【スターリンク②】スペースⅩが「Starlink」を実現できた理由がすごすぎる!|5分で読める最新テクノロジーあれこれ
最新のテクノロジーに関することを中心にお送りする本シリーズ。
宇宙開発、AI、量子技術から科学全般の話題まで、エンジニア視点で解説。
難しいことは苦手でちょっと。。。という人から、興味はあるんだけど実はあまりわかってない。。。って人まで、「5分でスッと理解できるように」というコンセプトでお届けしています。
前回に引き続きで「スターリンク」です。
「世界中のどこに居ても、いつでも、遅延が少なく快適なインターネット環境を提供できる」というスターリンクですが、どうして今まで実現できなかったことがスペースXには実現できたんでしょうか?
🤔 スペースⅩはどうしてスターリンクを実現できたのか
前回の記事では、スターリンクが今までの静止衛星によるインターネットサービスと比べてどう凄いのか?ってことを解説しましたね。
衛星の軌道が地表から近いので、通信遅延が圧倒的に少ない
衛星の数が多いので、たくさんの人が同時に利用してても快適
要するに、これを実現するにはたくさんの低軌道衛星が必要だったわけです。
でも、衛星を開発してロケットで打ち上げるためにかかる費用は膨大。コストがかかりすぎて、とてもそんなの現実的じゃありませんでした。
つまり、スペースXがそれを実現できたということは、コストを下げることができたからに他なりません。
それも、ちょっと下げたというレベルじゃなく、劇的に下げたんです。
なんでそんなにコストを下げることができたんでしょうか?
🚀 ロケットの打ち上げコストを下げた
衛星を軌道に乗せるには、もちろんロケットで衛星を打ち上げる必要があるわけですが、最もコストがかかるのは、このロケットの打ち上げ費用です。スペースXが成功した最大の要因は、このロケットの打ち上げにかかるコストの常識を変えたから、と言っても過言ではありません。
☄️ロケットの製造コストを徹底的に削減
それまでのロケットは、政府機関であるNASAが主導して徹底的な管理の元で開発していたわけですが、部品の数がむちゃくちゃたくさんある上に、構造もむちゃくちゃ複雑。
部品はほとんどがオーダーメイドの特注品で、一つのロケットに組み上げるのも、とにかく複雑で大変。
といった代物でした。
スペースXは、最新のIT技術を駆使して構造をシンプルにしたり、部品やソフトウェアも内製化を進めたり。
とにかく民間企業である強みを生かして、徹底的に効率化してコスト削減した結果、従来の1/10以下まで打ち上げコストを下げたと言われています。
実は地味な努力の積み重ねがコストを下げるのにもっとも効果を上げてるんです。
☄️ロケットの再利用によるコストダウンを実現
そしてスペースXとして象徴的なのが、1段目ブースターの再利用ですね。
ロケットの1段目っていうのは、切り離されたらそのまま使い捨て、というのが今までの常識でした。
ところがスペースXのファルコン9は、切り離された1段目ブースターが目標地点めがけて落ちてくると、ロケットを再噴射してキレイに着地するという芸当をやってのけるわけです。

初めて見た時は、SFの世界がとうとう現実になったんだなぁ~と思ったのは私だけじゃないはずです。
☄️でもロケット再利用と言えば?
ロケットを再利用してコストを下げる、という発想。実はスペースXが最初というわけではありませんよね。
そう、1981年から2011年までNASAで運用されていたスペースシャトルです。30年間で、5機のスペースシャトルがのべ135回打ち上げられました。
もっとも打ち上げ回数が多いのは、ディスカバリー号で39回。

