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宣伝美術 Creator File|古田絵夢(南極)#ギャラリーおちらしさん

――宣伝美術を始めたきっかけについて教えてください。 

古田 絵を描くことが幼い頃から好きだったんです。高校から演劇を始め、大学でも演劇サークルに所属していました。その後、社会人になって「南極」が結成された時に、劇団内でイラストを任されることになったことがきっかけです。その流れで自然とデザインも担当するようになりました。

――学生時代にイラストやデザインの勉強はされたのですか?

古田 美術系のことを学んだことはなく、好きで絵を描いていた程度です。本格的にやり始めたのは、南極が結成されてからです。



――南極が始まったころの宣伝美術はどのように担当されていましたか?

古田 初めて担当したのは、第2回本公演の『ホネホネ山の大動物』で、この時はロゴだけでした。第3回本公演の『南極ゴジラの地底探検』ではチラシの表面のみ。全面的に宣伝美術を担当するようになったのは、第4回本公演の『怪奇星キューのすべて』からです。それまでは揺楽瑠香やこんにち博士がメインで担当するなど、バラバラでしたね。

南極『怪奇星キューのすべて』(2023年)

――『怪奇星キューのすべて』公演は、ポスターサイズのフライヤーもカッコよかったことを覚えています! 劇団の宣伝美術を制作するときは、どんなプロセスを経ていますか?

古田 ビジュアルが劇全体のイメージを形作るので、脚本・演出のこんにち博士がどういう感じにするかを決めて、私がそれを実現するというスタイルを取っています。まず始めは作品の大枠とともに、既存の画像を何枚か送ってくれるので「色づかいはこの画像かな」「構図はこの画像を参考にしよう」といったように、AIが取り込むかのように要素を抽出して組み合わせています。

――面白いクリエーションですが、なかなか難しいオーダーですよね!?

古田 画像の要素をもとにラフを何枚か描いて見せても「なんか違うんだよなあ」と言われることが多く、何が違うのかお互いに分からないこともあります。『wowの熱』のロゴは特に苦労しました。グチャっとつぶしたような「wow」の部分について描いても描いても「ちょっと違う」と言われ続け、最終的にこんにち博士に「一度目をつぶって描いてみて」と言われたんです。それで描いたら一発OKが出ました(笑)。

南極『wowの熱』(2025年)

――南極の宣伝美術については、どのようなこだわりがありますか?

古田 手間がかかっているように見える方が面白いと感じるので、本来であればデジタルで描ける部分も、アナログで制作して写真に撮ることが多いです。例えば『wowの熱』のチラシの表面の楕円は、紙にプリントしたものを実際にビリビリに破って、それを重ねてスキャンするという方法を取りました。南極は公演自体も小道具の物量が多かったり、美術が大がかりなことが多いので、こういったある種の効率の悪いやり方は作風とも共通している部分だと思います。

南極『wowの熱』舞台写真(2025年)

――『wowの熱』だと劇中で着られている着ぐるみも、古田さんが作られているんですよね!

南極『wowの熱』バッドマムート着ぐるみ(2025年)
南極『wowの熱』バッドマムート着ぐるみ(2025年)

古田 衣装は皆で手分けして用意するなかでも、着ぐるみは自分が着ることが多いので独学で作っています。南極の宣伝美術だと粘土なども使うことがありますね。『バード・バーダー・バーデスト』は粘土でフィギュアのような恐竜の立体物を作って、家でドライアイスの煙と一緒に撮影しました。

南極『バード・バーダー・バーデスト』(2024年)

――様々なものを手作りされる古田さんですが、宣伝美術にもその多彩さが表れているように感じます。

古田 公演ごとにイメージをガラッと変えたいという気持ちが常にあるんです。いつも同じだと思われたくないし、「次はこんな感じなんだ! 楽しみだな!」と思ってもらいたくて、常に新しさを追求しています。『バード・バーダー・バーデスト』は、同じ恐竜モチーフである『(あたらしい)ジュラシックパーク』公演と2作続いたんです。それぞれ立体物と、イラストとで異なる印象になるよう制作しました。

南極『(あたらしい)ジュラシックパーク』(2024年)

私はデザインを専門的に学んだわけではないので、基礎的なことは分かっていないと自分で思っています。だからこそ「いい感じのやつ」よりも、「ちょっと飛ばした変な感じのチラシ」を作る方が自分には合っているんじゃないかと考えているんです。たくさんのフライヤーが並んでいる中で、少しでも「これなんだ?」と興味を持ってもらえるようなビジュアルにしたいと思っています。

――そういったアイデアの源泉はどこから来ているのでしょうか?

