【神武征討記外伝・総集編】愛の形は人それぞれ・・・【創作大賞2026応募作品】
【あらすじ】
本総集編は、不条理な運命や壁に立ち向かう男女の「愛の形」を巡る、神武征討記外伝のオムニバスである。 互いの自立を認めて割り切る「大人の愛」。自らの命を捧げて愛する人を守り抜く「命がけの献身愛」。死別を越えて国造りの遺志を千年の未来へ紡いだ「時空を超える愛」。従来の性別役割を覆し弱さも包み込む「相互補完の愛」。古い政略を破り自ら選択した「自由の愛」。不完全さを笑いと寛容さで赦し合う「人間味ある夫婦愛」。そして、相手の大義のためにあえて身を引く「敬愛の愛」。 これら七者七様の純粋な愛と絆の記憶は、やがて光の御子・神武のもとへと集い、歴史を動かす壮大な力へと昇華していく。
【神武征討記外伝】「サルメノウズメとアチタケルの物語~あえて結婚しない二人」
ストーリーテラーのアメノウズメでございます。
「一人ひとりが主人公」の『神武征討記』。
今回は、神武王太子夫妻が、新婚旅行をしている間の高千穂の様子を少し見てみましょう。
主人公は、神武十将軍アチタケルとサルメノウズメの二人です。
アチタケルとサルメノウズメは、神武様の婚礼の儀の夜に、酒に酔った勢いで関係を持ち、サルメノウズメは妊娠。その後、神武様達の新婚旅行中に無事に女の子を出産しました。
二人は結婚はせず、年収1500万円(※現代の貨幣価値に換算。以下同じ。)のアチタケルは、養育費の算定表に基づき、サルメノウズメに月20万円の養育費を支払っております。
さて、この二人。本編に登場しない神武様の新婚旅行中には、どのように過ごしているのでしょうか?
まずは、アチタケルの様子を見てみましょう。
日向(宮崎県)高千穂王宮近くの武道場。兵士達の武芸の訓練をする場所です。

アチタケル「どりゃ~!!!」

ハヤトイエヒサ「ぐわっ!参った。」
アチタケル「ハヤトイエヒサ。なかなか良い動きだったぞ。
だが、お前は打ち込むときに、隙ができる。そこをこう直して・・・」
ハヤトイエヒサ「アチタケルさん!ご指導ありがとうございます!」
おやおや、高千穂争乱編で戦った隼人族の第4皇子ハヤトイエヒサは、高千穂に留学して武芸の鍛錬をしているようですね。
それら、兵士や将達の武芸の鍛錬がアチタケルの本来の職です。
神武様は、高千穂天孫一族の王太子。ウガキヤフキアエズ王は国政の多くを神武様に委任していますが、その新婚旅行中は、神武様の腹心の家臣達が、神武様に代わり国政を担当しておりました。
もっとも、神武様の腹心達のうち、ヒヨシマル、ショウリュウキは、神武様の新婚旅行のお供をし、またサルメノウズメは、出産後の育休中。
必然的に、アチタケルは、軍務以外の内政事務についても取り扱い、大忙しのようです。
アチタケル「こういう数字を扱う細かい事務って、俺は好きじゃないんだよなぁ。
早くヒヨシマルやショウリュウキが戻ってきてくれないかなぁ・・・」
ハヤトイエヒサ「大変っすね。アチタケルさんは。
俺なんて、第4皇子だから、武芸だけやって、薩摩(鹿児島県)の面倒なことは、全部、ヨシヒサ長兄や、トシヒサ兄者がやってくれてるんで、楽なもんです。」
アチタケル「まあ、国政の大半は、こういう地味で地道な作業さ。
高い給料をいただいてるんだ。文句は言えん。」
ハヤトイエヒサ「アチタケルさんは、サルメノウズメさんと結婚しないんですか?仲良さそうなのに。」
アチタケル「ウズメは、俺のことは嫌いじゃないが、結婚するのはイヤなんだとよ。
あいつが、復帰して元の収入に戻ったら、養育費も月10万くらいに減らせられるのかねぇ・・・」
ハヤトイエヒサ「月20万って、なかなかキツいっすね・・・」
アチタケル「俺も父親だから育休は取ってもいいと、ウガキヤフキアエズ王は言ってくださるんだが、さすがに、俺まで休むと仕事が回らんからなぁ・・・」
ハヤトイエヒサ「誰でも代わりができる仕事じゃないですしねぇ。
難しいもんですね・・・」
アチタケル「よし。終わった。今日は、早目にあがる。
ウズメの家に行って、娘と面会交流だ。」
ハヤトイエヒサ「すぐ近所に住んでて、毎日、会ってるんだから、一緒に住めば良いのに・・・」
アチタケル「ウズメには、ウズメのこだわりがあるみたいだからな。
じゃあ、お疲れさん。」
ハヤトイエヒサ「お疲れさまでした。娘さんとの時間、楽しんでください。」
サルメノウズメの家に行くアチタケル。
二人の娘は、ヒムカノナミと名付けられていました。

アチタケル「お~。ナミ、父ちゃんが来たぞ~。」

サルメノウズメ「静かに。ちょうど、寝かしつけたところよ。」

サルメノウズメに抱かれたヒムカノナミ。すやすやと眠っています。
アチタケル「おお。すまねぇ。気持ちよさそうに眠ってるな。」
サルメノウズメ「ふふっ。かわいい。」
アチタケル「まさか、お前が母親になるなんてな。
子育てなんて、絶対しなさそうに見えたのに。」
サルメノウズメ「私も不安だったわ。
私なんかが、母親になんてなれるんだろうかって。
でも、不思議ね。
母親って、子どもを産むと、なっちゃうものなのね・・・」
アチタケル「ナミは力の神の子孫である俺と、踊りの神の子孫であるウズメの娘。
俺もウズメも、神武様の将軍だ。
この子も将来、立派な将軍になるのかな?」
サルメノウズメ「どうなんだろうね・・・
私は、男に負けないバリキャリのシングルマザーの道を選んだけど、ナミには、ナミの人生を自分で選んで生きてほしいかな・・・
私もタケルも、おそらく、武人としてこれから何度も戦場を駆けることになる。
でも、できれば、この子には、戦場なんて物語にしか出てこないような・・・
そんな平和な時代を生きてほしい・・・」
アチタケル「なあ。ウズメ。俺とお前は毎日会ってるし、仕事も同じ神武様の将軍だ。
どうせなら、結婚して、一緒に暮らさないか?」
サルメノウズメ「何度も言ったでしょ。
私は、結婚はしない。
今は、近くにいても別々に暮らしてるから、うまく行ってるのよ。
これが結婚して一緒に生活すれば、いろいろとお互いのイヤな部分も見えてくる・・・
私とタケルが仲違いしちゃったら、それは、神武様の陣営にも大打撃になっちゃうわ。
周りだって、気を遣わなきゃいけない。
私達は、神武様を、この日本(ヒノモト)の主にする。
そして、誰もが幸せに生きられてる一人一人が大切にされる世界で一番平和な国を作る。
それがサルメノウズメという一人の女の生き方・・・」
アチタケル「そうだな・・・たしかに結婚すると、いろいろと面倒なことも起こるかも知れんか。」
サルメノウズメ「あとね・・・
私は、女は結婚して家庭に入るのが幸せという考え方がイヤなの。
もちろん、そういう生き方をして幸せになってる人もいると思うし、それが悪いこととは思わない。
でも、いろんな生き方を選べる。
自分で選べることが大切なんだと思う。」
アチタケル「国の中心になる将軍である俺とお前が、あえてそういう生き方をすることで、少しは生きやすくなる人達もいるのかな・・・」
サルメノウズメ「そう。私達の人生は私達の人生。
世間とか、社会的な常識とか、関係無い人達に、とやかく言われたくないわね・・・
一人一人が自分の人生の主人公なんだから。」
あえて結婚しないという選択を選んだサルメノウズメとアチタケル。
短い期間の平和な時間を娘ナミと過ごす二人。
しかし、神武様の将軍である二人が、再び戦場を駆けることになる日は、この後、すぐにやってくることになる・・・
神武征討記外伝
「サルメノウズメとアチタケルの物語~あえて結婚しない二人」
完
神武征討記外伝「北国の軍神エツノケンシンを想う女」
ストーリーテラーのアメノウズメでございます。
「一人ひとりが主人公」の『神武征討記』。
今回の主人公は、神武十将軍の一人エツノケンシンとエツノケンシンを愛するエツノフユヒメの物語です。
この二人の説明を少ししておくわね。
エツノケンシン(統率99、武勇100、知力84、政治79、魅力94)は、越後(新潟県)の国津神の子孫。
出雲大社学宮の武将クラス卒業。本編第6話の出雲大社学宮武闘大会では、神武様と決勝戦を戦った天下最強武将の一人です。
エツノフユヒメ(統率14、武勇8、知力77、政治84、魅力80)は、越中(富山)の国津神の子孫で、出雲大社学宮の家政クラスの卒業生。
エツノケンシンに淡い恋心を抱いています。
物語は、本編関東騒乱編の約3年前。出雲大社学宮(イズモタイシャマナビノミヤ)を卒業した15歳のエツノケンシン達が、出雲から故郷に帰る場面から始まります。
出雲(島根県)から故郷の北陸に向かう旅の途中。

