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【利益相反管理実務(4)】「誰」と「何」をどう判断するか─リスクを具体的に把握する手順

本シリーズ(第2回〜第5回)では、利益相反管理の「基礎概念とフレームワーク」をテーマに、
 ・定義:「不正」ではなく「状態」と捉える(第2回
 ・対象:管理すべき「人」と「利益」の射程(第3回
 ・把握:リスクを可視化する5つの手順(第4回
 ・対策:信頼を守る「開示・分離・監督」の設計(第5回
という四段階で、産学連携実務の土台となる思考プロセスについて整理します。

前回は、利益相反管理の対象となる「人」と「利益」について整理しました。
ここで重要なのは、「誰が、どの利益と関係しているか」という情報を、どのようにリスクの具体的な把握と対策につなげるかです。
利益相反リスクの大きさは、金額の大小で機械的に決まるものではありません。まず、誰が何を決め、その判断がどの利益と結びついているのか、を整理する作業が必要です。

本稿では、そのための基本的な手順を5つに分けて示します。


1.リスクを具体的に把握する手順

(1)誰が、何を決められるのか、権限を確認する

最初に確認すべきは、その人物がどの意思決定に関与しているかです。

研究であれば、例えば、研究計画の立案、対象者の選定、データ解析、論文公表などに実質的に関与して判断の権限を持っているか、です。
また、組織の運営であれば、例えば、予算配分、人事、契約の承認、寄附受入れの可否を決められる立場か、です。

肩書きではなく、その人が「実質的に何を決められるのか」を特定することが出発点です。

(2)何についての判断なのかを整理する

次に、その意思決定が何を対象としているのか、を明確にします。

ある企業との共同研究契約の締結なのか、
特定の製品を用いた臨床研究のデータ解析なのか、
自分の研究成果活用型ベンチャーへの特許ライセンスなのか、などです。

判断の対象を具体的に具体化することで、どのようなリスクがありそうか、具体的に検討できるようになります。

(3)その判断と経済的利益の結びつきについて確認する

ここで初めて、経済的利益との関係を検討します。
報酬、株式保有、寄附、役職、特許収入などの経済的利益が、今回の判断の対象とどの程度関係しているのか、を確認します。

重要なのは金額の多寡ではなく、その利益が、今回の判断とどの程度関係しているか、です。
例えば、判断の相手方と同じ企業からの利益か、関連会社からのものか、または、その判断によって将来その企業が利益を享受する可能性があるか、といった点を確認します。

(4)判断がバイアスの影響を受けると何が起こるかを具体化する

このステップでは、その判断が経済的利益の影響を受けた場合に、どのような変化が生じ得るのか、を整理します。

抽象的に「影響があるかもしれない」と考えるだけでは、進みません。
実際にどの判断の場面で、バイアスの影響に寄りどのような変化が生じ得るのか、を具体的に想定することが大切です。

例えば、研究であれば、研究デザインの選択、対象者の選択、データの評価や公表の判断に偏りが生じる可能性があります。
経営判断であれば、契約条件の設定、資源配分、特定事業への支援の度合いなどに影響が及ぶことも考えられます。

こうした変化が現実に生じた場合、研究の公正性や組織の中立性に対する信頼が損なわれるというリスクにつながります。

関連する連載回

具体的なバイアスのバリエーションや、どのようなリスクとして整理すべきかについては、第5回で詳しく扱います。

(5)リスクを軽減・除去する対策を検討する

最後に、把握した構造に応じた対応を検討します。

第三者レビューの導入、役割分担を見直す、議決に参加しない、適切に開示するなど、場合によっては持株の処分や役職辞任など、状況に応じた対策を検討します。

利益相反管理は、「許可」か「禁止」かの二択ではありません。
どのように判断と利益を切り分ければ、公正性を担保できるかをデザインする作業です。

2.まとめ

利益相反の評価は、金額の大小で機械的に線を引く作業ではありません。

誰が
何を決め
その判断がどの利益と結びつき
どの場面でバイアスの影響を受け得るのか。

この流れに沿って順に整理することで、リスクを具体的に把握することができます。

重要なのは、「問題があるかどうか」を直感で判断することではなく、意思決定の対象と権限を確認し、バイアスの影響を具体化し、そのうえで適切な対策を検討することです。淡々と整理していけば、必要以上に抑制的になることも、逆にリスクを過小評価することも避けられます。

利益相反管理とは、当該意思決定に関与する者の判断の過程を整理し、第三者に説明できる状態にしておくための仕組みです。
この5つの手順に沿って検討すれば、研究の現場でも経営判断の場面でも、「なぜその判断に至ったのか」を筋道立てて説明できるようになります。

次回は、これらの判定を踏まえ、リスクを軽減・除去するための具体的なマネジメントの選択肢を整理します。

2026年2月28日投稿

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