ジャズ記念日: 10月14日、1960年@シカゴ “Just In Time”by Lee Morgan
Oct. 14, 1960 “Just In Time”
by Lee Morgan, Clifford Jordan, Eddie Higgins, Art Davis & Art Blakey at Universal Recordings, Chicago for Vee-Jay (Expoobident)
本作がシカゴ録音なのは、アフリカ系アメリカ人夫妻によるレコード店から拡大して同地で活動したレーベルのビージェイだから。その名称は、この夫婦の名前VivianとJamesのイニシャルから生まれている。このレーベルはジャズというよりは同地で栄えたブルースやR&Bなど主に黒人向けのありとあらゆる音楽を世に送り出した。プレスリーやローリングストーンズに影響を与えたジミーリードや、シカゴが舞台の名画「ブルースブラザーズ」に登場するジョンリーフッカーのアルバム等を手掛けた。それに加えてビートルズの初期の作品の販売権を獲得して米国に流通させたという実績もあった。

演奏については、リーモーガンの生命の息吹を感じさせるキレの良く、ファットトーンと形容されるふくよかな音色が心地良い。録音的にはマイクに向かって至近距離で演奏しているものと推測するが、そこに微妙にエコーがかかっているのも心地良い要因の一つ。
クリフォードジョーダンとエディヒギンズといったシカゴ拠点のミュージシャンが伴奏に加わり、ジャズメッセンジャーズの親分アートブレイキーのドラムに歩調を合わせる懐の深い鳴りのするアートデイビスのベースのスイング感も心地良く、ヒギンズのピアノも勢い良く短く纏めあげる美学を感じさせる。後半のベースとのデュオの部分も聴いていて体でリズムを取りたくなるような幸せ。
何処かで聴いたことがあると思いを巡らせると、トランペットは、ウイントンマルサリスのスタイルが酷似。実はその登場の二十年以上前に、今聴いても新鮮で時代を感じさせない完成度の高い型が出来上がっていた事が本作から分かる。マルサリスは19歳でリーダー作品を発表したが、モーガンもこの時22歳なのだから、2人共々、若くして堂々たる演奏には恐れ入るばかり。因みにモーガンのリーダー作品は18歳時に吹き込まれたもので、マルサリスよりも若かったし、本作がリーダー13作品目だから貫禄があるのも納得出来る。
そのマルサリスのデビューアルバムにご興味がある方は、こちらのベテラン相手に一歩も引けを取らない新人とは思えないバラードの名演をどうぞ。
本作のドラマー、ブレイキーは数あるミュージシャンを発掘・育成したが、トランペッターとしては、初期にこのモーガンやフレディハバード、晩年期にマルサリスやテレンスブランチャードといった逸材を擁したので、脈々と引き継がれるジャズメッセンジャーズの歴史の中で、モーガンの影響が間接的に及んでいるように思える。ブレイキーはモーガンを息子のように可愛がっていたそうだから、モーガンがメッセンジャーズを去った後もその影を理想像として後任に求めていたかもしれないし、マルサリス自身もモーガンからの影響を認めているので、類似した点があるのも納得が行く。モーガンと同い年で、その後を継いだハバードの名演は、こちらからどうぞ。
アルバム名の、”Expoobident”という聞きなれない単語は、”Extraordinary, phenomenal, wonderful”とあって、並外れに素晴らしいという意味で、まさにこの演奏を物語っている。
本曲は、ソングライターの殿堂入りをしている、”Let It Snow”を手掛けたジュールスタインがミュージカル”Bells Are Ringing”向けに作曲したもの。1960年にはジュディホリデーとディーンマーチンの主演で映画化もされた。そして先日、天に召されたボーカルの大御所、トニーベネットの生涯の持ち歌の一つでもあった。

マーティンは同年公開の”Oceans11”にも
シナトラファミリーの一員として登場している
そのスタインに興味を持たれた方は、こちらの紹介曲”I Fall in Love Too Easily”もどうぞ。
最後に、本作と同じスタジオで約一年前にレコーディングされた、同様にシカゴ出身ミュージシャンを交えた演奏はこちらからどうぞ。