エツノフユヒメ「ケンシン様。私の故郷の越中とケンシン様の故郷の越後は、同じ方向。越中までご一緒できますね。」

エツノケンシン「・・・・・・そうだね。」
エツノフユヒメ「越までの道は長いので、いろいろお話できそうですね。」
エツノケンシン「・・・・・・」
エツノフユヒメ「(うっ、会話が続かないわ・・・
でも、あきらめちゃいけない!がんばれ、私!)」
あらあら、エツノケンシンは、相変わらず無口ねぇ。
なかなか会話が弾まないものの、二人は、一緒に、出雲(島根県)から伯耆・因幡(鳥取県)、但馬(兵庫県但馬地方)、丹波(京都府丹波地方)、若狭、越前(福井県)と道を進んでいきます。
エツノフユヒメ「ケンシン様。越前で、少し蟹を食べていきませんか?
私が調理いたします!」
エツノケンシン「・・・・・・」
エツノフユヒメ「ケンシン様?蟹はお嫌いですか?」
エツノケンシン「蟹も、魚も、獣や鳥の肉も・・・
俺は食べない。完全菜食主義だから・・・」
エツノフユヒメ「まあ、ケンシン様は、完全菜食主義者で、魚も肉も食べないのですか?」
エツノケンシン「・・・・・・へんかな?」
エツノフユヒメ「いいえ。ぜんぜん、変じゃありませんよ。
お好きな食べ物はありますか?」
エツノケンシン「・・・食べるのは、米とか、豆とか・・・昆布や野菜も大丈夫・・・」
エツノフユヒメ「なるほど。では、ヴィーガン(完全菜食主義)対応のメニューを料理しますね!」
エツノケンシン「・・・・・・」
エツノフユヒメ「(ダメだわ!会話が広がらない。負けるな!
くじけちゃダメ!がんばれ、私!)」
ケンシンはヴィーガンだったのね。
一向に会話が広がらない二人。
そのまま旅を続けていきます。
二人は、越前から加賀(石川県)に入り、大聖寺川(石川県加賀市)の辺りに行きます。
すると、川には、たくさんの兵士の遺体がありました。
エツノフユヒメ「こ、これは!?たくさんの人が死んでいる!?」
エツノケンシン「戦の跡だ。惨いな・・・
おそらくは、越前(福井県)と加賀(石川県)で戦をしたのだな。」
エツノフユヒメ「ケンシン様!(あっ、ケンシン様がしゃべった。)」
エツノケンシン「出雲(島根県)の辺りは平和だったが、どこに行っても戦・・・
この乱世を鎮めるには、いったいどうしたらよいのか・・・」
そこに野盗達が現れます。
野盗A「おうおう、なんだ、てめえら、見せつけやがって!」
野盗B「戦場のお掃除(死体からの略奪)をしに来たら、若い女までいやがったぜ!」
野盗C「おら、姉ちゃん、かわいがってやるぜ!」
エツノフユヒメ「な、なによ!?あなたたち、なんなの!?」
野盗A「俺達がなんだろうとかまわねぇんだよ!
てめえは、これから俺達に犯されて、飽きたら殺されるんだからよぉ!」
エツノフユヒメ「ケ、ケンシン様!」
野盗B「あぁ~!兄ちゃん、やるのかよ?
俺達は5人。おとなしく、女置いて逃げやがれ!」
エツノケンシン「・・・どこに行っても・・・だな・・・」
野盗C「けっ!たたきのめして、目の前で、てめえの女が犯されるのを見せつけてやるぜ!悪シュミだろ~!?」
エツノケンシンに襲いかかる5人の野盗達。
しかし、エツノケンシンは、無言のまま、5人の野盗をあっという間になぎ倒します。
エツノケンシン「・・・殺しはせん。さっさと失せろ。」
野盗A「ひ、ひえ~!おぼえてやがれ~!」
逃げていく野盗達。
エツノフユヒメ「ケンシン様。ありがとうございました。」
エツノケンシン「フユヒメ・・・今のこの国は乱世。
どこもかしこも弱肉強食の地獄絵図のような世界だ。
この乱世を終わらせなければ、人々の不幸は止まらない。
俺は、この乱世を終わらせたい。」
エツノフユヒメ「ケンシン様・・・」
二人は旅を続け、加賀(石川県)の金沢に着きます。
宿に泊まろうとする二人。しかし、宿には一部屋しか空いていないようです。
エツノフユヒメ「ケンシン様。私と同部屋でもよろしいですか?」
エツノケンシン「・・・別に。」
二人は、金沢の宿の同じ部屋に泊まることになりました。
その夜・・・
横になるケンシンの前に座るフユヒメ。
エツノケンシン「・・・?」
エツノフユヒメ「ケンシン様。金沢を過ぎれば、もうすぐ私の国、越中(富山県)。
もうすぐ、お別れですね・・・」
エツノケンシン「・・・そうだな。」
エツノフユヒメ「ケンシン様。私は、ケンシン様のことをお慕いしております。」
エツノケンシン「・・・」
エツノフユヒメ「抱いて・・・お願い。」
エツノケンシン「・・・」
エツノフユヒメ「私は、サルメノウズメさんやオワリノブヒメさんほど、美しくもなければ、才能もありません。
イツクシマ三姉妹のように、特別な知恵も持っていない非才で平凡なただの女です。
でも、あなたのことを、想う気持ちだけは、誰にも負けません!」
エツノケンシン「・・・フユヒメ。
俺は戦をするためだけに生まれてきたような男だ。
俺となど一緒になっても、お前は幸せにはなれない。」
エツノフユヒメ「私は、ケンシン様のお側にいられるだけで幸せです!」
エツノケンシン「俺は家庭を顧みることはせぬと思う・・・
神武の作る、世界で最も平和で、みなが幸せに暮らせる、日本(ヒノモト)を作るために。
神武の剣となって、一生を戦場で過ごすことになるだろう。」
エツノフユヒメ「ならば。私が、ケンシン様の帰る場所となります!
ケンシン様が戦死せずに戻ってくるための帰る場所に!」
エツノケンシン「・・・・・・フユヒメ。馬には乗れるか?」
エツノフユヒメ「はい。私は武芸も兵法もできませんが、乗馬は、ヤガミヒメ先生からご指導を受けております!」
エツノケンシン「・・・わかった。だが、我らはまだ15歳。
もし、3年後、お前の気持ちが変わっておらぬなら、夫婦になろう・・・
俺も安らげる場所は欲しい。」
エツノフユヒメ「ケンシン様!」
エツノケンシン「神武が言うには、森羅万象、性の相手を決めるのは、女というのが自然の法則らしい。3年後、俺もお前も、ともに生きて、気持ちが変わらぬのであれば、俺から、お前に改めて求婚しよう。」
エツノフユヒメ「あぁ!ケンシン様!フユヒメは幸せでございます!」
金沢の夜、エツノケンシンとエツノフユヒメは3年後に結婚することを約束しました。
フユヒメは積極的だったわねぇ。でも、18歳まで待つっていうのが、ケンシンの真面目さが出てるわね。
さて、二人は、越中(富山県)のフユヒメの実家に着きました。
そこで、知られた衝撃の知らせ・・・
エッチュウトヤマ王「エツノケンシン殿。我が娘、エツノフユヒメをよく送り届けてくださった。礼を言う。」
エツノケンシン「・・・いえ。帰り道が同じ方向だったので・・・」
エッチュウトヤマ「悲しい知らせだが、聞いてほしい・・・
越後(新潟県)で内乱が起き、ケンシン殿の父上であるエチゴニイガタ王が戦死されたそうじゃ・・・」
エツノケンシン「・・・!」
エツノフユヒメ「そんな!ケンシン様のお父上が!」
エッチュウトヤマ王「お悔やみ申し上げる。
だが、ケンシン殿。今、越後(新潟県)は危険じゃ。
わしの娘フユヒメと一緒に、この富山に残り、この地で暮らしてもらえないだろうか?
今、越後(新潟県)に戻っても、戦乱の地獄絵図じゃ。」
エツノケンシン「父王が死んだ。
武人が戦場で散るは、覚悟の上のこと。
ならば、越後(新潟県)は、このエツノケンシンが戻って王とならねばなりません。」
エッチュウトヤマ王「越後(新潟県)は群雄割拠の戦国状態じゃ!
お主が戻っても、誰も王としてなど認めてくれぬ!」
エツノケンシン「力で認めさせる。それだけです。」
エツノフユヒメ「ケンシン様・・・」
エツノケンシン「エッチュウトヤマ王。申し訳ございませんが、馬をお貸し下さい。越後(新潟県)に戻ります。」
エツノフユヒメ「ならば!このフユヒメも一緒に越後(新潟県)に参ります!
父上、馬を2頭お願いします!」
エッチュウトヤマ王「な、なにをバカなことを!
お主がついて行っても足手まといなだけじゃ!」
エツノフユヒメ「私には、戦はできません。
でも、ケンシン様の身の回りのお世話はできます。」
エツノケンシン「フユヒメよ。修羅の道だぞ。」
エツノフユヒメ「ケンシン様と一緒であれば。
修羅の道でも、地獄でも、どこへでもついて参ります。」
エッチュウトヤマ王「ケンシン殿・・・わしの娘は、こう見えて、頑固者。
よろしくお願いいたす。」
エッチュウトヤマ王は、2頭の馬を準備し、二人を富山から送り出しました。
騎馬で二人並ぶ、エツノケンシンとエツノフユヒメ。