古田 他の劇団のチラシを見てかっこいいと思ったり、Pinterestで演劇とはまったく関係のない絵やグラフィックアートなどをいろいろ見て、良いと思ったりしたものはストックしています。

――南極では、公演ごとに新しい団体ロゴが生まれているのも面白いですよね。これはいつ、どんな理由から始まったんですか?

古田 第5回本公演の『(あたらしい)ジュラシックパーク』から始めました。南極の公演では平日の特典として「銭湯タオル」を配っていて、そこに毎回公演専用のロゴを入れるようになったのがきっかけです。「銭湯タオル」はお客さんにもすごく好評をいただいています! 公演用に作ったロゴやイラストは、SNSを担当している揺楽瑠香や端栞里にもデータを渡していて、残席情報の画像などにも使ってもらっています。

公演ノベルティの銭湯タオル

――チラシやSNSのどの投稿を見てもチャーミングで、団体のカラーがきりりと光っている点も、南極らしさだなぁと受け取っています。劇団のブランディングはどのように意識されているのでしょうか?

古田 旗揚げのころからこんにち博士はすごくブランディングを意識していて、皆にもSNSに載せる画像や写真に気を遣うよう、口酸っぱく言ってくれていましたね。メンバーと集まる機会もかなり多いので、ブランディングに対する共通認識も生まれているように思います。



――南極以外の団体でも宣伝美術を担当されていますが、その際に意識していることはありますか? 

古田 南極以外の団体さんとお仕事をする場合は、まず劇の内容を詳しく聞いていき、どこまでビジュアルに出すのか、その劇団のカラーや雰囲気はどのようなものなのかを意識します。例えば、まぼろしのくに『kaguya』のチラシでは、南極でイラストを描く時よりも、ダークなイメージを意識して制作しました。私はパキッとした目立つ色が好きなので淡い色よりも濃い色を多く使う傾向にあるのですが、南極のチラシであればもっとポップにしているように思います。

まぼろしのくに『kaguya』(2025年)

スリーピルバーグス『歌唱劇 パラダイスをくちずさむ』のチラシでは、写真家さんの撮った写真をメインにデザインしました。写真は何カットかいただいていたので、それに合わせてラフの段階では思いつく限り複数の案を提示するようにしています。

スリーピルバーグス『歌唱劇 パラダイスをくちずさむ』(2025年9月上演予定)

――古田さんの考える舞台芸術における良い宣伝美術や、良いチラシとは何だと思いますか?

古田 一番大事なのは、劇が観終わったあとに見返して「ああ、すごく良いチラシだな」と感じられることかなと思います。観る前と後で二度楽しめるというか、ストーリーをあからさまに詰め込むというよりは、作品が良かったなと思い出せる「装置」のようになれば嬉しいですね。



――9月に上演される南極の最新作『ゆうがい地球ワンダーツアー』の宣伝美術について、制作の裏話をお聞かせください。

古田 今回のゆうがい地球ワンダーツアーのイラストは、アクリル絵の具でキャンバスに描きました。乾いた後にもモコモコと立体感が出る、メディウムという画材が家に合ったので、絵の具に混ぜて使っています。

南極『ゆうがい地球ワンダーツアー』チラシ表(2025年9月上演予定)

最初に出たアイデアは、擬人化した日常の危険なものを描くというものでした。しかし描き始めてみると、子ども向けに「危険だよ」と伝えるポスターのようになってしまって、一旦振り出しに戻ったんです。

そのあと、劇中に出てくるタクシーを入れようということになり、イラストの方向性が決まりました。子ども向けでもある作品ですが、あえて荒々しく描くことを意識しています。絵の具も混ぜきらずにマーブル模様のような状態で塗っていますね。

