痺するるすひまでまひする!」
春休み中、小学生2人と園児1人は暇で暇で仕方がないようだった。回文を作りながら暇なことをアピールし、持て余した暇はやがて兄弟げんかという形になって現れる。ギャー!のワー!のキー!


「……よし!ご飯を食べにいこう!」
その一言は状況を一変させるのにふさわしい。

「「「よっしゃー!」」」
男子3人分の歓声に、したり顔・・・・をして車に乗り込み、しゃぶ葉へと走らせた。道中、しゃぶ葉ダンジョン攻略とルールのおさらいを行う。

・具材コーナーに行く時はパパかママのどちらかと一緒に行くこと
・素材を集めて美味しいをクリエイトすること
・鍋はアチチだから触らないこと(4歳が分かったー!と張りきる)
・しゃぶしゃぶする時は赤い箸、食べる時は黒い箸を使うこと

「いいね!?」と問うと「わーかってるよー!」と元気のいい声が返ってくる。夫が運転している間に私はスマホですかいらーくグループのクーポンを確認し、「長期休みに登場するキッズガチャクーポン」の存在を確認した。よし。無事に食べ終わったらガチャをゲットして帰れば今日の平和は確実。ふふふと算段を終えた頃、しゃぶ葉に到着した。


しゃぶしゃぶを楽しむ「だし」は基本的に2つから選べるが、わが家は「基本の白だし」と「すき焼き」がお気に入り。すき焼き大好きで牛肉しか食べない真ん中息子のためにだしはその2つと決まっている。

それぞれワッと具材をとりに行き、ねこ型ロボットがドンと肉を運んできた瞬間からスタートする食事は、まるで海賊団のような賑やかさだ。

三兄弟のしゃぶしゃぶ1人前(前半戦)


肉肉野菜肉野菜。
肉肉お麩肉ラーメンポン酢。
ラーメン肉肉カレーうどん。
ワッフルクレープかき氷。

男子3人の食欲凄まじく、次々とお皿が空になっていく。いやー見ていて気持ちがいい。

途中でわたあめはさみまーす


デザートのあとにラストしゃぶしゃぶをしたり、ラストカレーを決めたりして、それぞれ口内を好きな味で締める。ガチャガチャも回して、家に向かう道中はホクホクとした雰囲気で満たされている。

あー食べた。楽しかった。お腹もいっぱい心もいっぱい。ネコロボもかわいかった。


──そう。満たされた。ある部分が。
子供の笑顔と楽しい食事、外食という特別感と満たされたお腹。それだけで満足じゃないか、幸せじゃないか、と思う。


思うけれど、じゃあ、私はゆっくりと食事を味わったのか? というとそれはまた別の話になる。


子どもを連れての外食は息抜きでもあれば、実は逆に疲れるといった側面も持ち合わせている。

鍋で火傷をしないように。
騒ぎすぎないように。
ネコロボの進路を邪魔しないように。
3人の子どもたちが具材をとりに行く時は毎回付き添い、わたあめやワッフルをやる時はずっと後ろについて「いーよいーよ!そうそう!うまい!」と声をかける。

帰宅後、「今日どれが美味しかった?」と聞くと「わたあめー!」「おにくー!」と返ってくるけれど……私は何を食べたんだろう? いっぱいになったお腹に問う。バタバタしてて何を食べたかよく分からないけど、なんか美味しかった。……子連れの外食はだいたいそう。

「母」という形の心は満たされた。でも、歪な形をした心の端っこにはまだ、何もない空間がある。

だから、満たしにいこう。
今度はひとりの人間として。

春休みが終了し、ワー!のギャー!のキー!から突然シンとして片付いた部屋に鍵をかけ、ひとりしゃぶ葉へと車を走らせた。


平日の昼間。
「何名様ですか?」の問いに、オードリー春日のトゥースよろしく指をしっかり立てて「ひとりです」と答える。


メニューを開いて、いつもなら悩まない「だし」でまず悩む。

実は辛い鍋が気になってた。
柚子塩も気になってた。
信州出身だから、味噌味も絶対好き。
本当は食べてみたかったものが、ひとりだから分かる。本当は私、こんな味が心に引っかかるんだ。

これまで「気になってたけどスルーしてきた」ものがいくつあっただろう。外食に行けば、子どもが「そっちがいい」と欲しがった時に交換できるよう、熱いもの・辛いもの・大人向けの味は消去法にしてきた。

でもひとりなら、選べる。

子どもたちと過ごす時は子どもが笑顔で帰れれば満足。ひとりの時と「欲しいと思うもの」の形があまりにも違うから、そりゃ満たされる部分も違うだろう。

味噌味を選択し、自分を味わい満たすためのソロしゃぶしゃぶが始まった。


肉をしゃぶしゃぶしつつ、ネギ・たけのこ・中華麺・コーンとラー油を一皿にとる。

このラインナップが何になる?


味噌ラーメンである。

うんま。辛味噌ラーメンが染み渡る。食べるラー油なんてこれね、どんだけかけてもいいですからね。


香味野菜が大好き。


子どもたちがいると香味野菜を嫌がるから我慢していた。この細さ。鍋に入れちゃったら省くのが大変な上、自宅で自分で切ることを想像すると手間だから絶対やらない。

今日はせっかくしゃぶ葉にひとりで来たんだから、たっぷり入れて肉で包み込む。香る味と書いて香味。香るーー!!幸せ。


ニラも大量に。
ニラと味噌の相性って最高。



クレープ

子どもたちは知らないと思うけど、私は甘いクレープよりしょっぱい系が好みなのである。玉ねぎと豚肉でシャキシャキ感がたまらない。クレープの生地がしょっぱいにも合って美味しいからもう1枚いくことにする。


しょっぱ系クレープ第二弾は?


野菜と肉に、カレーを少しだけのせて。

カレークレープの完成。


思わず笑う。これ、今度子どもたちに教えてあげよう。絶対好きな味。


ちょっとさっぱりしたものが食べたくなってきたのでかき氷をはさむ。


奥にまだしゃぶしゃぶの肉が残っているというのに、かき氷。ただのかき氷ではない。これは、シェイブアイス!

その昔、夫と行ったハワイを思い出しながらのシェイブアイス。あれから十数年。今や気軽に行けなくなったハワイを懐かしみながらカラフルなかき氷を口に運ぶ。口の中がハワイアーン。

そう……あの時はオープンカーのジープをレンタルして2人でオアフ島をめぐったんだ。幌が風にはためいて、ものすごい音がして会話ができなかったんだ。

ババババ「ねぇーーーー!!!!」ババババ
ババ「なーーーにーーーー!!??」バババ
ババババババババババ「風がすごくてババババ聞こえな──……

ふふふっと思い出し笑いをしてしまう。


念の為もう一度言っておくけれど、ソロしゃぶ葉である。思い出の中まで騒がしかったけれど、今は静かだ。静かすぎる。ひとりでしゃぶしゃぶしつつ、写真を撮って思い出に耽ってニヤけている。


はぁ。ひとりだ。
味わって、味と共に思い出まで振り返って、母じゃない部分の心が満たされていく。

今ごろ子どもたちどうしてるかな? ……なんてことは思わないことにする。ひとりなんだもの!


私の歪な心はわがままで欲張りだから、母としての自分が満たされてもまだ満タンにはならない。だからたまにこうやって、端っこの方まで栄養を届けてみる。その中には背徳感や罪悪感といった隠し味も存在している。




#心を満たすひとりご飯
#きめたぜソロしゃぶ葉




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