エツノフユヒメ「ケンシン様。このエツノフユヒメ。
必ず軍神の妻に恥じぬ女として、終生、あなたにお仕えいたします。」
エツノケンシン「・・・フユヒメ。お前はお前のままでいろ。
そこが俺の帰る場所だ。」
エツノフユヒメ「ケンシン様・・・嬉しい・・・」
エツノケンシン「行くぞ!越後(新潟県)へ!
戦乱の世を終わらせるために!」
越後に向けて馬を飛ばす二人。
この後、2年の歳月をかけ、エツノケンシンは故郷越後(新潟県)の戦乱を平定する。
エツノケンシンとエツノフユヒメの二人は、18歳となってから夫婦となる。
そして、エツノフユヒメは、その内助の功によって、軍神と呼ばれるエツノケンシンを支え続けることとなる。
軍神エツノケンシンが、様々な戦場から生きて帰ることができたのは、その帰る場所となった一人の女の存在によるものなのかも知れない・・・
神武征討記外伝
「北国の軍神エツノケンシンを想う女」
完
神武征討記外伝「ショウリュウキの悲恋」
ストーリーテラーのアメノウズメでございます。
「一人ひとりが主人公」の『神武征討記』。
今回の外伝の主人公は、ショウリュウキです。
ショウリュウキの本編での初登場は、第3話。
沖縄をルーツに持つ、神武十将軍の一人である女性武将です。
今回の物語の舞台は、本編関東争乱編から5年後、神武東征編の7年前。
神武様やショウリュウキが23歳のときのお話です。
この頃は、神武勢力と大和勢力は停戦期間中であり、大規模な戦闘は起こっていませんでした。
神武様は、アイラとの間に長男タギシミミ(4歳)、次男キスミミ(2歳)をもうけ、またアチタケルとサルメノウズメの娘ヒムカノナミ(5歳)、チチブカネビメとサキタマハニマルの息子ウラワツキノミヤ(5歳)も、日中は、高千穂王宮の保育の間で、過ごしていました。
ショウリュウキ「神武王太子。ショウリュウキ、まかり越しました。」
神武「ぎ~!」
子どもたちに髪の毛や耳を引っ張られている神武様。
まあまあ、保育の間は、大変な騒ぎね。
ショウリュウキ「ジ、神武・・・」
神武「こら。大事な話があるのじゃ。
離れんか。お~い。ハニマル、助けてくれ!」
サキタマハニマル「はにゃ~。みんな、ハニマルおじさんが遊んであげるから、神武おじさんから離れて~」
子どもたち「は~い。きゃっきゃっ、きゃっきゃっ。」
神武「ふ~、やっと離れてくれたか。
子どもの扱いは、ハニマルにはかなわんな( ・ω・)」
ショウリュウキ「ふっ、子育ても大変そうね。」
神武「まったく、家に怪獣がたくさんいるようだ。
どこの家庭も大変だろう。
育児、保育のためには手厚い予算をつけていく必要がありそうだな。」
ショウリュウキ「それで、今日はどうしたの?」
神武「うむ。実は、筑紫(福岡県)のダザイテンマンからの知らせでね。
中華の大陸からの船が筑紫に来ている。」
ショウリュウキ「中華の大陸からの船?皇帝の使者なの?」
神武「いや、公式な中華の帝国からの使者ではなく、どうも、私商人・・・いわゆる密貿易というやつのようだ。
まあ、中華の大陸の商人が筑紫(福岡県)に来ておるわけだ( ・ω・)」
ショウリュウキ「それで?」
神武「ダザイテンマンは、漢字は読めるが、中国語は話せん。
書簡だけでやりとりするのも大変だから、中国語が話せる者を筑紫(福岡県)に送って欲しいとのことだ。
ショウリュウキは、中国語も話せたな?」
ショウリュウキ「ええ。沖縄にいた頃に、大陸の学者から教わったから。」
神武「すまんが、俺の名代として、その大陸の商人の相手をしてくれ。
俺も大陸の文物には興味があるが、子どもたちがこの有様だから、しばらく高千穂を離れられそうにないのでな( ・ω・)」
ショウリュウキ「わかったわ。その任。謹んでお受けいたします。」
中華の大陸から来た密貿易の商人。
その対応をするために、ショウリュウキは、神武様の名代として、筑紫(福岡県)に向かいます。
ダザイテンマン「おお。ショウリュウキ殿。
よく来て下さった。我らは、大陸の言葉がわからず、難儀しておった。」
ショウリュウキ「ダザイテンマン殿。その商人というのは?」
ダザイテンマン「あの者です。」
ダザイテンマンに案内され、大陸の商人という男と会うショウリュウキ。
その男は、眉目秀麗な美しい若者でした。
その若者に中国語で声をかけるショウリュウキ。
ショウリュウキ「ニーハオ!」
陸瑜「ニーハオ。あなたは、中国語がわかるのですか?」
ショウリュウキ「ええ。昔、私の故郷・沖縄に流れてきた大陸の学者から教わりました。」
陸瑜「なるほど。私は、姓は陸、名は瑜。字を伯謹と申します。」
ショウリュウキ「天孫一族神武王太子が臣。ショウリュウキと申します。」
中国語で、商品についてのやりとりを行うショウリュウキと陸瑜。
しかし、お互いになにか意識し合っているようです・・・
陸瑜「(ショウリュウキ・・・東夷の島国で、我らの言葉を話せるだけでなく、なんと美しい女性・・・)」
ショウリュウキ「(陸瑜伯謹・・・こんな美しい男性がいるなんて・・・
これが大陸の男・・・)」
取引は無事に終了し、陸瑜が大陸から持ってきた商品は、全て完売しました。
陸瑜「ショウリュウキ殿。おかげで良い商売をさせていただきました。」
ショウリュウキ「陸瑜殿。こちらこそ。この絹などは、神武王太子も、アイラツヒメ王太子妃もお喜びになりましょう。」
陸瑜「せっかくこの倭国(日本のこと)に来たので、倭国の品を仕入れて帰りたいと思います。すみませんが、ショウリュウキ殿、通訳としてお手伝いしていただけませんか?」
ショウリュウキ「良いでしょう。せっかくです。我らの主・神武王太子のおられる高千穂までご案内いたしましょう。
途中の豊後(大分県)に、とても良い温泉があります。
そちらも、ご案内いたしますわ。」
陸瑜「ほう。オンセンですか?大地から湯が沸いているのですか?それは楽しみだ。」
ショウリュウキと陸瑜は、豊後を経由して高千穂に向かいます。
行く先々で日本のことを案内するショウリュウキ。そして、陸瑜からは大陸の中華の帝国のことや、陸瑜の先祖のことなどを聞きます。
ショウリュウキ「へえ。陸瑜殿の先祖は、中華が三国に分かれていた時代の呉という国の大都督だったのね。」
陸瑜「先祖は、呉の孫家という王家に仕えておりました。
陸遜、陸抗の二代は、呉の大都督として、一番の名将と言われておりました。
ですが、陸抗の死後、呉は、魏の曹家から帝位を簒奪した司馬炎の起こした晋により滅ぼされました。
もっとも、その司馬家の晋も、その後、分裂し、様々な異民族の侵攻を受け、我が祖国は、戦乱のまっただ中ですよ。」
ショウリュウキ「なるほど。世が世なら、陸瑜殿は、中華の帝国の一角をなす大国の大将軍だったわけね。」
陸瑜「ははっ。私は、軍事・・・戦争なんて嫌いです。
それよりも、商売が性に合う。
戦争は、人を殺す。
商売は、人を豊かにする。
私は、大将軍になどなるよりも、今のように在野の商人の身でいることが気に入っています。」
ショウリュウキ「なるほど。」
陸瑜「それよりも、ショウリュウキ殿。通訳をしていただいたお礼がしたい。何か欲しいものはありませんか?」
ショウリュウキ「書物が欲しいわ。」
陸瑜「書物ですか・・・書物は貴重なものです。
書物を印刷する技術があればよいのですが、書物は、みな手書きで一文字一文字書き写さねばならず、大変な作業です。大陸の学者たちは、一生をかけて、書物を書き写すのが仕事のようなものです。」
ショウリュウキ「なるほど。やはり書物は高価なものなのね。」
陸瑜「書物ほどではありませんが、それなりに貴重なものを。
この珊瑚の髪飾りを差し上げましょう。きっとお似合いですよ。」
ショウリュウキ「まあ。これは綺麗な・・・お代はいくらですか?」
陸瑜「お礼と申し上げたはずです。お代は、けっこうです。
強いて言えば・・・」
ショウリュウキ「強いて言えば・・・?」
陸瑜「あなたがこの髪飾りをつけた美しい笑顔を見せてくれるとなによりのお代ですね。」
ショウリュウキ「まあ・・・」
あらあら?
この二人、なんか良い感じになっちゃんてるんじゃな~い?
そして、豊後(大分県)で二人は宿を取ります。
温泉に入る陸瑜。
陸瑜「うーん。倭国のオンセン。すばらしい。」
ショウリュウキ「陸瑜殿。お背中を流しましょう。」
陸瑜「ショ、ショウリュウキ殿!?男女が裸で同じ湯に入るなど!」
ショウリュウキ「あら、ここは混浴よ。
男も女も同じ湯に入る。そういう場所なの。」
陸瑜「ふ~。倭国の女性のなんと大胆な。」
ショウリュウキ「陸瑜殿は、呉の名将の子孫として、国のことは気にならないの?」
陸瑜「気になりますよ。私の生まれた国ですもの。
中華の帝国も、戦ばかりせずに、平和で安定した国になってほしい。
もともと、すばらしい文化、文明を持った国なのですから。」
ショウリュウキ「あなた自身で、国を作るとしたら、どんな国を作りたい?」
陸瑜「そうですね・・・戦をする武の国ではなく。
文化や貿易などの経済でみなを栄えさせ幸せにできる国にしたいですね。」
ショウリュウキ「文化や経済でみなを栄えさせる国か・・・」
陸瑜「いつか、いつの日か、そんな国を作りたい。
私にはムリでも、私の子孫によって・・・」
ショウリュウキ「私達の子孫がそんな国を作ってくれるといいわね・・・」
陸瑜「ショウリュウキ・・・」
ショウリュウキ「陸瑜・・・」
陸瑜「ウォー アイ ニー(あなたを愛している)」
ショウリュウキ「ウォー アイ ニー・・・」
この夜、二人は結ばれました・・・
さて、数日後、日向(宮崎県)の高千穂王宮。
神武「中華の商人、陸瑜殿。たいそうな品々。
良い買い物をさせていただいた( ・ω・)」
アイラツヒメ「この壺も・・・この絹織物もすばらしいわね!」
神武「こういう品々を作れる中華の帝国・・・
我が国でも、こういう物を作れるようになりたいものだな( ・ω・)」
ショウリュウキ「神武様。陸瑜は、感謝に堪えませんと申しております。」
神武「海の旅は危険だ。帰路も気をつけてな。」
神武様との謁見と倭国の品々の仕入れを終えて、陸瑜が帰国する日が来ました。
筑紫の港にて・・・
ショウリュウキ「陸瑜。気をつけてね。」
陸瑜「また来るよ。今度は、ショウリュウキの欲しがっている書物を手に入れてくるよ。」
ショウリュウキ「楽しみにしてるわ。」
陸瑜「ショウリュウキ。ウォー アイ ニー。」
ショウリュウキ「ウォー アイ ニー。」

中華の大陸に向けて船を出す陸瑜。
しかし、折り悪く、出港後に、台風が九州西部から朝鮮半島方面を襲います。そして、台風が去った後、対馬にて、陸瑜の船の残骸が打ち上げられます。
高千穂王宮にて・・・
ショウリュウキ「神武!その知らせは、本当なの!?」
神武「ショウリュウキ。対馬からの報告だ。
陸瑜殿の船に間違いないらしい。
残念ながら、生存者はいない・・・陸瑜殿も・・・」
ショウリュウキ「おおぅ~~~!ああああ~~~~!!!」
泣き叫びながら駆け出すショウリュウキ・・・
神武「ショウリュウキ!?」
アイラツヒメ「あなた。ここは、私が。」
海辺で一人泣き続けるショウリュウキ・・・
そこにアイラが声をかけます。
アイラツヒメ「ショウリュウキ・・・あなた、もしかして、陸瑜殿と・・・?」
ショウリュウキ「愛し合っていた・・・また会うと約束した・・・
書物を持ってくると・・・書物など・・・どうでもよい・・・
陸瑜・・・陸瑜・・・もう一度、会いたい・・・戻ってきて・・・」
アイラツヒメ「やはりそうなのね・・・
私達にとっては、面識を得た良き他国の友・・・
でも、あなたにとっては、愛する人の死だったのね・・・」
ショウリュウキ「初めて・・・人を、男を愛した・・・
その男が・・・死んでしまうなんて・・・
約束したのに・・・
戦をする武の国ではなく!
文化や貿易などの経済でみなを栄えさせ幸せにできる国を私達の子孫が作ると約束したのに~~~~!!!」
アイラツヒメ「ショウリュウキ・・・」
ショウリュウキ「うっ・・・!?」
突然、嘔吐するショウリュウキ・・・
アイラツヒメ「ショウリュウキ!
あなた、もしかして、子を宿してる!?」
ショウリュウキ「えっ!?子・・・私と・・・陸瑜の・・・子が!?」
アイラツヒメ「すぐに医師に診てもらいましょう!」
ショウリュウキは、妊娠していました。
その後、ショウリュウキは、一人の男子を出産します。
そう、陸瑜との間の子です。
その子は、ショウリュウケンと名付けられました。
ショウリュウキ「陸瑜・・・あなたは死んでしまったけど。
私は、あなたの子を産んだ・・・
あなたの血をこの世に残したわよ・・・
きっと、この子を守り育ててみせる。
あなたとの約束を守るために・・・」

陸瑜とショウリュウキの息子ショウリュウケン・・・
武ではなく、文化や経済でみなを栄えさせる国を作るという陸瑜とショウリュウキの夢と血は、ショウリュウケンを通じて、後の世に引き継がれることとなる。
そして、その血と志は、千年近い年月を経て、1372年に誕生する初代琉球国王・尚巴志へと受け継がれていくことになる・・・
神武征討記外伝
「ショウリュウキの悲恋」
完
神武征討記外伝「弱くたっていいじゃない~ハニマル君とカネビメの出会い」
ストーリーテラーのアメノウズメでございます。
「一人ひとりが主人公」の『神武征討記』。
今回の外伝の主人公は、サキタマハニマルです。
本編の関東争乱編より6年前。
出雲大社学宮(イズモタイシャマナビノミヤ)に入学する少し前の時期のお話です。
武蔵(埼玉県)行田にある埼玉(さきたま)王宮の練武場。
おや、ハニマル君が、武芸の稽古をしているようですね。
少しのぞいてみましょうか。

サキタマハニマル「はにゃ~~~!!!」
師範「はぁ!」
勢いよく武芸の師範にかかっていくハニマル君。
しかし、ハニマル君の攻撃はかわされ、あっさりと師範に倒されてしまいます。
キバノヒンベイ「ああ~、ハニマル様~。」
師範「ハニマル王子。お怪我はありませんか?」
サキタマハニマル「だ、大丈夫。ご指導ありがとうございます!」
サキタマギョウダ王「むう・・・相変わらず、ハニマルは武芸の腕が上がらんのう・・・
これで民達を守っていくことができるのだろうか。」
オシノハスヒメ「まあまあ、あなた、あの子は優しい子です。
戦いには向きませんが、優しい民を思いやる王に成長してくれると思いますよ。」
サキタマギョウダ王「母親というのは、甘いものじゃのう。まあ、健康に明るく生きてくれれば、それでかまわんか・・・」
側近「サキタマギョウダ王様。秩父より、チチブミツミネ王様がいらっしゃいました。」
サキタマギョウダ王「おう。いらしたか。ハニマルよ。そなたも来い。」
サキタマハニマル「はにゃ?秩父の王様?」
秩父からチチブミツミネ王が来たようです。
ハニマル君は、サキタマギョウダ王とともに応接室に入ります。
サキタマギョウダ王「ようこそ、おいで下さいました。ここにいるのが、我が息子サキタマハニマルでございます。」
チチブミツミネ王「お招きいただき、ありがとうございます。
今日は、我が娘、チチブカネビメを連れて参りました。これ。カネビメ。ご挨拶せよ。」

