『「数字がこわい」がなくなる本 』を算数障害当事者が読んでみた
ここ2年ほどで、算数や数学に関する書籍がググっと増えたように感じている。きっかけがいつだったのか定かではないけれど、私が最初に注目したのはこちらの書籍が始まりだった。
2023年にベストセラーとなっていたこの本を書店で手にとり、衝撃を受けたことは今でも覚えている。そう、冒頭の一文に。
九九って一度覚えてしまえば、パパっと計算できるから楽だよね!
「はじめに」より引用
九九って一度覚えてしまえば……って?
私、覚えられなかったんですけど……!
そう。私は九九の5の段より後ろを覚えられず、繰り上がりのある足し算は手を使わないとできない、数学の成績“1”しかとれなかった『算数障害』の持ち主である。
算数障害をもつ子は教室に1人か2人はいると言われているのに、まだまだその存在が認知されておらず、支援方法も定着していない。
「算数が壊滅的で劣等感を抱えたまま大人になった人」は私以外にもいるはずなのに「たし算が分からない」と口に出しても「分かる〜私も無理~!」と笑って済まされる。読字障害や識字障害に比べて、深刻にとらわれにくいのかもしれない。確かに苦しかったはずなのに。
この『19×19まで暗算~』書籍との出会いは私に大きなきっかけを与えてくれた。
教室で8割の子どもたちが九九をすんなり記憶していき、さらにこの書籍を読んでマスターした子は19×19まで暗算でできるようになるわけで。
じゃあ、残った九九を覚えられない1~2割の子どもたちは……?
置いてけぼりをくらったような。また、自分だけ分からないまま他の人だけ先に進んでいくような、そんな感覚を覚えた。算数の教科書を前に、うつむいて泣いているだけの自分を思い出した。
それで私は「九九が覚えられなかった、『算数が苦手だった人』の代表としてその見え方や感じ方を発信していこう」と決意したのである。
『算数障害の人が見ている世界』
amazon kindleにて刊行
その後、算数が苦手だった自分の体験をもとに、算数が苦手にならないように子どもたちに向けた児童書に執筆協力する機会にも恵まれた。
だからこそ、書店に立ち寄るたびに算数関連の書籍や学習障害の書籍はいつも見るようにしている。ここ2年で、小学生向けの算数本は19×19を超えて99×99まで暗記できるようになっていき、『東大算数』や大人のリスキリング本など、算数関連の書籍が平台で増えていくのを肌で感じていた。
元々できる人がさらにできるようになっていく。一方で、算数が苦手な子との"差"も広がっているように感じていた。
前置きが長くなりました。
そんな私が、次に出会ったのがこの本だった。
「数字がこわい」がなくなる本
堀口智之さん著
数字がなのである。
「算数が」じゃなくて、「数字が」。
そこにまずハッとした。
私が苦手なのは「算数」ではなく、もっと根本的に「数字そのもの」なのでは?と思い至った。これまで私は算数障害として自分の困難さを捉えていたけれど、本書のタイトルにある「数字がこわい」という言葉に触れたとき、「そうだよ!数字がこわいんだよ!」と自分の感覚にぴったりくる表現に出会った気がした。
数字という抽象的な記号が並ぶだけで頭が混乱するのに、そこに「算数」というルールや手順が加わることで、さらに理解が遠のいてしまう。私にとっては、数字を扱う以前に、数字そのものがすでに壁だったのだ。
まずそのことに気がつかせてくれた本書に、グッと期待が高まる。
……そうは言ってもよ?
本書の帯にはこう書かれている。
九九さえできれば数字に強くなれる!
あれ、これ、見たことあるぞ。
19×19が暗算でできる本と同じじゃないか。結局、九九ができなければ門前払い……?
そんな不安を抱えたまま、表紙にいるかわいらしい数字こわいモンスターを飼いならすための1ページ目を開き始めた。
ーーここからやっと読書感想文に入りますーー
学校で習った算数と数学は、捨てましょう。
まずは、捨てるんです。
えっ──? 何を言っているのかな?
著者である堀口さんがいきなりとんでもないことを言い出して私の固定観念をぶち壊してきた。
数字が苦手だと思っている人の多くはただ単に「数字を学んだことがないだけ」だからです。
私の14年間は何だったの?
あの地獄の数学の時間は何だったの?
……いやでも、本当の本当に苦手なんだって。私の中の数字こわいモンスター、こんなかわいいキャラじゃないし。それに結局この本を手にとる人は少なくとも九九は出来る人でしょ?

