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宣伝美術 Creator File|古戸森陽乃(かるがも団地) #ギャラリーおちらしさん

――宣伝美術を始めたきっかけについて教えてください。 

古戸森  かるがも団地の第1回公演の時です。「劇団内で誰がやる??」となった時に私が担当することになって、そこでほぼ初めてAdobeのソフトを使いました。

――デザインについての勉強などをされたわけではなかったのですか?!

古戸森 そうですね。中学生の時に演劇部に入って、中高生の頃は自分が舞台に出るのが楽しくて活動していました。高校生の頃は脚本を書いたり演出をしたり、大学の演劇サークルでも照明スタッフをしていて、デザインに携わることはほとんどありませんでした。

――宣伝美術をやろうと思ったのはなぜだったのでしょうか?

古戸森 高校生の頃から演劇のチラシがすごく好きで、折り込み束のチラシで好きなデザインを見つけて、その劇団を見に行くということを繰り返していました。紙媒体への思い入れがあったので、自分でやってみようかなと思いました。

――宣伝美術を始めた当初、何に一番苦労しましたか? 

古戸森  最初は何もかもが大変でした。好きだなと思うチラシを参考にしようにも、いろんな劇団のチラシを見まくった結果、「全部いいじゃん」となってしまって。
一番苦労したのは、表面のメインビジュアルでした。ビジュアルで、どう自分たちらしさを出すか。また、いろんなチラシが好きだからこそ、これも真似したい、これも可愛いと色々な要素が入り込んできてしまって、そこを絞り込むのも大変でした。

かるがも団地 第1回公演 『羽生くんが来た』(2018年)



――かるがも団地のビジュアルには写真が多く使われているのですが、何か理由があるのでしょうか? 

古戸森  かるがも団地・主宰の藤田恭輔が、演劇サークルの他に写真部にも入っていたというのが大きな要因で、チラシに写真を使用するというのは最初からの方針でした。最初の公演は藤田の写真部の後輩に写真を撮ってもらい、それ以降は藤田がフィルムで写真を撮り、私がデザインするという形でずっと続けています。

――かるがも団地内では、藤田さんや宮野さんとどのように宣伝美術のやり取りをされていますか? 

古戸森  藤田が写真を撮ることが決まっているので、良い写真が撮れるかどうかが大きなハードルですね。そこさえクリアできれば、私は比較的自由に制作させてもらっています。 プロセスとしては、まず藤田と二人でメインビジュアルをどうするか、誰を映すか、どこで撮るかなどを話し合うことから始まります。藤田は脚本を書き、演出もするので、撮りたい写真とやりたい演劇が密接に結びついています。かるがも団地は実在の街を舞台に設定することが多いので、現地に行って撮影することも多いです。逗子・青梅・小田原・三ノ輪など、実際に現地まで行って撮影しました。チラシの段階で土地の風景や空気感を提示することで、劇場の中にその街の風景を立ち上げやすくなるのかなと思っています。基本的には藤田が撮りたい写真を撮ってもらい、それをもとに私が制作する流れが多いです。

私のデザイン上のアイデアが、作品自体に影響を与えることもあります。『静流、白むまで行け』では、私がチラシに絵しりとりを描いたことから、実際に劇中に絵しりとりのシーンが生まれたりしました。

かるがも団地 第8回本公演 『静流、白むまで行け』(2023年)

『逆光が聞こえる』も、二人が楽しそうにしているさまが観劇後アイロニカルに見えればいいなというところまでは事前に考えていましたが、実際におんぶするシーンがあると決まっていたわけではありませんでした。多分撮影に影響を受けて藤田がおんぶするシーンを書いたんじゃないかな。

かるがも団地 第10回本公演 『逆光が聞こえる』(2025年)

これは、劇団の中に宣伝美術担当者がいる面白さだと思います。観劇後にチラシを見て作品全体を振り返る、というところまで含めて作品が完結するような、そんな体験は、かるがも団地のメンバー編成だからこそできることだと感じています。



――デザインする上で大事にしている価値観について教えてください。 

古戸森  大切にしていることは2つです。

(1)入れるべき情報をわかりやすく入れること
スマホを持っていなくても、電波がなくても、チラシを持っていれば情報をすべて読めて、劇場にたどり着いて公演を見られるようにしたいと思っています。見た目のかっこよさや可愛さも大事ですが、情報を犠牲にすることはしたくないと思っています。