チチブカネビメ「チチブカネビメでございます。
サキタマギョウダ王様、サキタマハニマル王子様、お初にお目にかかります。」
サキタマハニマル「はにゃ~!かわいい!」
チチブカネビメ「あら。私のような、読書ばかりしている地味な女をかわいいなどと。お世辞でも、うれしゅうございます。」
サキタマギョウダ王「いや。ハニマルよ。実はな。
こたびは、お前とこのチチブカネビメ殿の縁談をしたいということで、我ら親同士では話し合ってきたのだ。」
サキタマハニマル「縁談!?この子と結婚できるの!?」
チチブカネビメ「縁談?聞いておりませんよ。父上。」
チチブミツミネ王「いや。カネビメよ。別に決まったことではない。
お前とハニマル殿が会ってみて、お互いに気に入るようであればだ。」
サキタマハニマル「僕!結婚したいです!」
チチブカネビメ「丁重に。お断りいたします。」
サキタマハニマル「はにゃ~!!!ソッコー、フラれた!!!」
チチブミツミネ王「これ、カネビメ。そのように即断しなくとも・・・」
チチブカネビメ「いえ。私は、そもそも結婚などいたしません。
高千穂におられる天孫一族の光の御子・神武様に軍師としてお仕えするために、日々、学問に励んでおります。
恋とか愛とか結婚とかには、興味はございません。」
サキタマギョウダ王「むう・・・それでは無理強いはできませんな。
まあ、この話は無かったということで・・・」
サキタマハニマル「はにゃ~!初めての恋!そして、いきなりの失恋!」

あらあら、ハニマル君、いきなりフラれちゃったわね。
その後、出雲大社からの使者がやってきたため、サキタマギョウダ王とチチブミツミネ王は、その対応をし、ハニマル君とカネビメは、埼玉(さきたま)の町に出ました。
サキタマハニマル「はにゃ?カネビメちゃん、何を読んでるの?」
チチブカネビメ「この書物は、大陸の兵法書・孫子というものです。
兵法についての最も代表的な書物です。」
サキタマハニマル「はにゃ~!カネビメちゃんは、兵法書とか読めるんだ!すごいね!」
チチブカネビメ「私の夢は、天孫一族に軍師として仕えること。
そして、この戦乱の世を鎮め、平和な世の中を築くことです。」
サキタマハニマル「はにゃ~!すごいや!
僕、カネビメちゃんを尊敬する!」
チチブカネビメ「ハニマルさんには夢はありますか?」
サキタマハニマル「夢・・・う~ん。あんまり考えたことないや。」
チチブカネビメ「このような戦乱の世・・・生きていけるだけでも十分なことかも知れませんね・・・」
サキタマハニマル「カネビメちゃんは、どうして結婚したくないの?」
チチブカネビメ「母上は、いわゆる良妻賢母な方です。
もし、結婚して男性の妻になるのであれば、そのように生きるのが女の道なのかも知れません。
しかし、私は、女の身に生まれましたが、あらゆる智を極めたい。
そして、その智を人々のために役立てたい。
結婚して一人の男性に仕え、子どもを育てるという生き方は私にはできないし、したくありません・・・」
サキタマハニマル「はにゃ?結婚したら、女は、良妻賢母で夫に仕えないといけないなんて、誰が決めたの?
カネビメちゃんみたいに優秀な女性は、どんどん活躍して、家のことは夫がやればいいんじゃないかな?」
チチブカネビメ「えっ?夫が家のことを?
それは・・・考えたことがなかったわね・・・」
サキタマハニマル「僕、今、夢ができた。
僕は、専業主夫になって、カネビメちゃんのことを支えたい!」
チチブカネビメ「まあ。面白いことを言う人ですね。ハニマルさんは。」
サキタマハニマル「ヘンかなぁ?」
チチブカネビメ「相手の女性が私であるかどうかは別として、男性がそういう生き方をするのも良いかも知れませんね・・・」
二人が話し込んでいるとき、埼玉王都に騎馬に乗った賊達が侵入してきました!
サキタマハニマル「あれは!毛野(群馬県)から来た賊達だ!」
チチブカネビメ「町を襲っている!」
サキタマハニマル「毛野の賊め!やっつけてやる!」
チチブカネビメ「あっ!ハニマルさん!」
騎馬賊A「パラリラパラリラ~~~!」
騎馬賊B「ヒャッハー!」
騎馬賊C「オラオラ!俺たちゃ、毛野の賊だぜ!夜露死苦!」
サキタマハニマル「はにゃ~!毛野の賊達!僕が相手だ!」
騎馬賊D「なんだ!こいつ!」
騎馬賊E「やっちまえ~!」
サキタマハニマル「うわ~!」
かっこよく飛び出したものの5人がかりで、ボコボコにされるハニマル君・・・
チチブカネビメ「お待ちなさい!」
サキタマハニマル「カ、カネビメちゃん・・・
ダメだ・・・逃げて・・・」
騎馬賊A「あ~ん。姉ちゃん。なんだ、コラ!」
騎馬賊B「服装は地味だが、よく見りゃ美人じゃねえか!」
騎馬賊C「ヒャッハー、俺達で味見してから、売り飛ばしてやるぜ!」
騎馬賊D「オラ、おとなしく脱げや!」
騎馬賊E「ぐへへ・・・」
チチブカネビメ「ふっ、他にすることは無いのですか?」
騎馬暴走族・夜露死苦(×5人)が現れた!
チチブカネビメの攻撃!
騎馬賊Aに15ポイントのダメージ!
騎馬賊Aを倒した!
騎馬賊B「な、なんだ!?この女!強いぞ!」
騎馬賊C「4人一斉にかかれ!」
チチブカネビメ「攻撃の陣!雷鳴陣!!!」
チチブカネビメは雷を轟かせた!
騎馬賊達に稲妻がほとばしる!
騎馬賊達に平均25ポイントのダメージ!
騎馬賊達を倒した!
騎馬賊C「ひ~、覚えてやがれ~!」
チチブカネビメ「う~ん。どうして、賊は、いつも同じセリフを言って逃げていくのかしら。」
サキタマハニマル「カ、カネビメちゃん・・・めちゃくちゃ強い・・・」
チチブカネビメ「軍師は、常に君主の側で戦場に身を置くもの。
身を守る程度の武術は心得ておくものです。
ハニマルさん、怪我はありませんか?」
サキタマハニマル「うっ、いたた・・・」
チチブカネビメ「いけない。この薬を。手当てしますね。」
サキタマハニマル「う、うう・・・グスン・・・」
チチブカネビメ「ハニマルさん、痛みますか?」
サキタマハニマル「ううん。なんか情けなくて・・・
女の子のカネビメちゃんに助けてもらって、僕、男なのに、弱くて、何も出来なくて・・・」
チチブカネビメ「男だからとか、女だからとか・・・
そんなこと、どうでもいい。
あなたが私にそう教えてくれたはずよ。」
サキタマハニマル「カネビメちゃん・・・」
チチブカネビメ「戦いに弱くてもいいじゃない。
あなたの強さは、心の強さ、そして優しさ。
きっと、良い専業主夫になって、妻になる女性を支えてあげられると思うわよ。」
サキタマハニマル「じゃあ、僕と結婚してくれるの?」
チチブカネビメ「それとこれとは、話が別です。
はい。手当したわよ。これで大丈夫でしょ。」
サキタマハニマル「僕、絶対に、カネビメちゃんの良いお婿さんになってみせるよ!」
チチブカネビメ「はいはい。がんばってね。」
この後、サキタマハニマルとチチブカネビメは、ともに、出雲大社学宮(イズモタイシャマナビノミヤ)へ入学し、神武様達と出会うことになる。
神武様の軍師として神武十将軍の中心となるチチブカネビメ。
そのチチブカネビメを専業主夫として支えるサキタマハニマル。
この二人が夫婦となることは、神武征討記本編を知っている私達は、もう知っている・・・
神武征討記外伝
「弱くたっていいじゃない~ハニマル君とカネビメの出会い」
完
神武征討記外伝「愛!?政略!?~トサノリョウマの縁談!」
ストーリーテラーのアメノウズメでございます。
「一人ひとりが主人公」の『神武征討記』。
今回の外伝の主人公は、トサノリョウマ(統率88、武勇86、知力98、政治99、魅力96)です。
今回の舞台は、四国の土佐(高知県)。
登場人物は、ほとんどトサノリョウマ軍団所属となる人々です。
物語は、本編での関東争乱編の2年後、トサノリョウマが20歳のときのお話です。
この頃、トサノリョウマは、自らの発案により四国各地の豪族達と交渉し、四国・淡路連合国という共同体を築き上げ、その盟主という立場にありました。
しかし、他方で、トサノリョウマは土佐(高知県)の王ではなく、土佐という国は、複数の有力豪族達がそれぞれの領地と兵力を持つ連合体のような国でした。
四国・淡路連合国全体を見れば、トサノリョウマはその盟主としてトップの地位に立ちますが、本国の土佐においては、トサノリョウマは他の豪族達と盟を結んだ一豪族の頭領の息子に過ぎません。
土佐は、そのような複雑な政治状況にありました。

トサノリョウマ「父上。お呼びですか。」
トサノリョウマの父
トサノハチヘイ「おお。リョウマよ。お前も、もう20歳。
そろそろ結婚して身を固めんとな。」
トサノリョウマ「結婚ですか?
俺には、ずっと思い合っている女がいますが。結婚か・・・」
トサノハチヘイ「いや、実はな。土佐で一番の有力豪族であるソガベモトチカ殿が、お前のことを気に入っているそうでな。
ソガベモトチカ殿のご息女を、お前の嫁にして欲しいと申し出てこられたのだ。」
トサノリョウマ「えっ!?俺は、ソガベモトチカ殿のご息女となど会ったこともありませんよ!」
トサノハチヘイ「よいか。リョウマ。結婚というのはな。家同士でするものじゃ。この縁談話はすでに進んでおる。」
トサノリョウマ「そんな勝手な!」
トサノハチヘイ「ソガベモトチカ殿は、土佐で最強の武力を持った豪族。
そのソガベモトチカ殿と土佐で一番の財力を持つ当家が結びつけば、もう土佐は安泰じゃ。」
トサノリョウマ「俺には、クルシマエヒメがいます!
エヒメと俺は、出雲大社学宮(イズモタイシャマナビノミヤ)で学んでいた頃からの恋人同士です!
他のオナゴと結婚などできません!」
トサノハチヘイ「たわけたことをぬかすな!
伊予(愛媛県)の海賊の娘との結婚など許さん!
恋愛と結婚は違う!
結婚とは家のためにするものじゃ!」
トサノリョウマ「結婚とは、愛し合う個人と個人が結びつくものだ!
家同士で決めるものなんかじゃない!」
トサノハチヘイ「ええ~い!
出雲大社学宮になど行かせるのではなかったわ!
個人の自由だの、人権だのに毒されおって!
とにかく、この縁談は、もう決まっておるのじゃ!」
トサノリョウマにとって、家同士が決めた突然の縁談話・・・
トサノリョウマは、土佐にいる友人達に相談します。

