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応募前夜、台所で夫にラブレターを朗読した

今年の創作大賞、わたくしは、こちらの3作品で閉店ガラガラです。応募〆切までまだ少しあるけど、多分もう書かないでしょう。今のところ、長文かけて書くような題材が、もうない。いや、あるっちゃあるか?でも、今じゃない。機は熟すまで待たねばならないのである。

普段は、エイッと書いてヤーッと公開するスタイルでやらせてもろてますが、やはりコンテストに応募するつもりの作品になると、少々勝手が違います。

作品中に登場する人には、応募する前に読んでほしい。できれば気持ちよく応援してほしい。これが私の密かな決めごと。万が一にも、「え〜こんなこと書かんでよ」とか思われてしまった日には、悔やんでも悔やみきれません。本人の目に触れなかったとしても、「大丈夫やったかな…」と思いながら過ごすのは精神衛生上よろしくないのです。

さて、片羽の蝶々の話は、ほぼ私しか出てきません。ベッドの上で見えざる尿意と戦うだけの話です。なので、私がOKならそれでいい。クリア。

BIGBOYの話は、主要登場人物であるお母さんとがっつり二人三脚で書きました。尿意と戦うだけだった蝶々作品とは違って、これは母が、近しい友人にも話していなかったような話に踏み込んで書いた作品です。出した後までずーっと、「出してよかったのかなあ…おばあちゃんが悪者になっちゃったのかな…」と複雑な心境を吐露してきた母ですが、応募することに関してはGOしてくれました。それは読んでくれたあなたのおかげなのです。

投稿によせていただいたコメントのスクショを全部母に見せました。めっちゃ喜んでくれました。真摯に読んでくださった方がいたから、私は母と「出してよかった」と言い合うことができました。その節は、本当にありがとうございました。

さて、最新作である結婚15年後の新婚旅行について。これは私と夫の話です。ということは…?そう。もちろん、夫にも読んでもらう必要があります。

これまで、何度も私のnoteの記事を読んできた夫。楽勝でクリアでしょ…と思いながらも油断はできません。これまでも、相当強引に、無理やりに、読ませてきたのです。時に褒めてはくれるものの「…ふーん。で?」とかいう非情な感想を口にして、夫婦間にきな臭い風が吹いたことすらあるのです。しかし私は、我がポリシーに従って事前の同意を得なければいけません。夫には、応援してもらわねばならないのです。

彼は活字を読むことがそこまで得意ではありません。編集マンのくせに。好きな本は何度も繰り返し読む人ですが、なんせタイミングがあります。酒が入っていてはダメ、眠い時はダメ。なぜか?まともに頭に入ってこずに「…ふーん。で?」としか言えず私に怒られるのが目に見えているからです。彼はそれを非常に恐れています。

(余談ですがBIGBOYの5500文字は、私に怒られないように半端ないプレッシャーを感じながら読んだとのこと。結果、感想は大変優秀でした。ホクホク)

前置きが長くなりました。私は公開前日に意を決して夫に声をかけました。

「あんさあ、応募する作品をもう一個書いたんよ」
「え、そうなん?」
「夫婦の話にしたんよ」
「何書いたん?」
「読んでほしいんよ」
「えー、今お酒飲んでるやん」

出ました。なんでそう酒を飲んでいるのかね。こういうものは、タイミングがあるのです。私はわがままなのです。今出したい、すぐ出したい、機は熟した。ならば…答えは一つしかない。

「じゃあさ、私、読むわ」
「え?」
「読んであげる」
「今?」
「朗読します」

エヘンとひとつ咳払い。

『私は正気だ。』

私は本当に正気でしょうか。

えええ〜と笑いながら、聞くしかない夫は私の朗読に耳を傾けました。うんうん…、そうね、…間違いない。相槌をうちながら酒を片手に聞いてくれる夫。ちらちらと夫の表情に反応を窺いながら、私はご機嫌に読み続けます。ところがです。あの頃に思いを巡らせているような、いやこれは勝手な想像ですが、こくこくと神妙に頷く夫の顔を見ていたら、なんだか、つーんとしてきちゃって。

そういえば、わかりやすく愛情を言葉にする夫と違い、私は彼に「好き」だの「愛している」だのをあまり言ったことがありません。普段の関係が関係なので、今さらどうにも気恥ずかしくてね…夫婦のくだらなーい儀式のくだりを読みながら、そういえば最後の一言までこれを読むの、めっちゃ恥ずかしいやんけとか考えながら。やあやあ、これは、そういう機会なんだと。結婚式ではじめて父と母に「大好きだ」と手紙を読んだ時と同じ。いつものわが家の台所で、私は彼に盛大なラブレターを読んでいるのでした。


「どうでしたか?」
「全部、真実やったね」
「感想は?」
「ありがとうございました」

それは感想ちゃうやんけ、と言いながら、この作品も無事にクリア。公開OKをいただいて、私の今年の創作大賞チャレンジが無事に終わりました。「出していいよ」と快く、応援してくれる家族が背中を押してくれました。この場を借りて、御礼申し上げます。

そういえば、朗読をしたあの夜から、
夫はいつもより少し優しい。

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