(2)劇団のカラーを上塗りしないこと
かるがも団地では自由にやらせてもらっていますし、私のやりたいことも入れていくことが、かるがも団地らしさを生み出していくと思うのですが、他の劇団から依頼を受ける際は、自分が思うかっこいいや可愛いだけでなく、その劇団のこれまでの雰囲気や上演している劇をチラシが裏切らないようにしたいと思っています。劇団のステップアップのタイミングでお声がけいただくこともたまにありますが、それまで作られていたチラシを「なかったこと」にするのではなく、その劇団のこれまでの歩みや「文脈」を大切にしたい。それまでのチラシと並べたときに、きちんと共存できるようなものでありたいと考えています。

――古戸森さんの考える、舞台芸術における良いデザインや良いチラシとは何だと思いますか? 

古戸森  一番大事なことは、情報がちゃんとわかりやすく入っていること。そして、観劇後にもう一度チラシを見た時に、その作品の一部だと思えるとさらに良いと思っています。

作品とチラシが相互作用的に見られるのが理想です。チラシを見て劇場に来て、作品を見た後にまたチラシを眺め、このチラシにしてこの作品あり!(逆もまた然り)というような。逆に、チラシも作品もそれぞれの完成度はすごく高いけれど、あまりにも印象が乖離しているというのは、個人的には好ましくないと思っています。すごくスタイリッシュなチラシきっかけに見に行ったら、作品はスタイリッシュさとは対極にあった、というようなことは避けたいと、私は思っています。もちろん、スタイリッシュさを前振りのように使っている場合もあると思うので一概には言えないのですが。

劇を見終わった後にチラシを見て、ちゃんと劇の内容や空気感を思い出せ、完全にリンクする必要はないけれど、別物ではなく、ビジュアルと作品が結びついて、時が経っても思い出すための装置のようになったら嬉しいですし、良いチラシなのかなと思います。

――古戸森さんは、かるがも団地でSNSの運用も担当されているとのことなのですが、気をつけていることはありますか? 

古戸森  SNSは作品のテイストによって運用を変えることもありますが、基本的には「団体として安心できる公式っぽさと、裏に人間がいることが分かるような温度感の両立」を意識してやっています。チラシもSNSも、劇団のアイデンティティと乖離させたくないんです。劇団というものが分裂しないようにしたいという思いがあります。

また、宣伝美術担当が中にいると、座席表など様々な画像を、SNSで必要と思ったタイミングで自分で作れるため、作品全体のビジュアルコーディネートに統一感が出ます。作品を見に行くまでの道筋が整っていくような効果があればいいなと思っています。



かるがも団地 第11回本公演『意味なしサチコ、三度目の朝』(再演)(2025年8月上演予定)

――かるがも団地の再演作品『意味なしサチコ、三度目の朝』のチラシについて、初演からの変更点や工夫した点を教えてください。 

古戸森  再演だったからこそできたことが多くあります。一度上演しているので、どういう場所で、人の関係性がどうで、どういう小道具が出てくるのかが全て明らかになっていたため、自転車に2人乗りしている写真など、具体的なシーンをビジュアルコンセプトに反映できました。 

初演は劇団3年目くらいの頃で、私たちや観にきてくださる観客層も若かったので、チラシも青っぽい爽やかなエモーショナルな仕上がりでしたが、今回はそのエモーショナルな感覚を残しつつも、もっとフラットに見てほしいという思いがありました。物語のなかで起こる出来事の見方を規定したくないという気持ちがあったので、事前広報の段階で「エモーショナルなイメージ」に寄せすぎたくないなと。

かるがも団地 第5回公演『意味なしサチコ、三度目の朝』(初演)(2021年)

また、俳優が全員同じ顔ぶれで揃ってくれたので、4年間を経ての俳優の見た目の変化や積み重ねてきた経験が伝わるようにしたいとも思いました。これは、初演から応援してくれている方々への「ありがとう」という気持ちと、私たちも大人になったという気持ちを込めたチラシです。

あと、再演チラシの上部にあるオレンジ色の線、何かわかりますか? 「ギャラリーおちらしさん」での展示に来ていただくと、線の正体がわかるかもしれません!

