中心としての風格、中社
山と水の気配を辿る|戸隠五社参拝記 その4
前回の記事はこちら。
▶ 小さきながらも美しき、火之御子社
戸隠神社。
長野県北部に位置する神社群であり、宝光社(ほうこうしゃ)、火之御子社(ひのみこしゃ)、中社(ちゅうしゃ)、奥社(おくしゃ)、九頭龍社(くずりゅうしゃ)の五社を中心として構成されている。
今回は、その中心ともいえる中社を訪ねる。

(一部加工済み)
戸隠神社・中社は、五社の中でも参拝者が最も多く訪れる神社である。
ご祭神は天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)。
天照大神が天岩戸にお隠れになった際、知恵を巡らせ、神々を導いた神様として知られている。
宝光社から続く参拝の流れの中でも、中社はまさに中心地と呼ぶにふさわしい場所だ。
駐車場や社務所も整備され、多くの人がここを拠点として戸隠の神々を巡っていく。
中社の前には県道36号線が通り、その正面には「戸隠中社」バス停がある。
そして、その先には大鳥居。
だが、まず目を奪われるのは鳥居ではない。
その周囲を囲むように立つ三本の巨杉である。

大鳥居と三本杉
「三本杉」と呼ばれるこれらの杉は、約72メートルの間隔で正三角形を描くように立っている。
八百比丘尼伝説とも結び付けられ、古くから御神木として大切に守られてきたという。
近くで見上げると、その大きさに圧倒される。
高さはおよそ四十メートル。
空へ向かって伸びる姿は、まるでこの地を見守り続けてきた時間そのもののようだった。

さらに興味深いのは、この三本杉が象徴するものについて語られている伝承である。
奥社の天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)、中社の天八意思兼命、宝光社の天表春命(あめのうわはるのみこと)。
戸隠五社の中核をなす三柱の神々。
そして、信濃開拓に関わったとされる諏訪族・安曇族・阿知(智)族という三つの氏族。
三本杉の正三角形は、それらを象徴しているとも伝えられている。
もちろん真偽を確かめる術はない。
けれど、こうして三本杉の間に立っていると、単なる御神木以上の意味を持つ場所であるように感じられる。
大鳥居の右手には五斎神社(いつきじんじゃ)が鎮座している。

戸隠神社中社の境内社であり、諏訪大社の神々を勧請して創建されたと伝えられている。
祭神は、
建御名方富命
火産霊命
大山祇命
稚産霊命
宣澄霊命
の五柱。
ここでもまた、信濃の歴史とのつながりが顔をのぞかせる。
三本杉の伝承と合わせて考えると、戸隠が単独の聖地ではなく、信濃という土地の歴史や人々の営みの中で育まれてきた場所であることが見えてくる。
実は、中社を訪れる人の多くは西参道側の駐車場を利用する。
その場合、拝殿への参拝だけで帰ることもできてしまう。
けれど、それでは少しもったいない。
ぜひ正面へ回り、大鳥居の前に立ってみてほしい。
三本杉に囲まれた広場から鳥居を見上げると、中社のスケール感がよくわかる。
そして、大鳥居をくぐってもなお拝殿が見えないことに気づくだろう。
その距離感こそが、中社の持つ風格なのかもしれない。
三本杉のトライアングルを眺めていると、戸隠神社の中心を象徴し、信濃の国の礎を静かに表しているような感覚を覚える。
中社とは、そうした戸隠の歴史と信仰が交わる場所なのかもしれない。
それもまた、中社ならではの風格なのであろう。
なお、拝殿や境内奥にある「さざれ滝」については、別の記事にまとめている。
こちらもあわせて読んでいただければ幸いである。
▶ 戸隠神社・中社の滝にて|牡牛座新月によせて
次回予告
戸隠神社の参拝は、いよいよ奥社へ。
樹齢数百年の杉並木が続く参道を歩きながら、戸隠神社最大の聖域へ向かう。
▶ 次回:杉並木の先へ|戸隠神社・奥社参道
《関連リンク》
戸隠神社 広報誌青垣(あをがき) 20号
「天八意思兼命と戸隠のトライアングル」と題して、三本杉の話、信濃の国の民族の話が記載されています(バックナンバー)。
https://www.togakushi-jinja.jp/aogaki/20.pdf
【関連投稿】
緑と信仰、そしてやさしさの宝光社|戸隠五社参拝記 その1
伏拝所。神道は、神様の道だった|戸隠五社参拝記 その2
小さきながらも美しき、火之御子社|戸隠五社参拝記 その3

✍️ この記事を書いている人が気になったら──
筆者ふじけんのことが、少しずつわかる自己紹介noteも置いておきます。
投稿を続けてきた節目ごとの記録です。
→ So作家宣言|連続投稿444日目(2026-06-10)
→ 🎰 777の日に、自己紹介してみた(100日投稿を超えて)(2025-07-07)
→ 気づけば続いてた。40,000views、ChatGPT1周年、そして256日連続。(2025-12-04)
いいなと思ったら応援しよう!
読んでくださってありがとうございます。
最後までお付き合いいただけて感謝です。
いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます! 