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#5|数式から考える!小学校では教わらないメダカ飼育の裏側

前回の#4では、
水質を計測しながら水槽を立ち上げる方法を紹介しました。

今回は一歩踏み込んで、
水槽の中で起きている現象を数式から考えてみます。

ここで扱う数式は、
先人たちが膨大な基礎実験を繰り返し、複雑な自然界をモデル化するために導き出した経験式(近似式)です。
環境によって使う定数は違いますが、数式の骨格を見ると、水槽の管理方法について納得できますよ!

※AIでサクッと作成。黒板の文字はAIのイメージです。

まずは基本となる、
化学反応を数式化する方法から始めます。

中学校で教わる次のような水素燃焼を例にします。

$${2\text{H}_2 + \text{O}_2 \rightarrow 2\text{H}_2\text{O}}$$

本来の水素燃焼は途中経路がもっと複雑ですが、
ここでは単純な化学反応として取り上げます。

このとき、水($${\text{H}_2\text{O}}$$)が生成される速さをモル濃度($${[\text{mol/L}]}$$)で表すと、次のような近似式で書けます。

$${\frac{d[\text{H}_2\text{O}]}{dt} = k [\text{H}_2]^2 [\text{O}_2]}$$

この式にある k は、反応速度定数とよばれます。
理論的に導き出せる定数ではなく、
先人が条件を変えながら実験を繰り返して求めた値です。

水槽内のアンモニア($${\text{NH}_3}$$)が分解される速度も、同じようにモル濃度で考えることができます。

相手は生き物(バクテリア)なので、排水処理などの分野でも標準的に使われるMonod(モノ)型という近似式を使います。

アンモニアが使われる速度は、次のように数式化できます。
※化学式は #2記事 を参照してください。

$${\frac{d[\text{NH}_3]}{dt} = - \frac{1}{Y} \cdot \left( \mu_{max} \frac{[\text{NH}_3]}{K_s + [\text{NH}_3]} \cdot \frac{[DO]}{K_O + [DO]} \right) \cdot X}$$

  • $${[DO]}$$
    溶存酸素濃度(単位:mg/L)

  • $${X}$$
    バクテリアの濃度(数)

  • $${\mu_{max}, K_s, K_O, Y}$$
    先人の実験から導き出した定数です。
    これらは条件によって値が違います。

    • $${\mu_{max}}$$(最大比増殖速度):
      バクテリアが持つ最大処理スピードです。

    • $${K_s}$$(半飽和定数・アンモニア):
      アンモニアへの食いつきの良さです。
      この値が小さいほど、アンモニアがごくわずかしかない環境でも『エサだ!』と敏感に反応して食べてくれる、貪欲なバクテリアであることを示します。

    • $${K_O}$$(半飽和定数・酸素):
      低酸素状態への強さです。
      この値が小さいほど、少ない酸素でもバクテリアが元気であることを示します。

    • $${Y}$$(収率係数):
      バクテリアの胃袋の大きさです。
      この値が小さいほど、同じ量のバクテリアを維持するために大量のアンモニアを食べてくれる大食漢であることを示します。

この数式を眺めていると、分かることがあります。

  • バクテリアがゼロなら、アンモニアも減らない:
    数式の右端に X(バクテリアの数)が掛け算されています 。
    この X がゼロに近い立ち上げ初期は、他の条件がどれほど良くても右辺の結果(アンモニアが減る速さ)がほぼゼロになることが分かります 。

  • 酸素が足りないと、アンモニアが減りにくくなる:
    数式に $${[DO]}$$(酸素濃度)が掛け算で含まれています 。
    酸素が少なすぎるとこの項がゼロに近づき、アンモニアが減りにくくなることが分かります 。

  • アンモニアが減る速さには限界がある:
    $${[\text{NH}_3]}$$ や $${[DO]}$$ をどれほど高くしても、これらを含む分数が『1(最大値)』に近づくだけです 。
    このことから、アンモニアが減る速さは $${\mu_{max}}$$(最大処理スピード)といった限界が決まっていることが分かります。

  • バクテリアが大食漢だとアンモニアが早く減る:
    数式の $${1/Y}$$ は、バクテリアの胃袋の大きさを表しています。大食漢なバクテリアほど、アンモニアを早く減らしてくれます。
    特に、この項からバクテリアの種類が大切であることが分かります。

他にも分かることがあると思います。
数式を眺めて色々と考えてみてくださいね。

✔︎ おわりに

先人の知恵が詰まった数式を知ることで、
水槽の見え方も少し変わったのではないでしょうか?

たとえば、
バクテリアが少ない環境では、
どれだけ条件を整えてもアンモニアは思ったほど減りません。

また、
エアレーションには特定の項を支える役割があります。

『どう対処すべきなのか』を決めるには、
何かしらの理由が必要です。

その理由の1つとして、
先人の知恵が詰まった数式を使ってみては?

迷いの中での試行錯誤ではなく、
根拠のある判断ができるようになりますよ!


#1から#5(今回)まで、
失敗の事例から具体的な立ち上げ方まで取り扱ってきました。

まだ扱っていないのは、日々のエサやりや水換えです。

でも、今やYouTubeに多くの解説動画があります。

それらを参考にしながら、
自分がやりやすい方法へと改善していくのが良いかなと思います。

水草水槽や海水魚など、こだわれば奥の深い世界です。

だけど、
どんな水槽でも基礎となるのは、
この連載で扱ってきた内容のはず。

まずは、
ここから一歩ずつ始めてみてはどうでしょうか?


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