かるがも団地 第11回本公演『意味なしサチコ、三度目の朝』(再演)

日程:2025年8月8日(金)~11日(月・祝)
会場:吉祥寺シアター

だいたい全編秋田弁で送る、スペクタクルなヒューマンドラマ!
オール初演キャストで4年ぶりに改訂版を再演!

脚本・演出:藤田恭輔(かるがも団地)

出演:
波多野伶奈
村上弦(猿博打)
北林佑基(世田谷センスマンズ)
守谷花梨
上田茉衣子
長井健一
フジイヨウヘイ
助川紗和子(知らない星)
藤田恭輔(かるがも団地)
宮野風紗音(かるがも団地)
古戸森陽乃(かるがも団地)

かるがも団地
「団地のようなあたたかさ、多様性」を合言葉に2018年4月に八王子にて結成された劇団。メンバーは首都大学東京(現:東京都立大学)劇団時計で出会った藤田恭輔・古戸森陽乃・宮野風紗音の3人。
今は誰も八王子に住んでいませんが、八王子のことはこの胸の中で大切に思っています。不器用ながらも懸命に生きる人々をちょっと切なく描きつつ、俳優さんに安易に変顔をさせたりしています。



岡本セキユ☆シングル芝居『寿司の女』(2024年)

――岡本セキユさんとの「岡本セキユ☆シングル芝居」のクリエーションについて教えてください。 

古戸森  岡本セキユさんとは、第1回公演からずっと関わらせてもらっているので、一緒に「文脈」を作ってきたという感じです。セキユさんが「シングル芝居」という屋号を決め、ご自身の「昭和顔」を面白がっていることから、レコードのジャケットのようなチラシというコンセプトで始まりました。

最近はレコードのジャケットというコンセプトからは離れていますが、「パロディ」という縛りは変わらずに制作させてもらっています。 

岡本セキユ☆シングル芝居『蟹テレビジョン』(2024年)

セキユさんはパロディに非常に厳しいんです。そのさじ加減が私には難しく、最近ようやく言っていることが分かってきました。あくまでも「演劇のチラシにありうる情報がたまたまパロディのように見えている」という建前を崩さないというポリシーがある方です。

岡本セキユ☆シングル芝居『ワイルド蛍をつかまえろ』(再演)(2025年8月上演予定)

岡本セキユ☆シングル芝居『ワイルド蛍をつかまえろ』(再演)

日程:2025年8月1日(金)~4日(月)
会場:早稲田小劇場どらま館

俳優・歌人の岡本セキユが自分で書いて演じるシングル芝居。今回は、昨夏上演の『ワイルド蛍をつかまえろ』をリマスターして再演します。

ささくれみたいな日常は気づいたらもうあやふやで、頭がチカチカするんです。
世界の定まらなさについて大声で自問自答する、心の冒険活劇!!



――古戸森さんがこれまでに好きだったチラシや、宣伝美術家を教えてください!

初めてチラシがきっかけで見に行った小劇場演劇は、キュイ『きれいごと。なきごと。ねごと。』(2012)でした。劇団競泳水着は、デザイン太陽と雲さんのデザインが素敵で見に行きました。ロロのチラシは全部好きです。『朝日を抱きしめてトゥナイト』(2014)、『ハンサムな大悟』(2015)のチラシも可愛くて持っています。悪い芝居マームとジプシー範宙遊泳もチラシがきっかけで見た記憶があります。ままごと『わが星』(2015)のチラシは、大学時代に部屋に貼っていました。

古戸森さん所有のチラシコレクションを一部お見せいただきました!



「ギャラリーおちらしさん」Monthly Special
7月の特集デザイナー:古戸森陽乃さん(かるがも団地)

※全日程終了いたしました。ご来場ありがとうございました!※

日時:ギャラリーおちらしさんの開館日に順じて約1か月間
・7月5日(土)13:00~17:00
・7月12日(土)13:00~17:00
・7月19日(土)13:00~17:00
・7月23日(水)16:00~19:00 

会場:株式会社ネビュラエンタープライズ
〒136-0071 東京都江東区亀戸7-43-5 小林ビル

東京都江東区の「ギャラリーおちらしさん」では、約1か月間、かるがも団地・古戸森陽乃さんデザインのチラシを特集する企画展を開催!

インタビューでご紹介した公演チラシもご覧いただけます。古戸森さんの手書きによるコメントも……!

ご予約不要・入場無料ですので、どうぞお気軽にお越しください!


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