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提灯は、二つ灯った

8月13日は怪談の日。そして、月遅れのお盆の入りでもあります。

せっかくだから一番こわい話をしよう、と思ったんです。聞き手が悪かった。

怪談の日は、稲川淳二さんの怪談ナイトが20周年を迎えたことにちなんで制定されたのだそうです。夏の夜に、うすら寒い話を聞く。あの体温の下がり方は、たしかに一年でこの時期にしか味わえません。

そして今日は、迎え火の日。夕方に火を焚いて、帰ってくる人を迎える日です。

怖い話をする日と、いない人が帰ってくる日が同じ日に重なっているのは、たぶんただの偶然です。でもこうして並べてみると、ずいぶん都合のいい偶然だなと思います。

漫画では、こわい話をするつもりで、こわい話をされた側になりました。私が語ったのは、階段を上ってくる足音の話です。あれは作り話です。作り話なので、いくらでもこわくできる。声を落とすとか、間を空けるとか、指を一本立ててみるとか、そういう小細工でどうにでもなります。

でも、提灯の数はどうにもなりません。

自分の手で吊るしたのは一つで、灯っているのは二つ。それだけの話です。誰かが階段を上ってくるわけでもないし、影が伸びてくるわけでもない。ただ数が合わない。作り話に負けるはずのない地味さなのに、こっちのほうがずっとこわいのはなぜなんでしょうね。

坂の下のほうから、爆竹の音が聞こえてきます。長崎のお盆は、お墓で花火を上げたり爆竹を鳴らしたりします。他所から来た人はたいてい驚きます。お墓であんなににぎやかにしていいのか、と。

たぶん、にぎやかにしないと、こわいんだと思います。

迎える、というのは、来るということです。来るものを歓迎しているうちは、それは家族です。数えて、一つ多いと気づいてしまった瞬間から、それは怪談になる。

来ているのは、どちらでしょうね。

*漫画は新宇佐美式六号で描きました。

#エッセイ #怪談 #怪談の日 #お盆 #提灯 #漫画

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