アキノシンタロウ「リョウマ!おまえとクルシマエヒメの仲は、四国じゃ誰も知らんものがない!
そんな勝手な縁談など断ってしまえ!」

ケンゴウイゾウ「ソガベモトチカ殿の娘ねぇ・・・
見たこともねえな。」

ナガオカノハンペイタ「いや。リョウマよ。これは大事だぞ。
お前の家とソガベモトチカ殿の家だけの問題ではない。
四国・淡路連合国の盟主であるお前と、土佐最強の武力を持つソガベモトチカ殿が縁談で結びつけば、土佐は安泰だ。
これは、個人の感情ではすまぬ政治的な問題だぞ。」
トサノリョウマ「断ったらどうなるかな・・・」
ナガオカノハンペイタ「ソガベモトチカ殿は、感情的な方だ。
あるいは武力で土佐に乱が起こるかも知れない・・・」
アキノシンタロウ「ソガベモトチカ殿は、リョウマを気に入ったのではなく、おそらく政治的な動機だろう。
四国・淡路連合国の盟主として四国の諸豪族や民達に慕われるリョウマと婚姻関係を結んで、四国の支配権を握ろうとしているのではないか?」
ケンゴウイゾウ「あ~!剣一筋の俺には、難しい政治のことは、わからんち~!」
トサノリョウマ「エヒメだって、伊予を代表する海賊の女頭領だぞ。
政治的なことを言うなら、四国全体のことを考えれば、俺とエヒメが破局する方がよほど、政治的なダメージが大きいだろうに・・・」
ナガオカノハンペイタ「リョウマ。お前は、志がでかい。
土佐よりも四国。四国よりも日本(ヒノモト)。
その志がでかいのは、長い付き合いの俺達にはわかる。
だがな。土佐の豪族達のほとんどは、自分の周りのことしか見えていない。
土佐の安定がなによりも大事に思えるものなのだ。」
ケンゴウイゾウ「よし!俺が、ソガベモトチカを斬っちゃる!」
アキノシンタロウ「アホか!ソガベモトチカを斬ったりしたら、それこそ、土佐は内乱じゃ!」
土佐の親友達に相談したものの結論は出ず。
トサノリョウマは、土佐で開催された四国・淡路連合国の会合に出席します。
会合には、伊予の代表としてクルシマエヒメも参加していました。
会合の終了後に、クルシマエヒメと桂浜の海辺を歩くトサノリョウマ・・・

クルシマエヒメ「今回の会合もうまく行きましたね。
四国・淡路は、戦も内乱も無く、平和で喜ばしいことですね。」
トサノリョウマ「・・・・・・」
クルシマエヒメ「リョウマ様?どうかされましたか?」
トサノリョウマ「エヒメ・・・実は、俺の縁談が家に勝手に進められている。相手は、土佐最強の豪族ソガベモトチカの娘だ・・・」
クルシマエヒメ「えっ!?縁談!?それって、リョウマ様が結婚なさるということ!?」
トサノリョウマ「そうだ・・・ソガベモトチカは土佐で最強の豪族・・・
無碍に断れば・・・土佐に内乱が起こるかも知れん・・・」
クルシマエヒメ「そんな・・・お相手の女性のことを、リョウマ様は愛しておられるのですか?」
トサノリョウマ「会ったこともない・・・名は、アコだったか?
だが、俺が愛しているのは、クルシマエヒメ!お前一人だ!」
クルシマエヒメ「リョウマ様・・・そのお言葉だけで嬉しい・・・
その縁談を断ったら、土佐最強の豪族との戦になるかも知れないのですよね・・・
私とリョウマ様は・・・身分が違います。
国のために後悔の無い決断をしてください!」
トサノリョウマ「エヒメ!しかし!」
クルシマエヒメ「私やリョウマ様の気持ちだけで、物事を進めたら、この土佐は、四国は、あるいは戦乱になってしまうかも知れない・・・
そうすれば、民達が苦しみます。
私達は、国を治める立場です。
時には個人の気持ちより、民達の平穏のために気持ちに逆らうことも必要となります・・・」
トサノリョウマ「エヒメ!」
クルシマエヒメ「リョウマ様・・・ごめんなさい!」
泣きながら走り去っていくクルシマエヒメ・・・
トサノリョウマは、一人、桂浜にたたずみ、夜の海を見つめていた・・・
その後、婚礼の話は、夫婦となる当人達の気持ちを無視して進められていった。
婚礼の日の前日。ソガベモトチカの屋敷。

ソガベモトチカ「明日は、いよいよ婚礼。
アコよ。トサノリョウマの子を産め。男子をな。
お前とトサノリョウマの息子が将来、この土佐、いや四国の王となる。」

アコ「お父様・・・トサノリョウマ殿には、クルシマエヒメという思い人がいるはずです・・・
このような縁談本当に良いのでしょうか・・・?」
ソガベモトチカ「口答えするな!伊予の海賊の娘など、妾(めかけ)で十分じゃ!
だが、お前が正妻となって男子を産め!必ずだ!」
アコ「男子が生まれるかどうかなど・・・天が決めることにございます・・・」
ソガベモトチカ「男子を産むのじゃ!そのためにお前を四国・淡路連合国盟主のトサノリョウマの小僧に嫁がせる!」
アコ「お父様・・・どうか、こればかりは、取りやめていただけませんでしょうか?
わたくしにも・・・思う殿方がおります!」
ソガベモトチカ「なんじゃと!?誰じゃ!?」
アコ「言えません!言えば、お父様は、その男を斬ります!」
ソガベモトチカ「我が家臣の者か?まあよい。
お前達、女は、子を産む道具。
お家のために男子を産むのが役目じゃ。
父の命じゃ。トサノリョウマに嫁ぎ、次代の四国の王を産め!」
アコ「・・・・・・はい。お役目、全ういたします・・・」
愛する者以外との結婚を進められていたのは、トサノリョウマだけではなかったようね・・・
でも、ソガベモトチカ・・・父権主義のやなヤツね。
アコさんがかわいそうだわ・・・
さて、その頃、クルシマエヒメは、土佐の高知の町で、一人酒を飲んでおりました。
クルシマエヒメ「ううっ・・・リョウマ様~」
酒屋の店主「クルシマエヒメ様・・・飲み過ぎですよ。
あなたは伊予の海賊達の頭領でもあるけど、若い女性なんだから、一人で夜遅く酒を飲むのは物騒ですよ。もう帰った方がいいです。」
クルシマエヒメ「うるさい!もう一本持ってこい!」
酒屋の店主「はいはい。もう酔っ払いはしょうがないな・・・」

カミノエチカナオ「ううっ・・・アコ姫さまぁ・・・
身分違いの恋など、叶わぬのはやむを得ぬが・・・
ううっ・・・店主!酒持ってこ~い!」
酒屋の店主「やれやれ、こっちも酔っ払いか・・・
はいよ~。」
クルシマエヒメ「おい。そなた、今、アコ姫と言ったな?
それは、明日、トサノリョウマと結婚するソガベモトチカの娘のことか?」
カミノエチカナオ「あ、あなたは?」
クルシマエヒメ「伊予のクルシマエヒメじゃ。」
カミノエチカナオ「えっ!?トサノリョウマ様の副将かつ恋人として有名なクルシマエヒメ様!」
クルシマエヒメ「そうじゃ。リョウマ様は、明日、アコ姫と結婚してしまうがな・・・
ううっ・・・リョウマ様~」
カミノエチカナオ「ううっ・・・アコ姫様~」
クルシマエヒメ「うむ?もしや、お主、リョウマ様の妻となるアコ姫を好いておるのか?」
カミノエチカナオ「クルシマエヒメ様。実は、私は、アコ姫様とは恋仲だったのです。
しかし、ソガベモトチカ様の一家臣に過ぎぬ私とアコ姫様では身分が違いすぎ・・・
公にはできぬ仲でした・・・」
クルシマエヒメ「ほほう?もしかして、私達・・・利害が一致する?」
カミノエチカナオ「えっ!?」
クルシマエヒメ「私は、リョウマ様と一緒になりたい。
あなたはアコ姫と一緒になりたい。
明日は、リョウマ様とアコ姫の結婚式・・・」
カミノエチカナオ「ええっ~!そんなとんでもないこと!」
アキノシンタロウ「よし!面白い話だ!俺たちも乗るぜ!」
ケンゴウイゾウ「こんな面白い話は、めったにないぜ!」
クルシマエヒメ「あら。アキノシンタロウ君にケンゴウイゾウ君じゃない。あなたたち、聞いちゃってた?」
アキノシンタロウ「リョウマだけなら、政治のために我慢することもあり得たろう。
だが、アコ姫さんも、嫌がってる結婚だってなら。」
ケンゴウイゾウ「土佐の男は、そんなもん、ぶっつぶさないわけにはいかんぜよ!」
カミノエチカナオ「ちょ、ちょっとみなさん、酔ってますよね!?」
アキノシンタロウ「酔っちょる!これが俺の本音じゃ!」
ケンゴウイゾウ「ジャマするやつは、俺が斬っちゃる!」
クルシマエヒメ「イゾウ君、斬っちゃダメ。誰も殺しちゃダメよ~。」
アキノシンタロウ「計画はな・・・」
おやおや、なんだか、酔った勢いでとんでもないことになりそうね。
でも、愛し合う者達を引き裂くなんて、誰にも許されないわよ~。
がんばれ~、エヒメ、カミノエチカナオ君!
そして、翌日、婚礼の日。
四国・淡路連合国盟主のトサノリョウマと、土佐最強の豪族ソガベモトチカの娘アコとの婚礼というだけに、土佐中の豪族たちが婚礼の儀に集まっていました。
しかし・・・
ソガベモトチカ「花嫁が!アコが逃げただと~!?」

ソガベチカヤス「兄者!カミノエチカナオがアコをさらったようです!」
ソガベモトチカ「あの下郎!捕らえて叩き切れ!」
トサノリョウマ「ほう。花嫁が逃げた・・・ははっ、どうやら、俺は嫌われてるようだな。」
ソガベモトチカ「いや!我が家臣が乱心しただけ。
すぐに叩き切って、アコを連れて参りましょう。」
花嫁衣装のアコを連れて逃げるカミノエチカナオ!
ソガベモトチカの追っ手が迫ってきます!
アコ「チカナオ!ムチャだわ!こんなことをしたら、お父様に殺されてしまう!」
カミノエチカナオ「アコ!もうやってしまった!
捕まれば殺される!
でも、俺は、あなただけは守り抜く!」
アコ「チカナオ・・・」
クルシマエヒメ「よく来た!追っ手の相手は我らに任せよ!
船を用意してある。
お前達二人は、船に乗れ。
船で日向(宮崎県)の延岡へ行け。
そこはかつて、海辺の要塞があった場所。
高千穂の神武王太子ご夫妻を頼ると良い。」
カミノエチカナオ「クルシマエヒメ様。かたじけない。」
アコ「チカナオ・・・私と一緒に逃げてくれるの?」
カミノエチカナオ「ああ。これからはずっと一緒だ!」
アコ「嬉しい!チカナオ!愛してるわ!」
アキノシンタロウ「追っ手ども!このアキノシンタロウが相手じゃ!」
ケンゴウイゾウ「へへっ!ケンゴウイゾウ!
学は無いが、喧嘩なら負けねえぜ!」
クルシマエヒメ「私はクルシマエヒメ!
あなたたちが敵う相手じゃないわよ!」