今回の題字や団体ロゴは、宇宙人が出てくる話なので「宇宙語っぽい感じ」にしたいと悩んだ結果、くねくねした雰囲気になりました。イラストがアナログなので、文字はデジタル描いてカチッと。色も白にしてカラフルな中に紛れないようにしています。

南極『ゆうがい地球ワンダーツアー』チラシ裏(2025年9月上演予定)

裏面は、表面とガラッと印象を変えつつ、いつものチラシより読みやすくすることを意識しています。この背景も実はキャンバスを使って、黒く塗ったものを写真に撮っているんです。チケット情報など項目名の黄色いギザギザの部分も、手書きでキャンバスに書いています。元々はデジタルでベタ塗りする予定だったのですが、「表があんなに絵の具っぽいのに、裏が寂しくない?」という意見があって、裏も手作りすることになりました(笑)。これはまだどこにも出していない裏話です!

南極『ゆうがい地球ワンダーツアー』チラシ原画 制作風景(2025年)

――チラシから演劇らしい手作り感が溢れていることで、劇場へ向かうのがますます楽しみな気持ちになります!

古田 今回の『ゆうがい地球ワンダーツアー』は、ビジュアルも気合いを入れて頑張って描きました。劇自体も「ビジュアル演劇」と謳っているように、お子さんも大人の方も視覚的に楽しめる内容になっています。過去最大の物量で、変な格好をした人や変な演出など、本当に楽しめる劇を作っているので、たくさんの方に観ていただきたいです。私はグッズ制作も担当しているので、そちらも力を入れて様々なグッズを作りたいと思っています。ぜひ、今回の銭湯タオルと合わせてチェックしてください!

南極 第8回本公演 『ゆうがい地球ワンダーツアー』

日程:2025年9月4日(木)~7日(日)
会場:彩の国さいたま芸術劇場 小ホール

どきどき、わくわく、ちょっとこわい!
不死身の異星人が死ぬための冒険を繰り広げる(だれも死なない)スペクタクル地球旅行!

脚本・演出:こんにち博士(南極)

出演:
端 栞里
古田絵夢
井上耕輔
ユガミノーマル
瀬安勇志
(以上、南極)
門田宗大
岡本ゆい
藤井憂憂
ミワチヒロ
佐伯ポインティ



――古田さんのデザインやイラストの原点、好きなデザイナーなどを教えてください!

古田 『ゆうがい地球ワンダーツアー』のチラシを考えるときには、KAATキッズ・プログラム2024『らんぼうものめ』のチラシに引っ張られないように気をつけていました。同じく子ども向けの作品でもありますし、最後の手段さんのデザインがすごく好きなんです。パキっとした色の中でも、朱色、青、緑が特に好きなので、色使いもとても良いなと思います。

古田さんの作業机に好きなものを集めて撮影してくださいました!



「ギャラリーおちらしさん」Monthly Special
8月の特集デザイナー:古田絵夢さん(南極)

同時開催:
渋木耀太さん(劇団ヅッカ・不条理コントユニットMELT)
たかはしともやさん
ウンゲツィーファのチラシ展(8/9~)

日時:ギャラリーおちらしさんの開館日に順じて約1か月間
・8月2日(土)13:00~17:00

・8月9日(土)13:00~18:30
★開館時間を延長いたします。19:00~20:00には、演劇ユニット「ウンゲツィーファ」による、特別イベント『お悩み相談会~演劇に興味のない人にも届くチラシを考えよう~』を開催!

・8月16日(土)13:00~17:00
・8月23日(土)13:00~17:00
・8月30日(土)13:00~17:00

会場:株式会社ネビュラエンタープライズ
〒136-0071 東京都江東区亀戸7-43-5 小林ビル

東京都江東区の「ギャラリーおちらしさん」では、約1か月間、古田絵夢さんが手掛けられた宣伝美術の特別展を開催!

南極『ゆうがい地球ワンダーツアー』公演チラシなど、インタビューでご紹介した宣伝美術もご覧いただけます。

ご予約不要・入場無料ですので、どうぞお気軽にお越しください!

▽舞台公演・美術展チラシと出会うなら「ギャラリーおちらしさん」!▽


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