数字がこわすぎて若干不貞腐れている。実は疑ってもいる。長年連れ添った数字こわいモンはそう簡単に手なずけるとは思えない。しかしまえがきを読み進めると、「実は九九が苦手」という人もいる、というではないか。
少しの希望と、8割ぐらいの疑いの目を持ってさらにページをめくっていった。
本書によると、数字こわいモンスターは「かわいく」できるらしい。5つの魔法で“数字をかわいくする”というのだ。
本当に~?(まだ疑っている)
これまでの人生で「かんたん!」「だれでも!」に何度も騙されている上に、とくに苦手な「数字」と向き合うということで及び腰になってしまった。
ところが著者である堀口さんは、私のこと見えてる?と思う位に、私が弱気になるタイミングで「大丈夫!」と言う。
この本の計算は、できるだけ1ケタを中心にしています。多くても2ケタです。
「それで本当に数字がこわくなくなるの?」
「難しい計算をしないと、数字に強くならないんじゃないの?」
そう思うかもしれませんね。
断言しましょう。難しい計算はいりません。
最初に持っていた猜疑心がどんどん晴れて素直な気持ちになってくる。もしかして、本当に、数字こわいモンがちょっと怖くなくなるかも……?
何度も逃げ出しそうになる私を、励まし続ける堀口さん。
できない問題は、やらなくていいです
まず、できる問題だけを解いてください。
「難しい計算じゃないのにできないんだよ!」と思うかもしれませんね。しかし、難しいかどうかは、あなたが決めるものです。
自分が見て「難しい」と思ったら、それは難しいのです。
……泣いていいかな?
学生の時にこれを言ってもらえたらなぁ。
何度も励まされて、できる問題だけでいいと言われてすっかり安心して、ここからは全面的に堀口さんを信じて読む手が止まらなくなった。
そこからの5STEPは、できることもあるしできないこともある。と表現するのがちょうどいい。そしてできなくても大丈夫という安心感が最初に作られていた。
数字をかわいくする魔法
「まるめる」「ちいさくする」「きづく」「くらべる」「しつける」
この5つのステップのうち、私が衝撃を受けたのは「まるめる」と「くらべる」のステップである。
そんなことしていいの?という驚きばかりだった。
そんな数え方していいの?
日本の人口、そんな感じでいいの?
そういう風に見ればよかったのか!
今までそんなこと誰も言わなかったし、そんな見え方したこともなかった!という驚きの連続。
本心では「これはできた」「これはできなかった」「このステップについて語りたい」と色々思うところがあるのだけれど、それは本書の核であり、書いてしまったらネタバレになりそうなので割愛する。
……できる問題からやってみようかな、と思えた。それだけで大進歩。九九はやっぱりできた方がいいみたいだけど。
4とか7とか3.1415とか兆とか億とか、複雑でかわいくないトゲトゲモンスターが、ほんの少しかわいく見えてきたような気がする。
元々の特性によって「きづく」とか「しつける」までは私にはまだ難しい。
だけど、本書に書かれていることを少しずつ身につけて、まずは「まとめる」「くらべる」を掴んで。
それがもしも「無意識」にできるようになれば、今度は「きづく」の方に意識を向けられるのかもしれない。
そんなに簡単じゃないだろうけど。まだまだ怖いけど……トゲをまるくして、しつける方法が、ここにある。
私の数字こわいモンは人よりずっと大きくて凶暴だから本当は近づきたくない。でも「あっちいって」といなくなってくれるわけでもない。
これからもずっと私のそばにいる数字こわいモンだからこそ、少しでもかわいくする魔法を知っておくことが大事なのかもしれない。
私と同じように数字が苦手な人、本当に無理な人、算数障害の人こそ、本書で数字をかわいくする方法を見つけてほしい。
5つのうち、1つだけでも知っておくと数字がぐっとかわいくなるかもしれないから。


ダウンロードしてやってみました。
1位の人は25秒とかでクリアしてました。
#読書の秋2025
#数字がこわいがなくなる本
#ダイヤモンド社

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