追っ手達を、叩きのめしていくクルシマエヒメ、アキノシンタロウ、ケンゴウイゾウの3人。
その間に、アコとカミノエチカナオは、日向に向かう船に乗り込みます。
そして、船は、出港。二人は、神武様のいる日向に向かっていきます。
お二人さん、幸せになりなさいよ~!
ソガベモトチカ「なんと・・・我が娘アコが、家臣のカミノエチカナオと一緒に逃げるとは・・・」
トサノリョウマ「花嫁に逃げられてしまっては、結婚はできませんなぁ・・・」
ソガベモトチカ「トサノリョウマ殿!
クルシマエヒメといえば、お主の恋人!
アキノシンタロウ、ケンゴウイゾウは、お主の手の者!
さては、お主が手引きしたか!
戦じゃ!戦じゃ!」
ナガオカノハンペイタ「ソガベモトチカ殿。
それは理が通りませぬ。
花嫁のアコ殿が、貴殿の配下であったカミノエチカナオと手と手を取り合って逃げていったのは、この場に集まっている土佐の諸豪族、みなが見ております。
この婚礼の儀をめちゃくちゃにされたのは、貴殿の家中の問題。
それを、花嫁に逃げられたトサノリョウマに戦をしかけるなどというのは、誰が見ても筋が通りませぬ。」
ソガベモトチカ「ぐぬぬ・・・」
トサノリョウマ「まあ、花嫁に逃げられた私も、恥をかきました。
ここは、お互いに恥をかいたということで、やむなしといたしましょう。」
その後、逃げてきたアコ達を保護した神武様の仲介もあり、ソガベモトチカ勢とトサノリョウマ勢との土佐での内乱の事態は免れました。
騒動が一段落し、桂浜の海辺を二人で歩くトサノリョウマとクルシマエヒメ。
トサノリョウマ「ずいぶん、ムチャなことをしたな。エヒメ。」
クルシマエヒメ「リョウマ様。ご迷惑をおかけしました。」
トサノリョウマ「いや。俺がしっかりと断るべきだった。
ははっ、花嫁に逃げられた男と、四国中で笑いものだな。」
クルシマエヒメ「リョウマ様が笑いものなどと!
誰にも、リョウマ様のことを笑わせたりしません!」
トサノリョウマ「親父達が勝手に進めた結婚話も、結果的には、内乱の事態になることなく、解決した。
ありがとう。エヒメ。それと、俺がはっきりしなくて、すまなかった・・・」
クルシマエヒメ「リョウマ様・・・」
トサノリョウマ「俺が独身でいたから、こんな結婚話が進められた。俺は、結婚することにした。俺が愛しているたった一人の女と。」
クルシマエヒメ「リョウマ様!?」
トサノリョウマ「エヒメ。結婚してくれ。一緒に幸せになろう。」
クルシマエヒメ「リョウマ様・・・喜んで・・・」
なんやかんやと、トサノリョウマも、アコも、政略ではなく、愛する相手と結ばれることになりました。
めでたし、めでたし、かな?
しかし、この騒動が、将来、大和勢力による暗躍の手がかりとなることは、このときのトサノリョウマはまだ知らなかった・・・
※この外伝は、本編
第33話「狙いは四国!キョウノミチナガ軍団の調略!」
の伏線となる外伝です。
神武征討記外伝
「愛!?政略!?~トサノリョウマの縁談!」
完
神武征討記外伝「反省だけならサルでもできる!?ヒヨシマルの浮気!?」
ストーリーテラーのアメノウズメでございます。
「一人ひとりが主人公」の『神武征討記』。
今回の外伝の主人公は、ヒヨシマル(統率92、武勇80、知力94、政治98、魅力95)です。
ヒヨシマルは、豊臣秀吉の前世で、年齢は神武様と同い年。
高千穂の百姓の子として生まれましたが、その頭の良さと人当たりの良さを買われて神武様に登用されました。
高千穂王宮での下働きを経て、神武様の新婚旅行に同行中に、オワリノブヒメの重臣であったキノシタノオネに一目惚れし、オワリノブヒメの下に預けられ、キノシタノオネとも結婚しました。
神武様の計らいにより、ヒヨシマルは伊勢(三重県)勤務となり、尾張(愛知県)のオワリノブヒメに仕えるキノシタノオネと伊勢で同居しています。
今回の物語は、本編神武東征編の3年前。ヒヨシマルが27歳のときのお話です。
ヒヨシマルとキノシタノオネは結婚して9年経ちますが、子に恵まれていません。
しかし、二人は、尾張・近江(滋賀県)などの戦災孤児の面倒を見、家に引き取り我が子のように育てていました。
主立った者としては、尾張出身の者では、カトウノトラノスケ、フクシマノイチマツ。
近江出身の者では、サワヤマノサキチ、オオタニギョウブがいます。
ある日のこと・・・

カトウノトラノスケ「どりゃ~~~!」

フクシマノイチマツ「うりゃ~~~!」

ヒヨシマル「おう。トラノスケ、イチマツ。
お主らは、二人とも強いのう。」
カトウノトラノスケ「あっ。ヒヨシマル様。このカトウノトラノスケ、きっとヒヨシマル様の部下で一番の猛将になってみせます!」
フクシマノイチマツ「何を言うか!一番の猛将は、俺だ!」
ヒヨシマル「はっはは。二人とも、ともに励め。期待してるぞ。」
屋敷の中では・・・

サワヤマノサキチ「ここの部分の解釈なんだけど・・・」

オオタニギョウブ「どうかな。こう解釈する方がより良いのではないか?」
ヒヨシマル「おう。サキチにギョウブ。お主らは、また学問の研究か。関心じゃな。」
サワヤマノサキチ「ヒヨシマル様。私は、きっとヒヨシマル様の参謀になります。」
オオタニギョウブ「学問は面白うございます。」
ヒヨシマル「そうか。わしは智恵はあると言われるが学が無い。二人とも頼りにしているぞ。」
実の子はいないものの、武芸、学問に優れた子どもたちがヒヨシマルの家では育ち、彼らが将来のヒヨシマルの腹心の部下に成長していきます。
そして、その子達を含めたヒヨシマルの家で最も柱となっていたのが・・・

キノシタノオネ「みんな。スイカを切ったわよ。食べましょう。」
カトウノトラノスケ「おお。スイカじゃ!」
フクシマノイチマツ「お袋様。ありがとうございます!」
サワヤマノサキチ「スイカ。いただきます!」
オオタニギョウブ「スイカ、スイカ!」
キノシタノオネ「うふふ。たくさんあるわよ。たんとおあがりなさい。」
子どもたちと14歳しか離れていないのに、お袋様と慕われているキノシタノオネ。ヒヨシマルの妻です。
キノシタノオネは、この頃、まだオワリノブヒメの臣下でしたが、家庭やヒヨシマルの伊勢経営の手伝いが忙しくなり、実質的には尾張への出仕はしていませんでした。
伊勢は、伊勢神宮周辺のみが神武様の領地。その他はオワリノブヒメ領という建前であり、オワリノブヒメが伊勢統治のために派遣しているという形になります。
ヒヨシマル「おう。オネよ。わしとコイチロウは今夜は夕飯はいらん。
ハチスカノコロクらと打ち合わせの会合があるのでな。」
キノシタノオネ「あら?またですか。最近、多いですね。」
ヒヨシマル「いろいろと民のためにせねばならんことが多くてな。
コロクとはいろいろ相談せねばならん。」
キノシタノオネ「あまり飲み過ぎないようにしてくださいね。」
ヒヨシマルと弟のコイチロウは夕方出かけていきました。
おや、サワヤマノサキチが何か落ち着かない様子です。
サワヤマノサキチに声をかけるキノシタノオネ。
キノシタノオネ「サキチ。どうかしましたか?」
サワヤマノサキチ「えっ、いえ・・・」
キノシタノオネ「・・・?」
その夜。会合が終わり・・・

ハチスカノコロク「ヒヨシマル殿。今夜も行くんだろ?」
ヒヨシマル「ふふふ・・・もちろんだ。」

コイチロウ「兄上・・・そろそろ義姉上にバレてしまうのでは・・・」
ヒヨシマル「バカ野郎!女房が恐くて、女遊びができるか!」
三人が向かったのは、伊勢の飲み屋街にある『愛羅武(アイラブ)』という高級酒家でした・・・
シュカノママ「いらっしゃいませ!ヒヨシマル様達3名様!ご来店!」
ヒヨシマル「ママ。景気はどうだ?」
シュカノママ「ヒヨシマル様!お待ちしておりましたよ!
今日は、新しい女の子も入ったんで、しっかり教育お願いしますよ!」
ヒヨシマル「ほう。新しい女の子か。よし、わしが、夜の商売をしっかり教え込んでやろう。」
薄い衣を纏った若い女性達に囲まれるヒヨシマル達三人。
って、ここは、現代風に言ったら、キャバクラみたいなお店!?
ヒヨシマル「おう。姉ちゃん達!飲め!飲め!おい、ママ!
一番高い酒と伊勢エビ料理持ってこい!」
シュカノママ「はい!よろこんで!」
コイチロウ「今日も、可愛い子がそろってるのう。」
ハチスカノコロク「やっぱ、仕事の後は、お姉ちゃんのいる店で一杯やらんとな。」
ヒヨシマル「おう!お主が新人か!名は!?」
キキョウ「キキョウと申します。よ、よろしくお願いいたします。」
ヒヨシマル「おお。ちと緊張しておるな。まあ、楽にやれ。飲むがいい。」
キキョウ「ありがとうございます。いただきます。
(キャッ!お尻触られてる・・・面接だとお触り無しのお店だって言ってたのに・・・あ~でも、この国のご領主様だし、我慢するしかないか・・・)」
ヒヨシマル達は、美女達の体を触りまくりながら、飲めや歌えの大騒ぎ。
どんちゃん騒ぎが続きます。
すっかり酔っ払ったヒヨシマルは裸になり、目隠しをして、店の女の子達に抱きつきます。
そこに来客が・・・
シュカノママ「いらっしゃいませ!・・・ゲッ!」
コイチロウ「はっ!」
ハチスカノコロク「あっ、いや、こ、これは・・・」
その客がヒヨシマルに近づいていきます・・・
ヒヨシマルから離れていく酒家の女達・・・
ヒヨシマルは、その客に抱きつきます!
ヒヨシマル「おっ!これは誰じゃ!?
この柔らかい胸、なかなか良い腰つきじゃのう。
どうじゃ?わしと今夜、一緒に寝てみぬか?
良い思いをさせてやるぞぅ~!」
コイチロウ「あ、兄上・・・」
ハチスカノコロク「あっ、ママ・・・俺、帰るわ・・・」
???「ふ~ん。あなた、こういう遊びを毎夜毎夜、やっていたのですか・・・私が誰かわかりませんか?」
ヒヨシマル「へっ!?」
血の気が引いていくヒヨシマル・・・
ヒヨシマルが目隠しを外すと、そこには妻の顔が!

