【展覧会レポ】東京都写真美術館「TOPコレクション トランスフィジカル」
【#270、約3,600文字、写真約40枚】
東京都写真美術館(以下、TOP)で開催中の「総合開館30周年記念 TOPコレクション トランスフィジカル」を鑑賞しました。その感想・レビューを書きます。
▶︎ 結論
いつも通り、キレのある満足感の高いコレクション展でした。それは主に、1)学芸員4名による5つのテーマ別でコンパクトに楽しめる、2)森村泰昌の作品にクスッとできたことによります。写真に興味が薄い人も、総花的に楽しめると思います。
おすすめ度:★★★☆☆
会話できる度:★★★☆☆
混み具合:★★★☆☆
展覧会名:総合開館30周年記念 TOPコレクション トランスフィジカル
場所:東京都写真美術館
会期:2025.7.3(木)—9.21(日)
休館日:月曜日
開館時間:10:00~18:00
住所:東京都目黒区三田1丁目13−3 恵比寿ガーデンプレイス内
アクセス:恵比寿駅から徒歩約5分
入場料(一般):700円
事前予約:不要
所要時間:約1時間
撮影:すべて可能
巡回:ー
URL:こちら
▶︎ 「総合開館30周年記念 TOPコレクション トランスフィジカル」感想

総合開館30周年を記念するTOPコレクション展を開催します。(略)多角的な視点から当館コレクションを選りすぐり、写真と映像の魅力をご紹介します。
作品数が約180と多いため「気になる作品はあるかなぁ」と、気軽に鑑賞しました。今回のコレクション展は、前回と同様、学芸員4名がいくつかのスペースをつくったオムニバス形式です。
▼ 前回の「総合開館30周年記念 TOPコレクション 不易流行」
今回の展覧会名は「トランスフィジカル」。前回の四文字熟語「不易流行」からカタカナの横文字に変えてきたのは、前回踏襲しない美術館の姿勢を感じました。

「トランス(trans-)」は、30年間のTOPや時代の変化、「フィジカル(physical)」は、写真としての物質性、被写体や作家自身の身体的表現を意味するそうです。「不易流行」はわかりやすかった一方、「トランスフィジカル」の説得力は薄いですネ🤔
当日、若い人も含め、観覧者がたくさんいたため、少し驚きました。近年、TOPは、徐々に人気が上がっている気がします。派手な美術館ではないので、何が奏功しているのでしょうか?

▼ 同日開催だった展覧会

✔️ 第1室 撮ること、描くこと
最初期のカラー写真や、絵画と見まがう彩色のほどこされた写真、写真家による絵画、絵画的な画面構成によって制作された写真など、複数の視点から作品を紹介し、写真と絵画の関係を考えます。


過去、写真は絵を描く練習のためにも使われました。植物の写真は、壁紙や布地のデザインを描く目的で使われたそうです。

ソフトフォーカスを使って、寓話っぽい印象にした作品。現代は、PCやスマホを使うと、撮影後にいくらでも加工ができます。しかし、加工する技術が限られた当時、写真家はさまざまな方法を模索しました。



第1室は、古い写真ばかりで固い印象でした。しかし、第2室は、エキソニモなど、急に前衛的な作品があったことで、その緩急が良かったです。
✔️ 第2室 dance
人々が集い、身体を動かし、声を上げ、自らの想いを表現する「踊る」という行為は、ときに社会を動かす原動力ともなるなど、時代や目的に応じて形を変えながらも様々な側面をみせてくれるでしょう。


沖縄のお墓の前で踊る女性の映像作品。近年、沖縄にある親族のお墓に行ったため、作品に親近感がありました。


マティスみたいでオシャレ



よく見ると、瓶が少し揺れていて動画と気づきます

クラブで写真を撮りたくなる気持ちは、すごくわかります。あの空間で、あの感情を表す、光がビヨーンと伸びる写真は、非日常的な独特の世界観があります。
▼ パーティフォトを撮影されている方の投稿
過去、私がRICOHのコンデジ(GR)を使っていた時「どうやってあの写真撮ってんのかなぁ」と思いながら撮影しました(スペック的に無理でしたが。


✔️ 第3室 COLORS
写真が発明された最初期から、色彩がないことは写真の欠点のひとつと考えられてきました。苦心の末に獲得された色彩によって、写真家たちの表現は花開きます。
「COLORS」ってポーラ美術館か!TOPが企画している途中で、ポーラ美術館が企画展を開催したため、TOPはそのまま進行したのでしょうか。


この作品をメインビジュアルにしたのは勇気を感じる


もう一つのメインビジュアル


限られた場所のみに音が伝わるスピーカーが3カ所で使用されていました。便利なアイテムですネ。

✔️ 第4室 虚構と現実
コンセプチュアル・アートの影響を受け、現実と虚構の境界を追求しながら、演劇的に構築された写真、および映画と異なるほかのメディアに関連させて、様々な実験的な手法を用いたヴィデオの作品群を考察します。

このコレクション展で「ビビッとくるのがないなぁ」と思っていたら…。

急に森村泰昌が飛び込んでいて笑ってしまいました。しかも住所は阿倍野(笑。まさに、第4室の「虚構」にピッタリ。この作品を見た瞬間、圧倒的に優勝だと感じました。(元ネタの作品)


森村泰昌は、8月1日から日経の「私の履歴書」を連載しています(全30回)。完結後、書籍化したら通しで読みたいです。

✔️ 第5室 ヴィンテージと出会うとき
「vintage」という言葉を手がかりに、年代モノ、一点モノがもつ「本物の」魅力とは何なのかを探っていきます。


よく見るとすりガラスになっています。昔はよくありました。どうしても昭和なレトロ感があるため、絶滅したのでしょうか。




《決定的瞬間》で有名なブレッソン。そのヴィンテージプリントと、モダンプリントの両方が展示されている面白い切り口でした。写真界に、その2種類があることを、私は初めて知りました。
「ヴィンテージプリント」は、撮影後、比較的近い時期に作者自身またはその監督下でプリントされたもの、「モダンプリント」は、撮影から時間が経過した後に、同じネガやデータから作られたプリントを指します。
ヴィンテージかモダンか、どのように識別しているのか気になりました。美術館が作品を購入する際、それぞれで市場価格が変わるなら、審査も難しそうです。

両方が本人によるヴィンテージ

別々の写真(海と空)を合成した作品
◾️ 選ぶ、並べる
事前に「ちいさな美術館の学芸員」さんの投稿を読んだため、今回の展覧会では、テーマに沿って作品を選ぶことに加え、それらを並べることにも注意が払われていると感じました。
作品数は、少ない部屋で19、多い部屋で49とマチマチ。作品を並べる密度も部屋によって全然違います。コンパクトな展覧会だからこそ、作品の魅力を全力で伝える「編集」作業には、相当のセンスが必要だと思いました。
◾️ イスをくれ!
作品の前に!イスがほしい!イスでは、ただ休むだけではなく、鑑賞するための目的もあります。
観覧者が移動自由なスツールを、展示会場のそこら辺に置くのはいかがでしょうか?ゆっくり座って作品を鑑賞したい需要は多いと思います。過去、TOPでは、作品の前に座れる取り組みを絶賛したことがあるのですが…。
▶︎ まとめ

いかがだったでしょうか?毎度、満足感の高いコレクション展を開催している東京都写真美術館。今回も、コンパクトにさまざまな側面から、写真や映像の面白さに気づくことができる展開でした。今回は特に、森村泰昌の作品にトリをもって行かれた印象でした。
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