国際基督教大学でのパイプオルガン演奏会
国際基督教大学(ICU)で行われたオルガニスト内田光音(うちだ・みつね)さんのパイプオルガンの演奏会に行ってきました。
大学のチャペルで開催されるコンサートに行くのは、今回が初めてでしたので、どんな体験ができるのだろうと少しドキドキわくわくしつつ、神奈川・川崎の自宅を出発しました。
電車を乗り継いで、東京・武蔵境駅に到着し、さらに路線バスに乗って移動すること約12分。目的地にたどり着くと、そこは都内とは思えないほど、想像していた以上に緑豊かな森の中にあるキャンパス。しかも土曜日の午後だからなのか、大学の敷地内はとても静かでした。
金髪の外国人女子学生たちとすれ違うと、聞こえてきたのは100%英語のおしゃべり。これぞまさに国際基督教大学(ICU)という独特の空気感が感じられ、ここは本当に日本なのだろうかと思うほど(笑)。
そんなこんなで、木立の間を歩いていくと、やがて大きなチャペルが見えてきました。
チャペル内に入ると、正面には1970年に設置されたオーストリア・リーガー社製のオルガン(3段の手鍵盤と足鍵盤、36ストップ)。
木製の壁面や天井とも美しく調和し、そのたたずまいは、どこか和モダンのデザインのようでもありました。
この日の座席は「自由席」でしたので、今回は2階席から聴いてみることにしました。
▼当日、チャペル内は「撮影禁止」でしたので、下記の動画をご覧ください。
この日の演奏プログラムは、16世紀から21世紀までの約500年にわたる一連のオルガン作品です。
最も古い作品は、A.シュリックの《優しきマリア(Maria zart)》でした。
16世紀初頭に活躍したシュリックは、「ドイツ・オルガン音楽の出発点の一人」ともいわれる人物です。
バッハより200年以上前の作品ですが、古の素朴な祈りの旋律が、現代のチャペルの空間にも自然に溶け込み、おごそかな時間が流れていきました。
ドイツのオルガン音楽の歴史を大枠で見れば、
シュリック → ブクステフーデ → バッハ
ということになりますが、今回のプログラムでは、その長い時の流れの始まりの部分も聴くことができました。
その後、バッハ、ショスタコーヴィチ、シューマンなども演奏され、プログラムの最後は、20世紀初頭のドイツの作曲家・オルガニスト、マックス・レーガーの《B-A-C-Hによる幻想曲とフーガ op.46》で締めくくられました。
マックス・レーガーは、
「バッハの対位法」
「ブラームスの構築性」
「ワーグナーの和声」
をあわせ持った作曲家といわれています。
バッハを深く敬愛したレーガーが、「B-A-C-H」の音型をもとに構成した巨大な作品は圧倒的な迫力でした。
ということで、16世紀のシュリックから20世紀のレーガー、さらには21世紀の石島正博まで、約500年にわたるオルガン音楽の流れが、一つの演奏会のプログラムの中で、「ひとつながり」に結ばれて展開していき、なんともいえない「ありがたさ」を感じたひとときでした。
私は、これまで主にはコンサートホールでのオルガン演奏会を中心に聴いてきましたが、昨年からは教会で行われる演奏会にも時々足を運ぶようになりました。(東京カテドラル聖マリア大聖堂、聖ルカ礼拝堂、霊南坂教会)
音響空間として捉えた場合、教会ごとにそれぞれの「場」の特長がありますが、今回のICUのチャペルは、その「静謐さ」がとても印象的でした。
曲間に咳をする人もなく、広いチャペルの空間は、完全に音が消える瞬間があり、その非日常的な静寂さもまた、この日のもう一つの「音楽の要素」だったようにも思います。
オルガンは巨大な楽器というか建築空間ですが、音の響きが消えた後に体験する何かもまた、オルガン音楽が持つ魅力なのだと、あらためて感じられた午後でした。
国際基督教大学(ICU)では、この秋にもパイプオルガンの演奏会が予定されています。
※詳細はここをクリック
いっとき喧騒から離れ、静穏を味わえる時間を求めて、一度訪れてみてはいかがでしょうか。

プログラム
「来たれ、聖、主なる神」によるファンタジア BWV 651/J.S.バッハ (1685-1750)
優しきマリア/A.シュリック(1460-1527)
レジストレーションズ/石島正博(1960-)
装いせよ、おお愛するよ BWN 654/J.S.バッハ
前奏曲とフーガト長調 BWV541/J.S.バッハ
「ムツェンスク郡のマクベス夫人」よりパッサカリア/D.ショスタコーヴィチ(1906-1975)
ベタル・ピアノのための練習曲より
From Studien für den Pedalflügel op.56/JR.シューマン(1810-1856)
BA-CHによる幻想曲とフーガ/M.レーガー(1873-1916)
内田光音 プロフィール
12歳からオルガンを始め、東京藝術大学卒業、同大学院修士課程修了。在学中に安宅賞、アカンサス音楽賞を受賞。DAAD(ドイツ学術交流会)奨学金を得てミュンヘン音楽演劇大学に留学し、修士課程を修了後、野村財団とハンブルク市から助成を受け、ハンブルク音楽演劇大学国家演奏家資格課程に学ぶ。
オルガンを浅井寛子、大平健介、廣江理枝、ベルンハルト・ハース、ヴォルフガング・ツェラーに、チェンバロを廣澤麻美、武久源造、クリスティーネ・ショルンスハイムに師事。第14回ゴットフリート・ジルバーマンオルガンコンクール、第24回ヴィースバーデンバッハ賞オルガンコンクールで第3位入賞。
2025年4月よりホテル日航福岡ミュージックディレクターに就任、付属チャペル「チャペルプリエール」のオルガニストとして毎月の定期演奏会の企画、演奏を行う。一般社団法人日本オルガニスト協会会員

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