でも、いつの間に引退してたの?と思った人も多いのでは?
実は、スペースシャトルが引退に追い込まれた最大の理由は、打ち上げコストが高すぎたからです。
当初の期待に反して、打ち上げ後の整備にむちゃくちゃ費用がかかってたんですね。実際、使い捨てロケットのほうがずっと安く見積もられていたくらいでした。
本当なら、開発中だった後継ロケットが完成するのを待ってから引退するはずが、あまりの高コストで待ちきれずに運用終了。。
結果、スペースXのファルコン9が2020年に有人宇宙飛行に成功するまで、9年もの間、米国には宇宙飛行士を宇宙に送るロケットがありませんでした。
その間、有人宇宙飛行はロシア頼みとなっていたんです。
☄️失敗を積み重ねてロケットの再利用を可能に
話がだいぶ逸れてしまいましたが、そういった教訓も生かして開発されたスペースXのロケット。
しかし、けっして順風満帆だったわけではありません。
2005年に開発がスタートしたファルコン9は、2015年に初めて1段目ロケットの着地に成功するまで10年もかかっています。
2015年以降も、打ち上げミッションの失敗はわずか2回となっていますが、1段目ロケットの着地についてはしばらくは失敗の連続。(着地の失敗はミッションの失敗にカウントされないからです。)
それが今では、着陸の成功率も劇的に上がって97%以上に!
300回近い脅威の連続成功記録を樹立するまでになったんです。
完全無欠とも言える現在のスペースXのファルコン9ですが、その栄光の影には、血の滲むような努力があったんですね。
さて、1段目ロケット再利用でどれくらいコストが下がったか?
具体的な数値は公開されていませんが、50%以上のコストを削減できているという試算もあるようです。
🛰️ 衛星のコストも下げた
コストを劇的に下げたのは、ロケットの打ち上げだけではありません。スターリンクそのものである、衛星のコストも劇的に下げました。
🪐量産ラインで衛星を製造
どうやってコストを下げたのか?
最大の理由は、ひとことで言うと量産ラインで大量生産できるようにしたからです。
従来の人工衛星と言えば、完全オーダーメイドで技術者が一つ一つを手作りで組み上げるのが常識でした。
それを、大量生産に向いたシンプルな構造に。
専用の生産ラインで組立ロボットなどを駆使して、一日に数十機も製造できるようにしたんです。
🪐すぐに入れ替える前提で衛星寿命も短く
従来の衛星は10~20年も使う前提なので、品質基準もむちゃくちゃ厳格でした。燃料だって途中で補給できないので、たくさん積んでおかないといけません。
でもスターリンクの場合は、5年くらい使えればいいやって設計基準にしてるんです。
古くなったら、新しい衛星を打ち上げて入れ替えればいいじゃん!ってわけです。
そのため、軽量化することも可能となって1台あたりのコストを劇的に安くしてるんですね。
もちろん、これも大量の衛星を打ち上げるから出来ることです。
🪐たくさんの衛星を一気に打ち上げ
更に、衛星が軽量なら一度にたくさん打ち上げることが可能になります。
スターリンク衛星の世代によっても異なりますが、ファルコン9なら一回で20~60機の衛星を一気に打ち上げできるんです。
これによって、1機あたりの打ち上げコストも大幅に下げることができました。

ちなみに、2025年はこの記事を書いてる12月5日時点で、113回のミッションで、計2,915機のスターリンク衛星を打ち上げています。
毎日10機くらいずつスターリンク衛星が増えていってるって、凄いペースですよね。。
📡 アンテナのコストまで下げた
ロケットも衛星もコストを下げたら、もう十分だろっ!!って言いたいところですが、まだまだ終わりません。
ユーザーが使うアンテナまで自社で開発してコストを下げてしまいました。
スターリンクの衛星っていうのは低軌道を猛スピードで周回しています。いつも同じ位置にいる静止衛星とは違い、わずか数分で上空を横切って見えなくなってしまいます。
いくら地上に近いとは言え、数百キロのかなたにあるスターリンク衛星。
安定してブロードバンドで通信するには、そんな猛スピードで通過する衛星の電波をつかまえて、自動で追いかけるような仕組みのアンテナが必要でした。
スペースXは、フェーズドアレイアンテナと呼ばれる高性能なアンテナを自社で開発。設計から量産まで一貫して自社で行うことで、一般家庭でも購入できる価格にしたんです。

このスターリンクのフェーズドアレイアンテナ。一見するとすごくシンプルに見えますが、実はめちゃくちゃすごい技術が詰まっています。
ただその解説を始めると、一つの記事くらいの長さになってしまうのでまたの機会に。。
💥 何から何まで自分でやってトータルコストを下げた
もうお腹一杯だから勘弁して~って感じですよね。。
スペースXは、他にもあらゆることを自社でやっています。代表的なところではこんな感じ。
衛星システムを支える地上設備の整備
システム全体を自動最適化するAIによるシステム運用
一般のユーザーにサブスクで課金するインターネットサービス
従来は、ロケット打ち上げはA社、衛星はB社、サービスはC社って感じで全部別の会社でやるのが常識でした。
スペースXは、とにかく何でもぜ~んぶ自前でやることで、無駄なコストを徹底的に排除。
そうやって、トータルコストを下げることでスターリンクを実現できたんですね。
📝 まとめ
とうことで、今回はとにかくコスト、コスト、コストの話でしたが、コストを削減するためにいろんなイノベーションを起こしているわけです。
だいぶスターリンクの凄さが伝わったんではないでしょうか?
ただ、スターリンクの凄いところはこんなもんじゃありません。
実はまだ解説できていない、すごい革新的な技術が使われているんです。
そして、スマホのサービスなど、これからさらに進化していくスターリンクについて。
実はここからがいよいよ本番!と言ってもいいかもしれません。
では、スターリンクの解説3回目もお楽しみに!