キノシタノオネ「仕事とばかり思っていたのに・・・
ほう、あなたと寝るのですか・・・
そんな風に浮気までしてたのね!」
ヒヨシマル「オ、オ、オネ!ち、ちがう!ちがうんじゃ!」
キノシタノオネ「なにが!ちがうか!このアホタワケが~!!!」
ハチスカノコロク「いかん!あの構えは!」
コイチロウ「女どもよ!総員退避~!物陰に隠れよ!」
ヒヨシマル「あ、あわわ・・・」
キノシタノオネ「風神雷神覇!!!」
ヒヨシマルにすさまじい雷雨と稲妻が降り注ぐ!
キノシタノオネの奥義!風神雷神覇がヒヨシマルに炸裂した!
ヒヨシマル「ああぁ~~~!!!」
シュカノママ「ひ~!夫婦喧嘩は家でやって~!お店壊さないで~!」
キノシタノオネ「あっ、ママさん。お代は置いておきますね。
こら!さっさと帰るわよ!このサルが!」
シュカノママ「ま、まいど、ありがとうございます~!」
ヒヨシマルは、簀巻きにされ、キノシタノオネに引きずられて行った・・・
そして、翌日・・・
キノシタノオネ「実家に。尾張に帰らせていただきます。」
ヒヨシマル「オネ!オネ様!ご、誤解じゃ!
ふざけていただけで、浮気などせぬし、したこともない!」
キノシタノオネ「本当に?」
ヒヨシマル「・・・したこともない・・・は嘘になるかも知れんが、あくまで、店の女の子は仕事でやっとることじゃ!
わしは、彼女らの生活のために!」
キノシタノオネ「お金を払って性欲を満たしてきた・・・サイテー。」
ヒヨシマル「オネ様!オネよ~!
わしが愛しておるのは、お前だけじゃ~!」
キノシタノオネ「愛が無くても、欲望は満たすのね・・・
男って、汚らしい!」
ヒヨシマル「オネ様~!」
キノシタノオネ「尾張に帰ります。では、さようなら!」
激怒したキノシタノオネは、尾張に帰ってしまいました。
カトウノトラノスケ「お袋さん・・・いったいどうしたんだ?」
フクシマノイチマツ「ヒヨシマル様!なにがあったんですか!?」
ヒヨシマル「じ、実は・・・」
カトウノトラノスケ「オヤジ殿・・・サイテー。」
フクシマノイチマツ「お袋さ~ん!帰ってきて~!」
サワヤマノサキチ「すみません・・・僕がお袋様の尋問に答えされられてしまい・・・」
オオタニギョウブ「いや。オヤジ殿が悪い。」
ヒヨシマル「だ、誰も、わしの味方をしてくれない・・・
そうじゃ!ハンベエ~!ハンベエ~!知恵を貸してくれ~!」
ヒヨシマルは、ミノノハンベエの屋敷に行きます。
ヒヨシマル「ハンベエ!オネ殿の怒りを解くために、智恵を貸してくれ!」

ミノノハンベエ「殿・・・私は軍師であって、夫婦喧嘩の仲裁役ではございません・・・」
ヒヨシマル「ハンベエ!反省しておる!助けて!」
ミノノハンベエ「反省だけならサルでもできます・・・離婚原因になり得ますよ・・・」
ヒヨシマル「ハンベエ!なんとかして!」
ミノノハンベエ「下手に策を弄する方が事態を悪くします。
誠心誠意謝って、あとは時間が解決してくれるのを待つほかないかと・・・」
尾張。オワリノブヒメの宮殿。

マエダノマツ「オ、オネ!?どうしたの!?」
キノシタノオネ「マツゥ~、浮気されたよぉ~!」
マエダノマツ「浮気!?あのサル顔が!?あんなのと浮気する女なんているの!?」
キノシタノオネ「・・・人の亭主にえらい言いようね。」
マエダノマツ「とりあえず、久しぶりに尾張に来たんだから、ノブヒメ様にご挨拶なさい。」
オワリノブヒメと会うキノシタノオネ。

オワリノブヒメ「なに?サルが浮気をした?」
キノシタノオネ「ノブヒメ様!悔しゅうございます!」
オワリノブヒメ「・・・その話の内容からすると、サルはお主に抱きついたのだな。浮気はしてはおらんと思うが。」
キノシタノオネ「浮気しようとしました!浮気しようと考えただけで許せない!」
オワリノブヒメ「オネよ。お主のような良い女は他におらん。
サルめには、お主以上の女は現れることはない。
そして、あのサルを好いてやる女も、お主しかおらん。
案ずることは何も無い。」
キノシタノオネ「ノブヒメ様・・・」
オワリノブヒメ「それとも、我があのサルを手討ちにしてやろうか?
だが、あれも神武の臣。神武にも筋は通さねばならんか・・・」
キノシタノオネ「めっそうもございません!
ノブヒメ様や神武様のお手を煩わすような問題ではございません!
我が夫婦の問題は、我が夫婦で片をつけまする!」
オワリノブヒメ「ふっ。しかし、サルめが女遊びをしただけで、その怒りよう・・・
オネは、あのサルを好いておるのじゃな。」
キノシタノオネ「あの人は、サルのような顔をしていますが、面白い男です。あれほどの男は天下のどこにもおりません。」
マエダノマツ「なに?オネは、夫の自慢をしに来たの?ふふっ。」
キノシタノオネ「ふふっ。」
オワリノブヒメ「まあ、幸せそうでなによりじゃ。
サルめには、我からも叱りの文を書いておこう。」

イケダノツネオキメ「ノブヒメ様。サル・・・ヒヨシマル殿とミノノハンベエ殿がキノシタノオネ殿に会いたいと来ておりますが・・・」
オワリノブヒメ「ほう。」
キノシタノオネ「我が夫とハンベエ殿まで!?」
部屋に通されるヒヨシマルとミノノハンベエ。
キノシタノオネ「・・・何のご用でしょうか?」
ヒヨシマル「オネ・・・すまん。わしの反省の気持ちをお前に伝えたくて・・・
ハンベエに同行してもらった。」
キノシタノオネ「ハンベエ殿まで巻き込んで・・・
それで、どう伝えてくれるのですか?」
ミノノハンベエ「オネ様。では、どうかご覧下さい。
ヒヨシマル様の反省の気持ち。」
ヒヨシマル「反省!」
ヒヨシマルは、ミノノハンベエに手をつき、反省のポーズをする。
キノシタノオネ「・・・・・・」
ヒヨシマル「ダメじゃ!ハンベエ!ぜんぜんウケてない!」
ミノノハンベエ「ふう・・・それがしに言われても・・・」
キノシタノオネ「・・・ふっ、ふふふ・・・
はっははは・・・なんですか?それは?
ホントに、バカねぇ。」
ヒヨシマル「オネ様!」
キノシタノオネ「今回だけは許してあげます。
もう二度と浮気しようなんてしないでね。」
ヒヨシマル「オネ~!オネ!戻ってきてくれるのか!?」
キノシタノオネ「とりあえず、あなたがバカな女遊びをできないように、私が神武様からあなたがいただいている給料を管理します。いいわね?」
ヒヨシマル「ひ~!キビしいぃ~~~!」
キノシタノオネ「ふふ。さあ、伊勢に帰りましょうか。
子どもたちも待ってるわ。」
戦場では神武十将軍の一人として名将と呼ばれるヒヨシマル。
しかし、名将も、私生活はこんなものだったりする。
キノシタノオネはその後も、ヒヨシマルの子を産むことは生涯無かったが、ヒヨシマルは、妻であるキノシタノオネのことを誰よりも愛し続け、大切にしたという・・・
神武征討記外伝
「反省だけならサルでもできる!?ヒヨシマルの浮気!?」
完
神武征討記外伝「月のように~近衛兵長カグヤツキヒメの物語」
ストーリーテラーのアメノウズメでございます。
「一人ひとりが主人公」の『神武征討記』。
今回の外伝の主人公は、カグヤツキヒメ(統率84、武勇69、知力87、政治89、魅力90)です。
カグヤツキヒメは、山城(京都府)出身。
出雲大社学宮(イズモタイシャマナビノミヤ)武将クラスの総合成績ではエツノケンシンに次ぐ次席。学業成績では主席で卒業しています。
現在は、オンガエシオツルとともに神武近衛兵団を近衛兵長としてまとめています。
カグヤツキヒメの両親は、早くに他界してしまい、カグヤツキヒメは祖父母に育てられます。
その祖父母もカグヤツキヒメが12歳になる頃には他界しており、カグヤツキヒメは天涯孤独の身となりました。
彼女が出雲大社学宮に入学することになる年の春から物語は始まります。
山城(京都府)現在の京都市にあった京都王宮前の広場に、高札が建てられておりました。
町民A「立札じゃのう。なんて書いてあるんだ?」
町民B「誰か読めるヤツおらんかのう。」

カグヤツキヒメ「『山城王子であるヤサカギオン様のお供をして、天孫4世神武様のご学友となるべき者を市井の者からも募集する。希望する者は、京都王宮にて試験を行う。』と書いてあります。」
町民A「お嬢さん、すげえな!字が読めるのかい!?」
カグヤツキヒメ「はい。死んだ祖父母が学問だけはしておけと勉強させてくれましたので。」
町民B「うひゃぁ!べっぴんさんなだけじゃなくて、学問までしておるとはなぁ。」
カグヤツキヒメ「天孫4世神武様…そのご学友か…」
貧しいながらも学問だけはさせてもらえていたカグヤツキヒメは、京都王宮で出雲大社学宮への入学希望者に対する試験を受験します。
そして、14人の合格者が発表され、カグヤツキヒメはトップの成績でした。
カグヤツキヒメ「合格できた…
でも、出雲(島根県)で各地の王族や神様の子孫と一緒に学ぶなんて、私じゃ生活が持たないわね…
合格したけど、やっぱり無理かしらね。」

オンガエシオツル「ねえねえ!あなたトップ合格のカグヤツキヒメさん?」
カグヤツキヒメ「はい。あなたは?」
オンガエシオツル「私は、オンガエシオツル。
他の13人の合格者は、みんな有力な豪族の子だけど、あなた家族は?」
カグヤツキヒメ「家族はいません。祖父母に育てられましたが、その祖父母も昨年相次いで亡くなりました。
合格はできたけど、学費や生活費が用意できそうにないので、出雲大社学宮への入学はあきらめます…」
オンガエシオツル「そうなんだ…もったいないわね。
ねえ、知ってる?山城王子のヤサカギオン様も、一緒に試験を受けていたんだけど、合格者の14人のうち、あなただけがヤサカギオン様より点数良かったみたいよ。」
カグヤツキヒメ「まあ、そうなの?」
オンガエシオツル「ヤサカギオン王子様は自分の引き立て役をたくさん用意したくて、試験をやったみたいだけど、あなたにぼろ負けしちゃったってことね。ぷぷっ。」

ヤサカギオン「おい。俺は、そんなダサい男じゃないぜ。」
オンガエシオツル「げっ!ヤサカギオン王子様!
…おほほ。ごきげんうるわしゅう…」
ヤサカギオン「オツル。聞こえてたよ…
なあ、君。カグヤツキヒメと言ったよね?」
カグヤツキヒメ「は、はい!王子様!」
ヤサカギオン「君は成績トップ。家族もおらず経済的に苦しいのは聞いていた。
我が山城王家から返還不要の奨学金を出そう。
君も、一緒に出雲大社学宮へ行って、天孫4世様のご学友になろう。」
カグヤツキヒメ「えっ!奨学金を!?よろしいのですか、王子様?」
ヤサカギオン「王子様でなく、ヤサカギオンでいい。
優秀な人が家庭の事情で進学できないなんて、イヤだからね。」
カグヤツキヒメ「ありがとうございます!ヤサカギオンさん!」
家族もいない天涯孤独のカグヤツキヒメでしたが、山城(京都府)王子であったヤサカギオンの厚意により、返還不要の奨学金を受け、ヤサカギオン、オンガエシオツルらとともに出雲大社学宮に入学しました。
出雲大社学宮入学式翌日のオモイカネの試験による成績発表が行われます。
オンガエシオツル「ねえ。ツキヒメ。どうだった?」
カグヤツキヒメ「4科目合計348点だったわ。」
オンガエシオツル「すごいわねぇ!私は312点。また負けたわね。」
オモイカネにより成績上位者5名が発表されていく。
5位・オワリノブヒメ380点、4位・サルメノウズメ384点、3位・トサノリョウマ392点。
オンガエシオツル「な、なに、この人たち!どんな頭してるのよ!?」
カグヤツキヒメ「すごいわね…」
そして、オモイカネが同率2名の1位を発表しようとしたとき…

