MVP ARCHIVE NASA | Search for Life Phase 01-03 : Hydrothermal Vent Ecosystems / 太陽光のない生命の世界

太陽光のない生命の世界
生命は太陽の光がなければ存在できない。
かつて科学者たちの多くは、そのように考えていた。
地球上の生態系は植物による光合成を基盤としており、太陽光が生命活動の出発点であることは疑いのない事実だったからである。
太平洋深海での発見
しかし1977年、太平洋の深海約2,500メートルにある熱水噴出孔で、その常識を覆す発見があった。
そこには太陽光がまったく届かないにもかかわらず、多様な生物が集まる独立した生態系が存在していたのである。
この生態系を支えているのは光ではなく、「 化学エネルギー 」である。
海底から噴き出す高温の熱水には、硫化水素やメタンなどの化学物質が豊富に含まれている。
化学合成細菌は、それらの化学物質を利用してエネルギーを得て有機物を作り出す。
この細菌が生態系の土台となり、チューブワーム、エビ、カニ、二枚貝など、多くの生物がその周囲で生活している。
これは、太陽光による光合成とは異なる、もう一つの生命維持システムである。
生命探査への影響
この発見は、地球の生物学だけでなく、宇宙における生命探査にも大きな影響を与えた。
もし生命が太陽光を必要としないのであれば、厚い氷に覆われた世界でも生命が存在できる可能性がある。
現在、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドゥスが生命探査の有力候補と考えられている理由の一つも、この熱水噴出孔生態系の発見にある。
地下に液体の海と海底熱水活動が存在すれば、地球と同じような化学合成生態系が形成されている可能性があるためである。
熱水噴出孔は、単なる深海の珍しい環境ではない。
それは、「 生命には太陽が必要である 」という長年の前提を見直し、人類が宇宙で生命を探す方法そのものを変えた重要な発見なのである。
