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上腕二頭筋を伸ばして鍛えると有利? ケーブルカールの「肩の角度」が筋肉の成長に与える影響


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 ジムでケーブルカールをするとき、「腕を後ろに引いた状態で行ったほうが筋肉が伸びてよく効く」という話を聞いたことがあるかもしれません。

 上腕二頭筋は肩と肘をまたぐ筋肉であるため、肩をどの角度に置くかによって筋肉の長さが変わります。そのため理論上は、筋肉が伸びた状態でトレーニングを行うほど筋肥大に有利とも考えられてきました。

 では実際に、肩を後ろに引いて上腕二頭筋を伸ばした状態でケーブルカールを行うと、通常の姿勢と比べて筋肉の成長に違いは生まれるのでしょうか。

 今回は、2026年にノルド大学のLarsenらが報告した最新研究をもとに、ケーブルカールにおける肩の角度が肘を曲げる筋肉(上腕二頭筋・上腕筋)の肥大に与える影響について解説します。






◆ 上腕二頭筋は「肩の角度」で長さが変わる


 筋肥大において、筋肉を伸ばした状態でトレーニングをすることが有利である可能性が、近年注目されています(Varovic D, 2025)。

 これには、上腕二頭筋の特性が関係しています。

 上腕二頭筋は肩関節と肘関節の両方をまたぐ「二関節筋」と呼ばれる筋肉です。二関節筋は肩の角度によって全体の長さが変わります。肩を後ろに引けば引くほど(伸展させるほど)、上腕二頭筋は引き伸ばされた状態になります。


 一方、もう一つの肘を曲げる筋肉である上腕筋は、肘関節だけをまたぐ「単関節筋」のため、肩の角度が変わっても長さに影響を受けません。


 インクラインカール(体を後ろに傾けて行う)とプリーチャーカール(腕をパッドの上に固定して行う)を比較した先行研究では、筋肉が伸びた状態で行うインクラインカールが上腕二頭筋の近位部(肩に近い側)の肥大を、プリーチャーカールが遠位部(肘に近い側)の肥大をそれぞれ促す傾向が報告されています(Kassiano W, 2025)。

 ただし、これらの研究では肩の角度だけでなく、負荷がかかるタイミング(負荷プロファイル)や動作の範囲も同時に異なっていました。そのため、肩の角度そのものがどれほど影響しているかを切り分けることが難しい状況でした。



◆ 研究の概要:負荷の条件をそろえて比較した


 この問題を解決するために、今回の研究では「負荷プロファイルをそろえたうえで、肩の角度だけを変えたらどうなるか」を検証しました。

 対象は筋トレ未経験の男性24名(平均年齢31.9歳)で、左右の腕にそれぞれ異なる条件を割り当てて10週間のトレーニングを実施しました。

 条件は以下の2つです。

  • 最大伸展群:個人の最大肩伸展角度(平均43度)でケーブルカールを実施

  • 通常位群:肩を体幹と平行に保った状態(ほぼ0度)でケーブルカールを実施

 両条件とも負荷プロファイルと肘の動作範囲(0〜90度)は統一されており、セット数・週2回・10週間・限界まで追い込む強度も共通で設定されました。

 筋肉の厚さは超音波検査によって、上腕骨の近位部(肩に近い50%の位置)と遠位部(肘に近い70%の位置)の2か所で測定されました。



◆ 結果:肩の角度の違いによる差は見られなかった


 10週間のトレーニングを経て、両条件とも肘を曲げる筋肉の厚さが増加しました。具体的な変化は以下のとおりです。

  • 最大伸展群:遠位部 +7.2%、近位部 +7.9%

  • 通常位群:遠位部 +6.3%、近位部 +9.2%


 どちらの条件も中程度の筋肥大が確認されましたが、2条件を比較した統計解析では、近位部・遠位部ともに有意な差は示されませんでした。

 解析の結果は「差がない」という仮説を支持するもので、肩の角度を変えることが筋肥大に与える影響はほとんどないとの見方が支持されています。

 最大伸展群では通常位群よりも多い重量を扱えていましたが、それでも筋厚の増加に違いは見られませんでした。



◆ 結果をどう解釈するか


 この結果は、2025年にAttariehらが報告した研究とも一致しています。その研究では、肩を約50度後ろに引いた「ベイジアンカール」と、肩を約50度前に出した「プリーチャーカール」を、負荷プロファイルをそろえた条件で比較しましたが、上腕二頭筋の肥大に有意な差は生じませんでした(Attarieh P, 2025)。

 筋肉が伸びた状態での筋トレが有利である可能性を示した先行研究の多くは、肩の角度以外の要因(負荷がかかるタイミングや動作の範囲など)も同時に変わっていました。これらの条件をそろえると、肩の角度だけの影響は小さい可能性があります。

 ただし、今回の研究には限界もあります。対象が筋トレ未経験の男性に限られており、トレーニング経験者や女性への一般化には慎重さが必要です。また、筋肉の厚さを上腕二頭筋と上腕筋に分けて測定していないため、それぞれへの影響を個別に評価することはできていません。



◆ フォームより先に整えるべきこと


 今回の研究は、ケーブルカールにおいて肩の角度を最大限に後ろへ引くことが、通常の姿勢と比べて筋肉の成長において特別に有利であるとは言えないことを示しています。

 「筋肉を伸ばして鍛えるほうが効く」という考え方は広く知られていますが、負荷や動作の範囲といった条件をそろえると、少なくとも上腕二頭筋と上腕筋については、肩の角度だけで結果が大きく変わるわけではない可能性があります。

 細かいフォームの工夫に時間をかけるよりも、まずは負荷や動作の範囲、追い込みの強度といった基本的なトレーニング変数を着実に管理することが優先すべきことと言えそうです。

 どのフォームを選ぶにしても、継続できることと安全であることを大切にしながら、自分に合ったやり方を見つけていただければ嬉しいです。



◆ 参考文献


Larsen S, et al. The effects of shoulder extension angle on elbow flexor hypertrophy in the cable curl exercise. Front. Physiol. 2026 Mar 31.

Attarieh P, et al. Comparison between shoulder flexed and extended positions in elbow flexion resistance training on regional hypertrophy and maximum strength: preacher versus Bayesian cable curls. Eur. J. Sport Sci. 2025.

Kassiano W, et al. Distinct muscle growth and strength adaptations after preacher and incline biceps curls. Int. Journal Sports Medicine. 2025.

Varovic D, et al. Does muscle length influence regional hypertrophy? A systematic review and meta-analysis. Int. Journal Sports Medicine. 2025.


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