オモイカネ「では、あとは2位と1位だが・・・」

神武「オモイカネ先生!この発表やめようぜ!成績の悪かった人は、イヤな思いするし、成績の良かった人は余計なやっかみうけることになる。
成績上位者発表なんて、良くねえと思う!」
オモイカネ「ほう。神武は、成績優秀者を発表するべきでないと?」
神武「テストの点数で事実上、上下関係ができちまう。それは良くないと思う。」
オモイカネ「なるほど。だが、発表しようがしまいが、どうせ誰が成績が良いかなど、わかるぞ。自慢する者もおれば、できなかったとグチをこぼす者もいるだろうからな。」
神武「だからって、学校側が、わざわざみんなの前で発表するのはどうかと思う。やめようぜ!」
神武様とオモイカネのやり取りを聞く生徒たち。
結局、神武様とチチブカネビメが満点の400点で1位だったことが発表される。
寮に戻ったカグヤツキヒメとオンガエシオツル。
オンガエシオツル「満点かぁ…神武様とチチブカネビメさんって、頭いいってレベルじゃないわねぇ。
私たちとは、次元が違うわぁ…」
カグヤツキヒメ「すごいわね。でも、オモイカネ先生に向かって堂々と意見した神武様。やっぱりすごい方ね。」

クルシマエヒメ「ああ~!リョウマ様~!素敵すぎるわぁ~!」
カグヤツキヒメ「神武様とチチブカネビメさんが別格なだけで、トサノリョウマさんも、すごい頭いいわね。」
クルシマエヒメ「でしょ!でしょ!
ああ~!リョウマ様~!」
オンガエシオツル「エヒメさんは、トサノリョウマさんのことしか見えてないみたいね…」
カグヤツキヒメ「入学したばかりだけど、なんか見えちゃったわね。
チチブカネビメさん、サルメノウズメさん、オワリノブヒメさん、それにトサノリョウマさん…
あの人達は、まるで太陽のように輝いている。
きっと、神武様をお支えするのはあの人達ね。」
オンガエシオツル「…でも、オオクニヌシ校長は、一人ひとりが主人公なんだって、おっしゃられてたわ。私たちだって、主人公になれるのよ。」
カグヤツキヒメ「一人ひとりが主人公…か。
まあ、私は、太陽に照らされて輝く月のように生きるのかな…?」
そして、それぞれの生徒たちに様々な青春ドラマを生みながら3年の月日が流れる。
出雲大社学宮武闘大会、スサノオチャレンジを経て、カグヤツキヒメ達は卒業の日を迎えます。
卒業式後、校舎の裏に呼び出されたカグヤツキヒメ…

カグヤツキヒメ「ヤサカギオンさん。どうしたの?話があるって…」

ヤサカギオン「ツキヒメ。お前は俺のことをどう思う?」
カグヤツキヒメ「どう思うって?山城(京都府)の立派な王様になれる方だと思いますよ。」
ヤサカギオン「い、いや、そうじゃなくて…その、つまり…男としてどう思う?」
カグヤツキヒメ「?」
ヤサカギオン「ツキヒメ!お前が好きだ!俺と付き合ってくれ!」
カグヤツキヒメ「えっ!?」
ヤサカギオン「ダメか…?」
カグヤツキヒメ「えっ…あ、あの…そんな…考えてもみなかったわ…」
ヤサカギオン「答えは急がない!考えてみてくれ!じゃあ!」
カグヤツキヒメとヤサカギオンは、同じ山城(京都府)へ帰ります。
多くの家臣に迎えられ帰っていく王族のヤサカギオン。
カグヤツキヒメはオンガエシオツルらと徒歩で出雲(島根県)から山城(京都府)に向かいます。
その旅の途中。

オンガエシオツル「ツキヒメ?なんかあった?いつもと感じちがうよ。」

カグヤツキヒメ「えっ!?…そうかしら?」
オンガエシオツル「なんか悩んでるね?親友の私に相談してみなよ。」
カグヤツキヒメ「実は…ヤサカギオンさんに付き合ってほしいって、言われたの。」
オンガエシオツル「へぇ。ヤサカギオンさんは、山城(京都府)の王子様。次期王様よ。
玉の輿じゃない。
で?あんたは、ヤサカギオンのこと好きなの?」
カグヤツキヒメ「良い人だとは思ってるの…
でも、男女として付き合うとか…
私、考えたことなくて…」
オンガエシオツル「ああ~、でも、どうかしら?
ヤサカギオンさんって、天津神の子孫なのよね。
山城王家って、血筋にすごくうるさいらしいから、ヤサカギオンさんが好きだって言ってくれても、山城王家は嫁として迎えてくれないかも。」
カグヤツキヒメ「私は、親もいない何の後ろ盾も無い身。
山城王家の王妃なんて、とてもなれないわ…」
オンガエシオツル「一人ひとりが主人公。
人間は誰もが平等で尊い。
オオクニヌシ校長はそう教えてくださったし、それが正しいと思うんだけど、世の中の人って、必ずしもそう考えてる人ばかりじゃないものねぇ。
特に、王族とか、いわゆるお偉い方たちはさぁ。」
カグヤツキヒメ「私は月…自分で光を放つことは無く、太陽の光に照らされる存在…
私の意思ではなく、流れに身を任せてみるかな…」
山城(京都府)に戻ったカグヤツキヒメはヤサカギオンと交際を始めます。しかし、血筋、家柄にうるさい山城王家では、天涯孤独で何の後ろ盾も無いカグヤツキヒメが王子であるヤサカギオンと交際することに猛反対します。
それでも、人知れず愛をはぐくむ若い二人…
二人が18歳の年、カグヤツキヒメはヤサカギオンの子を産みます。
後に、新制・出雲大社学宮一期生として神武軍参謀本部に入ることになるギオンマツリです。
ヤサカギオンは、子が生まれたことを機に山城王家の一族を説得。
カグヤツキヒメは、いったんは妃として山城王家に迎えられます。
しかし…

ヤサカギオン「離婚したい?どうしてだ!?ツキヒメ!」
カグヤツキヒメ「ギオンさん。山城王家の方たちと暮らすことは、親もいない平民の私には、あまりにも辛いものでした。どうか、私を山城王家から自由にしてください…」
ヤサカギオン「母上や、妹達がお前をいじめたのか?
俺が怒鳴り込んでやる!」
カグヤツキヒメ「ダメよ!あなたはこの山城(京都府)の王になる人!
有力豪族たちに支持された山城王家の一族の方たちと争ってはいけない!」
ヤサカギオン「ギオンマツリは、俺たちの息子はどうする!?」
カグヤツキヒメ「私と一緒に王家を出ても、まともに生活していけるかどうかもわかりません。どうか、ギオンマツリのことは、山城王家のみなさまで育ててあげてください…うっ…うう…」
我が子ギオンマツリと別れ、夫ヤサカギオンと離婚するカグヤツキヒメ。
やがて、月日は流れ、ヤサカギオンは山城(京都府)の王になります。
しかし、カグヤツキヒメが28歳の年。
山城(京都府)は、大和十二神将クロウノウシワカの侵攻を受けます。
ヤサカギオン「あ、ありえない・・・こ、こんな・・・ありえない・・・」
カグヤツキヒメ「ヤサカギオンさん!逃げましょう!
神武様の下へ逃れて、再起を図ります!
王であるあなたが死んではダメよ!」
オンガエシオツル「兵のみな!すまぬ!
ヤサカギオン王の撤退のために、壁となってくれ!」

イッスンボウ「みんな!生きてるか!?逃げるぞ!」

シタキリノスズメ「しっかりして、逃げるわよ!神武様の下へ!」
1万もの将兵を一人で虐殺していくクロウノウシワカ。
栄華を誇ったヤサカギオンの山城王家は、クロウノウシワカにより一夜にして滅んだ…
なんとか逃げ延びたカグヤツキヒメらは、筑紫(福岡県)に政庁を移していた神武様のもとへ。

神武「いろいろあったみたいだね。ツキヒメ( ・ω・)」

カグヤツキヒメ「はい。公私ともに…」
神武「実はな、俺直属の部隊創設を計画しているんだ。
名は、そうだな…神武近衛兵団。」
カグヤツキヒメ「神武近衛兵団?」
神武「山城(京都府)から避難してきたお前たち、出雲大社学宮武将クラス出身の14人をそのメンバーにしたいと思っている。
そのまとめ役である近衛兵長…
お前とオンガエシオツルの二人にやってもらえないかな( ・ω・)?」
カグヤツキヒメ「神武様の直属部隊の兵長を私がですか?」
神武「人には向き不向きがある。
この役は、カネビメやウズメ、ノブヒメにはできん。
俺の手足となって動く、神武近衛兵団。
そのまとめ役として、俺を助けてくれ( ・ω・)」
カグヤツキヒメ「私は月…太陽である神武様のもと、自らも輝きたいと思います。
神武近衛兵団近衛兵長!
このカグヤツキヒメ、身命を賭してお務めさせていただきます!」

月は自ら光は放たずとも、太陽の光を受けて夜空に光り輝く。
神武あるところに神武近衛兵団あり。
神武近衛兵団・近衛兵長カグヤツキヒメは、この後、常に神武様に付き従い、神武様の手足として様々な活動を行っていくことになる。
神武征討記外伝
「月のように~近衛兵長カグヤツキヒメの物語」
完
愛の形はひとそれぞれ・・・
あなたはどの愛の形がお好みかしら?
それもまた人それぞれ。
それぞれの人生をもったキャラクター達が縦横無尽に動き回る神武征討記!
これからもよろしくね!
ナビゲーターはアメノウズメでした!
🎬 エンドロール:神武征討記外伝総集編・愛の形は人それぞれ・・・
【ナレーション】
アメノウズメ
【キャスト】
(サルメノウズメとアチタケルの物語~あえて結婚しない二人)
サルメノウズメ
アチタケル
ヒムカノナミ
ハヤトイエヒサ
(北国の軍神エツノケンシンを想う女)
エツノケンシン
エツノフユヒメ
エッチュウトヤマ王
野盗たち5人
(ショウリュウキの悲恋)
ショウリュウキ
陸瑜
ショウリュウケン
神武
アイラツヒメ
ダザイテンマン
サキタマハニマル
保育の間の子ども達
(弱くたっていいじゃない~ハニマル君とカネビメの出会い)
サキタマハニマル
チチブカネビメ
サキタマギョウダ王
オシノハスヒメ
チチブミツミネ王
キバノヒンベイ
武術の師範
騎馬賊5人
(愛!?政略!?~トサノリョウマの縁談!)
トサノリョウマ
クルシマエヒメ
ソガベモトチカ
アコ
カミノエチカナオ
トサノヘイハチ
ナガオカノハンペイタ
アキノシンタロウ
ケンゴウイゾウ
ソガベチカヤス
酒家の店主
(反省だけならサルでもできる!?ヒヨシマルの浮気!?)
ヒヨシマル
キノシタノオネ
オワリノブヒメ
ミノノハンベエ
コイチロウ
ハチスカノコロク
マエダノマツ
イケダノツネオキメ
カトウノトラノスケ
フクシマノイチマツ
サワヤマノサキチ
オオタニギョウブ
シュカノママ
キキョウ
愛羅武の女の子たち
(月のように~近衛兵長カグヤツキヒメの物語)
カグヤツキヒメ
ヤサカギオン
オンガエシオツル
ギオンマツリ
神武
オモイカネ
オオクニヌシ
チチブカネビメ
クルシマエヒメ
クロウノウシワカ
イッスンボウ、シタキリノスズメら後の神武近衛兵団
【原作・監督・演出】 弁護士 岡本卓大
【イラスト作成】 Geminiくん
【協力】 アレテー法律事務所
【制作】 神武征討記製作委員会
